著者
野口 尚孝
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.61-68, 1995-05-31
被引用文献数
3

本研究の目的は,直接的にはデザイン発想支援の枠組みを明らかにすることであるが,それを通じて把握された限りでの,設計行為およびデザイン行為の本質および発想の構造をも明らかにすることを目指す。第1報では,普遍的な意味での設計行為と設計行為における発想の構造について述べたが,第2報(本報)では,これに基づき,設計行為の一側面としてのデザイン行為とデザイン行為における発想の特徴について述べる。デザイン行為の本質は,人工物の使用の場における使用者の感性的要求を充たすという目的のため,その実現手段として人工物の感性的機能を持つ属性の形式を決定することであると規定する。また,デザイン行為における発想は,形態イメージ探索の過程で発生し,その本質上,目的手段連関の一時的逆行における抽象から具体への落差が大きいことを指摘する。最後にデザイン行為およびデザイン発想における,これらの特徴に見合った発想支援の基本的な考え方を提起する。
著者
松崎 元 赤坂 拓郎 福田 将三
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.19, no.19, pp.6-9, 2014-03-31

近年、ロールタイプのふせん紙や色とりどりのマスキングテープなど、紙製の弱粘着テープが用途を広げており、編集作業の校閲や事務作業の注意書き・メモ書きのほか、紙面の装飾やクリエイティブワークなど、今後も更に需要が期待できる。しかし、こうしたロールテープは、粘着性と伸縮の度合いが異なることから、従来の卓上テープカッターでは切りにくく、はさみや小型のハンドカッターを用い、両手を使わなければカットできなかった。本作品は、卓上で巻芯内径25mmのロールテープが左右2種類セットでき、片手で切れるディスペンサーである。開発過程では、デザインプロセスにおける各段階で、3Dプリンタを効果的に活用し、機能性や操作性だけでなく、ディテールの造形、プロポーションなど、ディスペンサーの有効性を確認することができた。
著者
小野寺 強 久米 寿明
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.24-27, 1997-01-31

過去20年間経験したこともない販売状況となっているアルバ「スプーン」のヒットの裏に隠された、開発プロセスをここに紹介する。まずは人ありきから端を発したコア・ターゲットの選定からキー・イメージ、インターフェイス・デザイン、スタイリング、プロト各段階におけるグルインによるデザイン評価と方向修正。商品のおかれかた(VMD)から価格、コレクションのありかた、セールス・プロモーションの仕掛けかたまでにもおよぶ、パネラーとの意見交換。こうしたターゲットとの疑似体験ともいえる一貫したグルイン方式による商品開発プロセスは、従来のメーカー主導型開発や販売サイドの延長線上的商品開発、はたまたデザイナーの主観的提案といった枠を超え、供給者と需要者のコラボレーションにより予想外のREALITYを内在するものとなった。彼らの発する言葉の奥底に潜む眠った記憶、これを解読し推測しビジュアルなものにしてあげる行為、またデザイナー自身の感性にも蘇ってきた記憶、こうしたプロセスが生んだ直感ともいえる相互のリアル・パーセプション。これがアルバ「スプーン」のオリジンといえる。
著者
野宮 謙吾 越川 茂樹
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.53, pp.452-453, 2006-06-20

In the Okayama Prefecture Soja city, the culture in the region was established in being familiarized with people and bringing up the culture of sports and to contribute to the depth or more and city planning, "NPO Kibi sport kingdom" was established. The mission and the vision of the Kibi sport kingdom were settled on by a joint research with Okayama Prefectural University. And, it was assumed that the visual identity was settled on to advance the image-making of the organization and strategic use was attempted.
著者
庄子 晃子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.59-68, 1997-09-30
被引用文献数
2

ブルーノ・タウト(Bruno Taut、1880-1938)は、仙台の商工省工芸指導所顧問の職を辞して去る最後の日の1934年3月6日の日記に、「指導所の展覧会について更に一つの案を立てる、新しい方向の特徴をはっきりさせるためである」と記している。幸いにその文書"Vorschlag fur Ausstellungen von Kogeishidosho(工芸指導所の展覧会のための提案)"が今日に残る。その中で、タウトは、展覧会場内を三重の同心円状にレイアウトし、中心部に工芸指導所顧問として自ら収集した日本の伝統的優良工芸品を、その周りにタウト指導の照明具と家具の規範原型のための形態研究やデザインスケッチ等と製作が完了しているテストチェア、さらにはタウト設計でやはり製作が終わっているドア・ハンドルを、そして、部屋の周辺の壁沿いには工芸指導所の従来からの試作品を展示することを提案している。それは、工芸指導所が、タウトの指導を受けて、日本の伝統と西洋の近代の統合を基礎として、新しい日本の産業工芸を成立させるための作業を開始したことを示す展覧会の提案であった。
著者
JUNG Soyeon PARK Boyoung JANG Jiyeon LEE Sungsik
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.51, pp.148-149, 2004-05-30

As the digital technology has developed, life, which is involved with communication, business, shopping, education, etc. became possible in cyberspace. Life can be divided into two spaces, which are real and virtual spaces. This virtual space, which did not exist in the past, changed the life style of the people. In the study, human activities are understood as "real life" and "cyber life." Inside of the cyber life, there is a need of a person in control over the life. It is one's other self, which is called "Avatar." When we consider activities by Avatar as an active life in the cyberspace, this thesis made an issue out of limiting the present Avatar's function and reality simply to a character as a visual symbol.
著者
杉浦 文哉
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.B08-B08, 2010

昭和30年代に台頭した女性用自転車は、現在日本における自転車利用のおよそ8割を占めるシティ車の原型となっている。シティ車の誕生とともに自転車は最も身近で手軽な交通手段として人々の生活に定着したが、現在その利用環境には多くの問題が生じている。放置自転車や交通事故等に代表される自転車利用の諸問題に対し行政や自治体により対策が行われているが、依然として解決の兆しは見えておらず、現状の利用環境において自転車が移動手段として持つ優位性を十分に発揮出来ているとは言い難い。自転車利用の問題は昭和後期における自転車利用率の急増とともに表面化し始めたが、その本質にはシティ車を中心として形成された日本独自の自転車文化の性質が深く関わっているものと推測される。 本研究では日本における自転車の利用形態がどのように形成されてきたのか、調査・考察を行う。それにより日本の自転車利用における文化的特性を明らかにし、現在の利用環境をめぐる諸問題についてその要因の一端を明らかにする。
著者
石村 真一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.37-46, 1997-01-31

木材資源の枯渇化が心配される今日において, 木材を極めて有効に使用した桶・樽の造形文化が再考されることは, 木と人の共生という先進文明社会が直面している問題の解決につながる糸口になると思われる。本論はその第1報として, 我が国における桶の成立時期と初期形態について考察した。その結果次のような内容が明らかになった。従来桶と推定されていた容器の多くは, 縦方向に補強を施した曲物であった可能性が高い。我が国における桶の初見資料は『北野天神縁起弘安本』と推定される。桶は中国から伝来し, 少なくとも鎌倉中期以前に製作技術が成立している。そして畿内においては鎌倉後期に特権階級の間で普及した。桶の初期形態は, 白木で加飾性の少ないタイプであったことが確認された。
著者
大沢 拓也 橋田 規子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

近年、多くの図書館で新しい建築方式や空間コンセプトの変化に合わせて、美しく魅力的な空間が増えている。その一方で既存のブックポストは昔から形が変わる事がなく、あまり意匠的に優れておらず、図書館空間とのずれが生じている。それに加え、直方体の単純な構造は返却物の破損の原因にも繋がっている。本研究は、芝浦工業大学図書館に設置するブックポストのデザイン提案をきっかけに、新たな構造とデザインを探求したもので、将来的には製品化を目的とする。 近代的な図書館空間に合った意匠に加え、既存のブックポストが抱える問題点を改善したプロダクトを提案する。このことによって、図書館空間に合ったデザインを提案するだけでなく、図書館員と利用者にとって使用しやすい機能を取り入れる事で、意匠性と機能性の2つを向上させる事を目的とする。
著者
増成 和敏 石村 眞一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.27-36, 2010-01-31

本論は,家具調テレビのデザイン成立過程を明らかにすることを目的として,家具調テレビ「嵯峨」に関し,主として文献史料とヒアリング調査より,以下の内容を明らかにした。1)「嵯峨」は,北欧デザインに影響されたが,同様に影響を受けた米国のテレビ受像機の模倣ではない。2)松下電器デザイン部門は,海外のデザイン情報を取り入れ,日本独自のデザイン開発を推進できる状況にあった。3)「嵯峨」のデザインは,ステレオ「宴」に影響され,「宴」は,ステレオ「飛鳥」に影響されている。4)「飛鳥」は,日本調を狙ってデザインされたのではなく,宣伝によって「校倉造り」の造形イメージが付けられた。5)「嵯峨」の形態特徴3要素を具備した最初の意匠出願は,三洋電機からであった。
著者
文 皓琳
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.55-64, 2008-07-31

本研究は,ユニバーサルデザインの観点から「障害者」の言葉に対するイメージに関して,日本における「障害者」という用語が使われた歴史的背景を調査し,文献調査とインターネット検索を通じて日本と韓国で障害者に対する表記の例を調査した。次に,アンケート調査を通して,日本人と韓国人にとって「障害者」の字に対するイメージを分析した。その結果,日本では「害」の字に対する悪いイメージがあることにより,障害者に対する表記が多様であった。韓国の場合は,障害者を「障碍人」で表記し,「障害者」の言葉に対する抵抗感が強く,その表記は日本のようには多くなかった。また,「障害者」の字に対する悪いイメージ及び抵抗感は日本人と韓国人に認識の差があることが分かった。日本人の47%の人が「障害者」の字に悪いイメージがあると答えたが,「障害」と「障碍」を使う韓国人の場合は92%であった。「害」の語句に対する意識は,両国においては大きな差がみられることが理解できる。
著者
吉田 美穗子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.73-78, 2008-01-31
被引用文献数
1

古い時代、人間が創造した建築物に文様を刻むとき、何らかのメッセージを込めたはずである。それは、建築物に住む側の人間にとって、子々孫々に至るまで生命が永遠に続き、さらにその繁栄を約束するような、そのような祈願を反映した呪術的なものを制作したであろうとの確信から、古建築における植物文様の意匠をCADにより対数螺旋を用いて合成し、再現した。古建築の植物文様において、対数螺旋は植物そのものを表現したり、または単純化されたパターンとなって繰り返したり、渦を巻いたり、植物文様の余白を埋めたりと、リズミカルに見え隠れし、永遠の生命を演出していた。それは見るものに華やかさを与え、植物文様を神聖視させ、永遠に見守られているという信念を抱かせるのに効果的なデザイン要素として、現代に至るまで引継がれ使用されているものであった。

1 0 0 0 OA 東北六魂祭

著者
梅田 悟司 浜島 達也 坂本 陽児 坂本 弥光
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1_130-1_133, 2015-03-25 (Released:2015-05-22)
参考文献数
2

東日本大震災が発生した2011年3月11日以降、東北地方への観光客は激減した。当時、全国的に起こっていた自粛ムードは、東北の経済を深く傷つける結果となることは自明であった。 そこで我々は、東北各県の夏の風物詩である「祭り」を再デザインし、東北復興の第一歩を、東北自ら踏み出す様子を全国発信することを発案。東北6大祭り(青森ねぶた祭、秋田竿灯まつり、山形花笠まつり、盛岡さんさ踊り、仙台七夕まつり、福島わらじまつり)を一つにまとめた新しい夏祭り「東北六魂祭」を実施した。 震災後わずか4ヶ月である2011年7月に仙台市で行なわれたこの祭りは、東北に、一丸となって乗り越えるモメンタムを生み、観光客を東北に呼び戻すことに成功した。2012年は盛岡市、2013年は福島市、2014年は山形市で開催し、計111万人を集客。各県の行う夏祭りへの集客にも貢献している。
著者
大野 森太郎 金田 幸裕 原田 利宣
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.6_61-6_68, 2016

近年のタブレット端末の普及により,様々なアイコンを目にする機会が増えている.しかし,ユーザの認知過程や嗜好性の違いによりアイコンの理解度や魅力度は異なる.そこで,本研究では,ラフ集合理論を用いたアイコンの魅力度および分かりやすさの分析を目的とした.具体的には,まず,既存アイコンの魅力度と分かりやすさについて調査実験を行い,アイコンを構成する形態要素(属性値)を抽出した.次に,その属性値がどのように魅力度や分かりやすさに影響しているかを明らかにするため,ラフ集合理論を用いて各被験者の決定ルールを求めた.また,決定ルールから各被験者間の共起率を算出し,クラスター分析を用いて被験者を分類した.さらに,各クラスターが魅力的,もしくは分かりやすいと感じる属性値を抽出した.さらに,各クラスターに対応したサンプルアイコンを制作し,その属性値の有効性の検証を行った.