著者
太田 彩乃 勘米良 亀齢 磯崎 行雄
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.853-864, 2000-12-15
被引用文献数
4 7

宮崎県北部, 高千穂町上村のペルム系石灰岩, 岩戸層と三田井層の新露頭において, 岩相層序および生層序を検討した.その結果, 整合に累重する4つの化石帯, すなわち下位よりLepidolina帯および無化石帯(岩戸層), Codonofusiella-Reichelina帯およびPalaeofusulina帯(三田井層)が識別された.前二者は南中国の茅口階に, 後二者はそれぞれ呉家坪階および長興階に対比される.本石灰岩は, 西南日本外帯, 秩父累帯のジュラ紀付加体中に巨大な異地性岩体として産するが, 初生的には海洋中央部に位置していた古海山頂部に形成された浅海成石灰岩体に起源をもつ.このような遠洋浅海成石灰岩中に茅口階から長興階に至る連続セクションが確認されたのは世界で初めてであり, ペルム紀末の大量絶滅事件直前の超海洋パンサラサでの環境変化を解明する上で重要な記録が得られた.
著者
西村 祐二郎
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.100, no.9, 1994-09-15
著者
後閑 文之助
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.45, no.541, pp.773-776, 1938

As to the fossil elephants, the ancient Japanese naturalists for a long ti-me believed, following the explanation in the Chinese Pents'ao, that they were the skeletons of dragon but later in the Yedo period some scholars grew suspicio-us about its veracity., The questions of dragons had been variously discussed si-nce 1760 till the so-called "skeletons of dragons" found in Japan were proved to be the fossil remains of elephants in 1811.,
著者
鬼頭 昭雄
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 = THE JOURNAL OF THE GEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.654-667, 2005-11-15
参考文献数
22
被引用文献数
2 3

大規模山岳がアジアモンスーンなどの気候形成に果たす役割を調べるために,全球大気海洋結合大循環モデルを用いて,チベット高原を含む全地球の山岳の高度を0(M0)から140%(M14)まで段階的に変える実験を行った.500 hPa面の東西風は,山岳高度が40%以下では一年を通してチベット高原の緯度帯より北の40 &ordm;N付近に位置するが,山岳を60%より高くすると冬季にはチベット高原の南側25 &ordm;N付近にあり春季にチベット高原の北へシフトすることがわかった.山岳高度が60%をしきい値として東アジアの循環場には大きな変化がおき,梅雨降水帯は山岳高度が60%より高い時のみ発現した.地表風の変化については,アラビア海北部では山岳が低い場合には一年を通して北風に支配され,モンスーン南風域には入らない.乾燥気候に区分される面積は山岳上昇とともに減少することもわかった.<br>
著者
志村 俊昭 小山内 康人 豊島 剛志 大和田 正明 小松 正幸
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 = THE JOURNAL OF THE GEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.11, pp.654-665, 2006-11-15
参考文献数
57
被引用文献数
2

日高変成帯は,第三紀の火成弧の地殻断面であると見なされている.シンテクトニックなトーナル岩マグマは地殻規模のデュープレックス構造のフロアースラスト,ランプ,ルーフスラストに沿って迸入している.このトーナル岩マグマは露出していない最下部地殻のアナテクシスによって生じた.<br>日高変成帯北部の新冠川地域には,含輝石トーナル岩類(最下部トーナル岩体)が分布している.このトーナル岩体には,斜方輝石の仮像や,アプライト脈などの様々な冷却過程を示す証拠を見ることが出来る.これらの組織から,このトーナル岩体の冷却過程が明らかになった.シンテクトニックなトーナル岩体と,変成岩層の<i>P</i>-<i>T</i>-<i>t</i>経路は地殻の上昇テクトニクスを示している.一方,デラミネーションを起こした最下部地殻の<i>P</i>-<i>T</i>-<i>t</i>経路も推定することが可能である.<br>
著者
奈良 正和 清家 弘治
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.9, pp.545-551, 2004-09-15
参考文献数
37
被引用文献数
3 26

千葉県九十九里浜の前浜堆積物中から,多数のMacaronichnus segregatis様生痕を発見した.この生痕は,剥ぎ取り試料面上において高さ2-3mm,幅3-50mmほどの円形もしくは長楕円形を成し,内部が細粒砂サイズの無色鉱物で充填され,その周囲に磁鉄鉱などの有色鉱物が濃集することが特徴である.この生痕ときわめて似た特徴を有する本邦第四系産生痕化石Macaronichnus segregatisの形成者については,従来,小型等脚類ヒメスナホリムシとするものと,オフェリアゴカイの様なゼン虫類とするものの2つの説があった.この生痕が産する堆積物からは,ヒメスナホリムシは一切採集されなかったものの,オフエリアゴカイ科の多毛類であるEuzonus sp.が多数採集された.このことから判断すると,このM.segregatis様生痕の形成者は,オフェリアゴカイ類と判断して良いだろう.
著者
石川 浩次 溝口 昭二 大鹿 明文
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.51, pp.52-66, 1998-03-24
参考文献数
7
被引用文献数
1

1995年兵庫県南部地震は六甲山南麓の平野市街地の建築物に多大の被害をもたらした。筆者らは, 地震発生直後から建築物の被害調査を行い, 道路に囲まれた区域を調査単位として建物の倒壊率を求め, 気象庁震度階(JMA)を用いてその結果を震度(被害度)分布として表示した。この内, 木造家屋倒壊率50%以上で且つ鉄筋コンクリート建物の倒壊が多い区域を超震度7として表示した。その結果, 震度6以上の被害は, 幅1.5〜2.0 kmで, 神戸市から西宮市に到る長さ25 kmにわたって帯状(いわゆる"震災の帯"と称された)に分布し, 震度7以上の被害は, 神戸市長田区の後背低地, 中央区の三宮駅付近の旧生田川流域周辺及び東灘区〜灘区の住吉川, 石屋川流域の緩扇状地分布域に島状に分布することが分った。一方, 山側の丘陵地, 段丘や海岸平野の沖積低地では震度5で被害は小さかった。また, この"震災の帯"の中で, 大阪層群が分布する丘陵地に近いJR元町駅付近や, 現生田川流域付近の扇状地では被害は小さい傾向にあった。
著者
松岡,篤
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集
巻号頁・発行日
no.55, 2000-01-28

付加体研究における放散虫の役割について, 生層序, 古生物地理, 放散虫含有量と堆積岩の物性という観点から研究成果をレビューするとともに, 最近進めつつある検討例を紹介した.生層序学研究に基礎を置く放散虫年代学の進展により, 付加体の成長速度や成長様式について, 定量的に議論を行うことが可能となった.古生物地理に関しては, 今後この分野の研究が進展すると, 付加体形成場の相対的位置関係を議論できるようになることを指摘した.また, "熱帯度"を表現するために, VEN(Vallupus/Eucyrtidiellum Number)という指標を提案した.放散虫の含有量と堆積岩の物性という点については, 放散虫の絶滅事件により相対的に強度の弱い層準(下部トリアス系)が形成され, それが付加体形成時にデコルマ面として機能していることを例にあげた.また, 付加体研究と古海洋学研究を有機的に結びつけていくことの重要性を強調した.
著者
塩谷,由美
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集
巻号頁・発行日
no.47, 1997-04-24

幌満かんらん岩体上部には, 2つの異なるマグマチャネリング様式が認められる。斜長石レルゾライト中の苦鉄質岩タイプGBIの周囲で観察されるチャネリング様式は, 壁岩かんらん岩から部分融解メルトが抽出され, 壁岩にメルト成分の涸渇を生じた様式(1)である。もう1つは, スピネルダナイト中に貫入したウェブステライトダイクの周囲で観察される様式で, 壁岩かんらん岩の涸渇を伴わずに通過マグマから一方的にメルト成分が付加した様式(2)である。このような様式の違いは, チャネリングマグマの温度と壁岩かんらん岩のソリダス温度の差によって生じたと考えられ, 様式(1)のチャネリングマグマの温度は斜長石レルゾライト壁岩のソリダス温度よりも約80℃高かったこと, 様式(2)のチャネリングマグマの温度はスピネルダナイト壁岩のソリダス温度よりも低かったことが議論された。
著者
吉川 敏之
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.99, no.1, pp.29-38, 1993-01-15
被引用文献数
2 16
著者
村田 正文 大上 和良 蟹沢 聰史 永広 昌之
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.21, pp.245-259, 1982-04
被引用文献数
4

北上山地における古期花崗岩である氷上花崗岩類と,シルル系川内層は密接な関連をもって分布する。筆者ら(村田ら,1974:OKAMI&MURATA,1975)は,大船渡市日頃市地域の資料に基づき,氷上花崗岩類の少くともその一部"大野型花崗岩"がシルル系川内層の基盤を構成することを指摘してきた。また近年,川村(1980)により気仙郡住田町下有住奥火ノ土で,中井ら(1979MS)により同町上有住八日町で,氷上花崗岩類に属する小岩体とシルル系の不整合関係が指摘された。花崗岩とその上位に重なるシルル系基底部との間に,小規模な滑動面をもづくさやみ沢"と異なり,八日町ではアーコーズ砂岩が,奥火ノ土では,数センチメートル以下のラテライト様泥質岩をへだてて溶結凝灰岩が,何らの破断面もなく直接に花崗岩を覆う。シルル系川内層の基底相の1つである礫質アーコース砂岩は,八日町・奥火ノ土両地区にも発達し,その堆積岩々石学的な検討を行った。八日町地区のものは,日頃市地区のものと類似しアーコース砂岩であるが,奥火ノ土のものは,下位の火山岩・火山砕屑岩々片を含み不純アーコース砂岩である。粒度組成・鉱物組成からみて,日頃市地区のものと同様花崗岩風化物源で,原地性に近い堆積物であることを示している。また,数メートル以下の砂岩中での,粒度・鉱物組成の垂直変化は,その間の風化作用の進行状況を反映している。野沢ら(1975),許(1976),吉田ら(1981MS)によって指摘された,"氷上花崗岩の古生界各層への貫入"についても筆者らの見解を示した。層位学・堆積学的な諸事実により,氷上花崗岩類がシルル系川内層の基盤を構成することは,より一層確実になったことを主張する。
著者
斎藤,常正
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集
巻号頁・発行日
no.49, 1998-03-27

1960年代後半, 地球科学の新しいパラダイムとして誕生したプレート・テクトニクス説は, 海洋底は中央海嶺で生産され, 海溝で沈み込むと説明する。この説が正しければ, 大西洋の海底地殻は海嶺の中軸でもっとも若く, 中央海嶺から離れるにしたがって古くなるはずである。1968年アフリカのセネガールを出港し, ブラジルのリオディジャネイロに向かったグローマー・チャレンジャー号の第3次航海は, 南緯30°線にそって大西洋中央海嶺の東西斜面の掘削を行い, いかなる論理的な疑問をはさむ余地が無いほどに大西洋は海洋底拡大の結果生まれたことを証明した。海嶺中軸をはさんで, 東斜面の2地点, 西斜面の7地点で掘削された堆積物中の石灰質浮遊性微化石による年代決定は, 大西洋の海嶺が, それぞれの方向に年に2cmの速度で拡大していることを示した。筆者は, この歴史的な航海に参加して浮遊性微化石の年代決定にあたったが, 微化石年代法の成立までの筆者の体験を回顧しながら, さまざまな研究が一つの仮説を理論へと高めて行った過程を論じている。