著者
岩崎 泰憲 小沢 修一 山口 真弘 山本 哲郎 橋本 兼太郎 麻田 栄
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, 1974-12-30

最近の6年間に,われわれの教室で切除が行われた転移性肺腫瘍は8例である.その内訳は絨毛性腫瘍2例(1例は6年2ヵ月,1例は3年8ヵ月生存中),骨肉腫(4年生存中),グラビッツ腫瘍,胃癌,子宮癌,後腹膜悪性間葉腫,ウイルムス腫瘍の各1例である。最近3回にわたって切除を敢行したウイルムス肺転移例をも経験した.われわれの転移性肺腫瘍に対する切除方針についてのべる.
著者
金光 真治 高尾 仁二 藤永 一弥 小野田 幸治 下野 高嗣 新保 秀人 矢田 公 並河 尚二
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.301-306, 2003-08-20
参考文献数
11
被引用文献数
4

目的・方法.癌の診断技術や治療法の進歩に伴い,生存中に重複癌が発見される機会が増加している.そこで1968年から2000年12月までに当科で経験した原発性肺癌切除例1361例のうち他臓器重複癌(三重複癌12例を含む)を伴う90例(6.6%)について臨床像と治療成績を検討した.結果.男女比は3:1(三重複癌症例はすべて男性)であった.喫煙指数が1000以上の重度喫煙者は重複癌症例では27例(32%),三重複癌症例では12例中10例(83%)であった.肺癌手術時年齢は,重複癌症例は平均64.5歳,三重複癌症例は平均70.7歳であった.重複癌臓器では胃,大腸,喉頭,乳腺,膀胱,子宮の順で頻度が高かった.死亡原因は肺癌での死亡が最も多く,肺癌先行症例での肺癌切除後の5年生存率は75.0%,他臓器癌先行症例では60.1%,同時性発症例では14.5%であり,異時性発症例に比べ同時性発症例の予後は不良であった.結語.原発性肺癌を含む重複癌患者の重度喫煙者は高率であった.したがって,第1癌の経過観察と同時に他臓器癌,特に喫煙と因果関係が強い臓器に対して注意深い観察が必要であると思われた.(肺癌.2003;43:301-306)
著者
稲村 宏紀 桐生 拓司 松井 英介 大橋 信子 星 博昭 叶 宗一郎 尾関 雄一 尾形 利郎 設楽 芳範 桑野 博行
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.195-199, 2001-06-20
参考文献数
13
被引用文献数
1

【目的】肺癌検診におけるCTの有用性の検討【対象・方法】最近4年間に当院に人間ドック目的で入院した男性1335人, 女性19人の合計1354人. 年齢は22歳から66歳で平均48.3歳である. 検査項目は問診, 喀痰細胞診, 直接胸部単純写真(以下胸単), 胸部X線CT(以下CT)である. CT導入前の胸単のみの検診1281人と比較する.【結果】CTを用いた検診では1354人中5人(0.37%)の肺癌が発見された(10万人対369). 内訳は高分化型腺癌3例, 低分化型腺癌1例, AAH1例であった. 低分化型腺癌の1例はMissed caseである. いずれも胸単では指摘できなかった. 一方, CT導入前の胸単のみの検診では肺癌は発見できなかった. 【考察】胸部CT検診の早期肺癌発見における有用性の報告は多くの施設によりなされている. 今回我々の検討では, 対象は比較的若年層であり, 通年検診症例である. CT導入前の肺癌発見が1281例中0例に対し, 導入後は1354例中5例であり1例を除き早期肺癌であった. 費用効果などあらゆる側面からCTの有用性を検討すべきであり, また対象とする集団の年齢構成や職種などにより適切な検診方法を検討すべきである.
著者
山本 光伸 松本 博志 三井 利夫 吉村 敬三 森田 豊彦
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, 1975-03-30

症例は,集団検診で発見され,その直後より胸痛発現.手術中の迅速診断ではshabdo myosarcomaであったが,胸水の細胞診と,切除標本の最終診断は,malignant mesotheliomsであった.患者は20年間豆腐屋をしており,ニガリを扱っていた.
著者
町田 淳 山本 二三子 早坂 晃一 熱海 明 石戸谷 武
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, 1973-06-25

症例は60才の男性肺癌に癌性心のう炎を併発し,心タンポナーデを惹起した.そのまま放置すれば,恐らく数時間ないし一両日中に死亡したと思われた.しかしこれに対して,心のう切開術を施行することにより,患者の苦痛を著しく軽減させ,また僅か45日間ではあったが,延命効果を得ることができた.野木によれば,悪性腫瘍の2〜15%に,心のう内転移を認めるという.この点からも,胸部X線所見,細胞診などにより,的確に診断し,適宜の治擦,特に心タンポナーデを起した癌性心のう炎に対して,心のう切開術を施得することは,有意義であると思われる.
著者
水谷 文雄 長尾 啓一 山口 哲生 吉田 康秀 山口 豊 渡辺 昌平
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.171-178, 1985-04-30
被引用文献数
9

全国病理剖検輯報により若年者肺癌の動向をさぐり, 自験例他験例1141例より若年者肺癌48例(4.2%)を抽出し, 臨床的検討を加えた.男26例, 女22例で, 組織型は腺癌が39例(81%)であった.非喫煙者は半数以上を占め, 喫煙との関連性は乏しかった.発病より専門医受診までの遅れ, 結核との誤診等が, 受診・診断・治療の遅れとなった.若年者の中間生存期間は10ヶ月であり, 非若年者との間には生存期間に有意差は認められなかった.
著者
木村 文平 城所 達士 橋爪 満 駒形 清則 時光 昭二 山岸 光夫 大石 不二夫 佐藤 信英 大和 剛
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.1021-1027, 1990-12-20
被引用文献数
2

大多数の一般市民が日常診療を受ける場としての地域病院,診療所において肺癌を早期発見治療するための診療の組織化を試み,切除211例となったため,協同診療体制の効果について検討した.7病院16診療所が連携して1個の肺外科を共有し,呼吸器グループに胸部X-pを集中して読影,共同して早期診療に努めた.症例の特徴として,年齢層が高くI期例とくにp-Tl例が多く,腺癌が多く,他疾患診療中の発見例が多く,5年生存率は全体で46%であった.地域医療機関の組織化により,肺癌の早期診療を大幅に充実させうると考えられる.
著者
小泉 孝子
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.832-834, 2002-12-20
参考文献数
1

<B>目的</B>.「健康宝珠山村21」の計画策定を前に, 資料づくり及び保健事業の見直しを考え, 肺がん検診の問題点を把握し, 今後の事業推進に生かすことを目的としています. <B>研究計画 (方法)</B>. 1) 宝珠山村人口動態調査死亡票, 2) 宝珠山村疾患別医療受診統計 (毎年5月分診療費), 3) 宝珠山村肺がん検診受診状況, 上記3項目の1994年から, 2001年までを調査し分析しました. <B>結果・結論</B>. 35%の高齢社会の宝珠山村では, 脳血管障害等の予防に追われるうちに, 肺がんが高齢者に増加しています. 生活習慣が山村も都市化したことが考えられますが, 70歳以上の高齢者は, 農林業の傍ら炭鉱と関わっていたことが原因ではないかと考えます. 今後聞き取り調査等で分析が必要と考えます. 受診率を高くするには, 各種団体と連携をとり効率的な検診の実施と, 住民と十分な協議を重ね, 検診受診の環境づくりが必要と感じます.
著者
福田 泰樹
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.17-25, 1999-02-20

高槻市・島本町で行われている肺がん個別検診の効果を知る目的で,当科で診療した肺癌患者396例について,居住地(高槻市・島本町)(T/S群)とその他の地域(Oth群))と初診日(1990年以前(ear1y群)と1991年以後(1ate群))とから,合計4群(earlyT/S群,1ateT/S群,ear1yOth群,1ateOth群)に分け,予後をretrospectiveに比較検討した.検診外発見例に限った中問生存期間/5年生存卒はそれぞれ各群,47.4週/11.6%,74.9週/23.5%,45.7週/16.5%,40.9週/9.1%で,1ateT/S群の予後は各群に対して有意に勝れていた(p=0.0184〜0.0363).同地域では1991年以後,検診外発見において肺癌の発見時期が早まった結果と考えられた.理由の一つとして,ユニークな検診体制をとる同地域の肺がん個別検診が副次的に同地域の肺癌診療レベルを向上させた可能性を指摘した.肺がん個別検診の評価は,精度管理指標に加えて肺癌診療レベルの向上など地域に還元される副次的効果でも行う必要があると考えられる.