著者
笹川 滿廣 塩澤 幸雄
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.55-60, 1979-05-25
被引用文献数
1

京都府下夜久野町のクリ園(筑波5年生植栽)で, クリイガアブラムシの発生消長と移動及び分散との関係を調査し, 以下の結果を得た。1.幹母→普通型(5世代)→産性型→有性型の計8世代を経過する。2.発生消長には2つの型がある。ひとつは樹皮上の幼虫が, 6月下旬ごろからきゅう果へ第1次移動を行った後に増殖して高密度に達するもので, 他は8月中旬ごろまでほとんど寄生が認められないのに第2次樹内移動及び樹間分散後に急増するものである。当然, 若はぜによる被害は前者に大きく, 後者ではほとんど認められない。3.第2次移動は8月下旬から9月中旬にかけて, 主として1令幼虫によって行われ, かなり大視模な樹内・樹間の分散が起こる。ただし, 1令幼虫の推定歩行距離や各樹の寄生きゅう果率変動からみて, 樹間分散は広域に拡がるのではなくて狭い範囲にとどまる。
著者
五箇 公一 岡部 貴美子 丹羽 里美 米田 昌浩
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.47-50, 2000-02-25
被引用文献数
11 36

The endoparasitic mite Locustacarus buchneri Stammer 1951 (Podapolipidae) was found in commercially introduced colonies of the European bumblebee, Bombus terrestris. The average infestation rate of colonies (n=367) from the Netherlands and Belgium was 20%. Urgent investigation of the infectivity and pathogenicity of this mite to Japanese native bumblebees and the geographic distribution of this mite in Japan is required.
著者
小出 哲哉 山田 佳廣 矢部 和則 山下 文秋
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.19-26, 2008-02-25
被引用文献数
3

温室施設開口部(窓,出入り口)にセイヨウマルハナバチ逃亡防止用ネットをいくつかの方法で展張し,その効果の検証を行うとともに,不十分な場合はその対策を提示した.ガラス温室とシクスライト温室の窓の場合には,どの方法でも,ネット展張および窓周辺にできる隙間をスポンジ,テープ,充填材で塞ぐことによって,完全に逃亡防止ができた.パイプビニルハウスの窓にネット展張する場合は,パイプの上にネット,ビニルの順で張り,ネットをパイプの外側に留めることによって逃亡防止ができた.しかし,ネットをパイプの内側に張り,内側で留めた時は逃亡防止ができなかった.出入り口については,ネットの重ね合わせ方式で展張した時は,前室を付けても防止効果は完全ではなかった.一方,出入り口をチャックのついたネットで展張した場合,完全に逃亡を防ぐことができた.また,換気扇からの逃亡が,作動,非作動時に拘らず起こったため、換気扇にもネット展張が必要であった.一方,吸気口からの逃亡はなかった.これらのことから,施設開口部にネット展張を行うことによりマルハナバチの逃亡防止が可能であることが分かったが,そのためには,きめ細かい点検が必要であることが示された.
著者
石本 万寿広
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.107-114, 2007-05-25
被引用文献数
1 11

登熟期のイネにおけるアカヒゲホソミドリカスミカメ幼虫の発育に対するイネの登熟段階と割れ籾発生の影響を明らかにするため,割れ籾が多い品種「わせじまん」と割れ籾が少ない品種「コシヒカリ」を用いて,出穂日,出穂10日後,出穂20日後,出穂30日後の各登熟段階のイネに1齢幼虫を放飼し,放飼10日後の生存個体数と被害粒数,割れ籾数を調査した.割れ籾数は,出穂日は0,出穂10日後はわずかであり,幼虫生存率は,出穂日は高く,出穂10日後は低かった.出穂20日後, 30日後では年次による変動はあったが,「わせじまん」で幼虫生存率が高く,割れ籾数も多かった.出穂20日後, 30日後の被害粒数と幼虫生存率の間には有意な正の関係が認められ,幼虫の発育には玄米の吸汁が密接に関係していると考えられた.この被害粒のほとんどは割れ籾であり,割れ籾数と幼虫生存率の間には有意な正の関係が認められたことから,玄米の吸汁は主として割れ籾からであり,幼虫発育には割れ籾の発生が密接に関係していると考えられた.割れ籾の発生時期・発生量が水田における幼虫発生量の変動要因の一つである可能性が示唆された.
著者
津田 勝男 山下 紘平 坂巻 祥孝 櫛下町 鉦敏 青木 智佐 飯山 和弘 岡田 斉夫 河原畑 勇
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.119-122, 2005
被引用文献数
2

長期間保存されたNPVについて、その病原性を確認するためにハスモンヨトウ幼虫により生物検定を行った。多角体を水に浮遊して4℃の条件下で24年から34年間保存した7種類のNPVウイルス株を供試した。この結果、6種類のウイルス株が病原性を保持していることが確認された。病原性が確認された各ウイルス株のLC50値(PIB/ml)は、ハスモンヨトウNPV福山株は5.5-6.1×10(5)、ワタヨトウNPVエジプト株は6.1-8.6×10(5)、ヨトウガNPV芸北株は1.5-2.0×10(9)、ヨトウガNPV東京株は1.9-4.3×10(8)、シロモンヤガNPVは3.9-4.7×10(8)、アワヨトウNPVは3.6-5.7×10(7)で、24年から28年間の長期保存の間に病原力は低下したが、病原性が残存していることが明らかになった。一方、保存期間が34年であったクサシロキヨトウNPVでは病原性が消失していた。また、長期間の保存によって病原力が低下した場合でも、再接種を行い虫体によりウイルスを増殖させることによって病原力が回復することが確認された。
著者
橋本 健一 飯島 和子 小川 賢一
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.201-206, 2008-11-25 (Released:2009-03-18)
参考文献数
23
被引用文献数
1

The photoperiodic response curve for pupal diapause induction of the white cabbage butterfly, Pieris rapae crucivora Boisduval was determined in several populations of the Japan Archipelago. Larvae were reared under different photoperiods ranging from 8L16D to 16L8D at 20±0.5°C. The critical photoperiods for pupal diapause induction were 14 h 40 min for the Iwamizawa population (43°10′N), 13 h 15 min for the Sendai population (38°15′N), 13 h 10 min for the Nagaoka population (37°23′N), 12 h 08 min for the Okayama population (34°39′N), 11 h 50 min for the Matsuyama (33°50′N) and Kagoshima (31°35′N) populations and 11 h 15 min for the Naze population (28°23′N). The critical photoperiod increases as latitude increases. This result suggests that adaptation to a cool climate in a higher latitude region shifts the critical photoperiod for pupal diapause induction towards a longer range. The developmental zero for the larval stage in the Sapporo (43°03′N) and Matsuyama populations was calculated as 9.8°C and 9.6°C for the larval stage, respectively. These results are discussed in relation to seasonal adaptation for each population.
著者
中村 好男
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.164-168, 1967-12-25
被引用文献数
2 3

陸生ミミズとその生息環境である土壌との関係を明らかにするため,札幌付近の火山灰土,沖積土および泥炭土の各草地で,1966年5月から11月までの7か月間,毎月2回(11月だけ前半のみ1回),陸生ミミズの種類,5%ホルマリン固定標本の湿重量(現存量)および個体数を調査した。<br>調査はそれぞれの草地を周囲2mを除き6列9行計54の長方形区(1辺が5∼9m)に分け,各列から1区ずつ合計6区を毎回無作為に抽出して,各区から表面積25cm×25cm深さ30cmの直方体に土壌をとり,Hand-sortingによってミミズを取り出し,次の結果を得た。<br>1) 採集された陸生ミミズは,ツリミミズ科の2属3種とフトミミズ科の1属4種であった。<br>2) 三つの土壌型に共通な種類は一つもなかった。<br>3) 二つの土壌型に共通なものとして,火山灰土と沖積土には,サクラミミズ<i>Allolbophora japonica</i>が,火山灰土と泥炭土にはムラサキツリミミズ<i>Dendrobaena octaedra</i>が見られ,いずれの種類も両種の土壌において,成体,未成体ともにやや似た個体数の増減傾向を示していた。<br>4) サクラミミズは両種の土壌において,個体数は50%以上を占めていた。<br>5) 種類数は火山灰土で5種,沖積土で6種,泥炭土では1種であった。<br>6) 個体数の多い順は泥炭土,沖積土,火山灰土であり,現存量の多い順は沖積土,泥炭土,火山灰土であった。<br>7) 火山灰土と沖積土では個体数,現存量とも秋に多かった。泥炭土では個体数,現存量ともに5月,8月および10月に多かった。<br>8) 一般に泥炭土では種類数が少なく他の土壌では多いと言われていたが,今回の調査でもその事実が認められた。
著者
富樫 一巳
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-8, 1989-02-25
被引用文献数
4 30

マツノマダラカミキリは1年または2年かかって羽化する。その発育の相違を産卵時期の異なる個体群を用いて調査した。その結果,6, 7月に産卵された個体群では,11月までに多くの個体が4齢幼虫になって材内蛹室のなかにいた。翌春それらは再摂食せずに6月までに蛹化した。8月に産卵された個体群では,11月に3齢幼虫(60∼70%)または4齢幼虫(30∼40%)になるが,それらの30∼50%の個体しか材内蛹室を作らなかった。翌春,10∼40%の幼虫が再摂食した。そして,90%以上の個体が産卵の翌年に羽化した。9月に産卵された個体群は11月になっても1∼3齢幼虫であり,かなりの幼虫が靱皮部にいて摂食を続けていた。翌春幼虫は摂食を再開し,海岸林の場合60%の個体がその年に羽化したが,山地林の場合6%の個体しか羽化できなかった。発育に2年を要する個体は,産卵された年に1, 2齢幼虫で越冬し,翌年に3, 4齢幼虫まで発育して再び越冬し,その翌年に羽化した。最後に,本種の生活史の調節機構に関する仮説を提出した。
著者
田中 学 井上 晃一
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.39-45, 1962-03-30

わが国の球根の生産上,また輸出のうえにも大きな障害になっているネダニに対し,適確な防除法を確立する目的で防除上必要な生態の研究および殺虫試験を実施した。防除について検討した結果は次のとおりである。<br>1 ユリほ場における球根ネダニの発生消長は,高温で降水量が特に多い時期に増殖が盛んになる傾向が認められた。それ以外の時期は一般にネダニの発生は著しくない。<br>2 球根内のネダニの生息部位を見ると,り病箇所の多い外側部が最も多く,次いで発根部,中間部,中心部の順となっている。<br>3 ネダニの発生と腐敗病との関係については,ネダニの加害のほうが二次的であると考えられる。<br>4 球根の掘り取り直後または植え付け前に球根を薬剤に浸漬処理した結果,浸透殺虫剤およびパラチオンを45°Cに加温浸漬した場合がネダニに対し最も効果が高い。しかし無加温で浸漬した場合は若干効果が低く,また浸漬時間を長くしても効果にほとんど差が認められない。<br>5 くん蒸処理ではメチルブロマイドが最もすぐれている。<br>6 浸漬処理およびくん蒸処理したユリ球根をほ場に植え付け,発芽およびそののちの生育状況を見たが薬害は認められない。しかしナイメットの粉衣は発芽障害が著しい。<br>7 ユリの立毛中における浸透剤の葉面散布および土壌灌注はネダニに対しほとんど効果がないようである。
著者
永井 一哉 平松 高明 逸見 尚
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.300-304, 1988-11-25
被引用文献数
12 26

ミナミキイロアザミウマの天敵としての<i>Orius sp.</i>の有効性を明らかにするため,ミナミキイロアザミウマが発生するポット栽培のナスに<i>Orius sp.</i>を放飼し生息密度に及ぼす影響を調査した。<br>1) ミナミキイロアザミウマのみ発生がみられるナスにMPP乳剤を散布した場合,ミナミキイロアザミウマの生息密度は'無散布区と比較してやや抑制された。しかし,<i>Orius sp.</i>とミナミキイロアザミウマを放飼したナスにMPP乳剤を散布し,<i>Orius sp.</i>の生息密度を低下させると,無散布区に比較してミナミキイロアザミウマの生息密度はきわめて高まった。<br>2) ミナミキイロアザミウマが葉当り約60匹発生する本葉7.5葉展開したナスの育苗ポットにケージを被せ,そのなかに<i>Orius sp.</i>の成虫1匹と老齢幼虫5匹を放飼すると,ミナミキイロアザミウマの生息密度は放飼6日後から低下し始め,13日後には無放飼の60分の1に当たる葉当り0.3匹まで減少した。<br>3) 以上の結果,<i>Orius sp.</i>は,ミナミキイロアザミウマの生息密度を低下させることができる有力な天敵のひとつであると判断された。
著者
西東 力 池田 二三高 小澤 朗人
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.127-133, 1996-05-25
被引用文献数
12 37

マメハモグリバエの生物的防除法を開発する一環として静岡県における寄生バチの発生実態を調査し,あわせて各種殺虫剤の散布が寄生バチに与える影響を圃場試験で検討した。<br>1) マメハモグリバエの寄生バチは各地の露地および施設栽培圃場から採集されたが,殺虫剤の散布後まもない圃場からはほとんど採集されなかった。<br>2) マメハモグリバエの寄生バチとして,コマユバチ科で3種,コバチ上科で13種(ヒメコバチ科9種;コガネコバチ科2種;ツヤヤドリタマバチ科1種;ツヤコバチ科1種)の合計16種が確認された。<br>3) ヒメコバチ科に属する<i>Hemiptarsenus varicornis, Chrysocharis pentheus, Neochrysocharis okazakii</i>および<i>N. formosa</i>の4種は各地から広く採集され,これら寄生バチが優占種となっている圃場も多かった。施設栽培では<i>H. varicornis</i>が年間を通して採集され,最も重要な寄生バチとなっていた。<br>4) 非選択的殺虫剤(permethrin, ethofenprox, methomyl, prothiofos)を散布すると寄生バチの寄生率は著しく低下し,その後マメハモグリバエが多発した。一方,選択的殺虫剤(fenpyroximate, dicofol, fenbutatin oxide, pyridaben, buprofezin, flufenoxurone)を散布した場合は寄生バチの寄生率が低下せず,その後マメハモグリバエは減少傾向を示した。