著者
皆川 修人 櫻井 伸行 高橋 一生 江村 菜津子 東間 千芽 橋爪 力 澤井 健
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.109, pp.P-93-P-93, 2016

<p>【目的】miRNAの生合成を抑制したマウス胚では胚性致死となることから,miRNAを介した遺伝子発現制御が初期胚発生において重要な役割を担うと考えられる。miRNA-34cは,マウス胚において1-細胞期から発現量が上昇し,その機能を阻害すると卵割が停止する。またmiR-93およびmiR-34aはマウス胚性幹細胞および人工多能性幹細胞においてSox2や,Nanogの発現を制御している。しかし,ブタ胚においては上記miRNAの発現動態およびその機能は不明である。そこで本研究ではブタ初期胚における上記3つのmiRNAの発現動態とmiR-34cが初期胚発生に及ぼす影響について検討した。【方法】ブタ卵子(M-Ⅱ期)およびブタ体外受精(IVF)胚の1-細胞期,2~4-細胞期,8~16-細胞期,桑実期および胚盤胞期でのmiR-34a,miR-34cおよびmiR-93の発現量を解析した(実験1)。またmiR-34cに結合し,その機能を阻害するmiR-34c inhibitorを1-細胞期胚に注入し,その後6日間体外発生させ,胚盤胞期までの発生率を検討した(実験2)。処理区は,miR-34c inhibitor区および特定のmiRNAの機能阻害効果も持たないNon-effect inhibitor区とした。【結果および考察】実験1において,3種のmiRNAはいずれも全発生ステージで発現が確認された。miR-34cおよびmiR-93については各発生ステージにおいて有意な差は認められなかった。miR-34aについては桑実期および胚盤胞期において,発現量が他の発生ステージよりも有意(P<0.01)に高い値を示した。実験2おいて,miR-34c inhibitor区およびNon-effect inhibitor区で発生率に有意な差は認められなかった。本研究の結果より,ブタ初期胚における3種のmiRNAの発現動態が明らかとなった。マウス胚においてmiR-34cは受精後の1細胞期から発現量が上昇するが,ブタ胚においては受精以前のM-Ⅱ期から発現が認められた。またmiR-34cに関しては,その機能阻害が胚発生に影響をおよぼさなかったことから,初期胚発生におけるmiR-34cの機能は動物種によって異なることが示唆された。</p>
著者
櫻井 伸行 高橋 一生 江村 菜津子 皆川 修人 東間 千芽 橋爪 力 澤井 健
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.109, pp.P-92-P-92, 2016

<p>【目的】マウス胚において,内部細胞塊から胚盤葉上層(EPI)および原始内胚葉(PrE)への分化はFGFシグナルによって制御されている。FGFシグナルのリガンドであるFgf4はEPI前駆細胞から分泌され,隣接する細胞に作用することでPrE分化を促す。そのため,<i>Fgf4</i>欠損マウス胚はPrE分化に異常をきたし,胚性致死となる。一方,ウシ胚の発生および組織分化におけるFGFシグナルの役割は明らかでない。本研究では,ウシ胚の各発生ステージにおける<i>FGF4</i> mRNAの発現動態解析およびウシ初期胚に対するFGF4発現抑制実験を行い,ウシ胚の発生および組織分化におけるFGF4の役割について検討した。【方法】食肉処理場由来のウシ卵巣から卵丘細胞–卵子複合体を吸引採取し,体外成熟培養後に媒精を行うことで体外受精胚を得た。各発生ステージにおいてサンプリングを行い,<i>FGF4</i>の遺伝子発現量解析を行った。1細胞期胚の細胞質にFGF4発現抑制用のsiRNAを注入し,胚発生への影響を検討した。実験区はFGF4発現抑制区に加え,遺伝子発現抑制効果を有しないControl siRNA注入区および注入操作を行わないUninjected区を設けた。桑実胚を対象として,EPIの分子マーカーである<i>NANOG</i>およびPrEの分子マーカーである<i>GATA6</i>について遺伝子発現量解析を行った。【結果および考察】<i>FGF4</i>発現は16細胞期までは認められず,桑実期以降でのみ認められた。培養7日目における胚盤胞期への発生率は,Uninjected区(64.6%)およびControl siRNA区(60.1%)と比較してFGF4発現抑制区(20.6%)において有意(<i>P</i> < 0.01)に低い値を示した。FGF4発現抑制区における<i>NANOG</i>発現量は,Control siRNA区と比較して有意(<i>P</i> < 0.05)に高く,また<i>GATA6</i>発現量はUninjected区と比較して有意(<i>P</i> < 0.05)に低い値を示した。本研究では,ウシ胚の初期発生においてFGF4が重要な因子であることが明らかとなり,またウシ胚においてもFGFシグナルがEPI/PrE分化を制御する可能性が示唆された。</p>
著者
神谷 拓磨 松橋 珠子 細井 美彦 松本 和也 宮本 圭 本上 遥 久米 健太 樋口 智香 奥野 智美 山本 真理 越智 浩介 井橋 俊哉 辻本 佳加理
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.111, pp.P-54-P-54, 2018

<p>【目的】分化した体細胞核を未受精卵子内に移植することにより,リプログラミングが誘導され,クローン動物の作出が可能となる。未受精卵を用いてクローン胚を作成する場合,細胞分裂やDNA複製を経て,移植された体細胞核から胚性遺伝子が発現を開始するため,細胞分裂やDNA複製は転写のリプログラミングに不可欠な要素の一つと考えられてきた。そこで本研究では,転写リプログラミングにおける細胞分裂やDNA複製の寄与を明らかにするため,マウス初期胚を用いて細胞分裂及びDNA複製非依存的に体細胞核の転写リプログラミングを誘導する核移植法の開発を目指す。【方法】C57BL/6雌マウスとDBA/2雄マウスを用いてIVFを行い,その後mKSOM培地で4細胞期胚まで培養した。4細胞期胚をDemecolcine添加培地に移し,細胞周期をG2/M期に停止した。G2/M期停止4細胞期胚にTransgeneによりトレース可能な細胞株を移植し,24時間後に免疫染色を行い,共焦点顕微鏡下で移植細胞核の構造的な変化を観察した。また,G2/M期停止4細胞期胚にC2C12筋芽細胞を核移植し,α-amanitinによって転写を阻害した区と非添加区に分け24時間培養後,RNA-seqによって遺伝子発現を調べた。【結果】免疫染色の結果,移植した細胞核が24時間以内に急速なリモデリングを受け,胚由来の核と似た構造を示すことが分かった。移植核中には2番目のセリンがリン酸化を受けたRNA PolIIが確認され,移植後の細胞核は転写活性を有することが分かった。次にRNA-seqの結果,初期胚で高発現する遺伝子の多くが核移植した4細胞期胚から新たに転写されることが分かった。さらに,Utf1やEsrrbなど4細胞期からES細胞にかけて発現の高い遺伝子の転写も確認した。以上の結果より,マウス4細胞期胚を用いた新規核移植法を示した。また,本実験で発展した核移植法により,細胞分裂及びDNA複製非依存的に体細胞核の転写リプログラミングが誘導できる可能性が示唆された。</p>
著者
村川 雄規 戸崎 晃明 福田 道雄 太田 昭彦
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第103回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.74, 2010 (Released:2010-08-25)

【目的】フンボルトペンギンの配偶システムは一夫一妻制(monogamy)とされるが、つがい外交尾を行うことが確認されており、その配偶システムはより複雑である可能性がある。本研究では、分子遺伝学的な手法による家系解析を用いて、飼育下でのこの種における配偶システムの詳細を解析した。【方法】新規に開発した親子鑑定のための15個のマイクロサテライトマーカー(総合父権否定確率 0.999998)を用い、葛西臨海水族園の飼育群のうち、行動学的に推定した48家族(両親のべ85羽、雛のべ123羽)の遺伝子型を比較検討し、家系解析を行った。【結果】雛123羽のうち122羽(99.2%)においてその遺伝子型において親子関係に矛盾が生じなかった。残る1羽(0.8%)No.328においては、推定された70♂と129♀の両親のうち、70♂との遺伝子型に矛盾が生じた。そこで、70♂以外の父親候補となりうる全ての雄個体との間で解析を行ったところ、No.328は180♂を父親とするつがい外受精の雛であることが強く示された。頻度自体は低いものの、つがい外受精が確認されたことから、飼育下におけるフンボルトペンギンは社会的monogamyではあるものの厳格な遺伝的monogamyとはいえないことが明らかとなった。また、フンボルトペンギンは絶滅危惧種の一種であり、ワシントン条約により国際商業取引が禁止されているため、今後飼育群に野生個体を加えることは極めて困難である。したがって、飼育施設では限られた個体数の中で、遺伝的多様性を維持しつつ継代・繁殖を続けていかねばならない。そのため個体間における血縁関係の正確な把握が重要となる。したがって、分子遺伝学的な手法を用いた家系解析は、配偶システムの解明のみならず、種の保全の観点から極めて有用であると考えられる。
著者
井上 晴夫 榎木 栄人 三宅 勝 鶴之園 正昭
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖研究會誌 (ISSN:04530551)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.7-10, 1960-07-10 (Released:2008-05-15)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1
著者
大島 正尚 野崎 博
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖研究會誌 (ISSN:04530551)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.124-126, 1960-03-31 (Released:2008-05-15)
参考文献数
6

輸卵管の卵白分泌部を卵が通過するとき,卵白分泌部の単位組織量あたり,46%の窒素の減少が見られる。その差を卵白分泌部について計算すると,平均して鶏卵の卵白の窒素の88%となつた。鶏卵の卵白の蛋白質の大部分(約90%)は卵白分泌部にすでに分泌されていて,卵が下降する間に附着されるもので,通過時に分泌され附着されるものは小部分にすぎない。
著者
尾川 昭三
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖研究會誌 (ISSN:04530551)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.151-154, 1959-03-20 (Released:2008-05-15)
参考文献数
13

1)精管の副睾丸尾部端を切断しても精管は射精様運動を営むが,末梢端の切断では精管は運動せず他の副性器群にのみ射精様運動が認められた。2)副睾丸に生理食塩液を注入して内容を増加せしめると射精様運動の発現回数を増加する傾向を又精嚢を剔出するとこの運動の回数の減ずることを認めた。3)副睾丸尾部,前立腺,精嚢の各々に塩酸プロカイン液を注入することに依り射精様運動は減退するか或は全く休止することを知つた。4.これらの知見及び前報の成績から,射精機構に於けるandrogenの生理的意義について考察した。
著者
河野 友宏 塚平 俊貴 川原 学
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第102回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.136, 2009 (Released:2009-09-08)

[目的] 寿命に性差が認められることは良く知られており、ヒトでは女性が男性に比べ長命である。しかしながら、長命性において性差が生じる理由は良く理解されていない。哺乳類では、雌ゲノムのみを持つ単為発生胚は致死であることから、その寿命を正常個体と比較することは出来ない。しかし、我々が作出した二母性マウスは父性ゲノムを持たないことから、寿命と父母ゲノムの関係を探る上で良いモデルとなり得る。そこで、雌ゲノムのみから誕生した二母性マウスの寿命を調べた。[方法] 2005年10月から2006年3月の間に生まれた二母性マウス13個体を使用し、寿命を調べた。なお、二母性マウスは既報(Nature protocols, 2008)に従い作出した。対照区には同時期に誕生した受精卵由来の雌マウス13匹を用いた。実験に用いたマウスの系統は共にB6D2F1xC57BL/6である。すべての被検マウスは、単飼ケージで飲水および餌とも自由摂取としSPF環境で飼育した。 [結果] 二母性マウスの平均寿命は841.5日で、対照群の655.5日と比べ185.9日間も長く、Kaplan-Meier analysisにより(p<0.01)有意差を認めた。すべてのマウスは同一の飼養管理条件下で飼育されたにも係わらず、二母性マウスは対照より約30%長く生きたことになる。二母性マウスは父方発現インプリント遺伝子Rasgrf1の発現を欠くことから小型で、出生後20ヵ月における二母性マウス体重をコントロールと比較すると有意に軽かった(29.4g vs 44.9g)。また、血液の生化学的検査から、好酸球が有意に増加していた。これらの結果から、母性ゲノムが長命性に何らかの役割を果たす可能性が示唆される。
著者
坪田 敏男 金川 弘司 高橋 健一 安江 健 福永 重治
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.203-210, 1985-12-25 (Released:2008-05-15)
参考文献数
6
被引用文献数
11 15

1982年と1983年の2年間にわたって,多頭集団飼育されているエゾヒグマの性行動を観察した。個体識別した雄と雌グマ各20頭においては,特定のクマ同志で交尾をするということはなく,無差別に交尾を行っていた。交尾様式は,乗駕開始(Mounting),腰部の突き(Pelvic thrusting),後肢の痙攣様運動(Quivering),および乗駕終了(Dismounting)の順で行われ,その一連の行動に要する時間は平均23分であった。このうちの後肢の痙攣様運動は射精に伴う運動と推測された。乗駕は,1日の中では朝7時頃と夕方19時頃に多かった。また,繁殖期の中でも6月上旬にそのピークがみられた。雌グマは発情すると雄グマの乗駕を許容するようになり,その継続期間はかなり長くなる傾向を示したが,個体差も大きかった。雄グマは10歳以上になると年齢が進むにしたがいしだいに乗駕回数が減少するのに対して,雌グマは年齢によって雄グマに乗駕される回数に変化はなかった。
著者
菅徹 行 正木 淳二
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖研究會誌 (ISSN:04530551)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.104-111, 1973

卵巣摘出牛7頭に,エストラジオールおよびプロゲステロンを単独あるいは混合注射して,牛子宮におけるフラクトースとソルビトールの産生に及ぼす卵巣ホルモソの影響を調べ,次の結果を得た。<BR>1.卵巣摘出30日後には子宮内フラクトースおよびソルビトールは消失していた。<BR>2.エストラジオール2mgを8時間間隔で5回筋肉内注射した場合,48時間以内に発情が誘起されたが,フラクトースおよびソルビトールの生産は認められなかっな。<BR>3.プロゲステロン5mgを8時間間隔で5回子宮実質内注射した場合,子宮内でフラクトースおよびソルビトールが産生されたが,エストラジオール2&mu;gとプロゲステロン5mgを混合注射した場合には,両成分の産生がさらに促進され,両ホルモンによる協同作用が明らかに認められた。
著者
岩崎 説雄 塩谷 康生 門司 恭典 中原 達夫
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.198-203, 1989
被引用文献数
1

牛卵胞卵子の体外成熟および体外受精,ならびに胚の発生過程に伴うグルコース6リン酸脱水酵素(G-6-PDH)活性の変動を明らかにした。さらに牛初期胚を二分し,分離胚の一方でG-6-PDH活性を組織化学的に測定し,他方で染色体検査により性判別を行い,活性の性差を調べ,酵素活性の差を利用した胚の性制御の可能性を検討した。<BR>胚の性差の検討においては,実験1ではランダムに卵巣より卵胞卵を採取し,実験2では卵胞卵を多数有する卵巣より卵巣別に卵子を採取して,体外成熟,体外受精に供した。G-6-PDH活性は組織化学的に測定し,染色強度により強,中,弱,不染の4スコアに区分して表した。<BR>G-6-PDH活性は成熟卵子,前核期卵子から8細胞期にかけて大きな変化は認められなかったが,桑実期では活性を示さなかった。370個の胚より分離した631個の割球を染色体検査に供し,このうち116個(分裂中期核板像を示した胚の58.6%)の胚で核型が判別した。これらのうち正常2倍体の雌胚39個のG-6-PDH活性は,雄胚51個の活性に比べやや低いが有意差は認められなかった。染色体異常を含め,X染色体の数により分類したG-6-PDH活性は一定の傾向はみられなかったが,多倍体胚(XXX,XXXX,XXXXXX)のいくつかは高い活性を示すことが認められた。<BR>以上の成績より,牛初期胚G-6-PDH活性の性差は明確ではないが,多倍体胚のいくつかは高い活性を示すことが認められた。
著者
山口 正義 谷 哲弥 加藤 容子
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.108, pp.P-92-P-92, 2015

【目的】哺乳動物では,個体が老化するにつれて生殖能力が低下する。すなわち,雌では,個体の老化に伴い卵子の老化も生じているためである。卵子の老化には,核(染色体)と細胞質中因子の両者に生じる様々な変異が含まれており,一度生じた卵子の老化を消去することは困難で,老齢個体から採取した卵子を若返らすことは容易にはできない。一方,近年,母体の栄養状態や給餌内容(栄養素)が,母体の生殖能力に影響を及ぼすことが相次いで発表されている。そこで,本研究では,老齢マウスの生殖能力を経時的に検討するとともに,給餌内容が母体の老化に影響を及ぼすかどうか予備的に検討したので報告する。 【方法】実験1)ICR系マウスを用い,通常の方法で飼育した6週齢(若齢),12~13週齢(適齢),38~50週齢(老齢)雌マウスを用い,雄マウスとの自然交配率,過剰排卵処理に対する感受性や採卵数,得られた卵子の体外発生能,また,臓器の重量計測等を行った。実験2)給餌内容が母体の生殖能力に影響を及ぼすかについて,抗酸化作用等がありヒトの健康に良いとされる4種類の農産品乾物を加えた飼料を与え,老齢まで飼育し,添加物が母体や卵子の老化に影響を与えるかどうかを予備的に検討した。 【結果】実験1)老齢マウスでは,他の2区と比較して,自然交配率が極めて低く,採卵数も極めて少なかった。しかしながら,得られた卵子については,単為発生刺激後,胚盤胞まで発生することが分かった。 実験2)添加物を給餌するために,飼料の形態を検討した結果,粉末飼料を与えることが適切であることが分かった。飼料添加物としては,まずは既報を参考に,ゴマ,キナコ,日本茶,クズを検討した。現在,経時的に観察,ならびに,給与した個体や卵子の生殖能力について検討中である。
著者
下向 東紅 徳田 一弥 古賀 新 稲富 秀雄 加納 康彦
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.133-139, 1990

前立腺の維持と発達を支配する主な因子はテストステロンで,これが前立腺で5&alpha;-レダクターゼによりジヒドロテストステロンに変換されて作用することは,知られている。5&alpha;-レダクターゼは,プロラクチンとテストステロンによって活性化されることが,報告されているが,前立腺の発達におけるプロラクチンの役割は不明の点が多い。<BR>マストミスは,雌にも二本の排泄管を有する,組織学的に機能的な前立腺を持つことを特徴とするネズミ科の動物である。本実験では,この動物雄,雌を供試して,前立腺の発達におよぼす,ホルモンの影響を検討した。供試動物に,去勢,脳下垂体前葉移植,テストステロン投与,プロモクリプチン投与の処置を単独または併用して施した。去勢によって前立腺重量は減少したが,テストステロンのみの投与によって回復したことから,前立腺は雌雄ともにアンドロジェンに依存していることが示された。さらに去勢動物に対する,脳下垂体前葉の移植によっても前立腺重量が回復した。この場合,反応は雄に比べて雌の方が大きかった。テストステロン投与あるいは脳下垂体前葉移植によって,上皮細胞の増殖が起こることも組織学的に認められた。これらの成績から,マストミスの,特に雌の前立腺の維持あるいは発達は,プロラクチンに対して感受性が高いと考えられ,これらの作用の影響を研究するためには,マストミスは,有用な動物であると考えられた。
著者
芦田 浄美
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖研究會誌 (ISSN:04530551)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.53-56, 1959-09-30 (Released:2008-05-15)
参考文献数
7

ラット,家兎,及び乳牛を使用して子宮内膜グリコーゲンの性ホルモン給与による影響及び性周期に伴う変動をAnthrone法によつて検討した。その結果,子宮内膜グリコーゲンはestrogen給与ひごよつて増量することが認められるも,progesterone,EPホルモン給与によつて更に増量することが認められた。又所謂,卵胞期と黄体期における子宮内膜グリコーゲン量は卵胞期よりむしろ黄体期において増加するものと思われる成績が得られた。
著者
山本 ゆき 山本 達也 ALLEN Twink STANSFIELD Fiona 渡辺 元 永岡 謙太郎 田谷 一善
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第104回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.223, 2011 (Released:2011-09-10)

【背景と目的】ゾウの生殖メカニズムには未解明な点が多く,妊娠維持機構もその一つである。ゾウの妊娠期間は,約22ヶ月間と,陸上哺乳類で最も長く,卵巣には,妊娠期を通して複数の大きな黄体が存在している。アフリカゾウの胎盤では,ステロイドホルモンの合成が行われていないと考えられており,妊娠全期間を通して,プロジェステロン(P)は黄体から分泌されていると推察される。しかし,妊娠期中の黄体を刺激する因子は未だ発見されていない。私共は,ゾウの妊娠後半期に、血中プロラクチン(PRL)濃度が高値を示し、胎盤中にはPRL様物質が含有されていることを明らかにしてきた。本研究では,ゾウの妊娠維持機構の解明を目的として,アフリカゾウの全妊娠期間を通した胎盤中PRL様物質の局在を解析し,P分泌との関連性を検討した。 【材料と方法】南アフリカ共和国およびジンバブエで淘汰された妊娠アフリカゾウ38頭から,妊娠初期から末期にかけての胎盤および子宮内膜を採取し,抗ヒトPRL抗体を用いて免疫組織化学染色を行った。 【結果】着床前の,子宮内膜に接着している栄養膜細胞において,明瞭なPRL様物質の陽性反応が認められ、子宮内膜腺にもわずかに陽性反応が認められた。着床以降の胎盤組織においても,全妊娠期間を通し胎盤の栄養膜細胞に明瞭な陽性反応が認められた。 【考察】これらの結果から,アフリカゾウの妊娠期において,着床前の段階から栄養膜細胞がPRL様物質を分泌していると推察された。今回局在が認められたのが栄養膜細胞であることから,胎盤性ラクトージェン(PL)である可能性が示唆された。ゾウでは,排卵後、血中P濃度は上昇するがその後一時的に低下,着床の起こる妊娠約7週に再度上昇し,分娩まで高値を維持する。これらの結果を総合すると,ゾウでは着床以降,栄養膜細胞のPRL様物質がパラクリン的に黄体に作用し,P分泌を刺激して22ヶ月間の妊娠を維持しているものと推察された。 本研究は,乾太助記念動物科学研究助成基金によって支援された。
著者
吉田 真弓 濱野 光市 辻井 弘忠
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.98, pp.145, 2005

【目的】リラキシンはペプチドホルモンの一種であり、分娩時の恥骨間靱帯の伸長や産道拡大などの働きを持つ。その一方で、脳や雄性生殖器にも受容体が存在することが報告されており、多機能なホルモンであることが分かっている。スナネズミは、癲癇や脳虚血等の疾患モデル動物として有用な実験動物であるが、近年LHやFSHの配列が決定されたところであり、生理学分野における研究の歴史は浅い。そこで本研究では、スナネズミにおけるリラキシン研究の導入とするべく、スナネズミのリラキシン塩基配列を決定し、既に配列の分かっているマウス・ブタ・ヒトなどを対照とし、塩基・アミノ酸配列の比較を行った。【方法】妊娠15,19,23日目のメススナネズミから卵巣・胎盤・子宮・脳を採取し、LN<SUB>2</SUB>で急速に凍結した。サンプルからISOGENを用いてTotal RNAを抽出した。RT-PCRを行いFirst strand cDNAを作成した。ハムスターリラキシンから構築したプライマーを元にPCRを行った。cDNAのプールの評価のために、G3PDHプライマーを用いた。PCR産物はアガロースゲル電気泳動を行い、目的のバンドからPCR産物の抽出を行ったのちシークエンスを行い、配列決定をした。【結果】全ての実験区に於いて、First strand cDNAがもたらされたが、そのうち、メススナネズミの卵巣由来のcDNAからリラキシンのB-chainを含む塩基配列が増幅され、この塩基配列を決定することが出来た。また、この塩基配列及びそれから推定されたアミノ酸配列は特にハムスターのものと高い相同性を示した。
著者
川手 憲俊 吉川 裕亮 辻 誠 稲葉 俊夫 喜田 加世子 玉田 尋通 澤田 勉
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.99, pp.102, 2006

【目的】黄体形成ホルモン(LH)のレセプターは精巣や卵巣の細胞膜上に存在し、LHによるステロイドホルモン分泌の刺激を伝達する。同レセプターの遺伝子は、多くの動物種でクローニングされているが、イヌの性腺組織から完全長cDNAをクローニングした報告は見当たらない。そこで本研究では、イヌ精巣組織からLHレセプターcDNAのクローニングを行い、塩基配列を解析した。【方法】健常な成犬(グレートデンおよびポメラニアン種)の精巣からtotal RNAを抽出した。全長cDNAを5つの断片に分けて、クローニングを行った。5'側の断片1を除く4つの断片については、それぞれに上流と下流プライマーを作成して、RT-PCR法により各cDNAを増幅した。断片1については、5'RACE法を用いてクローニングを試みた。得られたPCR産物は塩基配列決定用ベクターに組み込み、塩基配列を解析した。【結果】イヌの精巣由来RNAから、LHレセプターcDNAの5'側の断片1を除く2123bpをクローニングした。今回クローニングした2123bpのLHレセプターcDNAについて、グレートデンとポメラニアンとの間に、塩基配列で99.9%、アミノ酸配列で100%の相同性がみられた。また、イヌの同レセプターcDNAの終止コドンまでの塩基配列は、ブタ、ウシおよびヒトとの間にそれぞれ91.9%、91.7%および90.3%の相同性がみられた。イヌの同レセプターのアミノ酸配列は、ブタ、ウシおよびヒトとの間にそれぞれ92.4%、92.3%および89.1%の相同性がみられた。今回増幅した断片2(レセプターの細胞外領域に相当する)において75塩基(アミノ酸にして25個)の欠失したスプライスバリアントを見い出した。【結論】イヌの精巣由来RNAから、5'側の一部を除くLHレセプターcDNA(2123bp)をクローニングできた。イヌ精巣のLHレセプターmRNAにおいて、他の動物種では報告されていない新しい種類のスプライスバリアントの存在が明らかとなった。
著者
中田 久美子 小野 千紘 吉田 薫 吉田 雅人 吉田 学 山下 直樹
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第108回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.OR1-11, 2015 (Released:2015-09-15)

【目的】現在,テオフィリン等の薬剤がヒト不動精子の運動性回復に使用されているが,顕微授精の際に刺入精子とともに卵子細胞内への薬剤が混入することが危惧されている。一方,水素分子は細胞毒性の高い活性酸素種を選択的に還元する作用を有し,副作用が極めて少ないことが知られている。本研究は,解糖系と電子伝達系によるATP産生の阻害剤を用いて,ヒト精子の運動性に対する水素分子の作用機序を明らかにすることを目的とした。 【方法】インフォームドコンセントの得られた,治療後廃棄予定の精子(n=26)を用いた。本実験では85%以上の運動性を有する正常精子を材料とした。その精子をTYB(Test-Yolk-Buffer,JX日鉱日石エネルギー)にて凍結,融解を2回繰り返し,2回目の融解後の洗浄にはグルコース非添加のTYH(G-N区)を使用し,100μlに調整した後,室温に静置した。24時間後,再度遠心処置を行い,ペレットを3等分にし,50μlのグルコース添加のTYH(G+N区),水素分子含有のグルコース非添加のTYH(G-H区)とG-N区にそれぞれ混和した。また,一部のG-N区およびG-H区に40μMのアンチマイシンAを添加した(G-N-A区,G-H-A区)。各過程で,マクラーチャンバーおよびSCAにて運動率および運動性を測定した。 【結果】G-N,G+N,G-H区の運動率はそれぞれ,2.2%,9.7%,8.3%であり,G+N,G-H区はG-N区よりも有意に高かった(P<0.01)。G-N-A区の運動率は0.07%であるのに対し,G-H-A区は1.8%であり,有意に高かった(P<0.05)。 【考察】グルコース非添加かつ電子伝達系阻害剤の存在下で水素分子は,ヒト精子の運動性を有意に改善させた。これらの結果は,水素分子は精子ミトコンドリアの電子伝達系のATP産生を促進する効果があることが示唆している。
著者
高島 誠司 正木 魁人 黒木 俊介 藤森 祐紀 保科 和夫 岡 賢二 天野 俊康 塩沢 丹里 石塚 修 保地 眞一 立花 誠 八木 瑞貴
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第109回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.OR1-14, 2016 (Released:2016-09-16)

【目的】GDNFに次ぐ真正の精子幹細胞増殖因子としてFGF2が同定された。本研究は,FGF2の精巣内発現動態,発現制御メカニズム及び精巣内機能をGDNFと比較することで2つの因子の役割の違いを明らかにすることを目的とした。【方法】マウス精巣サンプルについては,加齢過程,生殖細胞欠損モデル(ブスルファン(44 mg/kg b.w.)処理),再生モデル(ブスルファン(15 mg/kg b.w.)処理),レチノイン酸過剰投与モデル(750 µg/body),下垂体切除モデル(日本SLCより入手)を準備し,免疫染色,定量的RT-PCR,ウェスタンブロットに供した。セルトリ細胞は,セルトリ細胞特異的にヒトNGF受容体を発現するミュータントマウスよりMACSTMを用いて純化した。【結果】まず,精巣におけるFgf2の発現挙動を既知の自己複製因子Gdnfと比較した。Gdnfは加齢に伴い発現低下する一方,Fgf2はどの週齢でも高発現を示した。精上皮周期にそった発現挙動比較では,GDNFが中期で高発現する一方,FGF2は中期に加え前期でも高発現していた。Fgf2発現細胞は既報のセルトリ細胞ではなく生殖細胞及び精巣間質細胞であった。精巣再生モデルではGdnf同様Fgf2の発現も上昇し,精巣再生への寄与が示唆された。FGF2タンパク質の精巣内発現はヒトを含むほ乳類で保存されていた。Fgf2の発現制御メカニズムの解析では,視床下部-下垂体軸の関与が示される一方,レチノイン酸シグナルは関与しないことが示された。Gdnfについても同様の検討を行い,既報通りレチノイン酸投与によるGdnf抑制が確認されたが,下垂体切除についてはGdnf発現上昇という,定説『下垂体由来卵胞刺激ホルモンがセルトリ細胞のGdnf発現を促進する』とは逆の結果が得られた。現在,精巣におけるFGF2の機能について検討中である。
著者
檜垣 彰吾 岸 昌生 永野 昌志 片桐 成二 高橋 芳幸
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.100, pp.20113, 2007

【目的】マウス未成熟卵子の体外成熟培養時の気相中の酸素濃度および培養時間は研究者間で様々であるにも拘らず、それらが卵子の成熟にどのように影響するかを調べた研究は限られている。そこで、本研究では、成熟培養時の気相中酸素濃度と培養時間が卵子の核成熟動態および胚盤胞への発生能にどのように影響するかを検討した。【方法】供試卵子はICRマウスにウマ絨毛性性腺刺激ホルモンを投与して48時間後に胞状卵胞より採取した。成熟培養は5%ウシ胎子血清、0.23 mMピルビン酸、1 IU/mlブタ卵胞刺激ホルモン、10 ng/mlヒト組み換え上皮増殖因子および、50 &mu;g/mlゲンタマイシン添加したWaymouth's培地に用いて5あるいは20%の酸素を含む気相下で行った。実験1では0-15時間の成熟培養後に核相の判定を行った。実験2では10-17時間の成熟培養を行った卵子を体外受精(TYH培地、5時間、20%酸素下)および体外培養(KSOM培地、120時間、5%酸素下)に供試し、胚盤胞への発生率を調べた。【結果】5および20%酸素下で成熟培養した卵子の卵核胞崩壊は共に培養開始2時間後から見られ、それぞれ培養開始後15および4時間後までに全ての卵子で終了していた。また、第二減数分裂中期(MII期)卵子の出現は共に培養開始7時間後から見られ、その8および3時間後にMII率はプラトーに達した。以上の結果より5%酸素下では20%酸素下に比べて核成熟の進行が同調していないことが示唆された。胚盤胞への発生率は成熟培養時の酸素濃度の影響は認められなかったが、培養時間によって差が見られた。すなわち、両酸素濃度下で10時間培養群(10%)に比べ、12-17時間培養群(30-45%)では有意に高く、12-17時間の成熟培養群間には有意な差は認められなかった。以上の結果より、卵子が十分な胚盤胞への発生能を獲得するためには成熟培養時の酸素濃度に拘らず12時間以上の培養時間が必要なことが示唆された。