著者
高田 昌彦 宮本 良文
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.1012-1016, 2008-11-15
被引用文献数
1

胸骨骨折は外傷性骨折の中では比較的まれである.多くは保存的に治療できるが,転位が大きく強い疼痛がある場合,手術適応となる.一方,まれに保存的治療の経過中に偽関節を呈し,疼痛などの症状が遷延することがある,胸骨偽関節について,開心術のための胸骨切開後の報告例は散見するが,胸部外傷後の報告はほとんどない.今回我々は16歳男性の胸部外傷後の胸骨偽関節に対し,プレート固定と自家骨移植を用いた術式で,良好な結果を得た.胸骨を固定するためのプレートとしてロッキングプレートを選択した.自家骨移植を併用した胸骨のプレート固定術は,胸骨偽関節の治療方法として有用であった.
著者
徳永 俊照 武田 伸一 小間 勝 澤端 章好 前田 元
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.746-752, 2008-07-15
被引用文献数
4 2

外科的切除にて診断された肺過誤腫23例の臨床像を検討した.性別は男性12例,女性11例で,年齢は28〜71歳,平均53.5歳であった.20例は無症状であったが,3例は症状を有し,そのうち2例は胸痛,1例は咳嗽であった.病変は,22例が単発性で,1例のみ多発性であった.腫瘍径は0.5〜3.0cmで,平均1.5cmであった.画像上,石灰化を6例に認めたが,明らかなポップコーン様ではなかった.石灰化を有する症例は,腫瘍径が有意に大きかった.17例に気管支鏡が施行されたが,確定診断できず,全例か悪性疾患を否定できないため手術に至った.術式は,6例に検出術,16例に部分切除術,1例に葉切除術が施行され,そのうち17例に胸腔鏡下手術が施行された.肺過誤腫の術前診断は困難であるが,悪性疾患との鑑別が問題となる場合,外科的切除にて診断することを考慮すべきである.
著者
野並 芳樹 近藤 樹里 山本 彰 山城 敏行 笹栗 志朗
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.91-95, 2003-03-15
被引用文献数
9 5

症例は66歳,男性.37度前後の微熱と右胸部鈍痛を訴えて入院した.胸部画像検査で右胸腔に小児頭大の被覆化された腫瘤様陰影を認め,好酸球増多を伴う白血球増加(38,900/μl)とCRPの中等度高値を示したため,当初,膿胸を疑った.血清Granulocyte Colony Stimulating Factor (以下G-CSF)値が高値を示し,且つ,腫瘍の経皮的針生検では細胞壊死が広範に認められたが,一部に癌の疑いがあったため,G-CSF産生肺癌の診断のもと,下葉切除,上中葉部分切除,胸壁,および横隔膜部分切除を行った.切除肺,胸壁,腫瘍の総重量は約1600グラムで,腫瘍は抗G-CSFモノクローナル抗体による免疫組織化学染色で陽性を示す肺大細胞癌であった.術後2週間で血清G-CSF値は正常域となった.その後,paclitaxel + carboplatin併用の抗癌化学療法を行ったが,手術6ヵ月後に血清G-CSF値の上昇とともに,胸壁の切除断端より再発を来たし,手術8ヵ月後に癌性胸膜炎による呼吸不全で死亡した.手術を行ったG-CSF産生肺大細胞癌の本邦報告例は自験例を入れて15例あるが,術後数ヵ月以内に死亡している症例が多い.また本例は術前IL-6も高値を呈し,G-CSF以外のサイトカインとも関連を持った症例であると考えられた.
著者
谷口 雄司 田中 宜之 中村 広繁 鈴木 喜雅 石黒 清介 森 透
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.9, no.7, pp.875-878, 1995-11-15
被引用文献数
2 2

症例は60歳,男性,胸部異常陰影を主訴に入院し,胸部CT,喀痰細胞診にて右S^9の扁平上皮癌と診断された.入院時検査にて血清Ca12.8mg/dl, PTH-rP-C85.5pmol/lと高値を示した.手術は低肺機能のため肺底区区域切除を施行した.腫瘍は69×57×41mmで病理は中分化型扁平上皮癌であった.術後Ca,PTH-rP-Cはすみやかに正常値に復し,摘出した腫瘍組織よりPHT-rPのmRNAを確認したため,PTH-rP産生肺扁平上皮癌と診断された.術後1年,再発の徴侯なく生存中である.
著者
朝倉 奈都 沖津 宏 清家 純一 田渕 寛 津田 洋 佐尾山 信夫 吉田 冲
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.27-31, 2000-03-15
被引用文献数
2

症例は68歳の男性.糖尿病性腎症により1998年4月に近医入院し血液透析を開始した.入院解きより左胸水貯留を認め, 胸水検査を行うも原因同定には至らなかった.同年10月頃より発熱及び胸水の増加を認め, 膿胸の疑いにて胸腔ドレーンを挿入, 膿性の排液よりCryptococcus neoformansが得られた.血中Cryptococcus neoformans抗原, クリプトコッカス抗体は共に陰性で, 髄液検査, 頭部CTを含め, 他臓器には異常を認めず, クリプトコッカス膿胸と診断された.抗真菌剤の全身投与及び胸腔内洗浄による治療にも膿胸の改善はなく, 手術目的にて当科紹介となり, 1998年12月18日左肺剥皮術, 有茎筋弁充填術を施行した.術後特に合併症なく経過し, 術後約9カ月の現在, 再発の徴候は認めていない.
著者
渡辺 俊一 下川 新二 上原 景光 場集田 寿 山内 励 古園 耕治 岩村 弘志 上村 亮三 平 明
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
呼吸器外科 : 日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09174141)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.750-754, 1990-11-15
被引用文献数
1

より生理的な肺保存法として,摘出肺の胸膜外からの空冷保存を考案し,肺換気にはhigh frequency jet ventilationを用い,その後同所性に移植した.実験は2群で,4℃生理食塩水でflushしたdonor肺を,教室で開発した空冷保存装置で2時間及び5時間保存して同種左肺移植した群では,5〜79日の生存犬7頭を得た.他の群では,血液を含む細胞外液組成液でflushした6時間保存肺を同様に移植し,術直後及び術後3日目に100%酸素下で右肺動脈を閉塞,移植肺の機能を評価した.移植直後(n=5)の動脈血酸素分圧は,両肺で398.9±47,3mmHg(mean±SE),移植肺のみで357.6±48.0mmHgで,両老間に有意差はなかった.術後3日目(n=4)では,両肺で475.7±41.1mmHg,移植肺のみで330.5±53.6mmHgで,後者で低い傾向にあったが有意差はなかった.2つの実験群から,本法の有用性及びflush後6時間の肺保存が可能なことが示された.
著者
中島 由親 和久 宗明 今井 均
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.7, no.7, pp.833-838, 1993-11-15

症例は62歳男性.1988年4月肺結核発症.多剤耐性結核にて排菌止まらず,1990年8月21日に右肺上葉切除施行.その後気管支瘻となり同年10月9日に気管支瘻閉鎖,胸郭成形を行うも気管支瘻再発し右MRSA膿胸を併発,同年12月20日右腋窩前方に膿胸腔を開放した.連日の包交にて創面の浄化をはかり,創面MRSA感染は持続したものの,1991年4月2日創面掻爬,気管支瘻閉鎖を行い,同4月16日Scapular Flapにて開放創面の被覆閉鎖を施行した.手術手技は右肩甲部にてcircumflex scapular arteryの横走するcutaneous branchを中心に14× 8cmの皮膚弁を作成し,腋窩背側部の筋間にトンネルを開け有茎にて創面へ誘導,創線にflapを全周性に縫合し肺raw surfaceを含む浅い開放創全体を被覆した.術後MRSAによる小膿瘍が創縁に生じたが,数回の小処置にて現在創下端に僅かな皮膚瘻を残すのみで,開放創の閉鎖にほぼ成功した.
著者
高橋 毅 鈴木 一也 伊藤 靖 松下 晃三 数井 暉久
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
巻号頁・発行日
2000

症例は50歳, 男性.1996年9月3日, 悪性胸膜中皮腫に対し左胸膜肺全摘, 心嚢, 横隔膜, 胸壁合併切除術, 及び温熱化学療法を施行した.外来にて経過観察されていたが1999年11月, 胸部CTにて左胸壁に径3cmの腫瘤を指摘され, CTガイド下針生検にて悪性胸膜中皮腫の再発と診断された.全身精査にて転移巣のないことを確認し2000年1月, 再発巣の切除術を施行した.rights: 特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会rights: 本文データは学協会の許諾に基づきCiNiiから複製したものであるrelation:isVersionOf: http://ci.nii.ac.jp/naid/110001272251/
著者
古川 幸穂 寺本 晃冶 後藤 正司 元石 充 岩切 章太郎 藤本 利夫 岡崎 強 松倉 規 塙 健 山下 直己 松井 輝夫 桑原 正喜 松原 義人
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.524-528, 2003-05-15
参考文献数
7
被引用文献数
5 1

pleomorphic carcinomaの1例を経験した.症例は64歳.女性. 2000年9月頃から咳嗽が出現し,胸部レントゲン写真で,左下葉の著明な含気低下と左下葉に腫瘍陰影が認められ,2001年1月当科紹介人院となった.胸部CT写真では,左S^6に結節陰影が認められ,左主気管支がほぼ閉塞していた.気管支鏡検査では,左主気管支を閉塞する白色ポリープ状の腫瘤を認めた.鉗子生検を施行したが,正常気管支粘膜のみで確定診断は得られなかった.画像所見と内視鏡所見から肺癌を疑い,左肺全摘除術を施行した.切除標本の肉眼的所見は,腫瘍は左下葉から発生し,左下葉支から左主気管支,左上葉支までポリープ状に進展していたが,気管支粘膜には浸潤していなかった.病理組織学的所見では,腫瘍の大部分は腺癌であり,腫瘍の4分の1にspindle cell, giant cellを認め,pleomorphtc carcinomaと診断した.
著者
石川 紀彦 石川 智啓 川瀬 裕志 澤 重治
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.579-582, 2000-05-15
参考文献数
7
被引用文献数
1

症例は72歳, 男性.受診後2日間にわたる約400mlの喀血を認め, 1999年8月6日入院となった.胸部X線写真では異常は認められなかった.胸部CT検査では, 下行大動脈に接して塊状, あるいは網状の出血を疑わせる浸潤影を認めた.気管支鏡検査では, 左下葉枝からの出血と軽度の気管支拡張症を認めた.気管支拡張症による喀血を疑い, 8月10日に気管支動脈塞栓術を施行した.その後安定していたが2週間後に約200mlの再喀血を認めたため, 翌日手術を施行した.下行大動脈に嚢状瘤があり, これに左下葉が強固に癒着していた.喀血の原因は胸部大動脈瘤肺内穿破と診断した.癒着した肺を部分切除し, ついで瘤の中枢側及び末梢側にカニューションし一時的バイパスを作製した.瘤の上下で大動脈を遮断し瘤を島状に切除し, パッチ閉鎖した.縫合部の補強目的にゴアテックスシートでパッチ部を被覆した.術後経過は良好で9月24日に退院した.
著者
岡谷 泰治 宇高 徹総 高木 章司 永廣 格 三竿 貴彦 山中 正康 青江 基 岡部 和倫 伊達 洋至 安藤 陽夫 清水 信義
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.9, no.7, pp.870-874, 1995-11-15
参考文献数
10
被引用文献数
5

成熟型奇形腫は時に隣接臓器に穿孔を来すことが知られており,その発生頻度は36%に及ぶと報告されている.今回我々は,胸部単純X線写真で急速な腫瘤陰影の拡大を認め,術後に肺への穿孔が確認された縦隔成熟型奇形腫の一例を経験したので報告する.症例は12歳の女児で1993年5月20日頃より肺炎様症状を認め,6月12日に突然の前胸部痛,激しい咳嗽および発熱が出現し近医に入院した.6月17日に当科に入院するまでの5日間に胸部単純X線写真上で腫瘤陰影の明らかな拡大を認めた.精査の結果,縦隔奇形腫と診断して,6月21日に腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は前縦隔右側にあり,右肺上葉の一部と強固に癒着していたため右肺上葉の一部の合併切除を要した.病理組織検査で腫瘍と癒着していた肺内には膿瘍の形成を認め,肺穿孔を伴った成熟型奇形腫と診断された.
著者
萱野 公一 北村 泰博 竹尾 正彦 森末 真八 山本 満雄 水野 裕 目黒 文朗
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.9, no.7, pp.849-853, 1995-11-15
参考文献数
8
被引用文献数
6 2

症例は42歳の男性,主訴ほ血痰,1992年3月に喀血あり胸部異常陰影を指摘されていたが放置していた.1994年6月頃より血痰があり外科紹介となった.胸部X線写真で右中肺野に透過性の亢進した嚢胞様病変を認めた.先天性嚢胞性腺腫様奇形type 1の疑いで胸腔鏡下右中葉切除術を施行した.嚢胞は最大径8cmで中葉に限局し,周囲には軽度の癒着を認めた.葉間より脈管系をA^5から順次処理していき気管支はENDOGIA 30を用いて縫合切離した.術後経過は良好であった.病理組織診では肺実質内に大小の嚢胞を認め,嚢胞壁の大部分は多列線毛上皮で上皮下には平滑筋が存在したが,軟骨を欠いていた.悪性像を認めず,CCAM type 1と診断した.
著者
田村 昌也 村田 智美 飯野 賢治 太田 安彦
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.631-634, 2003-09-15
被引用文献数
2 1

当科で経験した特発性血気胸治療例14例について検討した.平均年齢は31.2歳(21〜63歳)で,女性は1例のみであった.気胸初発例,III度の高度虚脱例が多くを占めた.出血源は10例が肺尖部の癒着断裂による出血であり,2例は肺嚢胞表面の血管からの出血であった.発症からそれぞれ5日,6日が経過していた症例にVATSを試みたが,血腫の排出と視野の確保に難渋したため,開胸術に移行した.また発症から15日経過していた症例に対してVATSを完遂したが,術後,気漏遷延により,再手術となった.気漏遷延例を除く平均術後ドレーン留置期間,平均術後入院期間,術後鎮痛剤の使用日数の上で,VATSは開胸術に優っていた.出血量,空気漏の持続,肺再膨張の程度などを総合的に判断し,迅速に手術適応を決定する必要がある.また発症早期であれば,胸腔鏡下手術は第一選択として施行されるべきであると考える.
著者
伊藤 祥隆 小田 誠 太田 安彦 呉 哲彦 常塚 宣男 渡邉 剛
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.119-121, 2001-03-15
被引用文献数
2 2

症例は16歳, 男性.既往歴として4歳児に漏斗胸に対して胸骨翻転術を施行され, 14歳時にMarfan症候群と診断された.1994年に右自然気胸に対し胸腔鏡下肺部分切除術を施行した.1996年2月に右気胸を再発し保存的に加療したが, 同年4月に右気胸を再々発し, 小開胸下に肺部分切除術を施行した.1997年2月15日に左背部痛と呼吸困難が出現し, 当科を受診した.胸部レントゲン写真にて左自然気胸と診断した.胸腔ドレーンを留置して保存的に加療するも改善しないため, 2月20日胸腔鏡下手術を施行した.肺尖部にブラが多発しており, これを切除した.Marfan症候群は気胸の合併率が高く, 本例のように体格の成長に伴って気胸を繰り返し再発することもあり, 注意深い経過観察が必要と思われた.
著者
及川 武史 野本 靖史 木下 孔明 平田 剛史
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.654-660, 2008-05-15
被引用文献数
3

緊張性気胸により完全気道閉塞となった気管支腫瘍を経験したので報告する.症例は30歳男性.以前より喘息を指摘されていたが咳嗽が悪化したため近医受診.胸部レントゲン写真上に異常陰影を指摘されたため,当センター呼吸器内科に紹介され入院となった.入院後の気管支鏡にてポリープ状巨大気管支腫瘍が左上区支末梢より発生し気管へ突出していることを確認し,生検を行いfibroepithelial polypと診断した.初回治療では気管に突出している部分の腫瘍のみを気管支鏡にてスネアリングおよびレーサー焼灼した.その後,追加治療を計画していたが,突然の呼吸停止を認めた.気管内挿管施行後の気管支鏡では腫瘍が気管を閉塞しており,胸部X線写真では左緊張性気胸となっていた.呼吸器外科に転科後,左上葉切除術を施行し気管支腫瘍を摘出した.現在まで約2年の経過観察を行っているが無再発生存中である.
著者
及川 武史 野本 靖史 木下 孔明
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.914-919, 2008-09-15
被引用文献数
7 8

小型肺腫瘤に対する術前CTガイド下マーキングは一般的に行われている.合併症として空気塞栓を発症し,脳塞栓や心筋虚血などを合併し死に至る可能性もある.我々はCTガイド下マーキング時に空気塞栓症を発症し,その後左半身麻痺が残存した1例を経験したので,考察を加え報告する、症例は59歳男性.胸部CTにて充実性陰影を伴うスリガラス陰影(mixed GGO)を指摘され,当センター紹介となった.3ヵ月間の経過観察で変化がなかったため,手術による精査加療のため入院となった.胸部CTでは術中触知不能と考えられる小型mixed GGOであるため,術前CTガイド下マーキングを施行した.手術当日,マーキング終了直後の咳嗽とともに意識レベルの低下,血圧低下および呼吸状態の悪化を認めた.頭部CTにて右脳血管内空気塞栓と心電図のST上昇が確認され,直ちに救命処置を行った.しかし,左半身麻痺は残存し,発症後4ヵ月の現在リハビリ中である.
著者
前田 亮 磯和 理貴 菊地 柳太郎
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.871-876, 2007-11-15
被引用文献数
9 1

当院における急性膿胸に対する胸腔鏡下手術を検討した.2002年4月から2006年6月までに当院で急性膿胸に対して胸腔鏡下手術を施行した症例は12例であり,男性10例,女性2例,年齢は46歳から86歳までで平均66歳であった.術後ドレナージ期間は3〜17日(平均6.7日)で,術後在院日数は11〜33日(平均20.5日)であった.術後膿胸の再燃は認められず,手術死亡および在院死亡は認められなかった.急性膿胸手術に胸腔鏡を用いることは有効であると思われた.