- 著者
-
北野 英巳
蓬辰 雄三
- 出版者
- 日本育種学会
- 雑誌
- 育種學雜誌 (ISSN:05363683)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.1, pp.9-18, 1981-03-01
- 被引用文献数
-
2
水稲砧種フジミノリに^<60>C0,γ線を照射して育成した半矮性突然変異品種レイメイおよび優性突然変異系統ふ系71号を用いて,優性遺伝子の形質発現と生育温度の関係について原品種との比較検討を行った。1977年,これら3品種(系統)を人工気象室において3温度区(高温区;昼間30.C一夜間25℃,中温区;23℃一18℃,低温区;16℃一12℃)を設け,さらに各温度区にそれぞれ3段階の施肥量区(基肥区,1回追肥区,2回追肥区)を設けて栽培を行った。その結果,施肥効果に関しては品種(系統)問で特異的な反応は認められたかったが,生育温度に関しては3系71号が明らかに他の2品種と異った反応を示した。すなわち,フジミノリおよびレイメイは,本実験で用いた温度範囲において,高温になるにしたがって稈の伸長が促進されたのに対し,ふ系71号は,中温区より高温区で短稈化した。また温度の低下に伴って相対的に原品種フジミノリの生長に近づく傾向を示した。1978年,ふ系71号およびフジミノリを用いてきわめて高い温度条件下(45℃一30℃)で処理を行った結果,高温による稈の伸長抑制の効果は両品種(系統)ともに認められたが,ふ系71号でより顕著であった。さらに,このようなきわめて高い温度処理条件下では,穂の伸長も強く抑制され,かなりの不出穂個体が出現した。また生育温度の違いにより両品種(系統)における稈の節間比も大きく変動した。一般に,高温下では上部伸長型を,低温下では下部伸長型の節間比を示し,この傾向はフジミノリよりふ系71号において顕著であった。稈長および穂長以外の他の形質に関しては,ふ系71号と他の品種の問に顕著な温度反応に関する差異は認められなかった。以上の結果から,ふ系71号の矮性遺伝子による稈の伸長抑制作用は高温条件下で強くあらわれ,低温条件下ではほとんどあらわれなくなることを認め,そしてそれにより稈程の伸長に関して他の品種とは異った特異的な温度反応を示すことを明らかにした。