著者
高津 康正 眞部 徹 霞 正一 山田 哲也 青木 隆治 井上 栄一 森中 洋一 丸橋 亘 林 幹夫
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.87-94, 2002
被引用文献数
1

21種のグラジオラス野生種について特性調査および育種素材としての評価を行ったところ, 草丈, 葉数, 葉·花の形態, 小花数および開花期等には種によって大きな違いがみられた. また草丈が10cm程度で鉢物に利用可能なもの, 現在の栽培種にはみられない青色の花被片を有するものなど, 育種素材として有望な野生種が見出された. 香りを有する種は全体の52.3%を占め, 香りのタイプもチョウジ様, スミレ様などさまざまであることが示された. さらにこれらの野生種について到花日数, 小花の開花期間, 稔実日数および1さや当たりの種子数を調査し育種上重要な情報を得ることができた. フローサイトメトリーによる解析の結果, 野生種においては細胞あたりのDNA含量が多様で, 種によってイネの0.9∼3.5倍のゲノムサイズを有するものと推定された. 本法による倍数性の判定は困難であるが, 種の組合せによっては交雑後代の雑種性の検定に利用可能であることが示唆された.
著者
朝野 尚樹 小曽納 雅則 野口 健 伴 義之
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.63-69, 2008-06-01
参考文献数
14

現在、作物におけるDNA分析による品種識別技術については、稲、いちご、いんげんまめ、イグサ、茶、おうとう等において、育成者権侵害紛争の早期解決や食品表示の適正化等の現場で利用されるまでに至っている。品種識別に用いられる技術としては、RAPD、AFLP、CAPS、SSRが上げられるが、実際の現場では、上記方法のうちRAPD-STS、CAPS、SSR等が実用化されている。本研究において、品種識別に利用したSSRは、2〜6塩基を単位とした反復配列であり、ゲノム中に多数散在している。一般的に共優性であり、反復単位の繰り返し数の変異性が高く、アリル数が多いため、一つのSSRマーカーで複数の品種の識別が可能であり複数のSSRマーカーを用いることにより品種識別能力が非常に高くなる。また、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所において品種判別、親子鑑定などDNA鑑定を高精度で行うことを目的として、ナシ品種を対象としたSSRマーカーのデータベース(果樹研究所ホームページ「DNAマーカーによる果樹・果実の品種識別」を参照)が報告され、おうとう等、ナシ以外の果樹への適用も可能である。本研究では、日本国内で栽培されているバレイショのDNA分析による品種識別能力の向上を目的とし、9種類のSSRマーカーを用い、のべ193品種のDNA分析を行い、品種特性等を補完したバレイショのDNA品種識別用データベースを作成したので報告する。
著者
武田 和義
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.191-193, 2006-12-01
被引用文献数
1
著者
安藤 敏 高橋 千晶 幾見 京子 増田 彩子 清水 俊雄
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.195-201, 1997-09-01
参考文献数
20
被引用文献数
1

アルファルファ雄性不稔系統(CMS)のオルガネラの遺伝情報を栽培品種に導入するため非対称融合法の検討を行い,その結果,安定して雑種カルスを得る方法を確立した。栽培品種のプロトプラストはヨードアセトアミド(IOA)で処理し,CMSのプロトプラストにはX線を照射したのち電気融合法で非対称融合を行った。栽培品種のプロトプラストはアガロース包埋法で培養した場合,6mMのIOAで処理することでほとんど不活化できた。CMSのプロトプラストのコロニー形成を抑えるには900Gy以上のX線照射量が必要で,他の植物と比べ高いことが明らかとなった。融合処理した細胞はアガロース包埋法で培養したが,この時,培養の最初からナース細胞を加えず,アガロースのまわりにKaoの液体培地のみを加えることにより,不定胚を形成するカルス(embryogenic callus:EC)の出現が確認できた。両親の植物体から全DNAを抽出し,ミトコンドリアDNA(mtDNA)をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行いRFLP(制限酵素断片長多型)を調査した結果,制限酵素XhoIとプローブatpAの組合せで両者を明確に区別できることを見いだした。IOA濃度として3mMと6mM,X線照射量として1350 Gyと2250 Gy,アガロースのまわりに添加する培地としてKP培地とKC培地を選び,それぞれの組み合わせで融合処理と培養を行い,カルス形成,EC形成,植物体の再生およびmtDNAのタイプ毎のカルスの出現割合に及ぼす影響を調べた。その結果,IOAは低濃度(3mM)の方がカルス数,EC数,再生植物体数が多かったが,栽培品種型のエスケープカルスを抑えるためには高濃度(6mM)が必要だった。X線照射量は2250 Gyの方がカルス形成の頻度が高かった。CMSのプロトプラストに2250 Gyという高い量のX線を照射する条件では,核ゲノムだけでなくオルガネラゲノムが破壊されることが懸念されたが,mtDNAの分析からCMS特有のバンドが確認され,この条件が許容されると判断された。細胞質雑種と考えられるカルスの出現割合,及びECや再生植物体数から考えると,IOA 6mMとX線照射量2250 Gyの組み合わせが最もよいと考えられた。MtDNA分析で雑種型と判断されたカルスについてmalate dehydrogenase(MD)のアイソザイム分析を行った結果,CMS特有のバンドをもたず核が栽培品種型であるサイブリッドと考えられるものが得られた。再生植物体についてもmtDNA分析を行ったが,全て栽培品種と同じ型を示し,雄性不稔の形質は導入されていないものと判断された。
著者
横尾 政雄 菊池 文雄
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.641-648, 1992-09-01
被引用文献数
1

Upland rice has been left without intensive studies on the inheritance of agronomic traits unlike lowland rice and there were very few reports on the genetic analysis of heading time. Since the Lm locus having multiple alleles controls primarily the varietal earliness and lateness of lowland rice (YOKOO et al. 1980), this report examined the role of the Lm locus in heading time of six native upland rice varieties. Under the natural day-1ength, the lowland rice tester lines ER with the early-heading gene Lm^e and LR with the late-heading allele Lm^u headed 84 a:nd 105 days after sowing, respectively. Four upland rice varieties. Kurumi-wase, Hideri-shirazu, Kyushu and Wase-dango-mochi, headed at almost the same time as ER. Kuroka-mochi headed intermediately between ER and LR, and Kirishima did two days later than LR.
著者
神戸 三智雄 藤本 文弘 水上 優子 稲波 進 深谷 勝正
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.347-351, 1997-12-01
参考文献数
16
被引用文献数
1

アルファルファ菌核病(Sclerotinia trifoliorum Eriks.) は,晩秋から早春にかけて発病し,茎腐れ症状を呈し,株立ちを減少させる重要病害である。この病害はクローバ,レンゲなど他のマメ科車種にも罹病する多犯性病害であることから抵抗性品種の育成は難しいとされてきたが,循環選抜により抵抗性育種が可能であることを明らかにした。ほ場条件で人工接種による抵抗性検定法を開発し,愛知育成のナツワカバ,タチワカバ及びフランス,アメリカから導入した1O品種・系統による約3,000個体を基礎集団として,1983年から集団選抜と母系選抜を9世代繰り返した。各世代の選抜強度は2.0〜7.0%,集団の大きさは55〜100個体としてランダム交雑し(Table 1),選抜1世代から9世代に当たるSR 58-1〜SR 58-9の選抜系統について抵抗性検定を2回の試験に分けて実施した。ほ場検定における1〜5世代系統の生存率についてみるとSR 58-1,SR 58-2では12.4%,17.6%と低く,基礎集団の一部としたナツワカバと差がなかった。3世代系統から高くなり,5世代系統のSR 58-5は57.6%の最も高い生存率を示した(Table 3,Fig.1)。5-9世代系統の検定ではSR 58-5の42.4%に比べSR 58-9は62.9%の明らかに高い生存率を示した(Table 4)。ファルコナーの方法による累積選抜圧と選抜反応との関係から実現ヘリタビリティを求めると初期世代はh^2=0.078と低かったが,3〜9世代ではh^2=O.364と高い値を示した(Fig.4)。このことから,基礎集団では菌核病の抵抗性に関与する遺伝子の働きは小さく,その頻度も低いため,1,2世代の選抜ではほとんど抵抗性の向上が認められなかった。しかし,選抜を繰り返すことによって集団内の抵抗性遺伝子の頻度が高くなり,9世代系統のSR 58-9では大きな選抜反応が得られたと考えられた。
著者
武田 和義
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.205-211, 2005-12-01
参考文献数
25
被引用文献数
3
著者
Cruz Normita de la KUMAR Ish KAUSHIK Rajendra P. KHUSH Gurdev S.
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.299-306, 1989-09-01
被引用文献数
2

米のアミロース含量,湖北温度およびゲルコンシステンシーに及ぼす登熟気温の効果を明らかにするために,5段階のアミロース含量(糠,極低,低,中および高)を代表する31品種を,IRRIのファイトトロン内4つの温度条件(21/25,29/21,33/25および37/29℃)下で生育させた.食味に関するこれら3要素の豊熟気温に対する安定性について分散分析した結果,品種効果,温度効果および品種と温度との交互作用はいずれも有意であった.また交互作用項では,回帰の品種間差(線型成分)および残差(非線型成分)が共に高い有意性を示したが,線型成分は誤差に対してだけでなく非線型成分に対しても有意であった.これは,登熟気温に対する各要素の反応が,品種によって大きな差のあることを示唆している.一般に,登熟気温の上昇に伴って,アミロース含量は低下した.全ての糯品種およびほとんどの高アミロース品種では,アミロース含量に対する品種と温度との交互作用が認められなかった.一方,アミロース含量極低,低および中の品種は,登熟気温に感応性(回帰係数のみ有意)あるいは不安定(回帰係数と残差共に有意)であった.糊化温度およびゲルコンシスチンシーについても,多くの品種では温度との交互作用が認められなかった.糯品種のIR29およびMalagkit Sungsong ならびに高アミロース品種IR42は,3要素全てについて最も安定していた.本研究の結果から食味および広域適応性の両形質に関する育種戦略を考えると,アミロース含量極低〜中レベルの品種育成については,環境効果による食味諸要素の変動が認められるので,選抜の場が重要な意味を持つことになろう.
著者
中村 郁郎 亀谷 七七子 山中 慎介 加藤 裕介 城守 寛 佐藤 洋一郎
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.385-388, 1997-12-01
参考文献数
19
被引用文献数
10

植物細胞に含まれる葉緑体は,光合成原核生物であるらん藻の共生により生じたと考えられている(Pa1mer1993)。特に,リボゾームタンパク質遺伝子rpl16とrpl14は,陸上植物の葉緑体の起源を考察する上で興味深い領域の一つである。すなわち,らん藻や紅藻類の葉緑体では,rpl16とrpl14の間に共通な2遺伝子(rpl29とrps17)が介在しているが,陸上植物10種の葉緑体では,rpl29-rps17は欠失し約100塩基のリンカー配列を挟みrpl16とrpl14が隣り合っている(Fig.1)。この事は,原始植物が上陸した時に欠失が生じ,植物の種分化にともないrpl16-rpl14のリンカー配列は単一配列から変異してきたことを示唆している。rpl16およびrpl14は,イネ,タバコ,ホウレンソウの3種の間で84%以上の高い相同性を示したが,リンカー配列のホモロジーは28%と低いことが認められた(Fig.2)。rpl16およびrpl14の保存領域に対する1対のプライマーを作製し,イネ,ヒエ,リンドウ,カシから抽出したDNAをテンプレートとしてPCR反応を行ったところ,約550塩基のDNA断片が増幅され,ダイレクト法により塩基配列を決定できた。そこで,rpl16の終止配列を含む下流50塩基の配列を葉緑体型を特定するためのID(PS-ID)配列として利用できないか検討した。データベース検索および本研究で決定した各葉緑体のPS-ID配列を比較したところ,塩基置換に加え,機能のある塩基配列では起こりにくい短い欠失/挿入およびSlippage等の多様な変異が生じていることが認められた。各PS-ID間の塩基置換を数えたところトウモロコシとヒエで3カ所,インゲンマメとリョクトウで4カ所,ホウレンソウとエノテラで14カ所であった。また,興味深いことにインド型イネは,日本型イネに比べて2力所で3塩基のSlippageが認められた(Table 1)。本研究で提案したPS-ID配列の検出法は,配列の知られていない高等植物種の葉緑体を共通プライマーを用いて解析できる可能性が高く,さまざまな植物についてPS-ID配列を集積しデータベース化できれば,植物系統進化学,古生物学および植物育種等に広く応用できるものと考えられる。
著者
斎藤 清
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.385-389, 1969-10-31

Recently, Ixia is grown on a small scale for cut-flowers in oup country. Twenty-two commercial varieties were used to examine the somatic chromosome numbers, fertility, and other habitual characteristics. Six varieties were diploid (2n=20), 8 triploid (2n=30) and the rest were tetraploid (2n=40). Tetraploids, as well as most of the triploids, had larger flowers and prettier colors, and showed considerably higher fertility than diploids. Some varietal and inter-specific crosses succeeded in the mixed state with diploids, triploids, and tetraploids levels. So, it was assumed that these tetraploids and triploids would be of allopolyploid constitutions.
著者
後藤 虎男
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.114-115, 1971-04-30
著者
飯塚 宗夫 セイソ ラボ レミヒオ マドリガル
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.151-158, 1978-06-01
被引用文献数
1

高等植物の花器諸器官は世代交代の上からみて最も重要な機能を持ち,蕚,花弁,葯,花糸,雌蕊,花盤など,それぞれ属・種の特徴ある形態に分化している。これら,花結諸器官は,もちろん,もとをただせば,同一の遺伝質をもった細胞から構成されているはずである。本研究はこのような花器諸器官を置床し,カルス形成,新器官や新個体の分化,分化個体の特性などについて調べ,分化に関する基本的諸知見を得ると共に,急速増殖,変異の誘発など育種面への応用的技術の開発を目的としている。材料には,ハナヤサイ,ミドリハナヤサイ,ハボタン,カンラン,コカブ,ハナダイコン,ミノワセダイコンおよびウォールフラワーなどアブラナ科植物を選んだ。置床はこれら材料の花弁,葯,花糸,雌蕊,花盤(花托)を用いてそれぞれ行ない,カルス形成,分化の様相をみた。この際,まず花粉形成の進みぐあいを目やすとした供試蕾齢と培地上における分化の難易度を見た。その結果,花粉四分子〜1核期の葯を持つ蕾からとった花器の諸器官から得られた成績が最もよかった。したがって他の実験にもこの発育期の蕾を用いた。培地は,MURASHIGE and SK00G(1962)を基本とし,これにIAA,IBA,2,4-D,6-BAR(箪1表),時によりイノシン(10^<-5>M)を添加調整した。カルス形成は,蒲を置床した場合,軽度に見られるに過ぎないが,他器官を用いた場合には容易に行われ,特に花弁と花盤では極めておう盛であった。この場合,培地としては,2,4-D(10^<-5>M)を単独添加したM59,または6-BAR(10^<-5>M)との併用添加によるM.60がよく,ついでM.56,M.61などであった。
著者
中川 元興 渡辺 進二
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.260-264, 1957-03-25

15 crosses were used to study on the inheritance of kernel texture in wheat varieties which affects mealy and glassy of kernels and results were shown in table 1 and figure 1. From these results, the inheritance of kernel texture was proved to be influenced by factors in the generation of F_2 seed. The method of testing of kernel texture may be described as follows : After harvested, each kernel of parents and F_2 Seed was cut off middle part of kernel (cross section) by razer blade on the glass plate, and cross section of kernel was magnifyed by the magnifying glass (2. 5 fold) and selection which was made after a thorough comparison can be classified as follows. Glassy kernel (G) decided to select completely glassy, semi-glassy kernel (g) was selected almost parts (over 80%) of cross section were occupied by glassy, semi-mealy kernel (m) are occupied by mealy over 80% and mealy kernei (M) completely mealy. Segregation ratios was compared with glassy (contained G and g) and mealy (contained M and m). The results of segcrregation ratios to lernel texture of F_2 Seed generation, the factor hypothes and factor analysis were applied in this report as mentioned above. Results obtained may be summerized as follows.
著者
鵜飼 保雄 大澤 良 斉藤 彰 林 武司
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.139-142, 1995-03-01
被引用文献数
10

核DNAの制限酵素断片長多型(RFLP)やランダム増幅多型DNA(RAPD)などのDNA多型を利用して,多くの作物で連鎖地図の作成が進められている.またDNA多型連鎖地図を利用して量的形質遺伝子座(QTL)の解析をおこなう方法がいくつか開発されている (Lander and Green1987,Lander and Botstein1989). 連鎖地図作成はDNA多型でも通常の形質の場合(Bai1ey1959)でも原理的には同じである.しかし,前者では利用できるマーカー数が著しく多いうえに,それらの同時分離データが得られるので,それらの情報を総合的に活用してきわめて詳細な連鎖地図を作成することが可能となっている.しかしマーカー数が多いので単にマーカー間で組換価を求めるだけでも莫大な計算量が必要となる.またマー力一の連鎖群内順序の決定などでは大行列の逆行列や固有値の計算が含まれる.さらにQTL解析には,収束した推定値を得るまでに大量の反復計算が要求される.このようなことからDNA多型利用による連鎖地図作成とその育種的利用にはコンピュータ支援が不可欠である.
著者
江口 恭三 前原 為矩
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.39-48, 1979-03-01

近年沖縄県下で古い在来種タバコの子孫と思われる12の自生タバコの種子が蒐集されたが,これらの蒐集系統について,形態特性ならびに主要病害に対する抵抗性を調査するとともに育種素材としての有用性を検討した。これら蒐集系統の問にはきわめて広範な形態変異がみられ,草丈は95.3cmから171.9cm,葉数は9.8枚から17.3枚,葉型指数は0.471から0.764まであり,葉型には有柄と無柄,花色にはピンク,白,ピンクと白の絞りの3種類があった。病害抵抗性については,いずれも黒板病とうどんこ病にはある程度の低抗性を示したが,立枯病にはほとんどが罹病性で,疫病には高度抵抗性から罹病性まで広範な変真が認められた。従来わが国の在来種の中には疫病に対して高度な低抗性を示す品種はみつけられておらず,本試験で高度な低抗性を示した系統は育種素材として有用であると推察された。