著者
三瀬 勝利
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.217-226, 2006 (Released:2014-03-15)
参考文献数
11

Anxiety about bioterrorism attack using contaminated foods and drinks has increased in recent years. The attack is classified into two categories on the basis of differences in the targets, i. e., direct attack on human being and indirect attack on the economy. The characteristics of microorganisms and toxins which will be used for the attack are summarized and reviewed, together with medical products to minimize the effects of the biological weapons. Among more than 100 candidates for the weapons, Bacillus anthracis, a spore-forming bacterium , should be most dangerous, because of the high toxicity and extreme stability. The bacterium had been already used for the bioterrorism attacks on postal clerks, journalists, and others in USA in 2001. Botulinum toxins, as well as enterohaemorrhagic Escherichia coli, shigatoxins, and Francisella turarensis, are also important candidates for the attack on foods and drinks. Several difficulties in protection of the bioterrorism attack in Japan are briefly discussed in this paper.
著者
渡部 恂子 池田 なぎさ 水谷 潤 佐藤 直子 金 世琳 平井 智子 有賀 秀子
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-8, 1998 (Released:2015-10-31)
参考文献数
26
被引用文献数
1

中国内蒙古草原地帯における伝統的発酵乳エードスンスー, アイラグおよびチェゲーのの3種類から計10試料を採取し, 理化学性状の分析と微生物の分離同定を行った。また, 製法が類似しているカルピス酸乳との関連性を検討した。内蒙古発酵乳10試料ならびにカルピス酸乳のすべてから乳酸菌と酵母が分離された。理化学性状の分析結果から, エードスンスーは発酵が緩慢であるため, 乳酸やアルコールの生成量が少なく, アイラグは製法や原料の違いで成分組成や微生物叢に差異が見られた。チェゲーは原料乳が馬乳であるため成分組成は他の発酵乳と異なったが, カルピス酸乳の主要菌種であるLactobacillus helveticusが優勢に分離された。アイラグの数試料からはL. helveticusのほかヘテロ発酵乳酸桿菌が分離され, カルピス酸乳との類似性が示唆された。また, アイラグ, チェゲーからケフィール粒の構成菌であるLactobacillus kefirgranumが多数検出された。
著者
河村 あゆみ 田中 正之 牛嶋 隼也 中井 壱 峯口 祐里 福田 健二 浦島 匡
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.44-48, 2019 (Released:2019-04-26)
参考文献数
10

京都市動物園で出産した飼育したキリン個体より,各種の泌乳時期の乳の回収をおこない,成分組成を分析した。分娩後55日の常乳における成分組成は以下のとおりであった;1.8%炭水化物,8.7%脂質,7.0%タンパク質,1.1%灰分。これらの値は牛乳の成分組成と比べたとき,脂質とタンパク質の濃度は高い一方で,炭水化物の濃度は低かった。乳の固形分濃度は分娩後66日で急速に低下していたが,これはキリンの固有の特徴と考えられた。この固形分濃度低下は,この時期に仔が母乳を摂取しながら固形食(カシ,ネズミモチなどの葉)の同時摂取を開始することとの関連が示唆された。これらは,キリンの仔に代用乳を摂取させなければならないケースにおいて,貴重な情報になるであろう。
著者
小松 恵徳 玉井 茂 豊田 活 中岡 明美 辻 直樹
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.41-49, 2012 (Released:2014-03-15)
参考文献数
21

The authors received an award from the Japanese minister of Agriculture, Forestry and Fisheries. We were recognized as public sector contributors to Agriculture, Forestry and Fisheries research and development in 2010 due to the development of a new cream production method (the Ajiwai-Kodawari process). We have challenged and succeeded in developing a novel fresh cream, something which had been generally assumed to be impossible by most in the dairy sector. The new process is the combination of nano-membrane concentration and de-oxygenation of raw milk followed by skim milk separation and UHT pasteurization under low-oxygen conditions. The deoxydized separation and pasteurization process was developed based on Meiji's proprietary milk production method (known as the ‘Natural Taste Method’ for our premium ‘Meiji Oishii Gunyu’ milk.). The Ajiwai-Kodawari process provides a novel value-added cream with a strong milk taste, but without the unpleasant aftertaste arising from ordinary UHT processes. The Meiji Fresh Cream Ajiwai series, made through this process, have been extremely well received by customers and have become a favorite among confectioners and cooks including celebrity chefs. Sales have been increased consistently since its launch in May 2008. The improved flavor has been very well received, even by consumers who had avoided UHT cream previously. Meiji Fresh Cream Ajiwai has been a success by attracting new customers.
著者
高橋 史生 田淵 香苗 坪井 美奈子 加藤 勲
出版者
日本酪農科学会
雑誌
酪農科学・食品の研究 (ISSN:03850218)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.A-107-A-112, 1995 (Released:2015-10-31)
参考文献数
12

紅茶浸出液が低温に保存されるとクリームダウン,あるいはクリーミングを生じる。その要因について,本研究は,特に紅茶浸出液に及ぼすカルシウムの影響を中心に検索した。1) カルシウム添加は,明らかにクリームダウンを促進した。その促進効果は,カルシウム濃度依存の傾向を示した。VC や EDTA は,カルシウム添加で生じる紅茶の濁度上昇の抑制効果を示した。2)タンニンとカフェイン各溶液にカルシウムを添加するとある範囲内で濁度の急上昇を認めた。3)カルシウム添加で人為的に作成して得たクリームダウンの沈降成分中のカルシウム濃度は経過時間と共に増大し,しかもカルシウム添加量の増加と共に各沈降成分中のカルシウム濃度が増大する傾向を示した。4) カルシウム添加でクリームダウンを生じさせた沈降物の形態は,球形以外に小桿状,あるいはダンベル型の結晶型も認めた。市販のミルクティーの沈降物中には,紅茶浸出液にカルシウムを添加しただけでは得られない典型的なダンベル型が多数認められた。
著者
平田 昌弘 清田 麻衣
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.103-114, 2010-08

これまでにアジア大陸各地の乳加工体系を調査し、乳加工の起原と伝播について論考してきた。乳加工は、西アジアに起原し、乾燥地帯のアジア大陸では北方と南方に二極化していった。南方圏での乳加工の特徴は、生乳に対する最初の働きかけが酸乳化することであり、北方圏の特徴はクリームを最初に収集することである。いずれも、バター・バターオイルとして乳脂肪の分画・保存、脱脂乳を乾燥化させて乳タンパク質の分画・保存が成し遂げられている。このアジア大陸の乾燥地帯で発達した乳加工体系が、冷涼・湿潤地帯に伝播して、どのように変遷していったかを明らかにするために、先ず亜湿潤地帯のコーカサスのグルジア・アルメニアにおいて調査した。本稿では、ヨーロッパのフランス中南部の冷涼・湿潤地帯において2009年6月14日〜6月20日まで観察とインタビューにより、乳牛を飼養しながら乳加工・販売もおこなう酪農家合計4世帯を調査したのでここに報告する。
著者
中村 正 菅井 理子 男澤 綾 有賀 秀子 小疇 浩 キュラ キーユキア 荒井 威吉 浦島 匡
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.9-14, 1999 (Released:2015-10-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1

ケニアの一般家庭より伝統的発酵乳であるMaziwa lalaを採取し, その菌叢および流動特性について検討した。生菌数はMaziwa lala (A) で5.2×107 c.f.u/ml, (B)で1.3×109 c.f.u/mlであった. また, Maziwa lala (A), (B) からそれぞれ分離した45菌株, 54菌株を同定試験に供した結果, 主要菌種はLact. lactis subsp. lactisとLeuc. mesenteroides subsp. mesenteroides dextranicumであり, これらが全菌株の90%以上を占めていた。 スキムミルク培地で, これら主要菌種であるLact. lactis subsp. lactis, Leuc. mesenteroides subsp. mesenteroides dextranicumおよびこれら2種を混合 (1:1) したものを培養し, 粘性試験を行った。その結果, 混合培養したものが最も粘性が高く, また, 風味が良かったことから, これら2菌種がMaziwa lalaの製品特性を形成するものであることが示唆された。
著者
後藤 真孝
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.239-245, 2012

日本人には,牛乳やアイスクリームなどの乳製品を飲食すると腹痛・下痢などの腸内障害を起こす「乳糖不耐症」の人が多い。これは乳製品に含まれる乳糖から引き起こされ,予防・改善法の一つに酵素補充療法となるラクターゼ(乳糖分解酵素,β-ガラクトシダーゼ)の服用がある。本稿では乳糖を分解する酵素をラクターゼと呼ぶことにする。この経口服用用の酵素には,主にカビ由来のラクターゼが使用されている。しかしながら,日本において,ラクターゼは医薬品として規定(昭和46年6月1日付け薬発476号厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」の別紙「医薬品の範囲に関する基準」)されており,店頭販売されておらず一般健常人の入手は極めて難しい。日本人における乳糖不耐症の頻度は70~80%と言われながら,ラクターゼ製剤を入手できないことは乳製品の敬遠や低乳糖乳製品の飲食しかできない結果となり,美味しい食品をそのまま他の人と同じように味わえないことに繋がる。一方,米国ではダイエタリーサプリメントとしてラクターゼ製剤が店頭販売され,一般健常人が容易に入手できる。そこで本稿では,カビ由来ラクターゼに着目し,その利用について考察する。
著者
吉瀬 蘭エミリー 上田 典子 松山 博昭 芹澤 篤
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.115-123, 2010 (Released:2014-03-15)
参考文献数
19

今日の目覚しい医学の進歩にも関わらず,女性を悩ませる月経痛や月経期の不定愁訴はほとんど改善されていない。乳ホエイ中の代表的な機能性タンパク質であるラクトフェリン(Lf)が月経痛を抑制することが知られている。よって本研究では,鉄イオンを安定に可溶化し,消化酵素耐性を付与した食品用素材である鉄・ラクトフェリン(FeLf)を用いて月経痛および不定愁訴の軽減効果をさらに検証することを目的とした。 月経困難症を自覚している女性18名を対象として,FeLf(312 mg)またはプラセボ錠剤のクロスオーバー試験を実施した。各種評価は月経開始から 4 日間実施し,月経困難症が顕著である月経開始から3日間のスコアを用いて比較した。痛み,月経随伴症および生活に及ぼす影響について,それぞれ Visual analogue scale(VAS)法,Menstrual Distress Questionnaires(MDQ)法および Verbal rating score(VRS)法を用いて評価した。その結果,FeLF 錠を経口摂取した場合,痛みが有意に減少した。また,日常生活の質,すなわち QOL は,FeLF 錠を経口摂取した場合に有意に改善された。よって,FeLf は月経困難症を緩和し,QOL の向上に寄与する可能性が示唆された。
著者
阿野 泰久 中山 裕之
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.89-96, 2017 (Released:2017-08-07)
参考文献数
21

我々はこれまで,カマンベールチーズ由来の成分が,アルツハイマー病モデルマウスにおいて脳内のアミロイドβ沈着および炎症を抑制することを報告した。一方,アルツハイマー病モデルマウスの腸管などの末梢組織における炎症惹起や末梢の炎症刺激による認知機能低下に関する報告がなされており,本研究では,カマンベールチーズ由来成分の腸間膜リンパ節における樹状細胞に対する作用を検証した。まず骨髄由来樹状細胞への作用をin vitroで調べた結果,カマンベールチーズ由来サンプルに炎症性サイトカイン(IL-12)の産生および抗原提示の補助刺激分子(CD86)の発現の抑制作用を確認した。続いて,カマンベールチーズ由来成分の摂取のアルツハイマー病モデルマウス腸間膜リンパ節への作用を検証した結果,カマンベールチーズ由来成分摂取群では樹状細胞の炎症状態を抑制し,制御性T細胞が増加することを確認した。これらの結果より,アルツハイマー病モデルマウスではカマンベールチーズの摂取が脳内のみならず,末梢組織でも炎症を抑制することが確認された。
著者
山田 成臣
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.235-239, 2016 (Released:2017-01-18)
参考文献数
21
著者
山内 康生
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.227-236, 2008 (Released:2014-03-15)
参考文献数
37

Trans fatty acids are isomers of cis fatty acids. There are two main dietary sources of trans fatty acids- those derived from ruminant products such as milk, beef meat and those formed by the partial catalytic hydrogenation of vegetable and marine oils in the production of solid and liquid fats used in many industrially produced foods such as baked goods, frying fats and margarines. From epidemiological studies, increased coronary heart disease risk was associated with trans fatty acids. In addition, an excessive intake of trans fatty acids increased LDL-cholesterol level and decreased HDL-cholesterol. This paper reviews the outline of the trans fatty acids, the relation to disease and the intake situation of the trans fatty acids.
著者
後藤 真孝
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.239-245, 2012 (Released:2014-03-15)
参考文献数
23

Lactose intolerant people in Asia are about 80% population. People with lactose intolerant do not produce enough of the lactase enzyme to break down lactose contained in milk and milk products. One method for prevention, reduction or improvement is lactase supplementation, and fungal lactase (β-galactosidase) is used generally. Characteristics of fungal lactase is stability at acidic pH. Acidic stability of three lactases produced by Aspergillus oryzae, Penicillium multicolor and Aspergillus niger are different. Lactase from A. niger is most stable among them, but low-reactivity at neutral pH. Amino acid sequence homology among three fungal lactases is more than 70%, but relation between lactase character and structure is unknown. In Japan, lactase for lactose intolerance is regulated as drug and it is hard to purchase generally. A. oryzae is known as ‘Koji’ used for japanese traditional fermented foods such as miso, syoyu and sake. For this reason, lactase produced by A. oryzae is thought to be safe. If lactase can be obtained like U.S. dietary supplement, it is expected that lactase supplementation will be known widely.