著者
大場 吉美
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.12, no.12, pp.66-71, 2007-03-30

本作品は、金沢駅周辺整備事業の一環であり、その最後を飾る施設である金沢駅東広場の竣工を祝う式典のディスプレイデザインである。金沢には、文化都市を自負している市民の高い美意識があり、加えて多様な時代への共感を求めることと、祝祭の演出表現までがデザインに求められた。短期間の制作条件と高さ29m×巾80m×奥行き60mの大型空間のディスプレイデザインは、いかなる素材と手法が最適な解かが課題であった。それらの与件から、透明感や開放感のある明るく軽やかで楽しい演出が創造でき、安全性と耐久性も求められる素材としてファイバー系素材を採用した。建築構造体がアルミトラス構造の空間環境から、吊りと張りの方式が適していると結論しデザインした。そのデザインの具現化の状況と設置後の印象や結果を記述する。
著者
宮内 [サトシ]
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.80, pp.59-66, 1990-07-31
被引用文献数
1

本稿は,島根半島の突端にある美保神社において各種の祭儀に用いられている特異な屋根型の蓋をそなえた辛櫃について論考したものである。その結果,筆者は次の諸点を明らかにした。(1)四つの形式の辛櫃があり,細部の構造は異なるが,屋根型の蓋,格子組,内箱という構成において一致していることを指摘した。(2)同様な構成をもつ茶弁当,具足櫃,長持など数点の伝世品を提示,近世の絵画・文献資料にも記録されていることを確認した。(3)第1の特徴である屋根型の蓋は,近世の参勤交代などにより発達した全天候型の装置であり,格子組は内箱を保護することはもとより,みだりに手を触れることを拒否する一種の結界であり,きわめて丁寧な運搬方法のための用具であることを指摘した。(4)美保神社の辛櫃の諸特徴は,近世において発達した運搬具類との高い類似性が認められる。切妻型の屋根や格子は高温多湿のわが国の風土の中で生まれた建築的語彙であり,美保神社の辛櫃は,建築が家具に影響を与えた1列であることを指摘した。
著者
大竹 一也 両角 清隆
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.49, pp.6-7, 2002-11-05

Users act based on the experience. Therefore, I think that the Web site must be made for the user to be able to utilize an experience naturally. In this research, We compared experiments of user's act in "Bookstore in the real world" and "Web site of the virtual world". From the experiment we gained three results : 1) Necessity of offer of information which helps the selection to user. 2) Necessity of offer of information which urge judgment to user. 3) Necessity of classification by relation of genre. I will experiment by the user of a different age group, and analyze the influence that the user's experience brings acts compared with this experiment result.
著者
原田 利宣 田中 良介
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.1-6, 2006-01-31

近年、Webサイトの与えるイメージが、その企業や大学の印象に影響を与えている.そのため、Webサイトに関する研究が多く行われているが、ラフ集合のような非線形的手法を用いたWebサイトの構成要素とイメージ評価項目(魅力度)との関係を分析した事例は未だ少ない.そこで本研究では、デザイン及び情報デザイン分野に属する大学の学科Webサイトをケーススタディとし、ユーザーのサイトに対する価値観と、その構成要素との関係の明確化を目的とする.まず、6対の評価用語を用いて、サンプルWebサイトに対する評価アンケートを行った.次に、評価結果をもとに、重回帰分析を行い、魅力度に影響を与えているイメージ評価項目を明らかにし、被験者を価値観別に5つのクラスターに分類した.さらに、ラフ集合を用い、被験者の各クラスター別に、魅力度に影響を与えている構成要素の組み合わせを抽出した.以上の結果をもとに新規学科サイトを制作し、検証を行った結果、意図通りにイメージと魅力を制御できることが示された.
著者
寺田 英志 高橋 淳也 合原 勝之
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.39-46, 2008-11-30

本研究の目的は,WEBデザインの国籍や文化などによる嗜好の違いを調査し,企業が英語版WEBページを作成する際のデザイン手法を提案することである。文章の違いと,主に配色を中心とするデザインの違いという2つの視点から調査を行った。3つの現状調査とアンケート調査を行った結果から,以下のようなデザイン指針が得られた。文章面からは、「暖昧な表現を避け,具体的な会社紹介をする。」および、「トップページで業務内容が分かるようにする(文章・画像など)。」の2点、デザイン面からは、「日本のWEBページ平均より背景明度,文字との明度差,色差を低くする。」,「日本のWEBページ平均より白いピクセルの比率を少なく,暗いピクセルの比率を多くする。」、および、「明度の高い色同士の配色は避ける。」の3点である。以上の結果を踏まえて,企業の英語版WEBページのデザイン手法を提案する。
著者
木村 浩 松田 紀之
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.46, pp.244-245, 1999-10-15

The purpose of the present work is to suggest practical principles in designing web pages of moderate to high complexity in structure. The examined case was the formal web-pages of the University of Tsukuba recently renewed with a special emphasis on the web accessibility and universal design. We obtrained interesting findings about the use of the Japanese language by eye-examinations and those by a speech browser for the visually-impaired. They have been reflected in the refinement of the pages by the authors.
著者
内山 俊朗 鎌谷 崇広 京谷 実穂 鈴木 彩乃 鈴木 健嗣
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.16, no.16, pp.30-33, 2011-03-30

beacon(ビーコン)はパーソナル化の傾向にある従来のデジタル楽器とは違い、人が集まり体を動かしながら音を奏でることができる空間を生み出す新しいプロダクトです。誰でも気軽に楽しめるという性質と、練習と創意工夫によって新たな芸術表現へとつながる性質を併せ持っています。音楽によって、人と関わりを持つ場を提供することを目的とし、学校教育、レクリエーション、フィットネス、リハビリテーション、新しいゲーム、競技、新しい芸術表現などのシーンで利用されることを想定しています。
著者
李 昭賢
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.P23-P23, 2010

台湾の気候条件は、高温多湿で台風や地震が多い。また、都市部への人口集中が著しいためにRC造の高層住宅が8割を占め、建築関連の二酸化炭素排出量が多い。本稿ではエネルギー消費や環境負荷に配慮した日本の「環境共生住宅」の手法と台湾の「緑建築」を取り入れ、「風水」に配慮した集合住宅を提案する。具体的には建物を高層化せず地面を掘り下げ、敷地全体に広く住戸配して、壁面や屋上を緑化することで外壁の露出を減らす構造とした。さらに直接住民に効果が体感できるグリーンカーテンなどの仕掛けで、環境共生に対する意識を高めている。
著者
鈴木 偵之 石塚 昭彦 中本 和宏 小野 健太 渡邉 誠
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.4_77-4_86, 2013-11-30 (Released:2014-01-25)
参考文献数
20

本研究では子供向けデジタルサイネージのGUIデザインの指標を明らかにした。デジタルサイネージが持つ特徴のうち、大画面を有し、タッチ等によるインタラクションがある点、設置して利用される点を中心に調査を行った。子供の行動把握にはエスノグラフィ(行動観察調査)法を使い、子供特有の特徴を抽出するため、PCリテラシのある年齢(大人)についての比較調査を行った。結果の分析には、行動比較マップを用いた。これは子供と大人の行動を比較するために、子供と大人がとった行動の頻度をそれぞれ集計し、その結果をプロットしたマップである。このマップをもとに子供と大人の行動の共通部分と子供特有の部分について考察を行った。これらの結果、子供特有のデジタルサイネージの利用に関する特徴として、「目標設定」「ボタン等の操作部」「操作に対する満足」に関係する3つの観点にまとめられることが分かった。
著者
益岡 了 材野 博司
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.1-10, 1997-11-30
被引用文献数
7

人間の移動における継起的体験と空間構造との関係に基づいたシークエンスの研究において, どのような行動変化を手がかりに, 実際の空間や景観の変化に伴った行動として認識するのかが問題となる。そこで本報告は, シークエンスにおける短時間の行動や視覚の認知の連続をより正確に把握するために, 心理学などの研究で用いられている特定の装置を改良し, 景観行動の実態を解明することを目的とする。調査の結果, 特定の空間の変化と行動, および生体反応とが対応した関係にあることが明らかになった。また全く同一の空間の歩行であっも, 往路と復路という歩行方向によって行動・反応に違いがあることが分かった。これらのことから, 実際に空間や景観を体験する歩行者の行動や認識を予想することにおいて, 空間を歩行方向に向けて断面図的に解析し, 継起的な歩行者の体験に基づく景観の分析を行う手法の有効性が確認できた。
著者
深澤 琴絵 植田 憲 朴 燦一 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.49, pp.170-171, 2002-11-05

This paper describes The Furoshiki (Japanese wrapping cloths) and is development. The Emakimono (Japanese picture scrolls) and some remains are regarded on the designs including functions, forms, and ways of utilizations as living tools. It is obtained : (1) The Furoshiki was initiated in the late 6th century, the Asuka period. Two kinds of design are found in the remains of the prince Shotoku. (2) The Emakimono in Nara until Muromachi era, contains varieties of designs which were tightly connected to social backgrounds and temporal rules. Beyond the difference of sexes, generations, and social positions, it has been used widely to represent feelings of prey, respect with utilities of package, transportation and ceremonies.
著者
川上 比奈子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.67-76, 2004-03-31

アイリーン・グレイは、菅原精造から日本漆芸を学び、漆塗り屏風を制作した。建築家に移行した後、住宅「E.1027」において、ジグザグに折れ曲がる窓をデザインし「屏風窓」と名付けた。本稿では、グレイが屏風を建築に展開する契機を探る。彼女の最初の屏風は、伝統的な形式を踏襲した絵画的調度品であったが、やがて漆塗りと屏風の特質によって、立体が浮かび上がって見える幾何学線形の描かれたものが制作される。同時期、屏風に描かれるべき図柄を、多数の小型漆パネルに分解して再構成した屏風が生みだされた。映りこんで見えていただけの立体が、実体として表現されると共に、分解・回転によってできた空隙が屏風の構成要素に加わり、視線も風も遮らないものとなる。空隙は、屏風の既成概念を取り払う切掛けとなり、グレイは、屏風を窓や壁のデザインに展開し、また、新素材の美しさを活用し、住空間に多様性を与えることになった。グレイの屏風は、空間の光や空気を調節するとともに、空間の機能と形も変える変換装置といえる。
著者
中村 卓 鵜沢 隆
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.E13-E13, 2010

レッド・ブルーチェアは、20世紀初頭からオランダを中心に活躍したデザイナーであるG.Th.リートフェルトによる家具作品であり、現在生産されている家具のひとつとして知られている。彼は、レッド・ブルーチェアを1918年に機関誌『デ・ステイル』に発表し、それ以降1920年頃まで素材・形状・色彩等の異なる複数のタイプを制作した。研究の内容は、レッド・ブルーチェアの初期デザイン(1918年)の2つの事例について詳細な実測調査を行い、それぞれ部材形状・構成など意匠の特徴について確認するものである。意匠の特徴では、部材形状はそれぞれ若干異なるものの、座面・背板はほぼ同一の勾配でデザインされていることが確認された。一方、これら意匠の差異から、それぞれの力学的な作用について、構造的観点から考察した。ここでは、意匠的な差異がそれぞれの構造的特徴と関わっていることが確認された。以上のように、本稿は意匠と構造の関係の一端を実測調査と文献資料等に基づき分析し、論じていくものである。
著者
横溝 賢 村井 麻里子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.15, no.15, pp.24-27, 2010-03-30
被引用文献数
1

本作品は、愛媛県の伝統工芸である伊予水引の魅力を国内外に伝えることを目的に、商品の企画設計からブランドアイデンティティまでトータルにデザイン開発を行ったものである。従来の結納飾りや、金封飾りをリデザインするのでは、これまでの伝統工芸品の焼き直しである。主に慶事に用いる水引の伝統的風習を継承しつつも、現代の生活様式にあわせた、新しい「祝い」の様式を提示するテーブル周りの水引工芸品を企画した。水引には、贈り物に紅白の水引を掛ける伝統的作法としての文化的価値のほかに、しなやかな張りを持つ紙紐素材の技術的特性もある。本作品では、水引の歴史的・文化的価値がユーザーに伝わるようブランドのコンテクスト作りを行い、同時に水引素材の質的特性を効果的に用いたデザイン開発を行っている。
著者
蛭田 直
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.19, no.19, pp.24-29, 2014-03-31

本作品は、平面ユニットの磁力による連結機構での接合に焦点を絞り、高い練度を必要とせずに平面ユニット同士を接合できる造形学習用教材を開発したものである。正多角形を用いたパターンを含む平面造形、正多角形を用いた立体造形を支援することを目的としている。造形学習用教材は、連結機構にネオジム磁石の磁力を用いることでユニット同士の容易な接合を可能にした。接合によりユニット同士を組み合わせて平面の持つ特性を活かした造形物を制作できることが確認された。平面の持つ特性とは、柔軟性、しなやかさ、軽さ、安全、覆う、大きな造形などである。本稿では、造形学習用教材のデザインとプロセス、造形学習用教材の使用方法と特徴、造形学習用教材による造形と造形物について解説する。
著者
伊藤 久美子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.31-38, 2008-11-30
被引用文献数
3 2

色彩好悪と色彩象徴などに関する調査を女子学生対象に'04'05に実施し、筆者の約10年前、同様に実施した結果と比較し、経年変化を検討した。即ち、色彩好悪色、自分に最も似合う(似合わない)と思う服色、色名からの連想語、14個の象徴語(怒り、嫉妬、罪、永遠、幸福、孤独、平静、郷愁、家庭、愛、純潔、夢、不安、恐怖)から連想した色名について調べた。その結果、色彩好悪については、ピンク、青、橙、水色、黄色が最も好かれる色上位5色であり、一方、最も嫌いな色上位5色は、灰色、黄土色、紫、ピンク、赤の順となった。本研究の結果は、色彩好悪はゆるやかに経年変化するが、色彩イメージと色彩象徴はあまり変化しないことを示唆している。