著者
内村 公大 大木 公彦 古澤 明
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.95-112, 2007-03-15
被引用文献数
1 2

鹿児島県八重山地域の地質層序を明らかにするために詳細な地質調査を行い,点在する鮮新統湖成層(郡山層)の対比を試みた.その結果,この地域に12の地層単元が識別され,郡山層は下位より厚地泥岩部層,峠砂岩部層,湯屋泥岩部層,花尾凝灰角礫岩部層に分けられた.また,郡山層堆積時に貫入した安山岩類(茄子田安山岩類)が識別され,湯屋泥岩部層中に2枚の火砕流(草木段火砕流・宮脇火砕流)が認められた.宮脇火砕流からは2.5Ma前後のK-Ar年代測定値が得られた.一方,八重山地域に分布する郡山層の珪藻化石群集として,湯屋泥岩部層最下部からStephanodiscus astraea群集,湯屋泥岩部層下部ではCyclotella michiganiana群集,宮脇火砕流を挟在する湯屋泥岩部層上部ではAulacoseira ambigua群集が認められた.火砕流と珪藻化石群集の対比から八重山地域に点在する郡山層はほぼ同時代に堆積した湖成層であることが明らかになった.
著者
佐藤 博明
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.46, pp.115-125, 1996-09-20
被引用文献数
4

雲仙普賢岳の1991年噴出物の岩石組織の3つの側面(斜長石斑晶の累帯構造, 気泡組織, 石基結晶度)について記述し, ドームを形成するデイサイトマグマの噴火の引き金, 脱ガス過程, 結晶作用についての制約条件について議論した。1つ目の側面は斜長石斑晶の累帯構造であり, それは逆累帯構造を呈するリムでMgO, FeO^*量が増加しており, 噴火直前に珪長質の斑状マグマとより苦鉄質な無斑晶質マグマの混合が生じたことを示している。雲仙普賢岳は南北張力場の地溝帯中にあり, 火山下のマグマポケットは東西方向に伸びた割れ目状の形態をとっていると考えられる。これまでに知られている室内実験によると, マグマで充たされた2つの割れ目が接近すると互いに近づいて合体する傾向があり, いったん合体すると割れ目の上昇速度は急増する。雲仙普賢岳1991年噴火の場合もマグマで充たされた割れ目の合体が, マグマポケットの上昇のきっかけとなり5月20日の溶岩ドーム出現に至ったと考えると, 1989年の地震発生-マグマ混合現象-ドーム噴出のタイミングやマグマ混合現象がうまく説明される。雲仙普賢岳ではドーム噴火が爆発的なプリニー式噴火に伴っておらず, 上部地殻でマグマの上昇速度が小さく, マグマが地表に至る前に揮発性成分の脱ガスが効果的に生じていると考えられる。雲仙普賢岳の1991年噴出物の気泡組織は多様な変形構造を呈しており, 粘性の高い溶岩の流動により気泡の変形が生じている。溶岩の含水量は気泡の変形度と関係があり, 火道中での粘性の高い溶岩の脱ガスが, 溶岩の流動により気泡の連結が促進され見掛けのガス透過率が高まったために生じた可能性が考えられる。1991年噴出物の含水量は全岩で0.2-0.5wt%であり, 1気圧での飽和含水量(0.1wt%)よりも大きい。一方, 火砕流発生を伴わなかった1792年, 1663年溶岩の含水量は0.1wt%以下である。溶岩の石基の結晶度についてみると, 1991年溶岩は20-30Vol%であり, 1792年溶岩1663年溶岩では結晶度が約50%と明瞭な違いが認められた。1991年溶岩は1792年溶岩よりも粘性が高く, 脱ガスが不十分であったために石基ガラス中の高い含水量を生じ, 結晶作用が不十分にしか進行しなかった。粘性の高い溶岩の不完全な脱ガスが溶岩の自爆性, ひいては火砕流発生の条件となっていることが考えられる。
著者
田村 糸子
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.4, pp.157-162, 2008-04-15
被引用文献数
9 4

高等学校において地学教育の機会が減少の一途をたどっている.その要因の一つは,2003年度より施行された現行の学習指導要領である.「情報」・「総合的な学習の時間」・理科の3つの総合的な選択必修科目の導入による,理科の時間数減少の中で,受験に関係の少ない地学が最も削減の影響を受けたと予想される.「地学I」の全高等学校在学者数に対する履修率は3%で,理科の7つの選択必修科目の中で最も少ない.また,地学の教員が減少していることも大きな要因の一つである.高等学校生徒数の減少に伴い教員数も削減され,地学教員退職後の補充がほとんどされてない.地学が軽んじられているのは,高等学校の教育が,進路重視,入試最優先という実情にあると考えられる.今後,教育本来の目的を取り戻し,広い視点から高等学校教育を見つめ直す必要がある.
著者
吉川 周作 山崎 秀夫 井上 淳 三田村 宗樹 長岡 信治 兵頭 政幸 平岡 義博 内山 高 内山 美恵子
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.535-538, 2001-08-15
参考文献数
20
被引用文献数
1

The explosion of a plutonium atomic bomb over Nagasaki city took place on 9 August 1945. After the explosion, a cloud formed, which passed over the Nishiyama district, where 'black rain' fell. Thus, the Nishiyama reservoir, located approximately 3 km from the hypocenter, received the heaviest radioactive fallout from the Nagasaki atomic bomb. Sediment samples were collected from the bottom of the Nishiyama reservoir in 1999 and analyzed for their ^<137>Cs, ^<241>Am and charcoal concentrations. The stratigraphic distribution of ^<137>Cs and charcoal clearly indicate that the 'black rain' horizon is recognized in the Nishiyama reservoir sediments. The 'black rain' horizon contains anthropogenic radionuclides (^<137>Cs and ^<241>Am) and charcoal in high concentrations.
著者
福田 理
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.95, no.11, pp.877-878, 1989-11-15
著者
志賀 武彦
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.38, no.453, pp.308-310, 1931-06-20

大分驗大野郡小野市村木浦鑛山の通稱「だつがたを」より産する含水砒酸鐵鑛物については先に地質學雜誌上に報告され或は毒鐵鑛或は葱臭石等と論ぜられたが、其の分析結果並びに其の屈折率等より或は含水砒酸鐵の成分を有する新鑛物ならんと假定されて現在に至つた。今囘伊藤助教授の指示により目下編纂中の日本鑛物誌第三版のために、先年工學博士高壯吉氏より好意ある提供をうけ福地、牧野兩學士の手元に保管中であつた標本、並びに其後集められた當鑛物學教室所藏の標本について測角及び分析を行つて見た。測角は V., Goldschmidt の複圓式測角器を用ひρ及び〓を測定した。其の結果は第一表の如くなり、其の形態のみから見る時には斜方完面像に屬する。ρの基準面としては底面の(001)を、〓の其れとしては假定の(100)を〓=90°00' の面とした實測値並びに其の實測値よりの計算値を示した。尚表中のnの欄は實測に用ひた面の數を表はす。表中の計算値は先づ(011)及び(120)の面より軸率の 0.,865:1:0.,972 を知り之より公式により計算したものである。其形は第一圖に示す如く錐面式の晶癖を有し、錐面上には主に晶帯 [011] の方向に無數の條線を有する。時には (011), (201)等の面上にも上記の條線に相應せる條線を見得ることがある。之等條線は各個々の微斜面の堺を表はし測角の際に於ては之等が或は散點せる、或は連續せるリボン状の反射像を與へる。之等微斜面の分布は大體晶帯 [011] 上、(111) より (211)間に、又時には晶帯 [101] 上、(111) 附近になつてゐる。結晶に (100) の面の現はれてゐるものと之を有せざるものとの二種あつて、 (100) の面を有するものにあつては常に (211) の面を有し、且つ晶帯 [011] 上に分布する結晶面群が (100) の面の現はれざるものよりも著しい。以上を綜合して球面投影圖に示したのが第二圖である。又此の鑛物の分析結果は第二表に示した。表中の計算値は葱臭石の分子式FeAsO_4・2H_2Oより計算せるもので良い一致を與へた。尚この結晶水は山本理學士の好意により熱天秤を用ひて測定することが出來た。その實驗によれば水は約攝氏二百二十度より二百五十度の間に其の全部が放出される。其の結果は結晶水の量15.,84 となり分析結果と又よく一致した。試料の異れるため先の分析表のものゝ結晶水は差を取つてゐる。以上の結果及び其の他の一般性質即ち比重、硬度、劈開等より見て木浦鑛山産の含水砒酸鐵鑛物は葱臭石であると決定して差支へないと思ふ。尚この研究の結果は近く他に詳しく報告されるであらう。
著者
松本 唯一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.58, no.682, pp.266-267, 1952-07-25