著者
大津 正英
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.37-42, 1967-06-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

1963年9月から1966年4月まで,トウホクノウサギの毛色変化を起こす要因と,更にその要因の詳細を研究し,次の結果を得た。1) 白変期に入った動物に,蛍光燈を1日に12時間以上照射すると,白変がほとんど停止し,褐変期に入ろうとする動物を暗室に入れ,これに1日10時間蛍光燈を照射すると,褐変はほとんど進まない。2) 毛色変化の遅速は,蛍光燈の照射時間の長短とほぼ一致し,長いほど褐変を促進し,白変を抑制する。したがって毛色変化を起こす最も重要な要因は,日照時間とみられる。3) 毛色変化は,環境温度・周囲の白色または褐色にほとんど影響されない。
著者
鷲塚 靖 日巻 茂美 楠美 明男
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.150-152, 1986

昆虫類58種(台湾産15種,日本産43種),土壌動物,小動物17種(台湾産8種,日本産8種,台湾・日本産1種)に含まれるカリウム,カルシウム,マグネシウム,ナトリウムの含量について調査した。その結果,4元素の含量と分布は昆虫の食性や系統分類学上における顕著な有意差がみられず,土壌動物,小動物のそれらについても同様な結果になった。また,これらの4元素の生態系における移動と分布はリン,窒素のそれらと著しく異なっていた。
著者
金子 武 一戸 稔
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.165-174, 1963-09-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

1. 茶樹に寄生する線虫の種類を,全国各地の茶園土壤について調査した。その結果つぎの7種がかぞえられ,各種類に対し形態的記載を与えた。Helicotylenchus dihystera Helicotylenchus erythrinae Hemicriconemoides kanayaensis Meloidogyne incognita var. acrita Paratylenchus curvitatus Pratylenchus loosi Tylenchorhynchus nudus2. 線虫の土壤中垂直分布は,Hemicriconemoides, Paratylenchusは比較的深部(30cm内外)に,Pratylenchus, Helicotylenchusは比較的上層(10cm内外)に多い。また,全般的に畦の西側では東側よりも生息数が多い。3. Hemicriconemoidesの寄生状況を観察した。Pratylenchusは根および根辺土壤の両者より検出される。4. Hemicriconemoidesの発生消長について調査した。土壤から検出されるHemicriconemoidesの大部分は雌成虫で,雄は年間を通じきわめて少ない。幼虫の占める割合は7月に最高となる。雌の蔵卵数は通常14∼15粒である。6∼7月の室内観察では,Hemicriconemoidesの卵期間は15∼20日である。またHemicriconemoidesの産卵状況を観察した。5. 窒素肥料を多用した園では,Hemicriconemoidesの密度が減少し,Paratylenchusの密度が増大する傾向がみられる。6. Hemicriconemoidesの天敵としての藻菌類の寄生状況について観察した。
著者
細田 昭男 浜 弘司 鈴木 健 安藤 幸夫
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.83-90, 1993
被引用文献数
1 8

1988∼1990年に広島県立農業技術センター(東広島市八本松町)内にアブラムシ類が移出・入のできない小型ハウスを組み立て,ナズナ,オオイヌノフグリとムクゲの3種の冬寄主植物上で越冬したワタアブラムシ個体群のナスとキュウリの夏寄主植物に対する選好性と各寄主植物上で増殖した個体群のフェニトロチオンに対する感受性を検討した。<br>1) ナズナ,オオイヌノフグリなどの冬寄主植物で越冬した個体群の中には,ナスを選好するタイプとキュウリを選好するタイプが存在し,地域や年次によって,一つのタイプが優占する場合と,二つのタイプが混在する場合が認められた。<br>2) ナスとキュウリに寄生した個体群をそれぞれナズナとオオイヌノフグリ上で越冬させると,翌春にはナス由来の個体群はナスを,キュウリ由来の個体群はキュウリを選好した。<br>3) 卵越冬すると考えられている越冬寄主植物のムクゲに寄生した個体群も,春にはナス由来の個体群はナスに,キュウリ由来の個体群はキュウリに選好性を示した。<br>4) ナス由来とキュウリ由来の個体群をそれぞれナズナ,オオイヌノフグリとムクゲの冬寄主植物で越冬させ,翌春ナスとキュウリ上で増殖した個体群のフェニトロチオンに対する感受性は,ナス個体群では高くキュウリ個体群は低く,両個体群間で薬剤感受性は異なった。<br>5) 以上の結果から,ワタアブラムシの中にはナスとキュウリをそれぞれ選好するタイプが存在し,越冬寄主植物上では二つのタイプが混在していても,春∼秋の間もそれぞれの寄主選好性は維持されることが示唆された。そして,このことがナス科とウリ科作物寄生個体群の有機リン剤感受性の差異を維持している大きな要因と考えられた。
著者
昆野 安彦
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.25-32, 2006-02-25
被引用文献数
1 3

大雪山国立公園の白雲岳(2,240m)高山帯においてウラジロナナカマド,ウコンウツギ,チシマノキンバイソウに訪花したハエ目とハチ目の多様性を調べた.その結果,全調査の合計で9科35種317個体のハエ目とハチ目が得られた.内訳はハナアブ科が21種204個体,オドリバエ科が1種7個体,クロバエ科が1種2個体,ハナバエ科が2種52個体,ヒメハナバチ科が2種5個体,コハナバチ科が1種19個体,ミツバチ科が3種17個体,ハバチ科が2種4個体,コンボウハバチ科が2種7個体で,人雪山高山帯では訪花昆虫としてハエ目が優占し,とくにハナアブ科が種数,個体数ともに優占していることが明らかになった.高山植物別に見ると,ウラジロナナカマドとウコンウツギではハナアブ科が優占していたが,チシマノキンバイソウではハナバエ科が優占していた.種多様度(1/D)はウコンウツギが9.7でもっとも高く,ウラジロナナカマドとチシマノキンバイソウではそれぞれ7.2と3.9であった.高山植物間の種構成の類似度指数(QS)はウラジロナナカマドとウコンウツギでは0.71と高い値を示したが,ウラジロナナカマドとチシマノキンバイソウでは0.28,ウコンウツギとチシマノキンバイソウでは0.32とそれぞれ低い値を示した.ウラジロナナカマドについては赤岳(2,078m)でも調査を行ったが,白雲岳との種構成の類似度QSは0.55であり,同種の花であっても調査地点が異なると訪花昆虫の種構成が異なることが明らかになった.大雪山高山帯への侵入が警戒されているセイヨウオオマルハナバチについては採集も目撃もできなかった.
著者
古 徳祥 伊藤 嘉昭
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.228-231, 1982
被引用文献数
1

名古屋大学構内の大型アミ室で集団マーキングによって,ツマグロヨコバイの雌成虫の寿命を調べた。第1世代の平均寿命は羽化からマークまでの期間(平均約2日)を除き,高田産9∼11日,筑後産5∼8日であり,第2世代の平均寿命は高田産18∼35日,筑後産15∼17日であった。地域による差は見られなかった。最長記録は第2世代の84日であった。両世代の成虫は40∼50日間にわたり共存した。
著者
潮 新一郎 吉岡 謙吾 中須 和俊 脇 慶三
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-9, 1982-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
21
被引用文献数
4 20

奄美群島のミカンコミバエの防除は,メチルオイゲノールを利用した雄除去法により,1968年に開始され,1974年から同群島全域の一斉防除を行った。防除は,テックス板,木綿ロープ,綿棒の素材にメチルオイゲノールと殺虫剤の混合剤をしみ込ませて,航空散布および地上吊り下げにより定期的に実施した。その結果,1976年以降発生はほとんど認められなくなったので,1977年から1979年まで根絶確認のための調査を実施した。本調査は,寄主果実に対する調査を主体とし,トラップ調査を補助的手段として行った。1977年には,喜界島および奄美大島について実施したが,わずかながら本種の発生が認められ,まだ根絶されていないことが判明した。1978年には,喜界島,奄美大島および徳之島について,30万個以上の果実調査と,118個のモニタリング・トラップによる14回の成虫回収調査を実施し,1979年には,沖永良部島および与論島について,83,000個の果実調査と,30個のトラップによる17回の成虫回収調査を実施した結果,ミカンコミバエは全く認められず,根絶を確認した。
著者
Kenji Matsuura Norimasa Kobayashi
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
Applied Entomology and Zoology (ISSN:00036862)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.241-246, 2007 (Released:2007-07-13)
参考文献数
26
被引用文献数
12 33

Facultative parthenogenesis, or condition-dependent alternation of sexual and asexual reproduction, is widespread in animals. Parthenogenesis enables unmated females to reproduce and thus has a great adaptive significance, especially under low pairing efficiency. In the termite Reticulitermes speratus Kolbe, females that fail to pair with males found colonies cooperatively with partner females and reproduce parthenogenetically. We compared the quality of parthenogenetic and sexual eggs in terms of size, hatching rate, and hatching period. We developed a method to culture isolated eggs until hatching under sterile conditions and in appropriate humidity. We successfully isolated, sterilized, and maintained the eggs on agar plates containing 200 ppm tetracycline. Females of female-female (FF) pairs began to lay eggs at the same time as those of female-male (FM) pairs. Nevertheless, the parthenogenetic eggs were significantly larger than sexual eggs. While the two types of eggs had similar hatching rates, parthenogenetic eggs had longer hatching periods (36.36±0.16 [SE] days) than sexual eggs (34.95±0.12 SE). We conclude that primary queens invest more resources into each parthenogenetic egg than each sexual egg, and that parthenogenetic eggs are as viable as sexual eggs.
著者
内藤 篤
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.159-165, 1960
被引用文献数
5

シロイチモジマダラメイガは広く世界の熱帯,亜熱帯,温帯地方に分布し,本邦では九州,四国および本州の中国,東海近畿,北陸,関東に分布し,一部は東北南部太平洋沿岸地帯にも及んでいる。しかし九州および西南暖地の平坦部を除いては発生が少ない。本種の分布北限帯は,仙台平野の南部太平洋岸に始まって海岸沿いを南下し,関東地方の北部山ろく地帯を通り,本州の中部山岳地帯をう回して北陸に達し,反転して富山平野の山沿いを東北に進み,越後平野の北部あたりから日本海に抜ける。<br>本邦におけるシロイチモジマダラメイガの分布北限界の指標として,年平均気温11.5∼12.5°C等温帯および夏期平均気温(5∼10月)18.5∼19.5°C等温帯をあげることができる。しかし分布限界を大陸にまで延長して考えるならば,後者のほうがより適合性が高いようである。<br>マメシンイガは極東地域の寒帯,亜寒帯および温帯に分布する。本邦では北海道,本州,四国の全域および九州の一部に分布し,北海道および本州の東北,北陸,関東東山,山陰地方では発生が多いが,それ以南の暖地の平坦部や九州では少ない。また種子島以南の諸島では本種の存在が確認されておらず,おそらく九州本島が南限のように思われる。<br>以上のような両種の発生分布の状態から,明らかにマメシンクイガを北方系,シロイチモジマダラメイガを南方系の害虫とみることができる。両種は東北の南部から九州に至る広範囲にわたって混在し,関東,東海近畿,山陽および四国地方では両種の勢力はほぼ等しい。しかし総体的にみた場合は,本邦においてはマメシンクイガのほうが優勢である。
著者
阿久津 喜作
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.56-62, 1971-06-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
18
被引用文献数
2 3

1) 顆粒病ウイルスを散布したキャベツに産みつけられたモンシロチョウは,ふ化してから6日&8日後に2令または3令で最も多く死亡した。葉の表面に散布した場合よりも,表・裏両面に散布した場合に死亡する令が早かった。2) キャベツ畑に顆粒病ウイルスを散布してから6日後と12日後に調査したところ,モンシロチョウの虫数はり病虫発生のため激減し,被害度も無散布と比較して明らかな差が認められた。3) 顆粒病ウイルスとディプテレックス50%乳剤,エンドリン50%乳剤の混合散布では,殺虫剤の効力が失なわれた後でも,顆粒病ウイルスの感染力が保持されていて,虫の密度を低くおさえる効果があった。
著者
内山 徹 小澤 朗人
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.109-117, 2017-05-25 (Released:2017-06-18)
参考文献数
45
被引用文献数
5

We investigated the inheritance of resistance to diamide insecticides, flubendiamide, and chlorantraniliprole in the smaller tea tortrix, Adoxophyes honmai Yasuda, using resistant(R)and susceptible(S)strains obtained from Shizuoka Prefecture, Japan. Lethal concentration 50(LC50)values for flubendiamide in the R and S strains were 129 and 3.26 ppm, respectively. LC50 values for chlorantraniliprole in the R and S strains were 48.2 and 1.33 ppm, respectively. The results of crossing experiments showed that resistance to the two diamides was an autosomal incompletely dominant trait controlled by polygenic factors.
著者
水田 国康
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.146-152, 1960-09-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
8
被引用文献数
9 15

チャドクガもマイマイガも卵は卵塊として産付されるがその幼虫の習性は異なり,チャドクガの幼虫は終齢に達するまで密接に集合し集団的に行動するが,一方マイマイガはこのような集合性は示さない。両種の室内での飼育によると,チャドクガでは集団の個体数が少ないほど死亡率が高く,幼虫期間も長くなり,脱皮回数も多くなった。また集合飼育の幼虫を各齢期に1頭に分離した場合にも,早い齢期に隔離したものほど死亡率が高く,幼虫期間も増加する傾向があった。ことに若齢(1∼3齢)期に隔離したものは発育を完了することができなかった。しかしさなぎ期間,終齢幼虫の頭幅,さなぎ体重,蔵卵数については,集団の大小あるいは隔離齢期による差は認められなかった。マイマイガでは,幼虫期間,さなぎ期間,幼虫の頭幅,さなぎ体重および蔵卵数などは1頭区において最大になり,容器あたりの個体数が増加するにしたがいこれらは減少する傾向が認められた。しかし幼虫期間は中間区で最小となった。
著者
徳田 誠 湯川 淳一 井村 岳男 阿部 芳久 Keith M. Harris
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.185-188, 2009-11-25 (Released:2009-12-16)
参考文献数
26
被引用文献数
5 8

In June 2005, an unidentified species of Dasineura (Diptera: Cecidomyiidae) that induced leaf-fold galls on cultivated roses was found in a greenhouse in Heguri, Nara Prefecture, Japan. Similar Dasineura species have been known to occur in Japan on two wild roses, Rosa multifolia and R. rugosa. In Europe, rose leaf midge, Dasineura rosae, induces leaf-fold galls on both cultivated and wild roses. In order to confirm the phylogenetic relationship among Rosa-associated Dasineura species, we analyzed a partial region of the mitochondrial DNA cytochrome oxidase subunit I (676 bp) gene. The nucleotide sequence of the Dasineura species collected from cultivated roses in Nara was identical to that of gall midges that induced leaf-fold galls on wild R. multiflora in Nara and Kyoto Prefectures, Japan. However, D. rosae and Dasineura sp., which are associated with R. rugosa, were phylogenetically distinct from them. This indicates that the Dasineura sp. associated with wild R. multiflora has invaded the greenhouse in Nara Prefecture and infested the cultivated roses.