著者
高橋 正樹 野口 高明 田切 美智雄
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.44, pp.65-74, 1995-11-30
被引用文献数
2

18〜12 Maの東北日本に出現するアイスランダイトは, 高K_2O量・Ce/Yb比タイプと低K_2O量・Ce/Ybの2種類に区分できる。前者は関東地方北部(茂木・大子地域)や北部阿武隈地域(毛無山)に産し, 後者は東北地方中部脊梁地域(古川〜新庄間)に分布する。周辺の苦鉄質火山岩類の化学組成との関係から, 前者はある種の下部地殻物質の部分融解によって, また後者はソレアイト質苦鉄質マグマの結晶分化作用によって生成されたものと推定される。K_2O/TiO_2比は前者で高く後者で低い。これは, 両者における初源マグマの化学組成上の違いを反映しているものと考えられる。前期中新世に生じた, マントル・プリュームの上昇による日本海の急速な拡大と日本列島の移動は, 高温でH_2Oに乏しく還元的な地殻環境と伸長応力場の発達を促し, アイスランダイト質マグマの生成に寄与したものと思われる。
著者
竹越 智 赤松 陽 山田 誠一 杉山 明 清水 正明 木元 好一 佐瀬 和義 石橋 晃睦 久津間 文隆 桂 雄三 石垣 忍 本間 岳史 上野 一夫 滝田 良基 久家 直之 川畑 昭光 関根 勇蔵 藤井 克治
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.13, pp.299-311, 1976-12-30
被引用文献数
3

The geology of the south-western region of the Tanzawa massif has remained unresearched except the horizons higher than the Pliocene series. After the writers' previous study on the geology of the crystalline schist region on the Tanzawa massif, the above mentioned area was surveyed. In this area the following formations are distributed; that is the Miocene series (so-called Misaka series) which consists largely of volcanic and pyroclastic rocks, the Pliocene series (the Ashigara group) of conglomerate and sandstone, the Pleistocene series (the Yufune formation or the Suruga gravel bed) of fluvial deposit, and the Alluvium of thick volcanic ash and river bed deposit. The Miocene series is divided, in ascending order, into the Kurokura formation, the Yozuku formation, the Hirayama formation and the Shirakurazawa member. The former three formations correspond to the westward extensions of those in the crystalline schist region, and they are superposed one upon the other conforrnably. They strike from NE to SW and dip northward, but are overturned. The Shirakurazawa member is distributed only in the surveyed area. Though it is contiguous to the Yozuku and the Hirayama formations with faults, it may be, judging from its lithofacies, the uppermost horizon of the Miocene series in this area. It strikes E-W and shows a synclinal structure as a whole. It is overturned near the northern marginal fault. The Kurokura formation and the lower part of the Yozuku formation are changed into crystalline schists with bedding schistosity. The fault, which separates the Miocene series from the Pliocene series, has been considered to be one continuous reverse fault and was named the Kannawa fault. But it may be a complex of two or three systems of fault judging from the phenomena observed at several very points and also from the geometry as a whole.
著者
SPILLMANN Franz
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.48, no.571, pp.196-201, 1941-04-20
被引用文献数
2

本化石はエクアドル國太平洋岸サンタ・エレナ半島, ラ・リベルター附近の崖に露出するデルタ堆積中の化石帶に發見さる。本化石帶の時代はPleistoceneに屬し, 筆者はβ化石帶と呼ぶ。化石帶の厚さ約50cm, アスファルトの存在により化石は茶褐色を帶ぶ。隨伴せる動物群は主として草原性にしてNeohippus・Protauchenia・Smilodon・Protolycalopex・Palaeospeothus・Palaeoodocoileus・Megathrium・Mylodon・數種の小型齧齒類・其他鰐・龜・多數の昆蟲・現棲種の鳥類・蛇・蛙等發見さる。化石は大臼齒を完全に有する左側下顎骨1個及び3個の分離せる下顎臼齒にしてCaviidae科の亞科Hydrochoerinaeに屬す。著者は本化石によりProhydrochoerus sirasakaeなる新屬新種を創れり。現生Hydrochoerus屬は水中及び濕地に棲息し, 短頭, 短躯四肢短し。齒隙は主顎に於て齒列より短し。Protohydrochoerus屬は草原性にして, 頭骨及び四肢長く, 齒隙は齒列より長し。Hydrochoerus及びProtohydrochoerusに於てはlamellaeに狹き連絡あるもProhydrochoerusは純然たるelasmodontなり。齒隙及び齒の構造より見てProhydrochoerusはHydrochoerus及びProtohydrochoerusの中間型なるべし。本稿をエクアドル・エスメラルダス州に於て調査に從事中不幸にも犠牲となりし故白坂虎吉技師の靈に捧ぐ
著者
岡田 篤正
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.15-30, 1992-12-15
被引用文献数
20

右横ずれが卓越した中央構造線活断層系は全体として直線状に延び, 地形的に明瞭に連続するが, 所々には間隙, ステップ, 屈曲部, 分岐部などの不連続部がある。この分岐のうち, とくに明瞭な横「し」の字状をなす構造については重視し, 上述の特徴に加えて, 地区毎の走向・変位速度・最新活動時期・活動間隔・地震との関係 などのMTL活断層系の諸性質を再検討して, 8セグメントと1つの不活動区域に分けた。活動的なセグメントはさらに2・3に細分される部分もあるが, こうした結果を第1図と第1表に示した。徳島県でのトレンチ調査によれば, MTL活断層系の最新活動は16世紀以降の歴史時代である。それは1596(慶長1)年大地震である可能性が大きく, 少なくともVaの部分が震源断層であったらしいが, その活動範囲はまだ詳しく判明していない。他のセグメントでも, 歴史時代の別の地震を起こした可能性が大きい。
著者
塩野 清治
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.18, pp.155-174, 1980-03-30

西南日本の地殻内地震及び地殻下地震のテクトニックな意味を,特に中央構造線(MTL)沿いの断層運動との関係において議論した。MTL沿いの断層運動の活発な部分(紀伊半島西部〜四国中部)では,地殻内における,小又は微小地震の活動が活発であり,MTLは,広い意味で,南側の地震活動域と北側の低活動域の間の境界となっている。これらの小地震によって解放される歪は,小規模なものであるため,MTLの断層運動が活発な部分のまわりに,過去1,000年の間に大地震が発生していない事実は,近い将来における大地震の発生を示す「地震の空白域」として,認識されるべきであろう。地殻下地震の分布や地震波高速度層の分布から,high-Q zoneの分布を参考しつつ,南海トラフからもぐりこんでいるフィリピン海プレートの形を推定した。その形は,MTLの断層運動と密接な関係があり,(1)断層運動の活発な所では,もぐりこむプレートのの先端は,MTLの外側にある,(2)断層運動が不活発な所では,プレートの先端は,MTLの下を横切って内側までのびているという見かけ上の位置関係がみられる。この関係は,MTLより外側の大陸プレートがMTL沿いに,内側のプレートからdecoupleするか,又は,decoupleしないかという関係におきかえて説明することができた。
著者
高橋 学
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.51, pp.127-134, 1998-03-24
被引用文献数
3

兵庫県南部地震の被災状況と表層地盤との関わりについて環境考古学の視点から検討した。その結果, 震度VIIの分布域は, 縄文海進最盛期の海域や, かつて潟湖であった地域とと密接な関わりがあることが判明した。また, 死亡者の発生場所, あるいは壊滅的に住宅が破壊された場所は, 地表面下数m以内に埋没した旧河道と密接な関わりが認められた。このような地表面下数m以内の表層地盤に関する情報は, 遺跡の発掘調査の際に得ることができる。遺跡の発掘調査を文化財保護といった観点に限定せず, 土地開発と災害の歴史を明らかにするという視点からも観ていく必要がある。ただし, 被害の集中した場所が, 住宅地として開発されていった背景には, 自然環境に関する知識の欠如だけでなく, 高度経済成長期における都市への人口集中など社会, 経済的理由が存在したと考えられる。
著者
岡田 家武
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.35, no.421, pp.559-560, 1928-10-20
被引用文献数
1
著者
窪田 安打
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1, pp.25-44, 1999-01
参考文献数
69
被引用文献数
4 5

長野県諏訪湖南西に分布する塩嶺累層をもたらした安山岩質の火山活動は, 時間とともに漸次珪長質から, より苦鉄質に変化(主要斑晶組成が普通角閃石→斜方輝石, 単斜輝石→かんらん石)するステージの4回の繰り返しからなり, 各ステージ末期を中心に, 火山活動の休止が認められる.4ステージ全体をとおして, 後期になるほど噴出物に占める珪長質な安山岩の相対的割合が増大し, 噴出物量が減少する傾向が認められる.また本調査地域では, 塩嶺累層の堆積盆地は, 北西へ傾斜し, 北西縁をアンティセティックな縦走性成長断層に境された3つの傾動盆地-小野, 上野-天神および松倉堆積盆地-が並列している.これらの堆積盆地は, 塩嶺累層堆積期間を通じて, 基盤岩の北西への傾動沈降と3つの主要縦走断層群のアンティセティックな変位が, 相補的に進行したことを物語っている.
著者
山崎 晴雄 佃 栄吉 奥村 晃史 衣笠 善博 岡田 篤正 中田 高 堤 浩之 長谷川 修一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.129-142, 1992-12-15
被引用文献数
6

中央構造線(MTL)は西南口本を南北に二分する主要な地質構造線である。この断層は第四紀における日本で最大級の右横ずれ活断層でもある。その活発な活動度にも拘らず, MTLに沿っては歴史地震の発生は知られていない。長期的な地震予知や災害アセスメントに有効な最近の地質時代における断層の運動史を知るため, 1988年の夏中央構造線活断層系の一部である西条市近傍の岡村断層でトレンチ発掘調査を行なった。5つの小トレンチとそれらを繋ぐ細長い溝で構成される調査トレンチでは, 更新世末から歴史時代までの5つの地層ユニットと, それらの顕著な断層変位が認められた。各ユニットの堆積時期は地層中に含まれる有機物試料の^<14>C年代と土器片の考古学的編年によって決定された。断層は2000年前〜4世紀に堆積したIIIb層を切り, 7世紀以降に堆積したIIIc層に覆われるので最終活動時期は4〜7世紀と推定された。この値は1984年に行なわれた同じ断層の発掘調査結果と一致する。また, これ以外の断層活動時期も地層の不整合や変形構造に基づいて識別された。