著者
山崎 柄根
出版者
東京都立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.日本列島に広く分布するヒメギス属は、旧北区東部から広く見られるもので、従来Metrioptera属に属するとされていたが,この地域のものはそれまでの亜属のひとつEobianaに相当すると考えられ,しかもこれを属レベルに扱うことが望ましいと考えられたので,これを独立属として認めた。この属にはイブキヒメギスとengelhardtiの2種が含まれていて,後者にはシベリアヒメギスとヒメギスの2亜種が含まれると結論づけ、これらの属、種,亜種の記載をそれぞれ行った。2.本州に分布するキリギリス類のうち,広く分布するヒメツユムシ属Leptoteraturaはalbicorne,すなわちヒメツユムシ,1種があるが,本属の雄は特異な外部生殖器をもつことによって、琉球列島に産する国属のものとは系統を異にするように思われる。そしてこの系統が中国大陸に由来をもつであろうと推定していたが(Yamasaki,1982),フィラデルフィアの自然科学アカデミーにあるXiphidiopsis omeiensisを検したところ,ヒメツユムシalbicornisそのものであることがわかったので,日本のものとその後に得られた中国産の材料を比較し,あわせて東南アジアの本属の種分化について仮説を提出した。これで琉球列島の異起源と思われる本属の種の起源が問題になってきた。3.日本産EobianaとLeptoteratura2属の日本への侵入ルートを考察した。それによれば、ヒメギスEobiana engelhardti subtropicaは明らかに大陸側のE.engelhardti engelhardtiから分れた島嶼型で、北海道経由,本州へと侵入した。一方,イブキヒメギスEobiana japonicaはヒメギスから分化したとも、朝鮮半島から九州を経由して侵入したとも考えられ,今後、朝鮮半島の調査が必要と考えられた。本州産ヒメツユムシLeptoteratura albicorneは同種が中国大陸で確認され,亜種の問題もあるが,明らかに朝鮮半島経由といってよいと思われる。
著者
副田 あけみ 山田 裕子
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

東京都の単独事業である子ども家庭支援センター事業は、現在17の区市で実施されている。本調査対象とした府中市子ども家庭支援センターしらとりは、支援センター事業と子ども家庭在宅サービス事業とを統合的に実施し、総合的な子育ての支援センターとして機能するとともに、家庭が問題を抱えてしまわないよう、予防福祉の機能を担っていることが、利用者データの分析、資料の検討、面接調査等の結果、明らかとなった。(1)電話相談の件数は年間約300件であるが、相談者も「専業主婦」、「共働き世帯の母親」、「母子世帯の母親」、「父子世帯の父親」、「子ども本人」、「親戚・知人」等と多様であるだけでなく、相談内容も「出産時や病気時の子どものケア]、「育児不安」、「子どもの躾・健康」、「残業時の子どものケア」、「ドメステック・ヴァイオレンス」、「性の悩み」等々幅広く、地域の子ども家庭に対する総合的な相談機能を果たしている。(2)相談者に対するきめ細かなアセスメントとサービス援助計画の作成、サービス利用者と提供者へのサポート活動というケースマネジメントサービスを、相談者の約35%に提供している。(3)ショートステイは「専業主婦」の「出産」や「病気」時等における一時保育サービスとして、トワイライトは「母子世帯」や「父子世帯」、「共働き世帯の母親」の「遅い終業」や「残業」、「出張」時等における夜間保育サービスとして機能し、交流事業は「専業主婦」に対するストレス緩和と予防相談の機能を果たしている。(4)ショートステイやトワイライトのサービス提供を通して、職員は夫婦間等のコミュニケーションや相互支援の促進援助を図ったり、親子、とくにひとり親家庭の親と子どもとの関係の調整援助を行い、ファミリーソーシャルワーク機能を果たしている。
著者
木下 央
出版者
東京都立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

<調査活動>年度前半は予備的調査を行うと同時に研究の枠組みの検討を行った。年度半ばには、前年度の調査旅行時の資料収集でカバーしきれなかった図面資料を追加すべく、Victoria & Albert Museum及びBritish Libraryにおいて資料収集を行い成果をあげた。またヴァンブラの代表作であるカッスル・ハワードを訪れランドスケープ調査および建築の調査を行った。さらに現地での調査及び資料収集で得た研究材料に加え、国内からも積極的に資料収集を行った。<分析・研究>以上の活動より得られた研究資料をもとに、ヴァンブラの建築作品に見られる平面の構成手法に関する分析を行い、成果を上げた。その一部は日本建築学会大会で発表した。また追加調査により得られた図面資料を使用した分析を行い併せて論文集に投稿を準備している。本年度は特に建築図面を用いた研究に加え、ヴァンブラの喜劇作品の分析およびヴァンブラと修道士ジェレミー・コリヤーとの論争を分析し、そこに見られる古典主義への依拠を確認した。また古典という概念と田園の風景という物が分かちがたく結びついており、古典の概念がヴァンブラをピクチャレスク建築の構想へと導いたということが推察された。更に今後の課題としてヴァンブラの建築・喜劇作品における都市と田園という位相とヴァンブラがかつて滞在したインドのスラトにおける都市計画の関係について今後一層の調査研究を行う予定である。
著者
林 昌子 (2023) 林 昌子 (2022)
出版者
東京都立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-03-08

研究の目的は、福祉国家成立に貢献したR・H・トーニーの思想と活動を掘り起こすことで、現代イギリスにおける福祉政策や、地域福祉サービスの実践に与えている影響を明らかにすることにある。トーニーの社会思想の土台をなすキリスト教社会主義が、イギリスにおける社会主義の歴史、および宗教改革以来のキリスト教思想史の中で、どのような影響のもとに形成されたのかを解明する。研究成果を報告する機会としては、人体科学会、日本社会思想史学会、イギリスのウィリアム・テンプル財団等において、学術大会における研究報告および論文投稿によって行う。
著者
嶋内 佐絵
出版者
東京都立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

日本における国際的で学際的な学士課程プログラムに関する研究成果を書籍の1チャプターとして準備し、2022年6月に刊行予定である。また韓国およびオランダにおける国際的で学際的な学士課程教育プログラムに関する研究調査をまとめたものの内容をアップデートした上で修正を加え、章執筆と本の編集作業を行った(編著書として2022年6月に刊行予定)。訪問調査自体は2019年のコロナ流行前に行ったものだが、研究会や文献調査を通じて分析やデータの補強を行い、また書籍の編集作業を通して共著者と議論を重ね、学士課程教育をグローバルスタディーズの枠組みで分析するという視点で、韓国・日本・オランダの比較検討を行った。成果物は2022年度の実績として発表予定である。また本研究と関連し、国際的な大学教育プログラムにおける教員のオートエスノグラフィーとして、Yusuke Sakurai, Sae Shimauchi, Yukiko Shimmi, Yuki Amaki, Shingo Hanada & Dely Lazarte Elliot (2021) Competing meanings of international experiences for early-career researchers: a collaborative autoethnographic approach, Higher Education Research & Development, DOI: 10.1080/07294360.2021.2014410 を刊行した。
著者
亀井 源太郎
出版者
東京都立大学
巻号頁・発行日
2007

博士論文
著者
石村 大輔 馬場 俊孝 近貞 直孝 山田 圭太郎
出版者
東京都立大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

人類の多くは沿岸低地に居住しており,津波リスクにさらされている.中でもフィリピンが面する南シナ海の周辺人口は数億人にのぼり,東南アジアの主要都市が立地している.しかし,南シナ海の津波リスク把握のための基礎的情報が圧倒的に不足しており,実証的なデータ(津波堆積物)に立脚した津波リスク評価は喫緊の課題である.そこで本研究では,南シナ海における津波リスク評価の高度化を目指して,ルソン島の海岸に分布する巨礫を対象にし,1)空撮画像による巨礫の大きさ・分布の把握,2)巨礫を運搬させうる津波の数値計算,を行う.そして,過去に南シナ海を襲った津波の規模と波源の推定を行い,津波リスクを評価する.
著者
浅川 哲也
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

日本語母語話者の誤用例の「ら抜き言葉」は多くの言語研究者たちによって合理的な言語変化であると擁護されてきた。しかし、近年のインターネット上の言説や刊行物の書き言葉の中に「ら抜き言葉」の進行した形態の〈れれる言葉〉や〈ら入れ言葉〉など、現代日本語の先端的な動向を示す例が観察されるようになった。また、「ら抜き言葉」には可能の意味以外に受身・尊敬の用法が発生している。過去の言語研究者たちが「ら抜き言葉」を可能表現専用であると擁護した根拠は消滅したのである。本研究は、現代日本語の先端的な動向を捉え、現代日本語にいま起きている母語話者の誤用を体系化し、日本語の言語史の中に位置づけるものである。
著者
小林 英夫
出版者
東京都立大学
巻号頁・発行日
1978

博士論文
著者
福士 政広 井上 一雅
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

ポータブルα線スペクトルサーベイメータの開発・改良を実施した。試作・開発中のポータブルα線スペ クトルサーベイメータは、検出器に2000mm^2面積イ オン注入型シリコン半導体検出を採用したものである。また、スミア法に対応した真空容器設置型を試作した。当初予定のAm-241のα核種のエネルギースペクトルの測定を明瞭に確認できた。平成30年度は購入が間に合わず、研究協力関係にある放射線医学総合研究所所有のNp-237、Am-241、Cm-244の3核種混合電着線源では、それぞれの核種のエネルギースペクトルを確認できた。また、令和元年度に同様の線源が購入でき、性能評価を実施した結果、同様の分解能を得ることができた。241Am電着線源および3核種(237Np、241Amおよび244Cm)混合電着線源(以下、3核種混合電着線源)を用いた実測の結果、可搬型α線スペクトロメータは線源検出器間距離が3.8 mmの場合、約240 keVのFWHMを有しており、複数のピークを持つα線源を検出することが可能であることが明らかとなった。しかし、空気層によるα線の散乱および吸収の影響により、線源検出器間距離が大きくなるとエネルギー分解能が増大することが確認された。空気層によるα線の散乱および吸収の影響を低減することでエネルギー分解能の向上を図るために真空中で測定できるように改良が必要であることを明らかにし、改良した真空容器設置型α線スペクトルメータに対して同様の性能評価を行った結果、線源検出器間距離が4.3 mmの場合に約160 keV、24.3 mmの場合に約110 keVのFWHMを有しており、真空条件下の測定によってエネルギー分解能の向上を実現した。α種スペクトルサーベイメータの開発研究は大方順調に進捗している。
著者
中嶋 秀 手嶋 紀雄 東海林 敦
出版者
東京都立大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

本研究では,研究代表者がこれまでに開発してきた持ち運び可能な小型の表面プラズモン共鳴(SPR)センサーと研究分担者が見出したエクソソームと人工生体膜の膜融合現象を利用して,呼気中に含まれるエクソソームの膜タンパク質を高感度かつ網羅的に計測することが可能な新規分析法を開発する。また,マスフローコントローラーを備えた呼気凝縮液サンプラーと内在物質を用いた呼気凝縮液の希釈度補正法を開発する。
著者
村上 哲明 山本 薫 常木 静河 海老原 淳 堀 清鷹 篠原 渉
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

シダ植物は、胞子体と配偶体という二つの世代をもち、普通にシダ植物と見られているのは胞子体である。ところが、配偶体が無性芽等によって栄養繁殖し、配偶体のみで生育している例(「独立配偶体」と呼ばれる)が北米や欧州で知られていた。しかし、日本国内では、そもそも小型で単純な形態をもつシダの配偶体については、その分布がまだほとんどわかっていなかった。そこで本研究では、シダの配偶体を日本国内から広く採集し、それぞれのrbcL遺伝子(光合成に関わる遺伝子)の塩基配列を調べて、どの種の配偶体かを明らかにする。日本国内からは、まだ報告されたことがないシダの種の独立配偶体が次々に見つかることが期待される。