著者
稲塚 新一
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.133-143, 1982-05-20
被引用文献数
1

チャバネゴキブリに対する嗅覚的忌避性を評価しうる新しい方法として, 試験管法とビーカー法の2法を考案した.試験管法は, チャバネゴキブリの排泄物の付着した汚染濾紙を誘引源に利用し, 試験管中で供試化合物を処理したペーパーディスクに対するゴキブリの忌避反応の有無により検定する方法である.ビーカー法は供試化合物を含む試料を処理し, ビーカー中のゴキブリ数の変動により, 空間的な侵入防止効果および追い出し効果の有無を検定する方法である.これらの方法を用いて, 公知のゴキブリ忌避物質および天然精油の嗅覚的忌避性について検討した.α-naphthoquinone, 2, 3, 4, 5-bis(⊿^2-butenylene)tetrahydrofurfral, 2-hydroxyethyl-n-octylsulfideおよびnaphthaleneの公知の忌避物質は, 試験管法では, 低濃度で忌避効果を示したが, ビーカー法では2-hydroxyethyl-n-octylsulfideが弱い忌避効果を示したのみで, 他の化合物には有効な忌避性が認められなかった.一方, 天然精油では, Japanese mint oilおよびspearmint oil(native typeとScotch type)が顕著な嗅覚的忌避効果を示した.また, 蚊に対し強い忌避性を有すると報告されているcitronella oilなどの天然精油には強いゴキブリ忌避性が認められなかった.calamus oilなど数種の天然精油に性別による忌避性の差異が認められた.
著者
宍戸 孝
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.Special, pp.465-473, 1978-12-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
50
被引用文献数
1 1

This review summarizes recent research on the metabolism of pesticides by GSH conjugation, the role of this reaction in pesticide selectivity in mammals and plants, and characteristics of GSH S-transferases. GSH conjugation occurs with organophosphorus insecticides, γ-BHC, organothiocyanate insecticides, s-triazine herbicides, thiocarbamate sulfoxides, fluorodifen, EDB and monofluoroacetic acid. GSH S-transferases are widely distributed in mammals, birds, fishes, insects, plants and microorganisms. The highest activity is found in the mammalian liver and microorganisms are low activity. Plant enzymes are very stable. GSH S-transferases from mammals and insects comprise a group of enzymes which have overlapping substrate specificities. Chemical structures possessing an electrophilic center, high SN reactivity, and the reactive center of low electron density can conjugate readily. The formation of a GSH conjugate destroys the biocidal properties of the parent molecule. The function of GSH S-transferases may be regarded as biological protection against electrophilic foreign compounds which have the capacity to bind to biological molecules with nucleophilic centers. The qualitative and quantitative differences in GSH S-transferases distributed in various organisms are closely associated with insecticide or herbicide selectivity and insecticide resistance. Dichloroacetamide antidotes act in corn to induce GSH and GSH S-transferase, resulting in rapid detoxication of thiocarbamate sulfoxides.
著者
冨澤 元博 大塚 博子 宮本 徹 山本 出
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.49-56, 1995-02-20
被引用文献数
6

シビレエイ電気器官のニコチン性アセチルコリンレセプターイオンチャンネル複合体へのイミダクロプリド関連化合物を含む各種リガンドの効果について, アセチルコリン(ACh)認識部位のプローブである[^3H]α-ブンガロトキシンおよびイオンチャンネル内のアロステリック部位のプローブである[^3H]フェンサイクリジンを用いたラジオレセプターアッセイにより検討した.ニコチン, アナバシン, カルバコールおよびシチシンはアゴニストであり, DMPP, コニイン, ネライストキシン, d-ツボクラリンはACh認識部位とアロステリック部位の双方に作用し, フェンサイクリジン, TCP, クロルプロマジン, メカミラミン, ロベリンおよびトリメタファンはアロステリック部位に作用する非拮抗的遮断薬であることを認めた.イミダクロプリド, 6-クロル-PMNIおよびアセトアミプリドは弱いアゴニスト作用を示したが, NMTHT, ニテンピラムなどには弱いアゴニスト作用とともにイオンチャンネル内に存在するアロステリック部位への弱い作用が認められた.
著者
多和田 真吉 福田 雅一 スアン トラン・ダン デバ ファラ
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of pesticide science = 日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.40-43, 2008-02-20
被引用文献数
1 30

沖縄では二種類の熱帯植物,ギンネム(Leucaena leucocephala)およびゲットウ(Alpinia zerumbet)の総合利用に関する研究が展開されてきた.ギンネムはタンパク質含量が豊富で飼料としての高い可能性を有している.しかし,摂取すると動物に害をもたらすミモシン(β-[N-(3-hydroxy-4-pyridone)]-α-aminopropionic acid)が存在するために利用が制限されていた.無毒化酵素のミモシナーゼをギンネムの葉から精製し,アミノ酸配列を決定することをもとにcDNAのクローニングを行った.ゲットウからの精油製造と繊維単離の工程で生じる多量の残渣および残液が廃棄されている.新鮮なゲットウの葉もしくは根,そして残液から精油,dihydro-5,6-dehydrokawain,および有用な抗酸化抽出物を得る抽出方法を開発した.
著者
Andrew J. Crossthwaite Aurelien Bigot Philippe Camblin Jim Goodchild Robert J. Lind Russell Slater Peter Maienfisch
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
pp.D17-019, (Released:2017-07-29)
参考文献数
158
被引用文献数
51

ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は,カチオン選択性細孔の周囲に配置された5つのタンパク質サブユニットからなるリガンド作動性イオンチャネルである.いくつかの天然および合成殺虫剤は,nAChRと相互作用することによってその効果を表す.ここでは,ネオニコチノイドとその関連化合物の標的害虫に対する薬理作用についてまとめた.無脊椎動物に内在するnAChRを構成するサブユニットの量比は不明であるが,昆虫の受容体調製物において,ネオニコチノイド結合部位の存在が明らかにされ,これら殺虫剤は広範囲のnAChRに対して異なる薬理作用を表すことが示された.スピノシンは,主に鱗翅目のような咀嚼害虫を防除するために使用されるに対して,ネライストキシン類縁体は接触および浸透作用を介してイネおよび蔬菜害虫に使用されるが,これら殺虫剤の薬理作用は特有で,ネオニコチノイドの薬理作用とは異なる.
著者
日本チバガイギー株式会社農薬本部開発普及部登録課 株式会社エス・ディー・エスバイオテック企画開発部
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.307-309, 1986

カルブチレートの安全性評価のための各種毒性試験の結果, 本剤は急性毒性がきわめて低く, 眼に原体ではきわめて軽度の刺激性を有するものの皮膚に対してはまったく刺激性を有しない. また, 亜急性毒性試験での本剤の最大無作用量は15mg/kg/日 (雄) であり, 細菌を用いた変異原性試験はいずれも陰性を示した.<br>本剤は造林地下刈用および非農耕地用除草剤としてそれぞれ昭和57年および58年に農薬登録され, これらの分野で有用な資材の一つとなっている.
著者
稲塚 新一
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.145-154, 1982
被引用文献数
1 3

日本ハッカ油およびスペアーミント (スコッチタイプ) 中の忌避性成分の分離・同定を行なった. ガスクロマトグラフで分取を重ね, 効力試験を行ない, ほぼ単一成分である活性分画を得た. GC-MS, IR, NMR, 比旋光度, 屈折率の測定により, 日本ハッカ油の活性成分として (-)-limonene, (-)-menthone, (-)-menthol および (+)-pulegone を, また, スペアーミント油 (スコッチタイプ) の活性成分として (-)-limonene および (-)-carvone を同定した.<br>さらに, それらの光学異性体である (+) 体およびラセミ体には, 弱い活性しか有していないことがわかった.<br>活性を示す化学構造として cyclohexane 環の4位のイソプロピル基およびイソプロペニル基, および, C<sub>1</sub>・C<sub>2</sub> (あるいはC<sub>1</sub>・C<sub>6</sub>) の2重結合の立体配置が大きく関与していることが考えられた.
著者
青木 篤 西田 〓 安藤 満 吉川 博治
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.S125-S131, 1994-08-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1 4
著者
ファイザー製薬株式会社農産事業部農産開発部
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.S323-S325, 1992-11-20 (Released:2010-08-05)

酒石酸モランテルの安全性評価のため各種毒性試験を行なった.その結果, 本剤の急性毒性は比較的弱く, 普通物に該当する. 眼に対する刺激性はわずかに認められたが, 薬剤の希釈により刺激性は軽減した. また, 皮膚に対する刺激性はなかったが, 皮膚感作性は陽性であり, 皮膚にアレルギー反応を生じる可能性があると判断された. 一方, 6か月毒性試験では高用量群 (27,500ppm) において, 死亡例の発生, 体重の減少, 摂餌量の減少, 剖検時の全身性の消耗, 諸器官の萎縮性変化などがみられたが, 本剤投与による特異的な変化は認められなかった. 変異原性は陰性であった. また, 催奇形性に関しても問題はなかった.酒石酸モランテル液剤であるグリンガードは昭和57年11月に登録を取得した. また, 8%液剤であるグリンガード・エイトは昭和61年7月に登録を取得し, マツノザイセンチュウの侵入・増殖を阻止して松枯れを防止する樹幹注入剤として使用されている.酒石酸モランテルは, 定められた使用基準を遵守すれば, 安全性が確保されるものであり, 松枯れを防止する有用な農薬として上市以来好評を得ている.
著者
佐々木 満 松尾 憲忠
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:21870365)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.259-260, 2019-08-20 (Released:2020-05-16)
被引用文献数
1 1
著者
葛西 隆則
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.S61-S68, 1993-05-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
15
著者
Stagnari Fabio Onofri Andrea Covarelli Gino
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.339-343, 2006-08-20
参考文献数
21

中部イタリアの2カ所におけるコムギ圃場試験をおこない,植物油あるいは鉱油を散布液に添加することで,クロジナホッププロバルギルの処理薬量を標準量の1/2に減らしてもカラスムギ,クサヨシに対して十分な防除効果が得られることがわかった.植物油と鉱油の効果に,大きな差はなかった.ただしライグラスの十分な防除のためには,油を添加しても標準量の散布が必要であった.ジクロホップメチルとフェノキサプロップPエチル混合剤の場合は,カラスムギに対してのみ,油添加により処理薬量を標準量の2/3に減らすことができた.しかし,この混合剤はクサヨシに対しては効果がなく,ライグラスに対しては,油を添加しかつラベル記載の最高処理薬量を散布した時にのみ有効であった.
著者
日本特殊農薬製造株式会社開発本部技術部
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.641-645, 1990-11-20 (Released:2010-08-05)

各種毒性試験を実施し, プロチオホスの安全性評価を行なった.プロチオホスのラットとマウスに対する急性毒性は比較的低く, 普通物に相当した. 眼および皮膚に対する一次刺激性と皮膚感作性は軽度であった. 一方, 亜急性毒性および慢性毒性/発癌性試験では, 高用量投与群において, ChE活性の阻害, 体重増加抑制や一部の臓器重量の増加等の変化がみられたが, 特定の病変は認められず, 発癌性も認められなかった. また, 繁殖性に及ぼす影響, 催奇形性および変異原性は認められなかった.プロチオホスは昭和50年9月に45%乳剤および2%粉剤の登録を取得し, その後水和剤, 微粒剤F等も登録された. 登録保留基準値は, 果実0.1ppm, 野菜0.1ppm, いも類0.05ppm, 豆類0.05ppm, 茶5ppm, てんさいおよびさとうきび0.5ppm, 夏みかんの外果皮5ppmと設定された.プロチオホスは定められた使用基準を遵守すれば, 安全性が高い薬剤であり, 農業資材の一つとして有用であると考えられる.
著者
稲塚 新一
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.133-143, 1982-05-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
12
被引用文献数
4 4

チャバネゴキブリに対する嗅覚的忌避性を評価しうる新しい方法として, 試験管法とビーカー法の2法を考案した. 試験管法は, チャバネゴキブリの排泄物の付着した汚染濾紙を誘引源に利用し, 試験管中で供試化合物を処理したペーパーディスクに対するゴキブリの忌避反応の有無により検定する方法である. ビーカー法は供試化合物を含む試料を処理し, ビーカー中のゴキブリ数の変動により, 空間的な侵入防止効果および追い出し効果の有無を検定する方法である. これらの方法を用いて, 公知のゴキブリ忌避物質および天然精油の嗅覚的忌避性について検討した.α-naphthoquinone, 2, 3, 4, 5-bis (Δ2-butenylene) tetrahydrofurfral, 2-hydroxyethyl-n-octylsulfide および naphthalene の公知の忌避物質は, 試験管法では, 低濃度で忌避効果を示したが, ビーカー法では2-hydroxyethyl-n-octylsulfide が弱い忌避効果を示したのみで, 他の化合物には有効な忌避性が認められなかった.一方, 天然精油では, Japanese mint oil および spearmint oil (native type と Scotch type) が顕著な嗅覚的忌避効果を示した. また, 蚊に対し強い忌避性を有すると報告されている citronella oil などの天然精油には強いゴキブリ忌避性が認められなかった. calamus oil など数種の天然精油に性別による忌避性の差異が認められた.