著者
里田 直樹 藤永 卓司 福瀬 達郎 磯和 理貴 乾 健二
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.596-601, 2002-05-15
参考文献数
16
被引用文献数
5 2

肺内穿孔をきたし緊急手術を行った縦隔奇形腫の1例を経験した.症例は18歳,男性.2001年4月の検診にて右肺門部に腫瘤陰影を認め同月の胸部CTで前縦隔腫瘍と診断し手術予定で外来経過観察をしていたが,2001年5月17日より胸痛,血痰,高熱が出現し,同年5月20日右中下肺野に浸潤影を認めたため当科緊急入院した.エコーガイド下縦隔腫瘍穿刺吸引による腫瘍内溶液の性状はアミラーゼ0IU/l,リパーゼ4U/l,トリプシン19ng/lと低値であり,腫瘍内溶液は黄色ブドウ球菌に感染していた.全身状態の悪化が著しいと考えたため,2001年5月22日縦隔腫瘍摘出術及び右肺中葉切除術を行った.摘出標本の病理組織学的検査で縦隔奇形腫と診断された.術前に上昇していたSCC抗原,CA19-9,可溶性IL-2レセプターは術後正常化しており嚢胞内産生が考えられた.
著者
後藤 正司 岡本 卓 中野 淳 中島 尊 桝屋 大輝 劉 大革 亀山 耕太郎 石川 真也 山本 恭通 黄 政龍 横見瀬 裕保
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.132-135, 2004-03-15
被引用文献数
4 3

左側は66歳,女性.64歳時に右乳癌にて右胸筋温存乳房切除術を受けた.病理病期はstage II で,術後DMpC療法(5'-DFUR : 800mg,MPA : 800mg,CPA : 100mg)を施行中であった.2003年1月16日,胸部CTで左S^8にspicula, notchを伴う小結節陰影の出現を認めた.結節陰影の増大を認め,またFDG-PETで,左S^8の結節陰影に一致して集積を認め,精査目的で,2003年3月24日当科へ入院した.CT下肺生検では確定診断に至らず,2003年4月23日,胸腔鏡補助下肺生検を施行し肺クリプトコッカス症と診断された.腫瘤陰影を呈する肺クリプトコッカス症のCT所見は肺癌と類似し,PETでも陽性を示すことがあるため画像上の鑑別は困難である.
著者
高砂 敬一郎 矢満田 健 牧内 明子 近藤 竜一 沼波 宏樹 花岡 孝臣 町田 恵美 宮澤 正久 吉田 和夫 青木 孝學 羽生田 正行 天野 純
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.627-631, 1999-07-15
被引用文献数
4 3

症例は75歳, 女性.1992年3月21日, 左下葉の肺硬化性血管腫に対して核出術を施行した.術後, 外来で経過観察されていたが, 手術より約4年後の1996年5月, 胸部X線写真上, 左上下肺野に腫瘤陰影が多数認められ, 擦過細胞診で肺硬化性血管腫と診断された.本症例はその臨床経過より再発と考えられた.従来より肺硬化性血管腫の手術術式は核出術が一般的であったが, 核出術施行後の局所再発症例の報告や本症例を考えると, 可能であれば部分切除術以上の術式の選択が必要と思われた.また, まれではあるが再発を念頭においた術後の経過観察が必要と思われた.
著者
足立 孝 櫻庭 幹 村杉 雅秀 宮野 裕 桑田 裕美 池田 豊秀 大貫 恭正
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.7, pp.779-783, 2002-11-15
被引用文献数
5 4

縦隔発生のparagangliomaは比較的稀な疾患である.われわれは縦隔原発で,術前に集学的治療を行ったparagangliomaの1例を経験したので報告する.症例は56歳,女性.胸部違和感とともに咳嗽出現し,他医で検査を受けたところ縦隔腫瘍を指摘され当科紹介となる.胸部CTで中縦隔から前縦隔にかけて7×6cmの血管に富む腫瘍を認め,腫瘍生検でparagangliomaの診断を得た.腫瘍の解剖学的位置関係から放射線治療を行い腫瘍縮小効果を得たところで,腫瘍血管に対しプラチナコイルで血管塞栓術を追加した.手術では腫瘍の血管壁よりの剥離は困難で臨床的にはmalignant potentialであると判断し,結果として完全摘出に至らなかった.組織学所見で明らかな悪性所見はなく最終的にもparagangliomaと診断された.paragangliomaに対しては腫瘍摘出術以外に確立された治療法はなく,本症例では遺残腫瘍の今後の動向を観察する必要がある.
著者
大田 守雄 源河 圭一郎 石川 清司 国吉 真行 川畑 勉 野村 謙
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.7, pp.832-837, 1999-11-15
被引用文献数
7 3

症例は18歳の女性.喀血を主訴として近医を受診した.胸部X線写真で左下肺野に無気肺像を認め, 気管支鏡下生検で腺癌と診断された.精査加療目的で当科を紹介され入院となった.気管支鏡検査で左下幹の完全閉塞を認めたが, 腫瘍は易出血性であり観察のみとした.後日, 腫瘍からの出血に備え全身麻酔下の生検により低悪性度の粘表皮癌と診断された.腫瘍は左下葉支B^6入口部から発生しポリープ状に気管支内腔へ発育し, 左主気管支内腔まで達していた.左肺上葉を温存するため, 上葉気管支形成術を伴う左肺下葉切除を施行した.術後1年7カ月を経過したが, 再発の徴候を認めない.本邦における40歳以下の粘表皮癌29症例を集計し, その臨床像について検討を加えた.
著者
小阪 真二 片倉 浩理 金光 尚樹 水野 浩 和田 洋巳 人見 滋樹
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.44-48, 2000-01-15
被引用文献数
4 2

胸腺嚢踵の壁に胸腺腫を合併した希な症例を経験した.症例は28歳男性で, 健康診断にて胸部異常影を指摘された.胸部レントゲソ写真にて心陰影の左側に重なる腫瘤影を認め, 胸部CTにて前縦隔の嚢腫様陰影とその壁に一部充実性の腫瘤影を認めた.胸骨正中切開にて腫瘤を切除したところ多房性の胸腺嚢腫の壁に胸腺腫を合併していた.胸腺嚢腫に胸腺腫を合併した症例は本邦11例目の報告であった.前胸部の嚢腫で胸腺嚢腫が疑われる場合, 悪性腫瘍の合併, 嚢胞性胸腺腫なども考慮に入れ, 慎重に切除することが大切と考えられた.
著者
井上 清俊 西田 達 河田 安浩 泉 信博 山本 訓史 西山 典利 大杉 治司 木下 博明
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.150-156, 2002-03-15
参考文献数
30
被引用文献数
1

交通外傷12年後に診断され,手術治療した気管食道瘻の1例を報告する.症例は31歳,男性.1987年交通外傷にて両側気胸,意識消失のため入院加療を受けた.1999年4月食事摂取時の咳嗽のため受診した.気管分岐部直上膜様部の径33mm大の気管食道瘻と診断し,手術を施行した.瘻孔を食道壁とともに自動縫合器により閉鎖し,第5肋間筋を間置した.術後合併症はなく退院し社会復帰している.
著者
君野 孝二 仲宗根 朝紀 岸川 正大
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.10, no.7, pp.833-837, 1996-11-15
被引用文献数
2

65歳,男性.甲状線機能亢進症で通院中,胸部X線写真で肺気腫を認める.1992年11月血痰出現し精査施行.胸部CTで2cm大の腫瘤を左下葉に認め,喀痰細胞診でclass Vと診断された.1993年1月18日左下葉切除を施行.同一肺葉内転移を認めpT3N2M0で,組織学的検索では明らかな腺癌と紡錘型細胞増殖からなる肉腫様変化の2要素が共存しており,いずれも間葉系の成分が明確に認められず癌肉腫とは区別され,いわゆる肺癌肉腫と診断された.
著者
井上 修平 藤野 昇三 手塚 則明 紺谷 桂一 小西 孝明 澤井 聡 花岡 淳 一瀬 増太郎 寺本 晃治 森 渥視
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.545-550, 1999-05-15
被引用文献数
4

症例は60歳女性で, 膠原病, 膜性腎症等のため長期間ステロイドを投与されていた.1997年12月中旬から咳嗽, 喀痰が出現し, 翌年1月2日に39.3℃の発熱がみられた.1月4日に突然の右胸痛, 呼吸困難が出現し, 翌5日に緊急入院となった.入院時には発熱, 心肺不全を伴い起座呼吸, チアノーゼが認められた.胸部X線, CT写真では右胸腔の2/3を占める下葉中心の巨大肺嚢胞が認められ, 上中葉の無気肺, 胸水も存在した.血液検査ではCRPの高値及び低酸素血症が認められた.感染のコントロールのために抗生剤の投与をすると共に, 胸腔ドレナージ及び肺嚢胞内吸引療法を施行した.肺嚢胞吸引療法で嚢胞の増大進行を防止し, 胸腔ドレナージで呼吸不全から離脱できたため, 1月13日に安全に肺嚢胞切除術を施行できた.術後経過は順調であり術後3週間目に退院となった.
著者
高木 正道 秋葉 直志 塩谷 尚志 栗原 英明 伊坪 喜八郎
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.620-624, 1996-07-15

呼吸困難をともなったmassive thymic hyperplasia(以後,MTH)の1手術例を報告する.症例は27歳の女性で,数年前より左前腕部痛を自覚していた.最近になり呼吸困難と動悸が出現するようになった.胸部単純X線写真で左肺門部に突出する異常陰影を認め,胸部CTで前縦隔に不整形で内部濃度均一な腫瘤性病変を認めた.1992年6月22日腫瘤摘出術を施行した.腫瘤の重さは115g, 大きさは15.0×12.0×2.5cmで表面は平滑で黄褐色,分葉状であった.病理組織検査の結果では正常な胸腺構造を持つtrue thymic hyperplasiaであった.術後に自覚症状の改善を認めた.過去に報告されたMTHは21例で,年齢分布は7ヵ月から21歳である.自験例は27歳と最年長である.自験例を含めた22例の中で55%が有症状であり,このうち胸腺摘出術により72%で症状の改善がみられている.
著者
大井 諭 松下 晃三 閨谷 洋 船井 和仁 高持 一矢 鈴木 一也 数井 暉久
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.694-697, 2006-05-15
被引用文献数
4

今回我々は,右自然気胸術後の切除標本で偶然発見されたmalignant solitary fibrous tumorの1例を経験した.症例は48歳男性.右自然気胸の手術は胸腔鏡下で上葉にある肺嚢胞を広範囲にわたり切除した.術前および術中は腫瘍の存在には気づかず,術後の病理診断で腫瘍の存在が明らかとなった.この患者はその後,約6ヵ月経過して胸腔内に局所再発し,放射線化学療法と手術療法を行ったが再々発し,気胸手術後約1年経過して亡くなった.solitary fibrous tumorは,再発を繰り返し時として悪性化する場合もありえるので長期間の経過観察が重要である.
著者
井上 修平 藤野 昇三 紺谷 桂一 澤井 聡 手塚 則明 花岡 淳 尾崎 良智 鹿島 祥隆 元石 充 古川 幸穂
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.57-64, 2002-01-15
被引用文献数
10 7

従来,胸膜中皮由来とされ限局性胸膜中皮腫(localized mesothelioma)と呼ばれた腫瘍は,近年,胸膜中皮下の間葉系細胞由来と考えられるようになり,solitary fibrous tumorまたはlocalized fibrous tumor of the pleuraという呼び名が一般化しつつある.胸腔鏡下に摘出し得た有茎性の3症例を報告する.3例中2例は臓側胸膜から発生し,1例は壁側胸膜から発生していた.本症は肺腫瘍,胸壁腫瘍,縦隔腫瘍等との鑑別が困難であるが,3例中2例は体位変換によって腫瘤陰影の移動が認められ,術前に有茎性腫瘍の診断が可能であった.3例各々の最大径は6.3cm,4.9cm,3.5cmであったが,全例胸腔鏡下摘出は容易であり,再発等認めていない.
著者
木場 崇之 岡本 俊宏 水野 浩
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.123-127, 2005-03-15
被引用文献数
1

症例は32歳男性.発熱, 喀痰, 上腹部痛を主訴に当院内科を受診, CTで肝臓および肺内に空洞を伴う腫瘤を認めた.肝膿瘍を疑い経皮ドレナージを施行し, 同時に空洞内の造影を行ったところ横隔膜を越えて気管支まで造影され, 肝気管支瘻と診断された.メトロニダゾールとフロモキセフを使用し炎症所見は改善したため, 肺膿瘍加療目的により当科転科となる.肺病変部切除と瘻孔閉鎖を目的に開胸術を施行した.手術は前方腋窩切開で開胸し, 病変の存在する中葉の切除を行った.横隔膜からの瘻孔は癒着により閉鎖されており, その部分を脂肪織で被覆した.術後は順調に経過し退院, 現在再発を認めず経過観察中である.肝膿瘍による肝気管支瘻は本邦では稀な疾患であり, 抗生物質使用により炎症を沈静化し肺切除術を行いえた一例を経験したので報告する.
著者
佐藤 史朋 秦 美暢 笹本 修一 加藤 信秀 高木 啓吾 高井 雄二郎 長谷川 千花子 渋谷 和俊
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.809-813, 2007-09-15

58歳男性.睡眠時無呼吸症候群でnCPAP療法中に,右肺S^2/S^6間に増大傾向を示す15mm大の不整結節影を認めたため,超音波メスを用いて右肺部分切除術を施行した.病理組織所見は線維性瘢痕であり,術後は空気漏れがなく術後7日目に軽快退院した.帰宅後翌日にnCPAPを再開したところ右前胸部痛が出現し,胸部X線所見で右上下葉間に薄壁空洞を認め,nCPAP再開を契機とした肺瘻の出現が疑われた.空洞は次第に縮小し術後6ヵ月で消失した.nCPAP使用中の肺切除術では,肺実質切離の方法やnCPAPの再開時期ならびに再開方法について留意すべきと思われた.