著者
高橋 敏之
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.17-26, 1998-03-25 (Released:2018-05-08)

文字の習得は,小学校に就学してから国語科教育において体系的に指導されるようになる。これに対して描画活動は,通常1歳前後にスクリブルから自発的に始まる。しかし,writingもdrawingも平面における描出行為であり,起源は同じである。例えばギリシャ人は,グラフオという言葉で両者を一括していたと言われている。それが,絵,絵文字,文字という歴史が示すように,文字と絵はそれぞれの専門性が徐々に進み,現在では別個の物として扱われ,認識されている。したがって,文字を書く(write)ことは国語教育で指導・研究され,絵を描く(draw)ことは美術教育で指導・研究されるのが,現在は常識になっている。本研究は,幼児が正しい文字記号を習得する前段階に創作する前文字図形を対象にしている。この「幼児文字」が,国語教育と美術教育の間を埋める重要な手がかりを与えると考える。本論では,罫線・升目と幼児文字の関連性を考察した。
著者
岡田 了祐
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.103-116, 2015 (Released:2020-01-26)
参考文献数
11

本稿の目的は,多様な子どもの学びを捉える構築型評価モデルを使って,典型的な社会科授業の一つである概念的社会認識形成型社会科,その中でも概念の構築型授業における子どもたちの社会認識形成過程について理論的な説明をすることにある。当該授業では5つの認識類型が混在しており,各類型から1名ずつ抽出し,上記のモデルを使って個々の認識形成過程を分析した上でそれらを比較考察した。その結果,自他の観点の比較による因果の関連づけの有無が飛躍とつまずきの分岐点となることが当該授業における認識形成過程の特質として浮上し,それを踏まえ指導を検討した。本稿の意義は以下の4点である。①当該授業における5つの認識類型を見いだし,個々の認識形成過程を実証した点。②当該授業における個々の認識形成過程が異なる理由を実証した点。③認識形成過程の評価の具体を示した点。④目標論のみの評価では捨象される子どもの学びを明らかにした点。
著者
後藤 恒允
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.159-165, 1990-10-31 (Released:2018-05-08)

この研究の目的は,作文指導論構築の基礎として,言語表現の本質と機能を考察することにある。このため,本稿では,コミュニケーションにおける言語諸機能に注目し,それらを有機的に構造的に関連させて論じた。殊に,ソシュールの言語学をも援用しつつ,言語表現が単なる伝達のためのものではなく,現実を二次的な価値体系として秩序化するものであることについて力説した。しかも,ソシュール言語学で論じきれなかった,表現主体と表現対象との関係について,現象学を援用して考察した。また,言語表現において創造的想像力が一層重視されねばならないことを提唱した。以上を一つの試みとして提案することにしたい。
著者
川口 広美 後藤 賢次郎 草原 和博 小川 正人
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.85-94, 2014 (Released:2020-01-26)
参考文献数
19
被引用文献数
3

近年,「教科教育学」の学問上の位置づけや独自性を海外の視点から見直す動きがある。社会科教育学研究では,研究方法の日米比較を通して議論が重ねられてきた。この過程で特に争点となったのは,研究のあり方・目的についてと,「研究」と「開発」の関係である。そこで本研究は,米国在住の社会科教育学研究者へのインタビュー結果から,日本の研究との研究方法上の共通点と相違点の背景にある研究観を明らかにすることを目的とする。インタビュー結果からは,調査対象となった米国在住の研究者の社会科観と研究方法には多様な関係が見られたこと,現場教師の取り組みを映し出す「鏡」を提供することを研究の貢献としていること,背景には構成主義的な社会観があることを明らかにした。これらは,日本の教科教育学研究の特質を浮き彫りにするとともに,将来の教科教育学の国際比較に向けた研究の課題を示唆している。
著者
三村 和則
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.97-102, 2012-03-25 (Released:2018-05-08)

沖縄の学力向上には授業の他,家庭・地域・行政が総掛かりで取り組む必要がある。授業では「凡事徹底」をし「PISA型学力対応授業」に飛躍していく。家庭の主課題は「全国学力調査」で正答率との高い相関が確認されている「早寝・早起き・朝ご飯」と子どもとの会話である。しかし沖縄には若年結婚・出産率や若年低収入離婚率などが高いためその実現が困難な事情があり,この解決も急務である。行政は沖縄振興計画について「永遠に無くならない本土との地理的隔たりから生じる格差を埋めるための恒久的施策」に発想を転換する時である。学力格差はこの格差の一つであり,学力低迷の基盤的要因は県内に情報・モノ・サービスが滞留することにある。この要因除去の方策は県外との往来の簡便化である。「全国学力調査」の質問紙調査の項目に正答率と相関があり「当てはまる」の類の回答率の平均値が秋田県>全国>沖縄県となっているものが存在した。これらは学力向上のため「黄金律」を示唆している。
著者
三崎 隆
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.59-64, 2001-03-31 (Released:2018-05-08)
被引用文献数
2

本研究では,場依存型の認知型の生徒の計算能力が理科の文脈に依存することを調査した。まず,EFT,数学の調査,理科の調査を実施した。数学の調査問題は1次関数の計算である。理科の調査問題はボイルの法則に関する1次関数の計算である。理科の調査問題と数学の調査問題はそれぞれ2問ずつあり,同じ数値を使った。EFTの結果から,2つのタイプに分けた。得点の高い生徒を場独立型の認知型の生徒,得点の低い生徒を場依存型の認知型の生徒とした。EFTの結果と数学及び理科の調査問題の結果とを比較した。その結果,場独立型の認知型の生徒は両教科の調査問題が解けた。一方,場依存型の認知型の生徒は,数学の調査問題は解けたが,理科の調査問題は解けなかった。この結果から,場依存型の認知型の生徒には教科の文脈に依存する傾向のあることが実証された。
著者
近藤 和美
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.153-158, 1984-11-15

子どもは,人間社会のなかで,外界の対象とのかかわりを通して,人間として成長していく。この時,外界の対象から得たイメージを記憶のなかのイメージと考え合わせ,推理し,再構成していくことにより,自己を発展させているのではないかと考えられる。本論文では,対象を7枚の絵に限定し,子どもが,それらを一つの物語になるように再構成し,さらに,その絵に即して言語表現するという方法を用いて,子どもが自己発展を遂げる仕組みを明らかにしようとした。そこで,(1)対象を限定し,(2)類をまとめ,(3)それらを関供づけて再構成し,(4)さらに推理していく,というような「場」を想定した。その結果,今回用いた絵で,物語を構成するという課題のもとでは,対象から得たイメージを「限定」し,「類」にまとめるのは,4歳頃から見られ,さらにそれらを「再構成」するのは5歳頃からであることが明らかになった。
著者
山岡 武邦 松本 伸示 隅田 学
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.25-34, 2015

本研究は,中学校理科授業における生徒の誤答に対する教師の対応発問と生徒の期待に関する分析を行うことで,指導法への示唆を導出することを目的とした。具体的には,第3回国際数学・理科教育調査の第2段階調査(TIMSS-R)ビデオスタディ95時間分の国内中学校理科授業における生徒の誤答に対する教師の対応発問を分析した。分析結果を踏まえた質問紙を作成し,2013年9月から10月に,県内公立中等教育学校1校で中学校1から3年生451人を対象に調査を実施した。その結果,次の3点が明らかとなった。(1)教師は,別の生徒を指名するよりも,誤答を述べた生徒で対応する傾向があること,(2)1年生は情緒的対応を期待する傾向があること,(3)3年生は認知的対応を期待する傾向があること。以上より,中学校段階では,学年が上がるにつれて情緒的対応から認知的対応へと移行させる支援を意識しながら中学1年で「ヒント」,中学2・3年で「説明」,中学3年で「同じ発問」という対応を行い,自力で答えさせる指導をすることが効果的であると考えられる。
著者
灘本 雅一 山下 将貴 日高 正博 後藤 幸弘
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.71-82, 2017

本稿は,ベースボール型ゲームの戦術の系統に基づいて考案された三つの「課題ゲーム」の積み上げ単元学習の有効性を明らかにすることを目的とした。すなわち,小学校5年生を対象に「フォースアウト・ハンドベース」,「ラケット・ベースボール」,「シフトプレイ・ソフトボール」の三つの「課題ゲーム」の技能的側面(個人的技能・集団的技能),戦術の認識的側面,情意的側面および態度的側面の学習効果についてノーマルゲームを中心に学習する対照授業との比較から検討した。その結果,「課題ゲーム教材」の積み上げ単元学習は,個人的・集団技能を向上させ,戦術行動の認識度を対照授業よりも向上させることが認められた。また,情意的側面及び態度的側面の成果を高め,体育授業に対する愛好度を高め得た。以上のことから,課題ゲーム教材の積み上げ単元学習は,有効性が高いと考えられた。
著者
松本 伸示 廣瀬 正見 秋吉 博之
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.55-61, 1990

本研究は,理科学習に於ける生徒の「やる気」の要因を同定しようとする基礎的研究である。そこで,まず「やる気」に影響を及ぼすであろう項目を抽出し,理科における「やる気」に関する調査票:QMSCを開発した。調査は,昭和63年11月,兵庫教育大学附属中学校3年生126名(男子74名,女子52名)を対象として行われた。調査票の信頼度係数は0.85であった。分析の結果,本調査票の43項目中の31のものが,「やる気」に彫響を及ぼしていることが認められた。そこで,この項目をさらに因子分析にかけたところ5つの因子が抽出された。第I因子は「科学的興味」,第II因子は「科学的活動」,第II因子は「数学的作業」,第IV因子は「測定的作業」,第V因子は「内容不消化」の因子と解釈することができた。この内,第I,II因子はプラス側に,第III,IV因子はマイナス側に働くことが明らかになった。
著者
池野 範男
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.97-102, 2016 (Released:2020-01-26)
参考文献数
18

本稿は,教科教育を「危機」と捉え,その拘束条件から解放することを目的にしている。解放を成し遂げるためには,教育の構図と方法論の保持が必要である。 教科の教育は,その存在を学校教育の他の領域に威圧され,独立性を揺るがされ,その意義を見失っている。目標実現の構図とその教育論理を探求する方法論とを持つことで,教科教育の存在意義を回復させる。それにより,教育学・心理学,専門科学への依存から脱し,独立性とその教育的意義を持たせる。このことを学問的に保証するのが教科教育学である。 教科教育がその危機から脱するには,神話的な力からの解放が必要である。それは,教育学・心理学,専門科学の関連科学からの,自立・自律化である。それはまた,目標実現の教育の構図と,それを独自に探求する研究方法論を持つことを条件としている。それこそ,教科教育学が教育と研究において独立する条件である。
著者
岡崎 正和 岩崎 秀樹 影山 和也 和田 信哉
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.53-62, 2012

本研究の一連の目的は,算数から数学への移行という視座から,子どもの図形認識が発展し,証明に繋がる端緒を明らかにすることであり,本稿では図形の論理的・関係的性質の理解の前提になると考えられる図形の動的な見方の構造を明らかにすることを目的とした。その為に,我々がこれまでに同定してきた図形の動的な見方を単純な文の組み合わせとして表し,隠喩,換喩,提喩を用いて特徴付け,それらの複合性について分析した。その結果,動的な見方は次の5つに集約されることが分かった:視覚的類似性に基づく図形の変形,図形全体の動きを点の動きで捉える,不変性を意識化する,可逆的な見方,不変性と変数性の同時的意識化。また,これらを比喩的認識の複合性の視点から分析した結果,図形の動的な見方は階層的に整理され得ることが示唆された。
著者
山田 秀和
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.79-88, 2008-03-25 (Released:2018-05-08)

歴史教育における永続的な問題の一つに,「価値注入」がある。歴史を描こうとすれば,必然的に何らかのものの見方が入り込む。そして歴史を一つの通史として描き,系統的に教授するとき,事実の名のもとに価値を注入する可能性は高くなる。この問題を克服するべく,本研究では,アメリカで開発された中等ボルト社会科『新合衆国史』(第11学年)の分析を通して,歴史教育における価値注入回避の論理を明確にする。分析の結果,以下の二点の方法論を抽出し,具体的な内容編成のしかた(カリキュラムから単元まで)を明らかにした。(1)視点を段階的に変えながら歴史を解釈させることによって,一面的で偏狭な決定論的認識を与えないようにすること。すなわち,様々な角度から因果関係を引き出させることによって,特定の見方に偏った知識が子どもに内面化されるのを防ぐこと。(2)歴史を解釈させる際に,その根拠となる法則的知識(主に社会諸科学から援用される)をたえず明示させ,批判吟味させる過程を学習に組み込むこと。すなわち,法則性を帯びた知識が,明示されないまま,無批判に子どもに内面化されるのを防ぐこと。
著者
石橋 一昴
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.37-46, 2017 (Released:2020-01-26)
参考文献数
35

本稿の目的は,確率教育における独立概念の理解へ向けた,指導内容と方法について考察することである。今日の確率教育において重要性が高まってきている概念の一つとして独立概念があるが,その理解には古くから困難性が指摘されており,未だ解消には至っていない。このような現状に対し,先行研究からカリキュラムに原因を求めることが有効であるという示唆を得た。そこでまず,独立概念の理解の困難性の原因について考察し,「直観との乖離」と「排反事象との混同」を同定した。次に,それらの改善に向けた視座として「偶然概念の理解の強調」と「「排反事象」,「独立試行」,「独立事象」の区別」を導出した。その後,現行カリキュラムが前述の2つの視座を意識した構成でないことを指摘し,次期学習指導要領改訂の展望と確率概念の形成に関する水準に基づき,小学校高学年における実験による確率指導と,高等学校数学A における独立事象の導入を提案した。さらに独立事象の指導方法として,命題の設定とカルノー図による図的表現を提案した。
著者
竹尾 隆浩 松本 伸示
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.1-10, 2005-09-20 (Released:2018-05-08)

本研究は,Ryan & Deciの外発的動機づけを段階的なものとするとらえ方に着目し,総合的な学習の課題設定場面における動機づけについて事例研究を通して検討を試みたものである。動機づけにおいて重要とされる自己決定の認識を中心に,「学習者中心の本質的特徴は,学習内容に関する決定を自らが行うこと,すなわち自己決定することである」という立場から,総合的な学習の授業実践を質的に分析した。その結果,興味や関心,問題意識の高まりなくして自己決定はありえないということ,また,自己決定を生かす大切な要因として,共に学ぶ友達の存在の重要さが示唆された。そして,自己決定を阻害する要因として,課題と学習方法の同一視,不安や焦りの解消,友達への追従が確認された。
著者
伊藤 俊彦
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.55-63, 1982-05-20 (Released:2018-01-21)

Polya,G.(1945)の提唱した発見学的戦略による数学的問題解決モデルの実験的,実証的研究が,1970年代米国で数多くなされた。それらの実験的研究について共通していえることは,数学における問題解決過程に焦点をあて,Polya,Gの発見学を問題解決戦略として用い,問題解決過程を行動分析してその過程のメカニズムを解明することである。これらの実験的研究に共通した実験方法,問題解決過程の行動分析体系,よく使われる統計的手法などは,数学的問題解決の教授-学習の研究方法論や評価論の構築の基礎になると考えられる。数学的問題解決についての研究方法や評価は,わが国では明確に客観化されていない。そこで本報告は,数学的問題解決の研究方法や評価を明確に客観化するための基礎的研究として,1970年代の米国における数学的問題解決の実験的研究の考察を試みた。
著者
西内 舞 川崎 弘作
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.59-68, 2017 (Released:2020-01-26)
参考文献数
17

本研究では,自己決定理論から動機づけを捉え「理科学習の意義の認識」が「動機づけ」にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的とした。そのためにまず,学習者が認識している「理科学習の意義の認識」と「自己決定理論における動機づけ」を測定するための質問紙を検討,作成した。次に,中学生を対象にこれらの質問紙による調査を実施し,調査結果を基に理科学習の意義の認識が動機づけにどのような影響を与えているかについて共分散構造分析により明らかにした。その結果,理科学習を通して,学習者自身が,「理科学習の意義の認識」を「科学的能力」が身に付くと捉えると,「内発的調整」,「同一化・成長」の動機づけに正の影響を与え,「外的調整」には負の影響を与えていることが明かになった。また,「理科学習の意義の認識」を「科学と身近な自然や日常生活の理解」と捉えると,「内発的調整」,「同一化・成長」,「同一化・将来」の動機づけに正の影響を与えていることが明かになった。
著者
渡邉 政寿 大場 浩正
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.73-84, 2018 (Released:2020-01-26)
参考文献数
26

本研究は,日本人高校生の英語作文力が4か月間の教室内英語多読を経てどのように変化するかを調査したものである。「多読+ 英作文(ERW)」群と「多読のみ(ER)」群に分け,事前・事後に作文力と読解力テストを実施した。研究課題は,(1)教室内英語多読によって英語作文力が向上するか,(2)もし向上するなら,どの側面(内容,論理・構成,語彙,言語使用,句読点等の形式)か,及び(3)英語作文力のどの側面が英語読解力と読了語数に関連があるかであった。分析の結果,英語作文力の下位群では多読後に「句読点等の形式」以外において有意な伸長が認められた。また,ERW 群で「言語使用」,ER 群では「語彙」において英語作文力と読解力との相関がより強まり,指導法による差が認められた。更に,読了語数よりも読解力が英語作文力に影響を与えること,及び英作文評価観点の5項目にはそれぞれ「読解力」の有意な影響があることが判明した。