著者
堤 由紀子 内山 真一郎 内山 由美子 佐々木 彰一 岩田 誠
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.75, no.9, pp.377-379, 2005-09

機械弁置換患者において閃輝暗点と栓子シグナルとの関連を検討した.閃輝暗点を有する4名の機械弁置換患者に経頭蓋ドプラ(DWL社,MultiDopX4)を用いて栓子シグナルを記録し,神経学的症状を検討した.閃輝暗点は抗血小板療法またはワルファリン増量により改善し,栓子シグナルも減少した.この結果から機械弁置換患者における閃輝暗点は微小塞栓による症状と考えられた.
著者
常深 祐一郎 加藤 豊章 森村 壮志
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

表皮で産生されたケモカインCCL17が皮膚での免疫・炎症・再生に及ぼす影響を検討した。創傷治癒においてはCCL17は線維芽細胞の遊走を促進し、CCR4を発現したNGF産生リンパ球や肥満細胞を集めることにより創傷治癒を促進していることが示唆された。腫瘍免疫においてはCCL17が皮膚での腫瘍免疫を抑制している可能性が見いだされた。また抗アレルギー薬は表皮細胞ならびに真皮線維芽細胞からのCCL17産生を抑制した。CCL17は創傷の治療薬の候補となること、抗アレルギー薬を含めCCL17やその受容体であるCCR4の阻害薬は皮膚のリモデリングや皮膚腫瘍の治療薬となりうることが示唆される。
著者
谷田部 淳一
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

【目的】γ-アミノ酪酸(GABA)による水利尿の作用機序は不明であった。GABAB受容体はGi/oと共役する7回膜貫通型受容体であり、Gsと共役するバゾプレッシン(AVP)V2受容体(V2R)の機能に拮抗する可能性を検討した。また、GABA系を賦活するとの報告があるリジンの関与について調べた。【方法】ラット腎組織とアクアポリン2(AQP2)安定発現MDCK細胞を用いた。RT-PCR、Western blot、免疫染色法を実施した。cAMPはHTRF法にて定量した。血漿中リジン濃度、糞便中リジン濃度は質量分析法にて定量した。【結果】腎組織とMDCK細胞には、GABABR1・R2サブユニットmRNAが発現していた。集合管主細胞に、GABABR2とAQP2の共発現像が見られた。MDCK細胞をAVPやforskolinで刺激した際に上昇する細胞内cAMP濃度は、GABAやGABAB受容体の特異的アゴニストであるbaclofenによる前処置にて有意に抑制された。AVPはAQP2のリン酸化を時間依存的、用量依存的に惹起したが、baclofenはそのリン酸化を有意に抑制した。高血圧自然発症ラットにおいて、体内リジン濃度の低下が見られた。【結論】GABAB受容体刺激は、集合管におけるcAMPの産生を低下させ、引き続くAQP2の活性化を抑制した。GABAによる水利尿のメカニズムは、AQP2の機能調節を介するものと示唆される。またV2Rの機能異常から引き起こされる病態に対して、腎GABA系は望ましい効果を持つ可能性がある。GABAによる利尿作用の詳細が明らかとなれば、尿酸上昇などの副作用が少ない新しい降圧利尿薬の開発を促す可能性もある。またはGABA系を賦活するとの知見が得られているリジンの補充により水利尿やナトリウム利尿が惹起され、血圧安定化作用を示す可能性が考えられる。
著者
倉田 二郎 尾崎 眞 三橋 紀夫 赤嶋 夕子 酒向 正春
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

我々は、麻酔薬が痛みや意識を減弱・消失させる過程を、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いてヒトモデルで解明しようと試みた。その第一段階として、電気刺激による痛み感覚が脳に発現する様子をとらえ、それが実際の痛み感覚とどのように関連するかを調べた。2000、250、または5Hzの正弦波電気刺激により末梢神経のAβ、Aδ、またはC線維を選択的に刺激する装置(Neurometer)を用いて13人の健康被験者の左前腕腹側に痛み刺激を与えた。その結果、250Hzおよび5Hz刺激は、2000Hz刺激に比べ1/4以下の電流で、より鋭く不快な痛み感覚を引き起こした。次に、痛みスコア(VAS)が5または7を示す強さの電流を用いて痛み刺激を同様に与えながら、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)により疼痛関連脳活動を観察した。電流による画像artifactを最小限に抑えるため、最小電流値で痛みを起こす5Hz波を選択した。3人の被験者でブロックパラダイムによる全脳fMRI実験を、もう1人の被験者でさらに静脈麻酔薬propofolを鎮静および催眠濃度で与えて同じ実験を行った。Propofolは、Graseby社製TCI機能付きシリンジポンプにて投与した。MRIスキャナーはSiemens社製Vision(1.5テスラ)を用いた。ソフトウェアBrain voyager Qxを用いてgeneral linear modelによる画像解析を行った。その結果、VAS=3の痛みにより右第二次感覚野、右前頭皮質、右下頭頂小葉が活性化し、さらにVAS=5の痛みにより両側前頭皮質、両側下頭頂小葉、両側補足運動野が活性化した。一方、propofolを投与した実験では、多重比較を含む厳密な検定を行ったところ、background noiseが極めて高く、ノイズ振幅が信号強度の2.8%を占めた。輸液路・シリンジポンプなどいくつかの原因が考えられるが、ノイズ源を除去し、今後更に実験精度を高める予定である。
著者
高村 悦子
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.E8-E14, 2012-01-31

アレルギー性結膜疾患は、I型アレルギーが関与する結膜の炎症性疾患であり、臨床所見の特徴から、アレルギー性結膜炎(季節性、通年性)、春季カタル、アトピー性角結膜炎、巨大乳頭結膜炎に分類される。スギ花粉症を代表とするアレルギー性結膜炎の治療は、花粉飛散開始前から抗アレルギー点眼薬を開始する初期療法が、花粉飛散ピーク時の症状を緩和する。抗アレルギー点眼薬のうち抗ヒスタミン作用を有する抗アレルギー点眼薬には即効性が期待できる。花粉飛散ピーク時で症状がおさまらなければ、ステロイド点眼薬を併用する。また、セルフケアとしては、防腐剤無添加人工涙液での洗眼や外出時のゴーグルの装用が役にたつ。,重症春季カタルの治療としては、抗アレルギー点眼薬、ステロイド点眼薬、免疫抑制点眼薬の併用が有用である。症状の改善に伴いステロイド点眼薬から漸減する。現在、本邦では、2種類の免疫抑制点眼薬(0.1%シクロスポリン、0.1%タクロリムス)が認可されている。シクロスポリンは、抗アレルギー点眼薬とステロイド点眼薬の併用により、ステロイド点眼薬の漸減が可能である。タクロリムス点眼薬は、ステロイド抵抗性の重症例に対しても単剤で効果がみられる。
著者
菅野 仁
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

先天性溶血性貧血(CHA)の病型診断は治療法の選択に重要である。本研究では原因不明のCHA50例の全エクソーム解析を実施し、新規病因遺伝子としてATP11Cを同定した。ATP11Cの単一塩基アミノ酸置換は赤血球膜脂質二重層を介したホスファチジルセリン(PS)の能動輸送障害を引き起こし、赤血球表面に露出したPSが貪食目印分子となり、血管外溶血の原因となる。脱水型遺伝性有口赤血球症(DHSt)の二例にPIEZO1遺伝子変異を同定した。DHStは術後重症血栓症を併発することから脾摘術が禁忌である。今後、PIEZO1異常症の遺伝子検査により、CHA症例の脾摘術適応を確実に診断することが可能になった。
著者
松浦 勝久
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

成体マウス心臓より単離したSca-1陽性心筋前駆細胞を用いて細胞シートを作成し、心筋梗塞マウス心臓へ移植したところ、心臓機能の経時的な回復が観察された。Sca-1陽性細胞は可溶性VCAM-1を発現し、可溶性VCAM-1はその受容体であるVLA-4を介して血管新生、心筋保護、Sca-1陽性自身の遊走・生着を促進し、細胞シート移植のよる心臓機能回復を調節していることが明らかとなった。
著者
原田 豪人
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

外来の初診患者で、大うつ病性障害などの症例に対し抗うつ薬の投与を行った。前方視的に抗うつ薬の投与後の1ヶ月以内のactivation syndrome(AS)(不安、焦燥、パニック発作、不眠、苛々感、敵意、衝動性、アカシジア、軽躁、躁)の発現頻度を調査した。その結果ASの発現頻度は7.4%で第一親等の気分障害の遺伝負因および大うつ病性障害の診断においてASの発現頻度に統計学的有意差がみられた。また遺伝子多型解析のための静脈血採血をAS発現群およびコントロール群に対して行った。
著者
中山 理加
出版者
東京女子医科大学
巻号頁・発行日
2015-07-17

博士(医学) 乙第2881号(主論文の要旨、要約、審査結果の要旨)
著者
古城 慶子 坂元 薫 石郷岡 純
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.29-37, 2013-02-25

本稿では急性妄想幻覚状態後の推進低下期に焦点を当てて、病相期性経過段階を構成するpostpsychotic depression(PPD)と単極性ないしは双極性うつ病との間に症状構成、薬物療法および転帰に差異があるか、比較検討した。対象は5年以上経過を確認できた内因性精神病45例を母集団として経過のいずれかの時期にRDCによって統合失調症、統合失調感情病、特定不能の機能性精神病と診断され、しかも妄想ないしは幻覚が前景にある20例のうち推進低下期が後続するもの9例である。RDCによってそれらの推進低下期の横断面病像を診断すると、定型うつ病(D;2例)、準定型うつ病(d;4例)、その他の精神医学的障害(OPD;3例)であった。これらとRDCで規定した単極性うつ病(13例、病相数44)および躁病後に引き続くうつ病(10例、病相数12)とを比較した。PPDのDおよびdと単極性ないしは双極性うつ病のDおよびdとの比較では症状構成および炭酸リチウム療法以外の薬物療法に差はなかった。病相持続期間はPPDが単極性あるいは双極性うつ病相に比べ有意に短い傾向にあった。PPDのDおよびdとPPDのOPDとの比較では抑うつ気分と睡眠覚醒障害に差が認められたが、薬物療法と持続期間に差はなかった。PPDには明瞭な抑うつ症候群と推進低下症候群としかいえないものとがあったが、両群ともに積極的な抗うつ療法によって短期間で寛解していたことからうつ病の軽症型の可能性が示唆された。
著者
片井 みゆき 櫻井 晃洋 加茂 登志子 福嶋 義光
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2011-00-00)

女性医師の離職防止・キャリア向上のため、男女医学生と保護者を対象に意識調査を行った。女性医師の仕事と家庭の両立に対し、医学部入学直後の男子医学生の約30%が否定的な意見を述べた。一方、女子医学生のほとんどは肯定的であったが将来への不安感が強く、男女医学生の意識に明らかな性差がみられた。女性医師のキャリア形成に関心を持つ保護者は、女子医学生の母親が最も高率だった。こうした性差をふまえ医学部でのキャリア教育を行う必要があり、ジェンダーバイアスの解消が医学における男女共同参画のためにも望まれる。
著者
加藤 多津子 上塚 芳郎
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.9-13, 2010-02-25
被引用文献数
1

今回われわれは、東京女子医科大学病院における外来診療待ち時間が電子カルテの導入後、経時的にどう変化したかについて待ち時間調査を行った。また、予期されたほどの待ち時間短縮が見られなかった理由についても調査を行ったので報告する。診療待ち時間調査は、電子カルテ導入直後の2003年8月、2004年5月、2005年3月におのおの約1週間、診療科別に(診察開始時刻-予約時刻)を電子カルテシステムから検索して算出した。、待ち時間の延長の原因については、各診療科の外来医師の配置体制、予約充足率に加え、2004年4月から2005年5月までの月ごとの電子カルテヘルプデスクへの問い合わせ情報をもとにした分析も行った。、結果は、電子カルテ導入直後の待ち時間が平均47分、導入20ヶ月で41分であった。待ち時間の遅れを来たす原因としては、診療時間の長さと予約の取り方、すなわち予約枠オーバーの影響が大きいと思われた。また、電子カルテ操作技術の未熟も一因となっていることが判明した。これに対しては、大学病院のように医師の交代が頻繁に生じる場合には、年度途中であっても定期的に操作練習を行う必要があると思われた。一方、電子カルテの操作性のさらなる向上も、待ち時間短縮に必須であると考えられた。
著者
合谷 信行 冨澤 康子
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

卵の内側の薄皮を卵殻膜といい、過去において創傷被覆材として用いられていた。卵殻膜の創傷治癒における足場としての役割及び癒着防止膜としての医用材料への可能性を評価したところ、線維芽細胞も新生血管も膜には癒着せず、創部を"分離する"という意味では感染防止に役に立ち、創傷被覆材への応用の可能性が示唆された。卵殻膜の創傷被覆材に応用ならば、固定方法の選択は広がることが示唆された。
著者
平澤 恭子 篁 倫子 竹下 暁子 吉川 陽子 大澤 真木子
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.E137-E143, 2013-01-31

新生児医療はめざましい進歩を遂げ障害児の発生も減少傾向にある一方で軽度発達障害などの患児が多いのではないかとされている。,そこで我々は当院出生の極低出生体重児の6歳時の発達について詳細な検討を行い、どのような支援が適切なのかについて検討した。対象は2002 年4月から2006年3月までに東京女子医科大学母子総合センターNICUにて出生した6歳児であり、健診の方法は ハイリスク児フォローアップ研究会のプロトコールに基づき神経学的診察,Wechsler Intelligence Scale for Children-Third Edition(WISCIII)を使った知能検査を行い、それらについて検討した。,Soft neurological sign を認める児が多く、またWISCIIIによる知能指数(IQ)は出生時在胎週数や体重と正の相関を示し、超早産児や超低出生体重児では注意深い観察が必要であると思われた。またIQの軽度低下や言語性知能指数(VIQ)/動作性知能指数(PIQ)のアンバランスや群指数間のばらつきなどを認め、これらの児では行動面の問題も抱える傾向を認めた。視覚的な情報の処理が苦手である傾向もあり、このような児への指導にはこの点に留意する必要が示唆された。 またこの6歳時点ですでに注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)の特性を示している児もおり、治療介入の必要性も考慮された。極低出生体重児のフォローアップでは軽度発達障害を念頭に置きより長期に詳細に経過をみるとともにそれらの児への支援が必要である。
著者
三好 直美 中村 真一 菅野 仁 齋藤 登 齋藤 洋 野村 馨
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.408-412, 2013-12-25

症例は66歳男性、倦怠感、色素沈着、爪甲分離などを主訴に当院総合診療科を受診。消化管内視鏡検査により上部、下部消化管にポリポーシスを認め、Cronkhite-Canada症候群(CCS)と診断した。受診時、Hb 15.6 g/dl、血清鉄248 μg/dl、総鉄結合能274 μg/dlであり、トランスフェリン鉄飽和率は90.5 %と高値を呈した。一方貯蔵鉄量を示す血清フェリチンは34 ng/mlと正常下限であった。CCSでは通常、鉄の吸収障害により血清鉄量、貯蔵鉄量は共に低値となりやすく、これらの結果は予期しないものであった。詳細な問診により患者は長期間に恵命我神散を服用し、そのほか鉄含有の多い食品を多量摂取していることが判明した。恵命我神散の成分にはウコンが含まれており、ウコンの成分であるクルクミンには鉄のキレート作用があることが報告されている。鉄分の過剰摂取および恵命我神散服用中止を指示し、10ヵ月後には貯蔵鉄、フェリチンともに減少を認めた。その後、CCSに対し、グルココルチコイド内服による治療を開始した。グルココルチコイド投与は患者の鉄分欠乏および他の症状を改善した。
著者
津久井 宏行 冨澤 康子
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

2-アミノエタンスルホン酸(タウリン)術前投与による開心術後急性期における有効性の検討【目的】人工心肺使用下の心臓手術に伴い、心筋内タウリン含有量が減少することが指摘されており、このことが術後急性期における心不全の原因の1つと推察される。タウリンの術前投与による開心術後急性期における効果は未だ立証されていないため、その有用性について検討した。【対象】待機的心臓外科手術患者21名を対象とした。【方法】上記患者を無作為にタウリン内服群(術前7日前より3g/日)と非内服群に分けた。心筋保護は、大動脈基部より間欠的順行性に行った。人工心肺開始前と大動脈遮断解除後30分の2点で心房筋を採取した。術後は、収縮期血圧100mmHg以上、心係数2.5/min/m^2以上、Ht25%以上を指標に強心剤・末梢拡張剤・抗不整脈薬の使用、輸血を適宜行った。術中は自己心拍出現の有無を、術後は、心拍数、血圧、肺動脈圧、中心静脈圧、尿量、心係数、Sv02を計測するとともに、血液・生化学検査を行った。術後、カテコラミン、末梢拡張剤、抗不整脈薬の使用量、不整脈の出現の有無、出血量、輸血の有無、術後挿管時間、IABP挿入時間、ペースメーカー使用の有無について検討した。術中得られた標本から心房内タウリン含有量を測定した。【結果】両群とも大動脈遮断解除後、心房内のタウリン含有量の低下傾向が認められたが、タウリン内服群においては、その傾向が小さい傾向にあった。術前のタウリン内服により必ずしも心房内含有量の上昇は認められなかったが、タウリン内服群においては、不整脈の出現、術後カテコラミン量・使用数、Ca補正目的のCa製剤使用量の減少傾向が認められた。【総括】タウリン内服群では、開心術後急性期における有用性が認められた。今後、タウリンの至摘内服量、期間を検討することによって、術前タウリン内服による術後急性期における更なる有効性が示唆された。
著者
田中 祐次 西原 陽子
出版者
東京女子医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

いくつかの患者、家族そして医師の間の会話文を解析した。そして、データを分析するためのいくつかのデータマイニングを組み合わせることができる統合環境のプロトタイプを完成させた。
著者
内田 庸子 大場 謙一 塚原 富士子 村木 篁
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

肥満遺伝子(ob-gene)産物のレプチンは、脂肪細胞から分泌され、視床下部に局在する受容体に結合し、摂食抑制およびエネルギー代謝の亢進をきたす。一方肥満病態においては、血中レプチン濃度は高値を示すにもかかわらず、摂食が抑制されず、余分な脂肪が体に蓄積する。即ちレプチンによるネガティブフィードバックが作動せず、レプチン抵抗性が認められるが、その機序の詳細はいまだ不明である。そこで本研究では、肥満病態モデル動物(MSG肥満マウス:monosodium-L-glutamate投与)を用いて、平成12年度に、視床下部に発現するレプチン受容体のうち情報伝達機能を果たすというlong formのOB-Rbの発現低下を介するレプチン作用不全の1つの可能性を示した。平成13年度は、1)UCP familyの遺伝子発現をもとに、末梢エネルギー代謝促進作用に差異が認められるかどうか。2)産熱性β3アドレナリン作用薬によるレプチン抵抗性改善が認められるかどうかについて検討し下記の結果を得た。動物はICR系雌性マウスを用い生後1,3,5,7,9日目にMSG2mg/gを隔日5回皮下投与、対照マウスには生理食塩水を投与し4-15週齢で屠殺採血後、視床下部を切り出し、直ちに液体窒素にて凍結した。全RNAをIsogenにて抽出し、RT-PCRを行いUCP-1、UCP-2、UCP-3の発現を調べた。1)褐色脂肪に特異的に発現するUCP-1は、MSG肥満により減弱の傾向を示すが、外因性に投与した産熱性アドレナリンβ3作用薬により、発現が増大した。2)UCP-2の遺伝子発現は、脂肪組織(褐色、白色)および骨格筋において、発現に差異は認められず、又、MSG肥満による変動も観察されなかった。3)UCP-3の遺伝子発現は、骨格筋において高発現を示し、アドレナリンβ3作用薬により対照マウス、MSG肥満マウス共に発現増大が認められた。以上の結果より、MSG肥満マウスのレプチン抵抗性は、視床下部のレプチン受容体OB-Rbの発現低下が、原因の1つと推測される。一方、持続的レプチン高濃度下に曝露されている状況でも、外因性の産熱刺激(BRL37344投与)に対して反応性が残存しており、MSG肥満マウスのレプチン抵抗性には中枢性要因が大であることが推測される。
著者
児玉 ひとみ 竹宮 孝子 竹内 千仙 加藤 郁子 村越 薫 大久保 由美子 斎藤 加代子 大澤 真木子 岡本 高宏 小原 孝男
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.65-68, 2010-03-25
被引用文献数
1

多くの医師(特に女性医師)にとって仕事と育児の両立は難しい。そのため、乳幼児を対象とした保育所の整備や保育支援が進められてきた。しかし、小学校低学年の学童児を対象とした保育(学童保育)については選択肢が極めて少なく、女性医師の離職や職場変更につながることも少なくなかった。そこで、女子医大では、平成19年3月に同学50歳以下の医師1069人と医学部学生500人を対象に学童保育設置の必要性に関するアンケート調査を行った。調査には、医師315人、学生56人が回答し(回収率各29.5%、11.2%)、「学内に学童保育施設があれば、すぐに利用したい」31人(全て医師)、「今後利用するかもしれない」135人(医師111人、学生24人)、「利用はしないがあった方がよいと思う」205人(医師173人、学生32人)であった。学童保育の利用を検討した医師は、早朝、夜間、土・日曜日を含む長時間保育を希望していることがわかった。この結果は、医師に対する学童保育支援の必要性を強く示した。学生に対しては、育児と仕事の両立、学童保育の必要性など将来的な問題提起の機会になった。