著者
山口 裕文 中尾 佐助
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.32-45, 1975-02-28
被引用文献数
2

栽培植物の近縁野生種や同伴雑草(companion weeds)は作物の進化に重要な役割を果している(HARLAN1965)。雑草系統には品種改良の遺伝子源として重要なものが含まれる。燕麦の育種の基礎的研究として,日本の雑草燕麦をMALZEW(1930)のsystemに従がって分類地理学的に検討した。また,雑草燕麦の適応と日本への渡来について考察を加えた。 1970〜1971年の筆者の蒐集標本と京都大学,東京大学,国立科学博物館所蔵の措葉標本について調査したところ,3種(11亜種);Avena strigosa Schreb. subsp.barbata Thell., A. fatua L. sens. ampl., A. sterilis L.が雑草と認められた。A.fatua L.は7亜種:subsp. septentrionalis, subsp. nodipilosa, subsp. macrantha, subsp. cultiformis, subsp. praegravis から成り,最も多様であった。その内容は25変種,6亜変種,1品種で,このうち3変種(var. pilosiformis, var. hyugaensis,var. nipponica), 4亜変種,(subvar.pumila,subvar. Zine, Subvar. maniformis, subvar. pseudonana),1品種(forma subcontracta)を新分類群として記載した。
著者
釘貫 靖久 中村 幸司 飛騨 健一 吉川 宏昭
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.341-346, 1997-12-01
被引用文献数
3

ハクサイにおいて,小胞子からの胚横体形成能及び植物体再生能の品種・系統間差異を調査した。小胞子1×10^5個当りの胚横体形成数及び植物体再生数に有意差が認められた。日本型ハクサイでは胚横体形成数および植物体再生数が著しく少なかった。`Hsifu Early 30 days'は胚横体形成数が最も多かったが,胚横体からの植物体再生率は低かった。`Hsifu Early 30 days'と比較すると,`Homei'は胚横体形成数は少ないものの,植物体再生数は有意に多かった。また、胚機体形成数と植物体を再生した胚横体の割合との間に相関が認められなかった。これらのことから,胚横体形成を支配する遺伝子と胚横体からの植物体再生に影響を及ぼす遺伝子とは異なっているのではないかと推定された。高再分化能を日本型のハクサイヘ導入するために,`Homei'と`野崎2号'とのF_1を用いて小胞子培養を行った。これら再分化植物のうち,比較的日本型に近い形質を持ち,再分化能が高い系統の選抜が可能であった。このような高い植物体再生能を持つ日本型ハクサイの作出により,日本でのハクサイにおける半数体育種法の適用が容易になると考えられる。
著者
Hsan Sai Aung 重永 昌二
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-12, 1990-03-01

本研究はライコムギに出現する分枝穂の型と出現頻度が,遺伝的背景や播種時期の違いによりどのように影響されるかを明らかにしようとしたものである.八倍体ライコムギ!系統と六倍体ライコムギ11品種・系統(Table1)を,5回の異なる播種期により栽培し,その結果出現した分枝穂の種類と頻度を調査した(Table2).分枝穂の種類は,穂軸分枝による分枝穂と小穂軸異常による分枝小穂に大別され,前者にはHay-fork形分枝穂,Y-fork形分枝穂,および止葉節分枝穂が見られた(Fig.1).また後者では出現部位を穂の基部,中央部,および先端部に分けて記録したが,基部に出現する分枝小穂の頻度が高く(Table2う,バナナ形双生小穂,対面双生小穂,密生分枝小穂,輪生小穂,角穂分枝小穂等の分枝小穂が出現した(Fig.1).分枝穂の多くは正常穂よつも一穏当たり小穂数および小花数が優り,着粒数が優っていたものは4品種・系統,劣っていたものは3品種であった(Table3).分枝穂の播種期別出現頻度は9月10日播種の場合が最も高く,2月13日および10月13日播種がこれに次ぎ,11月23日,12月24日播種の場合は低かった(Table2).9月播種の場合は幼穂形成期の日平均気温が約5℃の低温になること,2月および10月播種の場合もほぼ同程度の低温に幼穂形成期が遭遇すること(Fig.2)が分枝穂出現頻度を高くする原因の一つと考えられる.分枝穂の出現頻度は品種や系統により異なり,八倍体系統は六倍体系統よりもその頻度が高かった.また六倍体の4品種にはどの播種期の場合も分枝穂が出現しなかった.これらのことから,ライコムギには幼穂形成期の低温に遭遇することによって分枝穂を形成し易い遺伝的背景をもつものと,それをもたないものとが存在するように考えられた.しかし染色体構成や細胞質の違いと分枝穂の型および出現頻度との間には明瞭な関係は見いだせなかった.
著者
赤藤 克己 山県 弘忠 森 重之
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.82-87, 1964-07-05

1.1957年キバナコスモスの種子に5kr,10krおよび20krのX線照射を行ない,20kr区の後代より大輪型,矢車型および八重咲型など実用的価値が高いと考えられる二,三の変異体を育成しえた。
著者
島田 多喜子 大谷 基泰
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.212-222, 1988-06-01

日本のコムギ28品種(系統)を含む合計32品種(系統)について葯培養におけるポテト培地の検討をおこない、花粉からの胚状体形成に対する培地の効果、品種間差異、前処理の効果を調査した。一核期の中期から後期の未熟花粉をもつ穂を5℃で7日間処理した後、葯をポテト培地(Potato-2)に置床した。培養1か月で花粉から胚状体が形成され、その頻度は品種によって差があった。農林61号が最も高い胚状体形成率を示し、置床葯当り胚状体を形成した葯は17.1%であった。欧柔、農林12号、ナンブコムギ、Chinese Spring、フクホコムギでも比較的高く、それぞれ、10.9%、6.7%、6.5%、5.1%、5.O%であった。チホクコムギ、エビスコムギ、キタカミコムギでは殆んど胚状体の形成はみられなかった。0から11日間の低温処理後、葯培養した実験では、胚状体形成への低温処理の効果は不安定であった。数品種の葯をポテト培地上で培養した三年間にわたる三回のくりかえし実験の結果から、ポテト培地の有効性は安定であることが分かった。また皮を除いた塊茎をポテト培地の抽出用に用いるより、皮をつけた塊茎を用いる方が、胚状体形成への効果が安定しているようであった。ポテト抽出液の代りに市販のポテトデキストロース寒天培地を19.5g/l添加した培地も有効であった。
著者
秋田 重男 池本 節雄 楠原 操 小林 仁 小野 光幸
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.351-354, 1968-12-31

Selection process and main characters of two strains selected for direct planting were described. Chugoku 18 and Chugoku 25, which are different in root type, root size and growth habit, would provide new point of view in the direct planting cultivation of sweet potato.
著者
湯 陵華 森島 啓子
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.153-160, 1997-06-01
被引用文献数
4

雑草イネとは稲田の中や周辺に雑草として定着しているイネで,直播田で多く報告されている。世界各地で収集された雑草イネ24系統の各種形質およびアイソザイム変異を調査し,その遺伝的特性を明らかにしようとした。繁殖体系に関しては,自然脱粒・自然発芽する自生型と,形態・生態が栽培イネと非常に似ているためイネに混入したまま収穫・播種される作物擬態型の2つのタイプが認められた。また,インド型・日本型への分化が明瞭に認められた。供試系統はインド型的作物擬態型(I群),インド型的自生型(II群),日本型的自生型(III群)に大別されたが,これらは異なる起源を持つと考えられる。作物擬態型は,古い在来品種が持っていた多様な遺伝変異の中から雑草的なものが選抜されて残ったのであろう。野生イネの分布する熱帯の水田地帯で見出される自生型は,野生イネと栽培イネの自然交雑に由来するものと考えられる。野生イネの分布していない地域で見出される自生型系統の起源についてはよくわからないが,目印交雑のような遠縁品種間交雑の分離後代に由来する可能性や,過去に存在した野生イネと栽培イネとの自然交雑の結果生じた可能性などが考えられる。中国長江下流域に自生していた雑草イネ(III群)の成立には,この地域に存在していた可能性の高い日本型的野生イネが関与したと考えることもできる。
著者
明石 良 足立 泰二
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.85-93, 1991-03-01
被引用文献数
1 15

一般にアポミクシス草種と言われているギニアグラス(Panicum maximum Jacq.)は,系統及びその遺伝子型によってアポミクシ又の程度を異にする.本報ではギニアグラスの未熟胚カルスから,高頻度に体細胞不定月三(SE)を形成した結果を示す.また,供試した品種および系統間に差異が認められ,アポミクシスとの関連についても検討を加えた.本実験で用いたギニアグラスは,農業生物資源研究所植物分類評価研究チーム囲場(宮崎市霧島)で保存中のもので,3保存品種及び9系統の計12genotypeを使用した(Table 1).滅菌した豊熟巾の種子から,O.5〜1.0mmの未熟胚を摘出し1Omg・1^-1,4-D,10%CW,O.8%Agarを添加したMS培地により25℃暗黒条件下で培養した(Fig 2).培養30〜40日後,カルスの上部に形成されたSEは解剖顕微鏡下で切り離し,さらにMS培地(1mg・1^-12,4-D,5%CW,0.2%Gelrite)で継代培養を行なった.またSEの発育促進のために1.0mg・1^-1Kinetinと1,Omg・1^-1GA3及び5%CW添加のMS培地に置床した(Fig.3).カルスは,培養後3〜5日目頃,胚の中央部分から形成され,その多くは透明なやわらかいカルスであった.しかし,その後,培養15日目頃には摘出胚の胚盤または中央部に相当する部分から白色でコンパクトなカルスが出現し始め,40日目には,カルスの.上部一面に形成された.さらに培養を重ねるにつれて,それらは突起状の不定胚構造を呈した(Fig 1).品種Petrie及ぴGattonでは,SEの形成卒が他の未熟胚よりも高かったのに対し,S67及びN68/96-8-o 1Oでは低く,N68/84-1-o 8では全く得られなかった(Table1).これらのSEを個別に分離して上述の発芽促進培地に置床したところ,Petrie,Gatton及びNatsuyutakaの3品種からは高頻度で植物体を誘導することができ,SEの形成卒と植物体再分化との間には品種及び系統間で顕著な差が認められた.そこでSE形成卒とアポミクシス程度との関係について調査を行なった(Fig.4).これによると本実験で供試したギニアグラスはSEの形成卒とアポミクシス程度によって3つのグループに分けることができ,その中でもPetrie及びGattonはSE形成卒が高く,さらにはアポミクシスの程度も商い値を示していることが判明した.
著者
太田 泰雄
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.179-183, 1962-10-05
被引用文献数
2

1.トウガラシ辛味成分。apsaicin分泌器官,貯蔵器と辛味の分布および単為結果と辛味の関係について,Capsicum annuum Lに属する4品種を用いて調べた。2.鷹の爪×LargeBell F_1について,貯蔵器と分泌組織を組織学的ならびに顕微化学的に調べた。貯蔵器は長経約O.3〜1.0mmの楕円彩または円形の油泡状で,隔壁と胎座に分布する(第1図)。3.分泌組織は隔壁の表皮組織の一部が二次的に分裂して生じた,縦長で内容に富む細胞群で,capsaicinをその外膜とクチクラの間の小空間(貯蔵器)に分泌する(第2図)。4.鷹の爪×LargeBell F_l,伏見甘長,および大獅子について,果皮,種子,および胎座と隔壁の3部,または果実の頂部,中央部,および基部の3部にわけ,各部のcapsaicin含量を測定した(第1〜3表および第3図)。いずれのぱあいも,胎座と隔壁は果皮および種子に比べてきわめて高い含有率を示した。果皮および種子に若干の辛味成分が認められるのは,隔壁または胎座に分泌された。apsaicinの一部が飛散附着したためと思われる・5.鷹の爪4xの単為結果による無種子果,自然受粉による有種子果,および有種子果から種子を除去した試料についてcapsaicin含有率を測定した(第4表)。capsaicinの分泌は種子の有無と無関係であると考えられた。終りに臨み,終始懇篤な御指導を賜った木原生物学研究所長木原均博士,御鞭縫を頂いた国立遺伝学研究所松村清二博士,たらびに有益た御助言を賜った京都大学教授西山市三博士に深甚な謝意を表する。
著者
滝田 正
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.57-61, 1984-03-01
被引用文献数
1

作期移動による日本水稲品種の出穂早晩性の変動に及ぼす自然温度と日長の影響を,早晩性の異なる6品種について4作期で調べた。北緯36度にあたる筑波の8月1日頃に相当する薄明・薄暮の各15分を含む14.5時間日長区を設定した。自然温度の影響は,14.5時間日長区内における到穂日数の作期間差異とし,自然日長の影響は,同一播種期における自然日長区と14.5時間日長区の到穂日数の差として表わした。5月26日播の普通期栽培を基準とした場合,4月16日播の早期栽培では,全品種とも8月1日以前の長日よりも5〜6月の低温の影響により到穂日数が長くなった。一方6月15日播の晩期栽培では,感光性の高い品種群に。おいて,7〜8月の高温よりも8月1日以後の短日により到穂日数が短縮した。また個々の品種間変動については,感光性が低い早生群では,レイメイは,ホウネンワセよりも感温性カミ小さいために,低温期間の長い早期栽培ではホウネンワセよりも早く出穂し,低温期間の短かい晩期栽培では遅く出穂した。一方,感光性が高い晩生群では,日本晴はワカゴマよりも感光性がわずかに高いために,長日条件の早期栽培ではワカゴマよりも遅く出穂し,短日条件の晩期栽培では早く出穂した。
著者
村井 耕二
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.321-326, 1997-12-01
被引用文献数
2

Aegilops crassa細胞質はいくつかの日本コムギ品種に対し,短日条件下(14.5時間以下)では可稔であるが,長日条件下(15時間以上)では不稔となる日長感応性細胞質雄性不稔(PCMS)を引き起こす(Murai and Tsunewaki1993.1995)。このPCMSを利用することにより,雑種コムギ育成のための「二系法」が提案されている。本報では,PCMS系統およびF_1雑種におけるAe. crassa細胞質の遺伝的影響を明らかにする目的で,短日条件下の野外圃場において,5系統のPCMS系統と手交配により得られた23のF_1雑種(PCMS系統×稔性回復系統)の農業形質を,それらに対応するコムギ細胞質系統と比較した。PCMS系統ではAe. crassa細胞質の影響により,出穂期の遅れ,一穂小穂数の減少,穂先の不稔による種子稔性の低下,しわ種子の混入によるリットル重の減少と発芽率の低下が認められた(Tables 1,2,3, Fig.1,2)。しかし、PCMS系統は平均して69%の放任種子稔性があり,短日条件下における自殖による維持と増殖は可能である。一方,F_1雑種においても,Ae. crassa細胞質は種子稔性の低下をもたらした(Tab1es 4,5)。種子稔性め低下により,一穂粒数および収量は減少するが,千粒重は増加した。また,リットル重には細胞質の影響が現れなかった.PCMS系統でみられたしわ種子が,F_1雑種に認められなかったことは,Ae. crassa細胞質がF_1雑種の粒の生育(外観品質)に悪影響をおよぼさないことを示す(Fig. 3)。細胞質の影響により種子稔性が低下するにも関わらず,F_1雑種は平均して14%の中間親に対する収量ヘテロシスを示した。収量は千粒重よりも穂数および一穂粒数と強い相関があることが明らかになった(Tab1e 6)。
著者
柴田 勝
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.77-90, 1976-06-01

アカマツ,クロマツおよびその種間交雑種であるアカクロマツの分類指標には針葉の解剖学的特性が有効とされているが,それらの遺伝様式は像どんど解明されぬまま使用されてきた。これは材料が天然生であったことに起因するが,これでは分類の正確性と客鰯性に欠ける感がある。そこで材料,分類指標に工夫をこらして新しい分類方法に主成分分析を応用した。ここではダイアレル交雑種を材料にその針葉における16の解剖学・物理学的特性値を変数として使用した。n=30,p=16の相関行列から固有値,固有ベクトル,寄与率および因子負荷最を求めた結果,第3主成分までで寄与率83%を示し情報の大半が説明された。すなわち,第1主成分(2ユ)はアカ河ツ・クロマソ判定因子,第2主成分(Z2)は雑種性判定因子および第3主成分は伸張性に関する因子と考えられた。特性値の分類は因子負荷量を使いZ1.Z2について行なったが,伸び率を除く15特性値の寄与率はきわめて高くZ1,Z2でかたりの情報を提供した。特性値は明らかに4つの因子に分類され特に樹脂道型について新知見を得た。すなわち従来アカマツ型とされていた"外位"をII型、III型およびVI型の3タイプに細分することにより,n型は中間・クロマツ寄り雑種因子を,III型ですらアカマツ寄り雑種因子を示し,VI型のみがアカマツ因子であることがわかった。主成分スコアによる原種および雑種の散布図は特異たブーメラン形分布を示し21軸上では対称的た両親のほぼ中問に位置するアカクロマツが,Z2軸上では最高の値を示してその雑種性の高いことを反映した。特に注目すべき知見は針葉のある特性に母本効果が認められた点であり,針葉の内分泌器管に細胞質遺伝のあることが示され分類学,遺伝学上興味深い問題を提供Lた。以上のことより主成分分析は林木の雑種集団および系統・品種の分類学・遺伝学的研究にきわめて有効であることが示唆された。
著者
石川 貴之 石坂 宏
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, 2002-03-01

Alstroemeria ligtu L. hybrid(LH, 2n=2X=16), A. pelegrina L. var. rosea(PR, 2n=2X=16)およびそれらの雑種(2n=2X=16,3X=24,4X=32)について,花粉母細胞の染色体対合とギムザCバンドパターンを調査した.LHおよびPRの花粉母細胞減数分裂の第一中期における染色体の平均対合数は,それぞれ0.04I+7.98IIと0.08I+7.96IIであった.花粉母細胞は正常に分裂し,それぞれ98.4%,94.9%と高い花粉稔性を示し,自家受粉により成熟種子を形成した.LH×PR(2n=16)の花粉母細胞の第一中期における二価染色体対合頻度は低く,平均対合数は11.18I+2.41IIであった.この雑種では,花粉母細胞の第一後期,第二後期および小胞子の一核期初期において,高頻度で染色体橋や小核が観察され,0.6%の低い花粉稔性を示し,自家受粉および両親種への戻し交雑により成熟種子を形成しなかった.一方,LH×PRの複二倍体(2n=32)の花粉母細胞の第一中期における二価染色体対合頻度は高く,平均対合数はO.82I+15.59IIであった.この複二倍体の花粉母細胞は正常に分裂し,86.3%と高い花粉稔性を示した.自家受粉により成熟種子は形成されなかったが,LHとの正逆交雑により成熟種子が形成された.また,二基三倍体(2n=24, LH×複二倍体およびPR×複二倍体)の花粉母細胞の第一中期における染色体の平均対合数は,それぞれ8.24I+7.85II+0.02IIIと8.58I+7.66II+0.03IIIであった.これらは花粉母細胞の第一後期,第二後期および小胞子の一核期初期において,高頻度で染色体橋や小核が観察され,それぞれ14.8%と13.0%の花粉稔性を示した.自家受粉により成熟種子は形成されなかったが,LHにLH×複二倍体による二基三倍体を交雑した場合のみ成熟種子が形成された.ギムザCバンド法により,LHでは花粉母細胞減数分裂の第一中期の8本中7本の二価染色体,第一後期の8組中7組の染色体からCバンドが観察されたが,PRでは観察されなかった.これらのCバンドを有する染色体は,種間雑種,複二倍体および二基三倍体でも認められた.
著者
西 貞夫 川田 穣一 戸田 幹彦
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.215-222, 1959-03-20
被引用文献数
4

1.はい培養法の利用によって従来著しく困難とされたBrassica属cゲノムとaゲノム間の種間雑種を比較的容易に育成することができた。2.はくさい(野崎2号,春播野崎,4倍体野崎,松島純2号,さんとうさい)を母本とし,かんらん(中野早春,増田晩生)を花粉親とした組合せにおいては,交配花数2,925に対し結きよう数1,998で種子7を得た。'収穫種子はいずれも大粒で傾母個体を生じたが,その他のさやでは子房が十分に発育することたくしぼみ,はいの退化も早く現在の技術では培養の可能性が低いものと3.B.alboglabra x B.oleraced(中野早春)のF_1を母本とし,はくさい(下山千歳)を花粉親とした組合せでは,155花の交配を行ない,交配約40日後に8個の幼はいを摘出した。これらをWHITEの処方を修正した培地で培養し,3個体の交雑植物を得た。さらに他のはくさい(野崎2号)を花粉親として身50花を交配し,約1か月後に46個の幼はいを摘出,これを培養して22個体の交雑植物を得た。対照として交配後放任したさやからは大粒種子6粒を得たがすべて傾母個体を生じた。4.母本にかんらん(中野早春),花粉親にはくさい(野崎2号)を用いた組合母では,533花の交配より生じた395のさやより約1か月後に30個の幼はいを摘出培養し,これより5個体の交雑植物を得た。対照として1,273花を交配後放任したものからは637のさやを生じたが種子は全く得られなかった。この交雑植物は合成はくさいの育種素材として有用と考えられるほか,合成はくさい育成過程の遺伝的解明,はくさい,かんらん相互の核置換育種およびnapus型結球そ菜の育種にも有用と思われる。5.以上の培養はいは不整形で容易に正常たはいと区別できる。培養により得た植物の形態は両親の中間型を示し交雑種であることが明らかであったが,その特性,染色体数,ねん性等については追って報告する。
著者
小野 敏忠
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.207-211, 1973-08-31
被引用文献数
1 1
著者
河村 重行 岩崎 文雄 細田 友雄
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.146-152, 1974-06-29

1)花粉発芽の基礎的実験の一つとして,花粉粒内の糖含量が植物の種類・花粉の発育時期によりどのように異なるかを調査した。2)実験にはホーセンカ,ペチュニア,コスモス,菜類およびアサガオの花粉を主として用いた。3)糖類の検出はヨード・ヨードカリ法,Periodic Acid Schiff法およびFluckigen法で行った。4)その結果,同一植物の花粉でも発育時期によって糖の種類や含量に差が認められた。5)一般に花粉の発育初期から成熟する重での過程でデンプン含量は減少するが単糖類の含量は増加する傾向がみられた。6)ホーセンカ,ペチュニア,アサガオはデンプン,多糖類,単糖類の含量が比較的多く,特にPAS反応とFluckigen法で検出される糖類が顕著であった。これに対しコスモス,菜類はデンプン,多糖類,単糖類とも検出されたが,とくにFluckigen法で反応する糖類の含量は少なかった。7)無添加の寒天培地に発芽させたところ,ホーセンカとペチュニアはよく発芽するが菜類,コスモス,アサガオは発芽がわるかった。このことから単糖類と発芽との関係をさらに調べることにした。
著者
西山 市三 藤瀬 一馬 寺村 貞 宮崎 司
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.261-268, 1961-12-25

1)さきにK123(I.trifida)は栽培甘藷に最も近縁な野生植物であることを明らかにしたが(西山・藤瀬・寺村・宮崎1961),さらに著者らはKユ23の生理生態的特性に関して甘藷との比較研究を行肢った。(2)K123は系統または生育条件によって,根部および茎葉部の生育などはかなりの変異をしめす。一般には甘藷にきわめて近似しているが,他方では明らかに相異Lているともいえる。(3)K123は自然状態で一般に開花数はそれほど多くないが,少数の系統は7月頃,多数の系統は9月頃から開花しはじめる。さらに接木および接木短日併用処理のような人為処理は,系統で程度の差はあるが一般に開花開始日を早め開花数を増加する。(4)柱頭上での花粉発芽試験によって,自家ならびに交雑不和合性を検定した。K123の20系統のうち17系統は自家不和合性,2系統は不完全た自家和合性,1系統は自家和合性をしめした。20系統間の交雑不和合性の検定結果から,およそ7つの不和合群がえられた。さらにK123の18系統が甘藷の4不和合群と交雑和合性をしめし,2系統は正逆の両方または一方で甘藷の不和合群との間に不和合性をしめした。(5)K123の一部の系統が線虫ならびに黒斑病に低抗性をしめしている。