著者
日野 永一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.89, pp.55-62, 1992-02-01

本稿は,日本における「応用美術」概念成立の歴史的過程を明らかにしたものである。1873年に西欧から美術の概念が導入され,当初明治以前の東洋の概念との間に混乱が生じた。また,1885年頃には,純粋美術と応用美術との区別も知られるようになった。当時日本の工芸品は海外で芸術的に高い評価を受け,また重要な輸出品でもあったことから,国粋主義者たちによって工芸は純粋美術であるとする論が主張され,国際主義者との間に摩擦も生じた。1900年のパリ万国博覧会で,工芸を純粋美術とする国粋主義者の論は覆され,その後純粋美術と応用美術の区別が社会に浸透した。しかし,その区別は差別となり,また美術工芸という独自の分野を生み,影響は現在にまで尾を引いている。
著者
尹 亨建
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.9-14, 1997-05-31

第1報では韓国と日本の両国の伝統工芸品を対象に, 韓・日両国の20代を中心とした若者の美意識を把握するため因子分析を行ない, イメージ構造を明らかにした。第2報では, 韓国と日本の伝統工芸品に分け, 親密度による両国の人のイメージ構造の相違を明らかにした。本報では, 伝統工芸品の造形要素が両国の人のイメージ構造の相違にどのように寄与しているかを調べた。伝統工芸品の造形要素として重要と思われる「色彩」「材料」「形」「模様・装飾」を中心にして比較分析を行なった。「色彩」では, カテゴリー「材料自体の色+別な色」に対して日本人の反応が大きく, 「多彩な原色」「黒色+別の色」においても両国の差がみられた。「材料」については, 金属材料に対して違いが見られ, 日本人は人工的, 派手という評価を示し, 韓国人は, 軽快という評価を与えた。「形」では全般的に韓国人より, 日本人が大きく反応した。「模様・装飾」では, 韓国人より日本人は全体面積に対し模様・装飾の面積比が小さいものに高い評価を与えた。
出版者
日本デザイン学会
巻号頁・発行日
2009-01-31
著者
工藤 芳彰 宮内 [サトシ]
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.46, pp.198-199, 1999-10-15

This paper investigates a viewpoint of The Studio about Japanese fine art and craft on exhibit in the Japan-British Exhibition(191O)as foundation work of a study on relationship Western design movements and Japan until the end of the 19c to the beginnig of the 20c. There were 6 articles about painting, ceramic art, textiles and embroidery, wood and ivory carving, metal work, and cloisonne ware. There were various levels from antique to craft for export in Japanese exhibits of the Japan-British Exhibition. Above all, The Studio payed attention to the modification in Japanese contemporary fine art and arts and crafts for the influence of West and the Japanese attitude on the modification.
著者
大澤 晃平 菅原 正行 鈴木 侑 西川 太一朗 藤田 善弘 長田 純一 小池 星多
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.55, pp.108-109, 2008-06-20

In this research, some points emerged at practice of design. In order to design the activity of the robot use, we need to design environments surrounding robots. In addition we need to produce timing and a place of use the robot and explore possibilities of using with kinder garten teachers. This paper is descriptive of process of robot design for humans, non-humans, actions. It base on information from "network-oriented approach (ueno, 2006)" We have a thought that Robot is the position of social-technological networks.
著者
橋本 創造
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.35-42, 1999-11-30
被引用文献数
1

本研究では, ヘルベルト・W・フランケのコンピュータを使う造形に関わる1962年までの業績を明らかにした。フランケは, 1950年代から, 芸術用のアナログ・コンピュータの開発を始めた。やがて開発したコンピュータで, 回路を選んで適切に組み合わせ, 知的に制御をすることで画像を生成して, オシロスコープなどに出力をした。フランケは, その出力結果を写真撮影した。そして1956年以降, 学術誌や専門誌や展覧会などで発表をした。彼は, それ以前にはなかったような造形に成功し, デザインの発展に貢献した。
著者
三橋 俊雄 牧田 和久 宮崎 清 田中 みなみ
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.94, pp.67-74, 1992-11-10

本論文は,新潟県山北町における「地域特質を表現する図像」構築過程の観察を通して,内発的地域作り計画と実践の意義を考察したものである。第1段階として,町内外の人びとが地域に対して抱く心象に関するアンケート調査,町内においてすでに使用されている視覚媒体物の採集,図像のモチーフとなりえる各種地域資源の採集,地域住民からの図像アイデアの募集などを通して,地域特質に関する把握とその表現方策に関する検討を行なった。第2段階では,それらの結果に基づき,地域特質を表現する図像の実体化作業を展開し,地域住民による投票ならびに内外の人びとによる図像評価に基づき,「地域特質を表現する図像」として10点を策定した。第3段階としては,イメージカラーやロゴタイプと組み合わせ,策定された図像の具体的活用に関するマニュアルを作成した。最後に,「地域特質を表現する図像」の構築を内発的に展開する計画・実践は,当該地域の人びとが地域の有する種々の価値を再確認し,共同してそれを維持・発展させていくためのツールとして機能する点において今日的意義があることを指摘した。
著者
白石 光昭 森 典彦 杉山 和雄
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.95, pp.9-16, 1993-01-10

オフィスの評価は視覚的要因・環境工学的要因・使い勝手要因の3つが考えられる。これまで環境工学的・使い勝手要因からの評価は多く行われているが,実験・調査が多く手間と時間がかかる。これに対し,視覚的要因はオフィスの第一印象に大きく影響するにもかかわらず,評価方法や評価はまとめられていない。オフィスプランナーは長年の経験から,実験・調査を行わなくても,的確にオフィスの問題点を指摘できる。そこで,彼らの知識をまとめることで,1つの評価法を提案している。知識をまとめる方法としてFTAを応用する。また,視覚,つまり,見た目の評価にはあいまいさが含まれるのでファジイ集合をとりいれている。オフィスを見た目に悪くする要因を95項目抽出し,これらをFTAにそった分析を行うことで,構造的に,かつ,項目に対する主観的な評価を定量的に,把握することが可能になった。
著者
菊池 利彦 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.91-100, 2009-11-30

「死」はかつて、人びとの身近に存在した。死者がでると、人びとは自ら埋葬を行い、死者の鎮魂をし、死者に由来する魔や穢れの処理を行った。葬送儀礼は、穢れが漂う空間を平穏な日常空間に復旧するための空間意匠を内包するものであったといえる。本稿では、千葉県成田市台方における葬送儀礼に注目し、儀礼に内包される空間意匠を抽出するとともに、その特質について考察を行った。これにより以下の知見を得た。(1)出棺から埋葬までにみられる-連の所作は、葬家から埋葬地に至る空間に幾重にも分節点を築き、それにより此の世と彼の世を峻別するものである。(2)葬送儀礼には、日常において忌避される「逆さ」にする所作が散見される。これらの所作には、死を日常と対置することにより、日常の時間・空間へ穢れが流入するのを防ぐ意図が内包されている。(3)葬式翌日以降の多様な供養の儀礼は、一様に過ぎていく時間の流れに分節点を築き、穢れが希薄化していく過程、荒々しい死者が祖霊へと変化する過程を、人びとが実感するための作法であるといえる。
著者
楊 〓叡 堀田 明裕
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.29-36, 2005-11-30
参考文献数
21

報知機能に関するサイン音の意味を調べるため, 音要素(高さ, 長さ, 大きさ)が生起する印象について評価実験を行った。被験者22人に41の実験音を提示し, 5つの報知機能(位置, 誘導, 通報, 案内, 規制)を想定した25の評価語対によって, 7段階の印象評価を行った。評点平均値の結果から音の高さが位置の高低と関わりのあることがわかった。また, 音が短ければ, 緊張感が強くなる傾向がみられ, 音が大きければ, 威圧感が強いという効果があった。因子分析では, 1強制, 2判別, 3緊張, 4象徴, 5持続, 6確認, 7方向の7因子が抽出された。規制機能に第1因子, 位置機能には第2因子, 通報機能には第3, 6因子, 案内機能には第4, 5因子, 誘導機能には第5, 7因子が含まれていた。実験音と評価語から抽出した印象と音の物理的特性, 因子の対応関係は, 新たなサイン音をデザインする時に有効と考えられた。
著者
井上 友子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.37-46, 2011-07-31
参考文献数
15

『パンチ、オア・ザ・ロンドン・シャリヴァリ』(『パンチ』誌と略)は、英国民に親しまれた大衆誌として1841年から2002年まで発行された。本誌の特徴は、親しみやすい気質の「パンチ」氏、機智に富む魅力的なテクストや見出し、人情味ある挿絵などであった。『パンチ』誌は、編集長レモンのもと極端な性描写や過激な政治批判がなく、モラルと品位を保った穏健派諷刺誌として知られ、国外でも『パンチ』の名を冠した雑誌が刊行されるほど影響力をもった。しかし1894年、当時ブームとなっていたビアズリーの影響と推察される挿絵の変化とそれに連動したテクストが現れた。本誌の品位を保っていた意匠や挿絵に、レモンが掲げた「パンチのモラル」に反するグロテスクで過激な表現が見られるようになったのである。本研究は1894年と95年の『パンチ』誌を対象とし、挿絵やテクストに現れた急激な変化を通して、ビアズリーの作品が本誌に及ぼした影響を考察した。その結果、『パンチ』誌は大衆誌の宿命としてそのブームを受け入れ、同時にそれに抵抗する姿勢も見せていたと推察される。
著者
関場 亜利果
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.9-18, 2005-03-31
被引用文献数
1

アルテ・プログランマータ運動はブルーノ・ムナーリが企画し, オリヴェッティ社の支援により開催された1962年の同名の展覧会に始まったとされる。この運動はテクノロジー・アートが急速に発展した時代に, 科学的視点の芸術分野への応用をいち早く試みたという点でイタリアの現代美術において重要である。しかし主な活動舞台であった欧米においても, 同時代の他の類似した運動と混同され正しい評価が与えられていない。また日本においては断片的な紹介がなされているのみであり, 呼称も統一されておらず, 具体的活動内容については殆ど認識されていない。本研究では, この運動の企画者による文章など一次資料や実際の作品からこの芸術運動の特徴を考察し, 運動コンセプトの定義を試みた。また先行研究における誤解や相互の矛盾点の原因を明らかにし, 本論文が日本における初めてのアルテ・プログランマータを包括的に概観できる資料となるよう努めた。その上でこの運動の今日的意義を考察した。
著者
伏見 清香 茂登山 清文
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.53, pp.136-137, 2006-06-20

This system aims at deepening the viewer's understanding of artwork through the use of a mobile phone system. The system has two goals: observation and expansion. When in the presence of an artwork, the viewer records their impressions by means of a mobile phone interface. The recording of the viewer's experience can be input into a mobile phone as the viewer is in front of the actual work. In order to form a deeper experience with the museum and stimulate repeat visits, during which one can form and ongoing appreciation of a work, prior personal experiences and other's opinions can be accessed and new ideas can be recorded, comparing old experiences to new.
著者
神野 由紀
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 特集号 (ISSN:09196803)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.13-20, 2002-03-31
参考文献数
51
被引用文献数
2
著者
神野 由紀
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.45, pp.60-61, 1998-10-30

In moden times of Japan, a child was discovered its existence and became an object of consumption. As well as any other children's articles, children's clothes were appeared with various backgrounds of those days. In this report, I revealed, from the end of Meiji to Taisho, what kind of market children's clothes established as merchandise, and deversities of the product range which I confirmed from my reserch of Doi Child Living Museum which owned children's clothes sold in in department stores and catalogues of department stores in those days.
著者
平野 聖
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.7-16, 2009-07-31
参考文献数
23

扇風機の基本的な機能は,第2次世界大戦前に,ほぼ満足のゆく段階に至っており,戦後追加された機能としては,いわゆる「お座敷扇」に見られる首伸縮機能くらいである。これは1台で洋間にも和室にも使用可能な経済的な扇風機と認知され,団地を中心に広く受け入れられた。戦前発明された幅広3枚羽根の「エトラ扇」は,戦後特許が切れたことにより,各社がこぞって採用するようになる。安全性が確保されたことから,ガードの間隔の疎らなものが増え,流線型の本体との相乗効果により,戦前に比較し軽快でスマートな印象を与える扇風機も登場した。色彩に関しては,扇風機は「黒」という常識が,戦後のカラー化導入によって覆された。これは,進駐軍の影響とプラスチックの採用によるところが大きい。この時期の扇風機用ガードのデザインの多様性には目を見張るものがあり,扇風機のモデルチェンジやバリエーション展開により付加価値を与え,消費者の購買意欲をそそる営業戦略的側面において,大いに寄与している。
著者
高橋 尚子 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.51, pp.178-179, 2004-05-30

This paper focused on Japan's design movement in the 1930s which can also be stated as the starting point of modern design in Japan. This research aims to clarify the part of small number female designer who contributed on that movement. As a case study, Michiko Yamawaki who was a textile designer has been chosen. The tea ceremony world as a part of Michiko Yamawaki's life, has cultivated her sensitivity, and by encountered with Bauhaus (design), the free way of thinking and her expression method has been acquired. By this process, she tackled the basis of life aesthetic creation from woman's viewpoint.