著者
小島 義次 小島 千枝子 窪田 俊夫
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.250-258, 1981-07-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
24
被引用文献数
2

In order to investigate the nature of motor defects of the speech musculatures in dysarthric patients due to cerebral vascular accidents, non-verbal oral movements were studied in relation to overall intelligibility of speech, coordinative movements of speech organs and swallowing movements.The results led us to the following conclusions.1. The degree of individual isolated oral movements were correlated with efficacy of articulatory, coordinative and swallowing movements.2. A considerable number of the subjects, particularly the subjects whose articulation were moderately disturbed, showed unconscious accompanied movments in other parts during an intended oral movement.3. The types of the accompanied movements were often common to different subjects.4. In spite of the lower grade of oral movements ability, the subjects who exhibited more accompanied movements got fairly well marks in swallowing. This seemed to indicate that the accompanied movements reflected the lower motor patterns of speech organs in some way.5. It is important to estimate the degrees of the accompanied movements and the isolated movements for the evaluation of the ability of oral movements.
著者
安田 菜穂 吉澤 健太郎 福田 倫也 雪本 由美 秦 若菜 原 由紀 正來 隆 頼住 孝二
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.27-32, 2012 (Released:2012-02-08)
参考文献数
13
被引用文献数
1

吃音2例(30代,10代)に流暢性スキル(呼吸コントロール,フレーズ内の語と語の持続的生成,母音の引き伸ばし,軟起声,構音努力の修正)の獲得を目標とした言語聴覚療法(ST)を実施し,ST初回と最終回の文章音読を比較検討した.所要時間中の音読・症状・休止部分を音声分析ソフトで測定し,症状および休止部分を除いた音読部分から音読速度を算出した.音読速度は症例1:初回5.29モーラ/秒→最終回3.29モーラ/秒,症例2:8.86モーラ/秒→6.16モーラ/秒.所要時間中の休止部分の比率は症例1:19.4%→46.7%,症例2:26.2%→38.4%,症状部分は症例1:13.5%→0%.症例2:7.2%→0%.2例の音読の特徴は,初回時の「短く途切れた音読」から,最終回には吃症状の消失に加え,音読速度の低下した「音節,休止の各持続時間の延長した音読」へと変化し,流暢性スキルの獲得が確認された.
著者
須永 義雄 M. D.
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.53-61, 1971-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

A physiological experiment was carried out on six types of“placing the tone”by F. Husler (type No. 1 was abridged) with a forty-one years old tenor. The vowel used was“a”, and the vocal pitch was“f”in No. 2, 3a, 3b and“a'”in No. 4, 5, 6.The following items were analysed:1) The vibration mode of the vocal cords (Fig. 1) and its opening and closing time rate (Tab. 1) as observed by ultra-high speed laryngocinematography.2) The displacements of the larynx (Fig. 2, 3) and the diaphragm (Fig. 6) by X-ray cinematography.3) The sound spectrum of the voice (Fig. 4) .4) The air flow rate, the vocal intensity, the circumference of the chest and the abdomenn on four points were recorded polygraphically (Fig. 5) and mean values were estimated (Tab. 2) .The subject showed some difficulty in performing proper control of breathing for the type six.
著者
正木 信夫 辰巳 格 笹沼 澄子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.186-194, 1990
被引用文献数
2

発語失行症患者の発語における, 調音器官と発声器官の協調運動について検討した.純粋な症例1例と健常対照群の, [ai] および [amV] (V=a, e, i) で始まる平板型・尾高型アクセントの単語発話を発話試料とした. [ai] で始まる単語については, アクセント指令と第2拍 [i] の調音指令を, それぞれ基本周波数とフォルマント周波数から, 日本語の単語アクセント生成および調音運動生成の機能的モデルに基づいて推定した.発語失行症患者では, 発話速度が遅い場合にアクセント指令の調音指令に対する遅れが健常者に比べ著しく大きかった.また, [amV] で始まる単語の発話では, アクセント指令の, [m] の唇閉鎖時点に対する遅れが健常者に比べて大きかった.従来, 発語失行症患者の発話における調音器官同士の協調運動に異常が起こることは報告されてきた.しかし, 本研究の結果では協調運動の異常は調音器官同士ばかりでなく, 調音器官と発声器官の間にも起こりうることが示された.
著者
遠藤 康男 粕谷 英樹
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.338-341, 1993
被引用文献数
3 2

嗄声における基本周期 (周波数) , 振幅系列のゆらぎを定量化するために比較的良く用いられるさまざまなゆらぎパラメータについて比較検討を行った.パラメータとしてjitter/shimmer factor, 変動指数, ジッタ/シマーパラメータを用いた.これらのパラメータと熟練した耳鼻科医がGRBAS尺度に関して評定した聴覚的評点との関係という観点から比較検討を行った.喉頭癌, 声帯ポリープ, 反回神経麻痺患者が発声した持続母音の52例を用いた実験により, ジッタ/シマーパラメータが病的音声の聴覚的印象と最も対応が良いことを示した.
著者
今泉 光雅 大森 孝一
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.209-212, 2015

外傷や炎症,術後に形成される声帯瘢痕は治療困難な疾患である.その治療は,動物実験や臨床応用を含めて,ステロイド薬や成長因子の注入,種々の細胞や物質の移植などにより試みられているが,現在まで決定的な治療法がないのが実情である.2006年,山中らによってマウス人工多能性幹細胞(iPS細胞)が報告された.2007年,山中らとウイスコンシン大学のDr. James Thomsonらは同時にヒトiPS細胞を報告した.iPS細胞は多分化能を有し,かつ自己由来の細胞を利用できるため声帯組織再生の細胞ソースの一つになりうると考えられる.本稿では,幹細胞を用いた声帯の組織再生について述べるとともに,ヒトiPS細胞を,in vitroにおいて声帯の上皮細胞に分化誘導し,声帯上皮組織再生を行った研究を紹介する.
著者
阿部 雅子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.239-250, 1987
被引用文献数
3 4

鼻腔構音と称していた構音障害について観察し, 以下の知見を得た.<BR>1) 鼻咽腔構音の音声をサウンドスペクトログラフにて分析した結果, 破裂音や摩擦音に相当する部位に, 低音部から高音部にわたるspike fillやフォルマント構造をもつ弱い雑音成分が認められた.また, 母音に相当する部分には鼻腔共鳴をあらわすフォルマントが認められた.<BR>2) X線映画, ファイバースコープ, ダイナミックパラトグラフにより, 構音器官の動態を観察した結果, 鼻咽腔構音の構音点は鼻咽腔閉鎖の行われる場所にあり, 破裂や摩擦の音は軟口蓋と咽頭壁でつくられる.そして, その際, 舌が口蓋に接して口腔が閉鎖され, 呼気や音声は鼻腔から出されることが明らかになった.<BR>3) この構音障害を表わす用語を検討した結果, 「鼻咽腔構音」 (nasopharyngeal articulation) が適切であると考えた.
著者
岩田 まな 佃 一郎
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.335-341, 2000-10-20
参考文献数
29
被引用文献数
2

1年以上当科でcommunication治療を継続した143例中, 学齢以上の段階でspeechが獲得できていない自閉症児24例について, その原因を推測した.<BR>(1) 全くspeechのない自閉症児群は24%, speechはあってもcommunicationがとりにくい症例を加えると約40%であった.<BR>(2) 全例に知能の遅れが認められ, speech獲得の大きな阻害要因と考えられた.しかしその中でも, 知能障害が特に強い群と, 自閉症状が前面に出ている群に大別できた.<BR>(3) 知能障害が強い群の中には大頭, C.P., 脳波異常をもつ症例および染色体異常, フェニールケトン尿症の疑いのある症例が含まれていた.<BR>(4) 発語失行を疑う症例が3例あった.<BR>(5) 状況判断の困難, 意思表現の困難など基本的communication能力が不十分なため, 自傷, 他害をもつ症例が半数以上を占めた.
著者
酒井 奈緒美 森 浩一 金 樹英 東江 浩美
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.27-35, 2017 (Released:2018-03-15)
参考文献数
38

吃音を主訴とする自閉性スペクトラム障害(以下ASD)の青年に対し,自身の流暢な発話場面のみからなる映像を視聴する,ビデオセルフモデリング(以下VSM)を導入した.最初に作成・提供した映像は,発話は流暢であるもののASDに特徴的な行動を含んでおり,症例が拒否的な反応を示したため視聴を中断した.その後,ASDの特徴を制御した発話行動を撮影してビデオを作成し直し,約3ヵ月の視聴を行った(言語訓練も並行して実施).その結果,①自由会話の非流暢性頻度の低下,②発話の自己評価と満足度評価の上昇,が認められた.視聴後の感想では,映像視聴によって自身の話せているイメージを初めてもてたことが報告された.自己モニタリングが難しいASDの特徴を有する吃音者へのVSM訓練は,映像がASDに関するセルフフィードバックとして機能する可能性に留意すべきという注意点はあるものの,吃音の問題改善に有効であることが示された.
著者
宇野 彰 春原 則子 金子 真人 粟屋 徳子 片野 晶子 狐塚 順子 後藤 多可志 蔦森 英史 三盃 亜美
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.245-251, 2010 (Released:2010-08-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本研究の目的は, 発達性ディスレクシア (DD) と後天性の大脳損傷によって生じる失読失書例との共通点と相違点について要素的認知機能の発達や局在化に関して検討することである. DD群は10名の右手利き例である. 失読失書例は右利きの男児2名である. 失読失書症例KYは8歳にてモヤモヤ病術後, 脳梗塞にて軽度失語症を発症し, その後軽微な失語症とともに失読, 失書症状が認められた発症半年後から追跡している症例である. 症例MSは, 8歳時の脳梗塞により健忘失語が観察された10年以上追跡してきている現在21歳の症例である. いずれも, 失語症状は軽微で失読失書症状が中心となる症状であった. SLTAではDD群, 失読失書例ともに読み書きに関連する項目以外は定型発達児群と差がなく音声言語にかかわる項目は正常域であった. DD群における局所血流低下部位は左下頭頂小葉を含む, 側頭頭頂葉結合領域であった. また, 機能的MRIを用いた実験により, 左下頭頂小葉にある縁上回の賦活量に関して典型発達群と比較して異なる部位であった. 一方, 失読失書2例における共通の大脳の損傷部位は左下頭頂小葉であった. DD群ではROCFT (Rey-Osterrieth Complex Figure Test) において遅延再生得点が平均の-1SDよりも得点が少なかったが, 失読失書2例においてはともに得点低下はなかった. 一方, 発達性ディスレクシアと後天性失読の大脳機能低下部位は類似していたが, 非言語的図形の処理能力は, 発達性ディスレクシア群で低く, 後天性失読例では保たれていた. 後天性言語的図形である文字と非言語的図形の処理は, 少なくとも8歳までの発達途上で機能が分離されてきているように思われた.
著者
髙山 みさき 大西 英雄 城本 修
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.135-140, 2018

<p>fMRIを用いて仮名文字の書字における脳賦活部位および,平仮名と片仮名の書字における脳活動の差異を検討した.健常成人14名(24.4±7.0歳)が研究に参加し,提示された絵の単語名称を書く書称課題と,音声提示される単語を書き取る書き取り課題を平仮名,片仮名について実施した.左半球における結果を示す.書称課題では,平仮名は,中前頭回,中側頭回,角回,縁上回等に,片仮名は角回,縁上回等に賦活を認めた.書き取り課題では,平仮名は内側前頭回,中後頭回に,片仮名は上前頭回,上・中後頭回等に活動を認めた.本研究の結果,平仮名および片仮名の書字に関与する脳部位はおおむね共通しており,音韻経路で処理されることが示唆された.また,書称課題では,絵の名称を想起し書字を行う際に文字への変換を行うため,側頭-頭頂領域の賦活が強く認められ,書き取り課題では,聴取した単語のイメージ想起を行うことにより視覚連合野が活動すると考えられる.</p>
著者
鈴木 勉 物井 寿子 福迫 陽子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.159-171, 1990
被引用文献数
2

失語症患者に対する仮名訓練法を開発した.これは, 単音節語 (漢字1文字で表記) をキーワードとし, その意味想起の手がかりとして, キーワードを初頭に含む複合語 (ヒント) を利用する方法である.<BR>本法を3例の失語症患者 (重~中等度ブローカ失語2例, ウエルニッケ失語1例) に実施したところ, 3例とも仮名1文字の書取り及び音読能力に改善が認められた.ただし到達レベルは, 単語から文章まで症例により異なった.<BR>本法は, 多音節語をキーワードとした仮名訓練では成果の上がらなかった重度例にも適応可能であった.本法の適応のある患者は, 次の3条件, すなわち (1) 漢字の書字の学習力が保たれている, (2) 単語の復唱が可能, (3) 訓練意欲が高い, を満たす患者であった.
著者
庄野 佐和子 吉田 操 小川 真 梅田 彩子 喜井 正士 竹中 幸則 橋本 典子 猪原 秀典
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.265-273, 2009-10-20
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

当研究の目的は, 学校教師における嗄声症状の発症のリスク因子を同定することである. その方法として, 公立学校共済組合直営病院の人間ドックを利用した公立学校教師を対象に, アンケートによって嗄声の有無とともにさまざまな因子, すなわち役職, 勤務施設, 年齢, 性別, 担当学年, 週間担当授業数, および専門教科について調査し, 嗄声を自覚する頻度と複数のリスク因子との間の相互関連性について検討した. その結果, 1) 女性, 教諭, 週間担当授業数21コマ以上, 小学校勤務, 小学校1・2年生担当, 国語担当, 音楽担当の因子において高いオッズ比が得られた, 2) 教諭の週間担当授業数は管理職教師のものよりも多く, また教諭において週間担当授業数が多くなるほど嗄声自覚頻度が高くなる傾向が認められた, 3) 小学校教諭の週間担当授業数は中学校教諭あるいは高等学校教諭のものよりも多かった, 4) 小学校教諭において, 週間担当授業数が多くなるほど, また担当学年が若くなるほど嗄声自覚頻度が高くなる傾向があった, 5) 特に50歳代女性の小学校教諭において嗄声自覚頻度が最も高かった, 6) 50歳代女性教諭が主に小学校低学年を担当している傾向が明らかとなった. 以上のことから, 学校教師における嗄声症状の発症に関与するさまざまなリスク因子の相互関連性が明らかとなった. これらのリスク因子の存在を熟慮することは, 学校教師における音声障害の発症予防に役立つかもしれない.
著者
熊倉 勇美
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.224-235, 1985
被引用文献数
16 10

舌癌術後の60症例に対し, 聴覚印象による明瞭度の評価ならびに修復後の舌の量とその可動性の直接的観察をおこない, 舌切除後の構音機能に関して以下のような結論を得た.<BR>(1) 舌の切除範囲が広くかつ大きくなるほど, 舌のボリュームは小さくなり, その可動性もまた制限され明瞭度は低下する. (2) いわゆる舌半側切除よりもさらに広範囲な切除になると, PM-MC flapによる再建の方が非再建例に比べて明瞭度は良好である. (3) 一般に術後に一度低下した明瞭度は6ヵ月までに回復し, その後はPlateauとなる.またPM-MC flapによる再建の場合には, 一度改善した明瞭度が, 再び舌容量の減少につれて低下する場合がある. (4) 構音障害の特徴に関しては舌尖や舌背後部による閉鎖が得られず, 構音様式では閉鎖音が摩擦音・破擦音に, 構音点では歯茎音や軟口蓋音が両唇音・声門音などに聞き取られる傾向を示す.その他, 咬合異常, 顔面神経の下顎枝のマヒ, 唾液の貯溜なども明瞭度を低下させる条件となる. (5) 明瞭度が70%以上では社会復帰が可能であるが, それ以下になると実用性は低くなる.
著者
野口 由貴 小澤 由嗣 山崎 和子 今泉 敏
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 = The Japan Journal of Logopedics and Phoniatrics (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.269-275, 2004-10-20
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

対人コミュニケーションに問題をもつ児の早期発見に役立つ検査手法を開発するため, 小学生, 中学生, 成人, 計339名 (男性173名, 女性166名) を対象に, 話し言葉から相手の心を理解する能力を調べた.言語属性として辞書的意味が肯定的な短文と否定的な短文を, 感情属性として肯定的な感情と否定的な感情をもって, 女性1名が話した短文音声を刺激として, 言語課題では言語属性を, 感情課題では感情属性を判断した.その結果, 言語属性と感情属性とが一致しない皮肉音声やからかい音声に対して, 話者の発話意図つまり心を理解する能力が小学生から中学生にかけて上昇し発達するものの, 中学生になってもなお成人の能力には達しないことがわかった.この結果は, 言語属性と感情属性とを適正に分離・統合して話者の発話意図を理解する能力が, 誤信念課題などによる心の理論テストで予測される能力よりも遅く成熟するものであることを示唆する.
著者
飯髙 玄 冨田 聡 荻野 智雄 関 道子 苅安 誠
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.327-333, 2018 (Released:2018-09-15)
参考文献数
27

パーキンソン病(PD)患者の発話特徴の一つである単調子(monopitch)は,発話の明瞭さと自然さを低下させる.本研究では,日本語を母国語とするPD患者のmonopitchが,体系的訓練LSVT®LOUD(LOUD)により改善するかを調べることを目的とした.対象は,2011〜2016年にLOUDを実施したPD患者40例のうち35例(平均年齢66.0歳)と健常者29例(平均年齢68.0歳)とした.音読から選択したイントネーション句の話声域speaking pitch range(SPR),音読と独話でのmonopitchの聴取印象評定(4段階)をmonopitchの指標とした.音読と独話での平均音圧レベル,発話明瞭度(9段階)と発話自然度(5段階)も評価した.訓練前後で比較すると,音読でのSPRは,10.5半音から13.1半音と有意に大きくなり(p<0.01),健常対照群とほぼ同レベルまで改善した.monopitch,発話明瞭度,発話自 然度の聴取印象評定は,いずれも訓練後に有意に改善していた(p<0.05).平均音圧レベルは,音読・独話とも,訓練後に有意に増加した(p<0.01).LOUDは,日本語を母国語とするPD患者の小声だけでなく,monopitchにも有効であることが示された.
著者
櫻庭 京子 今泉 敏 筧 一彦
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-8, 2002-01-20
参考文献数
29
被引用文献数
1

就学前後の健常な幼児・児童 (N=46) を対象に, 「ピカチュウ」という発話を用いて, 音声による意図的な感情表現の音響的特性を解析した.その結果, 音節長, 母音無声化, 基本周波数の変化範囲やピークは感情に応じて変化することがわかった.F0が低く, 変化範囲の狭い「怒り」, 「平静」と, F0が高く, 変化範囲の広い「喜び」, 「驚き」に2極分化する傾向があった.「悲しみ」のF0の変化範囲は就学前児で高く, 就学児で低くなった.母音無声化率は「平静」発話では高く, 感情発話で低下した.発達に伴い, 東京方言の環境に順応した無声化率の上昇がみられた.音節長の制御には年齢による差はなかった.本研究で得られた健常児の音声による感情表現の知見は, 感情表現に問題を抱える児童の音声を評価する場合, 有用と考えられる.
著者
髙山 みさき 大西 英雄 城本 修 村中 博幸
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.143-151, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1

平仮名と片仮名の文字刺激処理における脳活動に差があるか,fMRI(functional magnetic resonance imaging)を用いて検討した.健常成人17名(平均年齢21.4±0.5歳)を対象に,平仮名または片仮名で表記した高親密度単語および低親密度単語の音読を行い,課題遂行時の脳賦活部位と脳賦活量を評価した.両課題に共通して,両側上前頭回,両側内側前頭回,両側中側頭回,左紡錘状回,左角回,左帯状回の賦活を認め,平仮名課題では,両側下側頭回,両側楔前部,左後方帯状回に,片仮名課題では,両側下前頭回,左下側頭回,右中心後回,左前方帯状回に賦活が観察された.脳賦活量は平仮名が片仮名を上回り,高親密度課題で13.1倍,低親密度課題で2.7倍を示した.平仮名および片仮名の音読時における脳活動は共通する点が多く,二重神経回路仮説における背側経路を介して処理されるが,文字刺激処理における処理負荷は平仮名のほうが強いと示唆された.