著者
植松 秀男
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.145-150, 2006-05-25
参考文献数
11
被引用文献数
3

シロヘリクチブトカメムシはさまざまな鱗翅目幼虫の捕食性天敵である.筆者は本種の天敵としての特性を評価するため,ハスモンヨトウ幼虫を餌として25℃,14L10Dの恒温器内で発育日数,生存率,産卵数,捕食数を調べた.卵~成虫の発育期間は雌雄に差はなく約32日であった.卵の孵化率は93.9%であった.若虫期(1齢~5齢)の累積死亡率は33%であった.産卵前期間は7~8日であった.卵は卵塊として2~3日に一度産下された.卵塊当たり平均卵粒数は75.4であった.一雌が産下した総産卵数の平均値は499個であった.本種の一世代当たり純繁殖率は153.8,一世代の平均時間は49.8日,内的自然増加率は0.101/日/雌と推定された.10頭の若虫集団は3~5齢のハスモンヨトウ幼虫を日当たり4~8頭捕殺した.雌雄1対の成虫は5齢(450~550mg)の幼虫を日当たり3~5頭捕殺した.これらの結果はシロヘリクチブトカメムシが有望な多食性土着天敵として働き得ることを示唆した.######The pentatomid bug, Andrallus spinidens (F.), is a polyphagous predator on lepidopteran larvae in crop fields in southern Japan. The basic life history biology of the bug was studied using a laboratory incubator with temperatureset at 25°C. The nymphs were reared in Petri dishes in groups of 10 and were fed on the 3rd-5th instar Spodoptera litura larvae. The mean development period from egg to adult was 32 d. The pre-oviposition period lasted 7 to 8 d, after which eggs were laid in batches every 2-3 d. The mean number of eggs per mass was 75.4 and the mean total number of eggs laid by each female was 499. The net reproductive-rate (Ro), mean generation time (T) and intrinsic rate of natural increase (r) were 153.8,49.8 d and 0.101/d/female, respectively. Groups of 10 nymphs attacked 4-8 of the 3rd-5th instar S. litura larvae per day. Pairs of adult pentatomids killed 3-5 of the 5th instar S. litura larvae weighing 450-550 mg each day. This study provides important life history information for using the predator A. spinidens as a possible biological control agent.
著者
矢野 栄二
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-11, 2018-02-25 (Released:2018-05-20)
参考文献数
78
被引用文献数
2 6
著者
松本 由記子 若桑 基博 行弘 文子 蟻川 謙太郎 野田 博明
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.111-118, 2014-05-25 (Released:2014-11-15)
参考文献数
19
被引用文献数
4 11

イネ害虫トビイロウンカの光応答とそれに関連する分子に関する基礎的な知見を得るために,フォトン数を合わせられるLEDを用いての誘引実験,オプシン遺伝子同定および複眼の構造解析を行った.暗箱内での粘着板を用いた実験では,一方向からの光照射の場合は365–735 nmの広い波長範囲でトビイロウンカの誘引が見られた.また,両方向から等フォトンの光を照射した場合,選好性は 365 nm=385 nm>470 nm=525 nm>白色LED=590 nm>660 nm>735 nm>850 nm の順に有意に高かった.トビイロウンカ複眼の分光感度は520 nmに高いピークと360 nm にそれより低いピークが見られ,660 nm以上の長波長に対しての光受容感度は非常に低かった.トビイロウンカの光受容遺伝子は,長波長オプシン1種とUVオプシン遺伝子2種が見つかった.長波長オプシンは複眼の全体と単眼で,UVオプシン1は触角周縁部の下側で,UVオプシン2は複眼の全体で発現していた.ウンカ複眼の個眼は少なくとも8個の視細胞からなっていた.
著者
安藤 健 井上 良平 前藤 薫 藤條 純夫
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.201-210, 2006-08-25
参考文献数
13
被引用文献数
1 10

ハスモンサムライコマユバチMicropliis manilaeは熱帯・亜熱帯に広く分布するものの国内では未記録種であったが、著者らは本種が沖縄本島でハスモンヨトウ幼虫に寄生していることを見いだした。本種が単寄生性の内部寄生蜂であることを確認した上で、産卵一発育に及ぼす温度の影響を検討した。本種は、ハスモンヨトウの1-4齢には寄生し、幼虫の摂食を大幅に抑制したが、卵、終齢前齢(5齢)および終齢幼虫にはほとんど寄生できなかった。15℃から30℃までの恒温条件下での発育比較から、本種の卵から羽化までの発育零点は11.5℃、有効積算温度は217.4日度と算出された。産卵と寄生成功は15℃の恒温下では大幅に低下したが、1日の内8時間あるいは12時間を10あるいは15℃にしても、日平均温度が15℃になるように飼育すれば、そのような支障は消失した。1頭の雌成虫は、20-30℃では、2週間に渡って300個以上の卵を産み、産卵させなければ、15℃では60日間生存した。温度に対する本種の発育や増殖能力への影響を、ハスモンヨトウの幼虫寄生蜂であるギンケハラボソコマユバチと比較した。
著者
本間 健平
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.305-309, 1988-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

1) キボシマルトビムシ(Bourletiella hortensis FITCH)の食性をテンサイ7品種と他の植物12種に対する摂食試験および顕微鏡による消化管の観察によって検討した。2) 本種はキウリの子葉には多数の食痕をつけ,コマツナ,ハツカダイコン,スカシタゴボウ,ハコベはわずかに食害したが,テンサイの稚苗はほとんど食害せず,ホウレンソウ,ニンジン,シュンギク,レッドクローバ,タニソバはまったく摂食しなかった。3) 消化管の観察の結果,本種の食物の範囲はかなり広く,顕花植物の稚苗の他に,花粉,菌糸,菌の胞子,蘚類などを含むことが判明した。4) 以上の結果から,本種はウリ類やアブラナ科野菜の害虫になる可能性はある。しかしテンサイに対しては,他の害虫による食痕を拡大するような二次的な加害を除いては,健全な組織を積極的に食害する可能性は少ないのではないかと考察した。
著者
北岡 茂男
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.161-167, 1971-09-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
22
被引用文献数
2 3

マダニ類のマダニ科成ダニの吸血成長過程,またはヒメダニ科の若・成ダニの吸血時における体液浸透圧調節機能の違いを明らかにするため,主要陰イオン成分であるCl-につき宿主血液,ダニ体液,唾液,基節液,尿,体内での各含有量を比較し,その値の浸透圧調節機能における意義につき検討した。1) マダニ科のフタトゲチマダニ,オウシマダニはその吸血過程を通じ,またヒメダニ科のツバメヒメダニ,O. moubataはそれらの発育段階や吸血条件などの著しい相違にもかかわらず,宿主のそれより常に高い100∼160meq/lのほぼ恒常の体液Cl-濃度値を保った。2) 唾液Cl-濃度は以上の種類と条件下において体液のCl-濃度に依存しほぼ同等か,それよりわずかに高めの値であった。3) マダニ類におけるマルピギー管は,昆虫類と比較してCl平衡の上では二次的器官であると言える。4) 体液浸透圧の恒常性を保つための余剰水分と塩分の処理は,マダニ科ダニでは主として唾液分泌による宿主への還元により,ヒメダニ科ダニでは基節器官からの分泌により行なっており,吸血期間の長短を主とする吸血習性や吸血機構の相違と明らかに関連性があるものと考えられる。
著者
諫山 真二 鈴木 岳 仲井 まどか 国見 裕久
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.49-57, 2011-05-25 (Released:2011-09-02)
参考文献数
20
被引用文献数
1 5

イチゴやシソを食害しているハスモンヨトウでBacillus thuringiensis製剤(以下,BT剤)の効果が低下することが知られている.本現象は植物中に含まれるポリフェノール化合物が引き起こしているものと推察されている.そこで,本研究では各種ポリフェノール化合物がBT剤の殺虫活性にどのような影響を及ぼすのか調査した.まず始めに代表的なポリフェノール化合物であるタンニン酸と没食子酸がBacillus thuringiensis serovar aizawai製剤(以下,BT剤)のハスモンヨトウ幼虫に対する殺虫活性に及ぼす影響を調査した.次に,イチゴ,シソの葉に含まれる各種ポリフェノール化合物を同定,定量するとともに,これら同定されたポリフェノール化合物がBT剤の殺虫活性に及ぼす影響について調査した.BT剤に所定濃度のタンニン酸あるいは没食子酸を添加し,ハスモンヨトウ3齢幼虫に経口投与したところ,タンニン酸の添加は濃度依存的にBT剤の殺虫活性を低下させたが,没食子酸の添加はBT剤の殺虫活性に影響を及ぼさなかった.イチゴ,シソに含まれるポリフェノール化合物を調査した結果,イチゴではエラグ酸,カテキン,ケルセチン,フェルラ酸,p-クマル酸,シソではルテオリン,アピゲニン,オイゲノール,ロスマリン酸,フェルラ酸,p-クマル酸が同定された.BT剤に所定濃度の同定されたポリフェノール化合物試薬を添加し,ハスモンヨトウ3齢幼虫に経口投与したところ,カテキン,ケルセチン,ルテオリン,アピゲニン,ロスマリン酸およびp-クマル酸の添加は濃度依存的にBT剤の殺虫活性を低下させたが,エラグ酸,オイゲノールおよびフェルラ酸の添加はBT剤の殺虫活性に影響を及ぼさなかった.殺虫活性阻害作用の認められたポリフェノール化合物の内では,ロスマリン酸の低下効果が最も高く,次いでカテキンであった.以上の結果から,イチゴではカテキンが,シソではロスマリン酸がBTa剤の殺虫活性低下をもたらす主要なポリフェノール化合物であることが示唆された.
著者
古田 公人
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.121-126, 1972-09-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

潜伏発生の昆虫個体群に働く環境抵抗を,接種によって人為的に野外に構成した個体群を解析することにより検討した。1971年,札幌市豊平区美園の林業試験場北海道支場樹木園に接種したマイマイガ個体群は,3齢末期から始まったカラフトスズメなどの鳥の捕食によってほぼ絶滅するほどまでに減少した。捕食は多くの鳥で観察されているように,最初は木1本あたりの生息数に無関係に生じたが,その後すぐに密度依存的となり,接種をくり返えして幼虫を追加すれば,6齢までそのまま密度依存的に経過した。鳥による捕食以外にブランコサムライコマユバチ,ヤドリバエの1種による寄生が認められたが,それらは量的にも少ないうえに,鳥の捕食のあとに死亡をひき起こすため重要な要因とは考えられなかった。
著者
韋 秉興 桜井 宏紀 土田 浩治
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.117-121, 2001 (Released:2003-03-25)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

Development of artificial diets was studied for larvae and adults of the alfalfa weevil, Hypera postica Gyllenhal. The artificial diets for larvae and adults were used for 3–4 days without replacement, and preserved 2 months without decay at 4°C. The rate of adult emergence reached 14.6% on the larval diet, but was significantly lower than that of control diet (fresh alfalfa leaf). The adults fed actively and oviposited well on the adult diet with no significant difference in the number of eggs deposited and their hatchability between females on artificial and control diets. We successfully reared through two generations with the artificial diets for larvae and adults.
著者
釜野 静也
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.285-286, 1978-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
3
被引用文献数
4 9