著者
野口弥吉
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.101-106, 1960

感温性品種農林11号,胆振早生及び感光性品種農林18号,瑞豊を播種後30℃、,20℃の恒温及び一定期間を基準として交互に30℃.,20℃.の変温に保つて温度の出穂(花芽形成)に対する影響を調べた。その絨果,感温性品種は30℃,区では出穂までに40日,20℃.区では約80日を要し,30℃.→20℃.,20℃.→30℃、,の変温区ではその中間に出穂したが,生育時期に関係なく高温に置かれる期間の長いほど,また低温に保たれる期間の短いほど早く出穂した。従つて高温は出穂を促進する効果のあることが確実となつた。しかし,7月1日及び同8日までの低温処理区の出穂は同時であつた。農林18号は播種後30℃.区では81日,20℃.区では126日で出穂秘し,瑞豊はそれぞれ80日,117日後に開花した。感光性品種の場合も変温区の出穂はそれらの中間となつたが,何れも9月終りまでは出穂が見られず,日長の影響を強く受けることが照明された。一方、品種の如何にかかわらず出葉速度を早める傾向のあることが認められ,出穂に対する温度の影響を詳細に知るためには,その前提として出葉速度と温度の関係を更に究めることが必要であると考えられた。
著者
丹羽 勝 鳥越 則昭 橋本 吉史 古舘 宏
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.p343-348, 1975-12

(1)開花期の異なるダイズ品種相互の間で接木を行ない,穂木の開花日を調査した。播種後約1ケ月を経過した植物を台木とし,播種後約1週間の幼植物を割り接ぎした。穂木の葉は子葉以外はすべて取り去った。 (2)十勝長葉,シソメジロ,中鉄砲,ダルママサリ,Jackson,アキセソゴクの6品種相互の間で36組合わせの接木を行ない,自然日長下で育てた。穂木の開花日は台木に用いた品種によって異なり,台木品種の対照植物の開花日との間に高い正の相関が見られた。穂木に用いた品種による開花日の差は有意であったが,台木品種による差にくらべると小さく,対照植物の開花日との間には有意な相関が見られなかった。しかし,もっとも早生の十勝長葉はどの品種に接がれた場合も,他の品種より早く開花Lた。 (3)穂木の開花日についての分散分析によれば,穂木品種と台木品種の効果の間には交交作用がなく,これら2つの要因が相加的に穂木の開花日に影響を与えていることが示唆された。 (4) 十勝長葉,シソメジロ,白大豆,アキセソゴクの4品種を台木とし,シンメジロ,アキセソゴクの2品種を穂木とした8組合わせの接木を行ない,植物を12時間,14時間,16時間の日長で15回処理し,穂木の開花日を調べた。一般に,穂木の開花日は台木の対照植物の開花日と並行関係にあった。穂木に用いた品種による開花日の差は有意ではあったが,台木品種,日長による差にくらべると小さかった。分散分析の結果によれば,日長,台木品種,穂木品種の間には有意な交互作用が見られ,自然日長下での花成反応とのちがいが示唆された。 (5)要約すると,本実験に用いたダイズ品種の間の開花日の差は,主として葉における花成刺激形成の差によってもたらされ,花成刺激に対する生長点の反応の品種間差は,開花日の品種間差を決定する程大きくはないことが明らかにされた。
著者
Takakazu Matsuura Izumi C. Mori Eiko Himi Takashi Hirayama
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding Science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.601-610, 2019 (Released:2019-12-25)
参考文献数
48
被引用文献数
15

This study examined contents of nine plant hormones in developing seeds of field-grown wheat varieties (Triticum aestivum L.) with different seed dormancy using liquid chromatography—mass spectrometry. The varieties showed marked diversity in germination indices at 15°C and 20°C. Contents of the respective hormones in seeds showed a characteristic pattern during seed maturation from 30-day post anthesis to 60-day post anthesis. Principal component analysis and hierarchical clustering analysis revealed that plant hormone profiles were not correlated with dormancy levels, indicating that hormone contents were not associated with preharvest sprouting (PHS) susceptibility. Indole acetic acid (IAA) contents of mature seeds showed positive correlation with the germination index, but no other hormone. Response of embryo-half seeds to exogenous abscisic acid (ABA) indicates that ABA sensitivity is correlated with whole-seed germinability, which can be explained in part by genotypes of MOTHER OF FT AND TFL (MFT) allele modulating ABA signaling of wheat seeds. These results demonstrate that variation in wheat seed dormancy is attributable to ABA sensitivity of mature seeds, but not to ABA contents in developing seeds.
著者
河野 いつみ 竹内 善信 島野 公利 佐々木 卓治 矢野 昌裕
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.197-203, 2000-12-01 (Released:2012-01-20)
参考文献数
32
被引用文献数
15 21

DNAマーカーによる連鎖地図作成は有用形質に関与する遺伝子のマッピングに不可欠である. 本研究では連鎖地図作成に有効なDNAマーカーを明らかにするために, 遺伝的多様性の低い日本型品種間におけるDNAマーカーの多型検出頻度を比較した. 多型検出には制限酵素断片長多型 (RFLP), 任意増幅断片長多型 (RAPD), 増幅断片長多型 (AFLP) および単純反復配列 (SSR) マーカーを用いた. 日本型15品種間の多型検出頻度は, RFLPマーカーで7.5~17.6%(プローブあたり), RAPDでは4.1~9.4 (増幅断片あたり), AFLPでは1.2~3.9%(増幅断片あたり), SSRでは11.4~34.3%(プライマー組み合わせあたり) となり, マーカーの種類により大きな差が認められた. 多型検出頻度はSSRおよびRFLPマーカーで高く, AFLPでは著しく低かった-RFLPとSSRマーカーにおいては複数の対立遺伝子を検出することができた. 検出される対立遺伝子数を比較すると, RFLPマーカーでは3個以下であったのに対して, SSRでは5~6個の対立遺伝子を識別できるマーカーが存在した. 以上の結果から, 多型検出頻度が比較的高く, 染色体上の位置情報が明らかなRFLPマーカーとSSRマーカーを組み合わせた利用が, 日本型品種間の連鎖解析に有効であると示唆された.
著者
Noriyuki Kuya Jian Sun Ken Iijima Ramaiah Venuprasad Toshio Yamamoto
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding Science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
pp.19003, (Released:2019-10-04)
被引用文献数
10

Direct seeding saves time and labour in the cultivation of rice. However, seedling establishment is often unstable, and yields are lower than in transplanting. Anaerobic germination (AG) is a key trait for improvement of direct seeding of rice. We established a simple and reliable method of evaluating AG in rice breeding. We germinated seeds in distilled water or deoxygenated water and measured coleoptile length several days later; compared the results of each method with survival rate in flooded soil; and used the anoxic water method for QTL analysis and for testing cultivars. Coleoptile elongation in anoxic water and survival rate in flooded soil were significantly correlated (r = 0.879, P < 0.01). A significant QTL, likely to be a major gene (AG1), was found in chromosome segment substitution lines and in a backcrossed F2 population derived from tolerant and sensitive lines. Diverse rice genetic resources were classified into tolerant or sensitive accession groups reflecting their ecotypes. Our study revealed that anoxic water evaluation method saves space and time in a stable environment compared with flooded soil evaluation. It is applicable to QTL analysis and isolation of genes underlying anaerobic germination.
著者
Caren Rodriguez-Medina Alvaro Caicedo Arana Olivier Sounigo Xavier Argout Gabriel Alvarado Alvarado Roxana Yockteng
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding Science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
pp.19011, (Released:2019-08-01)
被引用文献数
30

Cacao (Theobroma cacao L.) is considered a key crop in Colombian social programs aiming at alleviating rural poverty, promoting peace in post-conflict regions and, replacing crops used for illicit purposes. Colombia is thought to be part of the center of origin of cacao; several germplasm collecting expeditions have been implemented, dating back to the 1940s. Despite that history, the first breeding program based on creating, selecting, and releasing full-sib progenies made extensive use of accessions introduced from other countries as parents. A new breeding strategy was adopted in the 1990s, based on mass selection of promising trees (high-yield and disease-resistant) in farmers’ fields, resulting in the selection of clones released to farmers as planting material. In 2012, a new strategy, Recurrent Selection, was adopted by the Colombian Corporation for Agricultural Research, Agrosavia, based on the development of improved populations and allowing the selection of clones at the end of each cycle of recombination. The use of molecular markers is being integrated into this program in order to assist breeders in selecting material. This review provides details about the history and perspectives of the cacao breeding program in Colombia.
著者
新倉 聡 松浦 誠司
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.211-220, 1999-12-01
被引用文献数
2

日本における栽培ダイコンの採種関連形質に関して遺伝的変異を知る目的で, 在来品種を中心に23品種群219系統を用い, 自家不和合性遺伝子S, 自家不和合性程度ならびに一莢粒数を調査した.検定交配ならびにPCR-RFLPによりS対立遺伝子はS^<201>〜S^<237>の37種類が同定された.S対立遺伝子の種類から供試品種群の類別を数量化理論IV類からの主成分分析より試みた結果, 形態形質や古来の地理的分布により従来類別されている品種群との対応は認められず, S遺伝子は日本の栽培ダイコン系統分化に対してほぼ中立であったことが示唆された.自家不和合性程度は, 人工開花自家受粉を行った交配花数あたりの結実莢数, すなわち自殖結実率で評価した.供試系統には0%から100%までの遺伝的変異が認められたが, 品種群間の差は認められなかった.また蕾受粉における一莢粒数では, 0.9〜6.2粒までの遺伝的変異が認められた.なお, これら3形質間には相関関係は認められなかった.以上の結果を基に, ダイコン遺伝資源における採種関連形質評価の重要性と, これら形質の選抜上の留意点について考察した.
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.213-218, 1994

種苗法第12条4・第1項の規定に基づき登録された品種は農林水産省より告示・通達されている.新しく通達された品種について,種苗課の了解を得てその内容の一部を抜粋して紹介する.なお,農林水産省試験研究機関および指定試験で育成された農林登録品種については本誌上で若干くわしく紹介されているので,ここでは登録番号,作物名:品種名,育成地を記すに止める.記載の順序は登録番号・作物名:品種名,特性の概要,登録者(住所):育成者氏名とし,登録者の住所は公的機関については省略し,その他は各号の初めに現れる場合にのみ記載し,登録者と育成者が一致する場合は登録者のみを記載することとする.六号では平成5年3月17日(第2452号~3511号)及び平成5年3月19日(第3512号~3571号)に登録された品種を紹介する.
著者
安藤 敏 高橋 千晶 幾見 京子 増田 彩子 清水 俊雄
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.195-201, 1997

アルファルファ雄性不稔系統(CMS)のオルガネラの遺伝情報を栽培品種に導入するため非対称融合法の検討を行い,その結果,安定して雑種カルスを得る方法を確立した。栽培品種のプロトプラストはヨードアセトアミド(IOA)で処理し,CMSのプロトプラストにはX線を照射したのち電気融合法で非対称融合を行った。栽培品種のプロトプラストはアガロース包埋法で培養した場合,6mMのIOAで処理することでほとんど不活化できた。CMSのプロトプラストのコロニー形成を抑えるには900Gy以上のX線照射量が必要で,他の植物と比べ高いことが明らかとなった。融合処理した細胞はアガロース包埋法で培養したが,この時,培養の最初からナース細胞を加えず,アガロースのまわりにKaoの液体培地のみを加えることにより,不定胚を形成するカルス(embryogenic callus:EC)の出現が確認できた。両親の植物体から全DNAを抽出し,ミトコンドリアDNA(mtDNA)をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行いRFLP(制限酵素断片長多型)を調査した結果,制限酵素XhoIとプローブatpAの組合せで両者を明確に区別できることを見いだした。IOA濃度として3mMと6mM,X線照射量として1350 Gyと2250 Gy,アガロースのまわりに添加する培地としてKP培地とKC培地を選び,それぞれの組み合わせで融合処理と培養を行い,カルス形成,EC形成,植物体の再生およびmtDNAのタイプ毎のカルスの出現割合に及ぼす影響を調べた。その結果,IOAは低濃度(3mM)の方がカルス数,EC数,再生植物体数が多かったが,栽培品種型のエスケープカルスを抑えるためには高濃度(6mM)が必要だった。X線照射量は2250 Gyの方がカルス形成の頻度が高かった。CMSのプロトプラストに2250 Gyという高い量のX線を照射する条件では,核ゲノムだけでなくオルガネラゲノムが破壊されることが懸念されたが,mtDNAの分析からCMS特有のバンドが確認され,この条件が許容されると判断された。細胞質雑種と考えられるカルスの出現割合,及びECや再生植物体数から考えると,IOA 6mMとX線照射量2250 Gyの組み合わせが最もよいと考えられた。MtDNA分析で雑種型と判断されたカルスについてmalate dehydrogenase(MD)のアイソザイム分析を行った結果,CMS特有のバンドをもたず核が栽培品種型であるサイブリッドと考えられるものが得られた。再生植物体についてもmtDNA分析を行ったが,全て栽培品種と同じ型を示し,雄性不稔の形質は導入されていないものと判断された。
著者
町田 芳恵 林 篤司 相良 直哉 七夕 高也 冨田 桂 田野井 真 小林 麻子
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.103-108, 2017-09-01 (Released:2017-09-29)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

炊飯米の外観のうち,つや及び白さを定量できる画像解析ソフトを開発した.炊飯直後の炊飯米をデジタルカメラで撮影して得た画像について,OpenCVを利用した特徴点抽出を行い,特徴点の数を炊飯米のつや評価値とした.同様に画像中の各ピクセルについてL*a*b*色空間のb*値を求め,その平均値の負の数を炊飯米の白さ評価値とした.これらの画像解析によるつや及び白さ評価値は,11品種・系統を用いた食味官能試験における炊飯米のつや及び白さ評価値と有意な正の相関を示した.また少なくとも900万画素以上の画像に対して解析が可能であった.画像解析によるつやと白さの評価値の間には有意な相関はみられなかったが,食味官能試験では,炊飯米のつやと白さの評価値の間には有意な正の相関がみられた.
著者
村山 盛一 大村 武 ・宮里 清松
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.287-290, 1974-12-31
被引用文献数
4

栽培条件によってヘテロシスの発現がどのように変化するかを検討するために,筆者らが従来調査した交配組合せの中から組合せ能力の高いものと低いもの11組合せを選び,実用品種の経済的栽培条件の範囲に含まれる標肥普通植区・標肥密植区・多肥普通植区および多肥密植区の4条件で試験し,つぎのような結果をえた。 1)一般に組合せ能力の高い組合せはどの栽培条件でも高いヘテロシスを示し,組合せ能力の低い組合せはどの栽培条件でも低かった(表1)。 2)各形質のヘテロシスについて栽培条件間の相関係数を求めたところ,千粒重以外の形質については相関は極めて高く,ほとんどが1%水準で有意であった(表2)。 3)平均収量について有意性の検定を行たうと,鈴成×Zenith CI 7787は現品種および対照品種を通じて最高収量を示したベニセンゴクよりも3579/m^2(42%)の増収を示し,統計的に有意であった。愛国×Zenith CI 7787および農林22号×荒木も有意ではないがベニセンゴクよりもかなりの増収を示した(表3)。 以上の結果から,もしF_1種子を容易に大量に採種できる方法が開発されれば,イネの実際栽培におけるF_1雑種利用の可能性が考えられる。