著者
近森 淳二 長岡 豊 森 隆 井内 敬二 飯岡 壮吾 南城 悟 沢村 献児 渡辺 幸司 差 健栄 横山 邦彦 瀬良 好澄
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, 1974-12-30

50才男子.石綿の混綿工の職業歴あり.昭和49年4月9日.石綿肺に合併せる左下葉肺癌の診断にて左下葉切除術施行.術後約1ヵ月頃より原因不明の消化管出血を来し,術後75日目に死亡した.剖検により胃体部に2箇,空腸に1箇,後腹膜に小児手拳大の癌腫を認めた.組織学的にはいずれも肺と同様の低分化型腺癌であった.しかし肝転移,胃周囲臓器の所属リンパ節転移および癌性腹膜炎を認めなかった点から,石綿肺に合併せる多発性癌腫(胃,空腸,肺および後腹膜)と考えられる.
著者
上田 英憲 大藤 真 菅田 洋 山根 正隆
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.347-348, 1973-12-25

患者は33才の男.昭和47年3月9日突然血痰を喀出し,某医を受診し,胸部X-Pで右肺の巨大な腫瘤陰影を指摘された.全身状態良好,第2外科で手術を受けた.腫瘤は胸壁胸膜,横隔膜と癒着し,肺は無気肺状態であった.大きさは小児頭大で,嚢腫様で内容は古い血液様物質であった.組織学的にはコラーゲン様物質の間質組織であった.本症の原因は明らかな外傷の既往もなく,不明と考えられる。
著者
吉村 克俊 山下 延男 石川 七郎
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.301-308, 1978-09
被引用文献数
1

日本TNM分類肺がん委員会は1972年以来の肺がんについて「新肺カード」による全国登録を行っている.1972・1973・1974年次分の3年間の症例のうち組織診のある2,493例について,性別,年令別,組織型別,治療法別および日本臨床病期などの観点より臨床統計を行い,全国規模での資料を求め得た.
著者
遠藤 正浩 高田 佳木 高月 清宣 吉村 雅裕 坪田 紀明 指方 輝正
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.191-195, 1999-04-20
被引用文献数
1

極めてまれな縦隔原発の平滑筋肉腫を経験したので,画像所見を中心に報告する.症例は69歳の女性で,労作時呼吸困難と胸部異常陰影を主訴に来院した.胸部X線写真で縦隔影の拡大と右胸水が指摘された.CTとMRIでは,中から後縦隔に中央部がくびれた雪だるま状の圧排性進展の腫瘍を認め,腫瘍内部は不規則に造影され,間葉系の悪性腫瘍,特に悪性神経鞘腫や平滑筋肉腫などを疑った.画像上圧排性発育が主体で,全摘除の可能性が高いこと,さらに呼吸困難が急速に進行しているなどの理由から手術を施行した.腫瘍はほぼ完全に摘出でき,術後は患者の呼吸器症状は完全に消失した.病理学的には,免疫組織化学や電顕的観察の結果より平滑筋肉腫と診断した.
著者
薄田 勝男 斎藤 泰紀 相川 広一 桜田 晃 陳 炎 遠藤 千顕 菅間 敬治 佐藤 雅美 佐川 元保 藤村 重文
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.875-881, 1994-10-20
被引用文献数
9

症例の寄せ集めといった人為的影響を極力排除するため, 一定地域で一定期間内で, tumor doubling time(DT)の検討可能な原発性肺癌例をいかなるselectionも行わないで収集し, それらを対象としてDTの分布および臨床病理学的特性を検討した.1)DTの対数変換後の分布は, 歪度が0.7204, 尖度が-0.0643と小さくなり, DTは対数正規分布に従がった.2)症例のDTは最小30日, 最大1077日であり, DTの算術平均は163.7±177.5日, 幾何平均は113.3日であった.3)DTの平均値は, 男性例が女性例に比較し, 喫煙例が非喫煙例に比較し, 有症状例が無症状例に比較し有意に短かった.またDTの平均値は, 扁平上皮癌および未分化癌が腺癌に比較し, T2, T3およびT4例がT1例に比較し, III期例がI期例に比較し有意に短かった.DTは密接に他の予後因子と関係していた.
著者
田代 隆良 後藤 純 重野 秀明 後藤 陽一郎 黒田 芳信 那須 勝
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.11-17, 1988-02-20
被引用文献数
11 3 28

原発性肺癌患者56例の血清CA19-9濃度を測定した.初診時・治療前の陽性率は16%, 経過中最高値をとっても30%とCEAにくらべ低かった.血清濃度は腺癌とくに気管支腺型腺癌で著増し, 免疫組織化学的にも大量のCA19-9の局在が認められた.しかし、血清濃度と組織内局在とは必ずしも相関せず, 腫瘍の大きさや血管浸潤などが関与しているものと思われた.
著者
山崎 明男 益田 貞彦 大瀬 良雄 田原 稔 中原 和樹 薬丸 一洋
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.871-875, 1998-12-01
被引用文献数
1

症例は62歳、男性。1996年11月に胸部異常陰影を指摘され、当科に入院した。既往歴には高血圧で降圧薬服用があった。胸部X線、CT上、左上葉に45x25mmの辺縁不整な腫瘤影を認めた。全身検索のために行った腹部CTでは、左副腎に内部不均一一影があった。血中、尿中ホルモン値、腹部MRI、1231-MIBGシンチを行い、術前に褐色細胞腫と診断できた。術中、術後の血行動態を考慮し、褐色細胞腫の手術を先行させ、2期的に肺癌の手術を施行する事とした。1997年1月27日、左副腎・腫瘍摘出術を施行した。腫瘍は、副腎外発生であったが、副腎への浸潤はなかった。この手術の1ヵ月後の1997年2月27日、左上葉切除術、肺門縦隔リンパ節郭清(R2b)を施行した。病理は低分化腺癌、術後病理病期は、pT3NOMO stageIIBであった。上葉切除の術中、術後の血行動態は安定しており、安全に管理する事ができた。褐色細胞腫を合併した肺切除では、褐色細胞腫の手術を先行させる事により安全に手術ができると考えられた。
著者
木滑 孝一 千原 明 栗田 雄三 原 義雄 広野 達彦 汐崎 公太 鈴木 正武 角田 弘
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.133-134, 1974-06-25

17才男子.4ケ月前より咳噺喀疾,血疾,発熱,胸痛あり来院.R324万,Hb9.6g/dl.Ht23%.血沈1時間6mm,胸部X線では右上肺野に境界鮮明,均一な円形陰影を認め,気管支造影で腫瘍は右上幹内腔へ突出し,右B_1が閉塞中断していた.内視鏡では右上幹はBlutcoagulaに破れた腫瘍により完全に閉塞されており,その下に黄白色の腫瘍実質も認められた.生検を行ったが悪性所見は否定されたが組織型は不明であった.肺良性腫瘍と診断し49年1月7日右上葉切除を行った.腫瘍は8×6×7cm,薄い被膜に破れ,割面は黄白色,比較的軟い.組織学的に平滑筋腫と診断された.リンパ節転移(一)本症例は文献上19例目にあたると思われる.
著者
鈴木 喜裕 小川 伸郎 石和 直樹 伊藤 隆明
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.283-287, 2002-08-20
被引用文献数
8

背景.われわれは肺門リンパ節癌にて,リンパ節切除後に原発巣を切除した稀な症例を経験したので報告する.症例.症例は41歳男性.右肺門部リンパ節未分化癌の術後経過観察中,7年目のCTにて右S^6に小結節を認めたため右肺癌疑いにて2000年1月7日手術を施行した.結節は大きさ約10mmでS^6に存在し,迅速診断で腺癌と診断され,下葉切除とリンパ節郭清を行った.病理組織学的には中分化腺癌で一部低分化像を示し,前回のリンパ節組織像と類似していた.また免疫染色で,surfactant apoprotein(SA-P)はいずれの腫瘍も陰性,p53蛋白はいずれの腫瘍も過剰発現が認められた.また肺癌の組織診断マーカーとして有用とされているthyroid transcription factor-1(TTF-1)はいずれの腫瘍も陽性であった.組織像や免疫染色の結果から臨床所見および経過を考慮すると,今回の病変を原発巣とする肺癌のリンパ節転移と考えられ,病期はpT1N1M0 stage IIA と診断した.肺切除後2年になるが無再発生存中である.結論.原発不明肺門リンパ節癌に対しての治療としては,積極的にリンパ節切除およびリンパ節郭清を行い,長期にわたる厳重な経過観察を行い原発巣が認められたならば,原発巣の切除を行うことが良いと思われる.
著者
藤井 昌史 大奥 泰亮 杉山 元治 占部 康雄 高杉 健太 町田 健一 村上 直樹 木村 郁郎
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.119-126, 1977-06-25

肺癌患者の細胞性免疫能把握のパラメーターとしてPHAによるリンパ球幼若化反応,ツベルクリン反応,末梢リンパ球数,Leucocyte migration inhibitiontestについて検討した.その結果これらのパラメーターと肺癌の進展度あるいは癌化学療法による臨床経過との一問に関連性がうかがわれた.同時に溶連菌剤OK-432投与における検討から本剤の免疫化学療法における有用性が示唆された
著者
山下 良平 寺畑 信太郎 角田 清志
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.771-775, 2000-12-20

再発時に肺動脈幹内への高度浸潤進展を示した肺原発悪性線維性組織球腫(MFH)の1例を経験した.症例は70歳女性.1995年5月15日, 左肺下葉の長径6.5cmの腫瘍に対して下葉切除術を行い, 病理学的にstoriform-pleomorphic typeのMFHと診断された.術後経過良好であったが, 98年6月, 左肺門部での再発が明らかとなった.画像所見上, 腫瘍が左肺動脈幹内へ浸潤進展している像を認めたが, 遠隔転移の所見がなかったため, 98年7月10日, 残存肺摘除術を行った.切除標本では, 肺門部に暗赤色の充実性腫瘍が, 多結節状に集簇発育しており, その一部は左肺動脈幹内へと連続性に進展していた.術後は呼吸不全を合併したが, 10月17日, 軽快退院した.その後の経過は良好であったが, 99年7月, 造影CT上, 右肺動脈幹内に血栓を思わせる陰影欠損を認め, 再々発腫瘍が, 右肺動脈幹内へ浸潤進展したものと考えられた.99年9月17日, 死亡した.MFHなど肺原発の肉腫は元来まれであるが, これらの腫瘍では本例で見られたような肺動脈内腔への高度の浸潤進展を示すことがある.従って肺腫瘍において肺動脈血栓類似の所見を見た場合には, 鑑別疾患上, MFHなどの肉腫も考慮すべきと考える.
著者
則行 敏生 奥道 恒夫 木村 厚雄 赤山 幸一 古賀 理恵 武島 幸男
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.25-30, 2004-02-20
被引用文献数
1

背景.悪性胸膜中皮腫は比較的稀な腫瘍であり,画像所見,胸水所見からの診断は困難なことが多い.好酸球性胸水を呈したgranulocyte-macrophage colony-stimulating factor (GM-CSF),granulocyte colony-stimulating factor(G-CSF)産生性悪性胸膜中皮腫の1例を報告する.症例.65歳,男性,2002年7月29日右胸背部痛のため当院入院となった.胸水,血液検査,胸部CT所見より好酸球性胸水(胸膜炎)と考えられ,ステロイド内服による診断的治療が施行されたが症状の進行を認めたため,9月17日胸腔鏡下胸膜生検を施行し,悪性胸膜中皮腫(二相型)と診断した.また,経過を通じて白血球,好酸球増多を認め,血清G-CSFは50pg/dl と高値であり,抗GM-CSF抗体,抗G-CSF抗体による免疫染色では腫瘍細胞のほとんどの細胞質と約5%の細胞質にそれぞれ陽性像を認めたことよりGM-CSFおよびG-CSF産生性腫瘍と診断した.腫瘍の進行,全身状態の悪化を認め,11月27日在院死となった.剖検で悪性胸膜中皮腫の壁側臓側胸膜,心外膜,横隔膜,腹膜,小腸,大腸への進展を認めた.結論.炎症反応陽性,治療抵抗性難活性胸水を認めた場合,悪性胸膜中皮腫も疑い早期に胸腔鏡下生検で確定診断を行うことが必要であると考えられた.
著者
秋葉 直志 山下 誠 佐藤 修二 永田 徹 山崎 洋次
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.589-593, 2002-10-20
被引用文献数
1

目的. インターネットを通して受け付けた呼吸器外科関係のセカンドオピニオンを求める質問内容から肺癌患者あるいは家族の心情や訴えを考察した.方法. 呼吸器外科, 肺癌のウェッブサイト上にセカンドオピニオンの請求を受け付けたところ,1998年5月から2001年2月までの間に386人から430回の質問があり,これを検討・分析した.結果. 電子メールの質問が87%を占めた.質問の病名は原発性肺癌が79%を占め,疑いを加えると87%を占めた.男性が女性の1.9倍であった.患者年齢は16歳から90歳で平均が61.7歳,50歳から79歳が82%を占めた.質問者は男性が女性の0.94倍で,患者の子からが60%であった.内容は今後の治療方針に関するものと標準的治療に関するものが最多で59%,標準治療以外の治療方針についてが18%であった.不満が67人(17%)あり,他の病院の情報を尋ねるのが55人(14%)で,その他,説明が不十分,入院あるいは手術までの待ち時間が長いなどがあった.結論. 患者や家族の質問のほとんどは治療方針に関するものであり,肺癌などの悪性腫瘍の治療に満足していない.医師と患者・家族とのコミュニケーションは良好ながら,特に子とのコミュニケーションに改善の余地がある.主治医の治療方針や説明に不安があり,専門家の意見を望んでいる.
著者
福瀬 達郎 有安 哲哉 張 謙益 室恒 太郎 水野 浩 神頭 徹 青木 稔 田村 康一 和田 洋巳 人見 滋樹
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.829-834, 1991-10-20
被引用文献数
4

当科に於ける過去17年間の肺癌総手術症例733例中, 40歳未満の若年者肺癌手術症例は24例(3.3%)であった.最年少は17歳女性で, 30歳未満は全例腺様嚢胞癌であった.性別は, 女性7例(29.2%)で肺癌手術症例全体での女性25.2%に比しやや多い.発見動機は, 検診が9例(37.5%), 有症状例が15例で, 症状の内訳は, 咳嚇が9例と最も多かった.若年者の非喫煙者の率は33.3%と総手術例の17.1%に比し有意に高かった.組織型は腺癌が10例と最も多く, 扁平上皮癌は少なかった.病期はI期11例, II期1例, lIIA期6例, IIIB期5例, IV期1例であり, 進行癌は50.0%で全体の59.6%に比しやや少なかった.手術は絶治12例, 相治6例, 相非2例, 絶非2例, 試験開胸2例であった.手術成績は, 5生率74.1%と良好で, 病期別ではI期列は5生率100%だったが, IIIA期例は5生率0%と悪かった.検診例に進行癌は比較的少なく, 予後良好であった.
著者
宮本 修 古瀬 清行 福岡 正博 楠 洋子 川合 旭英 塩田 憲三 嶋崎 昌義
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, 1973-06-25

症例は58才,女性で,昭和45年11月喀血と胸痛で発病.胸部X線写真では右下肺野は蜂窩状を呈し,S^10の部位に鏡面像を認める.断層写真ではS^9・S^10の部位に種々の大きさの嚢胞状陰影があり,明確な腫瘤陰影はなく,嚢胞の上壁に接して帯状の均等陰影がみられる.気管支造影像はB^6の尖形閉塞,B^9B^10の念珠状拡張を示すが,嚢胞との交通はなく,気管支鏡検査で大細胞癌と診断された.抗癌化学療法も効果なく,昭和46年8月13日死亡した.剖検所見は右S^8発生の肺癌で,それに接し多数の壁の薄い嚢胞が認められる.組織学的には,腺癌が主体を占め嚢胞壁は一部正常気管支上皮の部位もあるが,大部分は癌細胞で被われ,その下に平滑筋の層を認める.腫瘤に接する部位では,この筋層を破り癌の増殖による連絡が成立している.反対側にも発育異常と思われる気管支拡張症があり,この肺癌は気管支拡張性の嚢胞から発生したものと考えられる.