著者
Pan I.C.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.43-52, 1992-02-15
被引用文献数
1

アフリカ豚コレラ(ASF)強毒ウイルスTengani株をVero細胞に馴化してから, そのまま継代培養した場合と, クローニングしてから更に高継代した場合の両方共, 病原性, 免疫原性, 及び感染性の異ったSubpopulationを含むウイルスが容易に産生された. 第27代継代ウイルスの99%以上は接種豚体内で増殖の出来ない非病原性ウイルスであって, 明らかに自然界に存在しない実験室に於ける人工産物であった. 新Subpopulationの病原性の減弱は, 全く均一に起きる訳ではなく, 弱毒化した第27代継代ウイルスを接種した豚個体内では, 血中に連続的に夫々病原性及び免疫原性の異るSubpopulationの出現を見, ある時期に採取した血液材料から強い病原性を有するウイルスが分離出来た. 最初にクローニングを行ってから23代継代培養したウイルスの99.9%は, 接種豚にSubclinicalな感染を起す弱い病原性を示すウイルスであったが, 耐過豚を親株であるTengani株で攻撃した所, 完全な感染防御を示さなかった. Tengani株ウイルス中には, Lisbon '60株と共通の免疫原性を有するSubpopulationと, Tengani株固有のSubpopulationを保有する事が明らかとなった.
著者
小川 絵里 赤堀 文昭 小林 好作
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.719-729, 1985-10-15

犬のタマネギ摂取による溶血性貧血の機序を明らかにする目的でin vitroの実験を行ない, ヘモグロビンの崩壊過程, 活性酸素の関与の有無, 赤血球膜の障害について検討した. タマネギ抽出物の添加によりヘモグロビンはヘム鉄の酸化, タンパク部分の変性を経て, Heinz小体形成へと進むことが明らかとなり, この過程においてスーパーオキサイドの発生, 赤血球膜の脆弱化がおこることが確認された. ヘモグロビンの酸化はSOD, カタラーゼ, GSH, マンニトールによって阻止されなかったが, 膜の脆弱化はSOD, カタラーゼにより有意に阻止された. 一酸化炭素ヘモグロビンではヘモグロビンの酸化変性, スーパーオキサイドの発生は認められなかった. したがって, メトヘモグロビンおよびスーパーオキサイドの発生源は酸素ヘモグロビンであり, これらの生成はタマネギ抽出物の存在により促進されることが示唆された. また, 発生したスーパーオキサイドおよびその代謝物である過酸化水素はヘモグロビンの酸化には寄与しないが, 赤血球膜の障害をもたらすことが明らかとなった.
著者
尾村 嘉昭 福本 幸夫 大滝 一夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.23-30, 1983-02-25

35頭のニホンジカについて血液培養により染色体検査を試みたところ, 個体によって65, 66, 67, 68と染色体数に変異があった. この染色体の変異は, 常染色体中における大型のメタセントリック(M)染色体およびサブメタセントリック(SM)染色体の存否に起因していた. この二つの異形染色体の有無により, 6つの核型を観察することができた. このような染色体の多型現象は, 常染色体中の4個のアクロセントリック(A)染色体が動原本部で癒合して大型のM染色体をつくるか, SM染色体をつくるかにより, 生じたものと思われる. なお, いずれの場合も染色体の基本数は70で一定しており, いわゆるRobertson型転座によるものと思われる. すべての検査個体に共通して, 常染色体中に中型のM染色体1対が存在した. X染色体はA染色体中最大で, Y染色体は小型のSM染色体であり, 識別は容易であった.
著者
柳井 徳磨 柵木 利昭 石川 勝行 酒井 洋樹 岩崎 利郎 森友 靖生 後藤 直彰
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.35-40, 1996-01-25
参考文献数
20
被引用文献数
1

食肉検査所で採取した健康なウマの脳に認められたミネラル沈着症の初期像とその形態学的特徴について検討した. 3歳から10歳のウマ20例を検索し, 12例で淡蒼球の血管に種々の程度のミネラル沈着病変を認めた. 3歳では8例中3例に, 4歳以降では12例中9例に病変を認めた. 中等度以上の変化は4歳以降に認められたことから, 加齢との関連が示唆された. 沈着病変の発現形態は大きく2型に分けられた. 毛細血管の周囲における小型球状沈着物; 細動脈, 小動脈および小静脈の血管壁における塊状の沈着物であった. いずれの沈着病変もPAS反応には強陽性, コッサ反応およびベルリン・ブルー染色には弱陽性を示した. 元素分析では多量のアルミニウム, 中等量の燐, 亜鉛, カルシウムおよび鉄, 微量のナトリウムが検出された.
著者
山添 和明 宮本 修治 彦坂 洋子 北川 幸治 渡邊 一弘 酒井 洋樹 工藤 忠明
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.611-617, 2007-06-25
参考文献数
35
被引用文献数
1 5

犬の肉球欠損に対する代用物として犬の培養肉球の作成を試み,表皮形態の形成過程の観察に加え,基底膜の構成成分のうち細胞接着分子であるα_6インテグリンと,細胞外マトリクスであるラミニン,4および7型コラーゲンの発現を経時的に検索した.培養肉球表皮は気相下培養5日目において肉眼的に容易に識別される程度の厚さとなったが,7日目には表皮には多くの雛襞が見られ,10および14日目には収縮した.組織学的には気相下培養1日目においてケラチノサイトは4あるいは5層に増加し,基底層への分化が認められた.その後5日目までに顆粒層と厚い角質層がそれぞれ認められ,少なくとも14日目まではその形態は維持された.一方,α_6インテグリンは気相下培養後1日目において真皮-表皮間に元の肉球組織とほぼ同程度の強さで発現した.ラミニンと4型コラーゲンはそれぞれ5および10日目に真皮一表皮間に断続的に発現し,14日目には元の肉球組織とほぼ同様の蛍光強度となった.7型コラーゲンは2日目において真皮-表皮間に断続的に発現したが,14日目時点においても連続性は認められなかった.これより,基底膜におけるアンカリングフィブリルの形成が不完全であると考えられたが,元の肉球組織に類似した犬の培養肉球が作成されたことが示唆された.
著者
TEE Hyang PAKHRIN Bidur BAE Il-Hong SHIN Nam-Shik LEE Su-In YOO Han-Sang KIM Dae-Yong
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.851-852, 2007-08-25
参考文献数
10
被引用文献数
8

Staphylococcus intermediusが分離された腎孟腎炎が4歳,雌のシベリアトラ(Panthera tigris altaica)に診断された.剖検では,左腎孟が大量の化膿性滲出液により拡張していた.顕微鏡的には,腎孟と髄質での病変は,主に多量の変性好中球が混在した壊死巣,少量のリンパ球,形質細胞やマクロファージから構成されていた.細菌学検査では,Sraphylococcus intermediusの存在が確認された.これは野生のネコ科動物でのStahpyococcus inermediusによる腎孟腎炎の初めての報告である.
著者
遠藤 秀紀 日柳 章彦 九郎丸 正道 林 良博 坂本 一則 木村 順平
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.635-640, 1997-08-25
被引用文献数
1 2

シマハイエナ (Hyena hyena) の膵臓の葉区分を肉眼解剖学的に観察し, 膵管と副腎管の走行を検討した. また, 組織学的に外分泌部と膵島の配置を確認し, 免疫組織化学的手法により, 膵島におけるA, B, D, およびPP細胞の分布状態を検討した. 膵臓は胃の大弯付近から十二指腸近傍にかけての間膜に発達していた. 幽門部を境界に鋭く折れるため, 前半部を左葉, 後半部を右葉と判断することができた. 右葉よりさらに後方に, 特徴的な独立した小さな葉が確認され, これを後葉 (caudal lobe) と名付けた. 導管は合計3本確認され, 大十二指腸乳頭近傍に到達するものと, そこからさらに前方に分岐するものを膵管と推定し, 後葉から十二指腸に至る最後部の管を副膵管と定めた. 組織学的には多数の膵島が外分泌部の間に観察された. A細胞およびPP細胞は膵島の辺縁部に限局し, B細胞とD細胞は, 膵島内に偏りなく分布していた. また, 外分泌部に単独で散在するB細胞が観察された. ハイエナ類の膵臓の形態はこれまでに記載されたことがない. 肉眼的には後葉の存在と膵管の分岐が特記された. 組織学的には, B細胞の膵島での均等な分布と外分泌部での散在が, シマハイエナの特徴であるといえる. これらの結果は, 食肉類の中で独特の進化を遂げたハイエナ科における膵臓の形態学的データとして, 今後の比較検討にも用いることができよう.
著者
Sohn H.-J. Kim J.-H. Choi K.-S. Nah J.-J. Joo Y.-S. Jean Y.-H. Ahn S.-W. Kim O.-K. Kim D.-Y. Balachandran A.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.855-858, s・vii, 2002-09-25
被引用文献数
1 101

7歳雄のヘラジカ(Cervus elaphus nelsoni)が体重減少,削痩,過度な流涎,歯軋り,発熱,食欲不振および呼吸困難の症状を3週間呈した後に,安楽殺され,剖検された.このヘラジカは1997年3月9日にカナダから韓国に輸入された.肉眼病変は瀰漫性の線維素性肺炎であった.組織学的には軽度な神経細胞の空胞変性と限局した脳幹部神経核の神経網の海面状変性と広範な星状膠細胞の増生が見られた.プロテアーゼ抵抗性プリオン蛋白質(PrP^<res>)に対する免疫組織化学では全ての脳組織切片で陽性であったが,延髄の閂の切片で最も顕著であった.PrP^<res>は脳および脊髄のウエスタンブロット法でも検出された.本ヘラジカと接触のあった残りのヘラジカおよびシカは淘汰され,慢性消耗性疾患は陰性であった.著者らの知る限りでは,本症例は米国およびカナダ以外の国での最初の症例であった.
著者
上間 匡 池田 靖弘 宮沢 孝幸 林 子恩 鄭 明珠 郭 宗甫 甲斐 知恵子 見上 彪 高橋 英司
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.197-199, 1999-02-25
被引用文献数
2

1998年台湾北部(台北および淡水地区)において, ネコ免疫不全ウイルス(FIV)に対する疫学調査を行った. 調査したネコ32匹の内, 7匹(21.9%)が抗FIV抗体陽性であった. このうち3匹からFIVの分離に成功した. エンベロープ遺伝子のV3-V5領域の塩基配列を決定し, 系統発生の解析を行ったところ, これらの分離株はすべてサブタイプCであることが判明した. 今回の結果と我々の以前の報告(稲田ら, 1997年, Arch. Virol. 142: 1459-1467)から, 台湾北部ではサブタイプCのFIVが流行していると考えられた.
著者
椎橋 孝 奈良崎 孝一郎 吉田 元信 野上 貞雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.327-328, 2004-03-25
被引用文献数
13

熊本県天草地方で害獣駆除のために射殺された野生ニホンイノシシおよび同地域の動物病院に来院した飼育ネコにおけるトキソプラズマ抗体の疫学調査を行った.イノシシにおける陽性率および疑陽性率は1.1% (1/90)および3.3% (3/90)であった.一方,ネコにおいては,陽性率O% (O/50),疑陽性率3.3% (1/50)であった.本地域のトキソプラズマの浸潤状況は比較的低いものであった.
著者
小澤 義博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.1-7, 2002-02-25
被引用文献数
2
著者
上原 正人 上嶋 俊彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.963-970, 1985-12-15

鶏の尾髄は第37節から第41節までの5節からなるが, 灰白質は第39節まで認められ, 背腹角を区別しえたのは第37節のみであった. 大型の運動神経細胞は第39節でごく少数みられたが, 第40節および第41節の頭側部には小型神経細胞のみが見られた. 変性軸索は尾髄を通じてしばしば見られた. 第41節は尾端骨中の脊柱管内にあり, おもに多量のグリコーゲン果粒を含む線維性星状膠細胞と上衣細胞から成っていた. また, この節には血管がみられず, 多量のグリコーゲンの存在との関連が示唆された. 脊髄の尾端で中心管は開放し, 直接クモ膜下腔と連絡し, 中心管内の脳脊髄液の活発な移動に役立つものと思われた.
著者
桑村 充 吉田 寛司 山手 丈至 小谷 猛夫 大橋 文人 佐久間 貞重
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.619-621, 1998-05-25
被引用文献数
2 18

A 13-month-old female Newfoundland dog suffered from urinary bladder tumor. Histologically the tumor consisted of round or fusiform cells, occasionally having eosinophilic cytoplasms. Apparent mature rhabdomyoblasts possessing elongated eosinophilic cytoplasm and cross striations were infrequently observed. The tumor cells exhibited immuno-positive for anti-myoglobin, desmin and vimentin antibodies. Ultrastructurally, tumor cells have abundant myofibrils in their cytoplasm and Z bands were also detected. The present tumor was diagnosed as a urinary bladder rhabdomyosarcoma in a Newfoundland dog, which has not been frequently reported in dogs.
著者
大石 英司 北島 崇 中村 久江 松田 知恵子 網本 勝彦 安原 寿雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.421-423, 1997-05-25
被引用文献数
3

Actinobacillus pleuropneumoniae血清型1, 2, および5型菌の培養上清濃縮液にoil-in-water型オイルアジュバントを加えたワクチンを作製し, 野外における効果について検討した. 出荷率は試作ワクチン注射群で91.6%, 市販ワクチン注射群(対照群)で60%であった. 屠殺時の肺病変は, 対照群で重度の充出血, 癒着および結節を認めたのに対し, 試作ワクチン群の病変は軽度であった. さらに, 試作ワクチン注射痕の残留も認められず, 野外における本ワクチンの有効性, 安全性が確認された.
著者
児玉 洋 田倉 中川 剛士
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.405-408, 2007-04-25
被引用文献数
1 19

腐植物質は,腐植土中の有機物が分解されたものであり,かつて有機物や微生物が存在していた広範な土壌環境中に見出される.今回の実験において,コィに腐植土抽出物を経口投与すると,非定型Aeromonas salmonicida実験感染に対する抵抗性が誘導されることを発見した.10%,5%あるいは1%の割合で餌料に混合した抽出物を投与したコィにおいて,死亡率および出血や潰瘍などの皮膚病変形成は顕著に抑制された.10%あるいは5%の割合で投与したコィでは,非投与コィに比べ平均生存日数が有意に延長した.死亡魚の一部から非定型A.salmonicidaが分離されたが,Aeromonas hydrophilaおよびFlavobacteriumも分離され,皮膚病変形成過程で菌種の交代が起きていることを示している.今回の実験結果は,コィへの腐植土抽出物の投与は,A..salmonicida感染症の予防に有効であることを示している.
著者
遠藤 秀紀 福田 勝洋 木村 順平 佐々木 基樹 STAFFORD Brian J.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.1229-1235, s・iii, 2004-10-25
被引用文献数
5

ラオス,タイ,半島マレーシア,スマトラ島,ジャワ島,ボルネオ島,ランカウィ島,およびミャンマー・テナセリム諸島に産するジャワマメジカ(Tragulus Javanicus)の頭蓋の大きさと形の地理的変異を検討した.大陸産集団において気候条件の影響を確認することはできなかったが,テナセリム諸島とスマトラ島産の頭蓋は,島嶼隔離効果のため吻尾方向に長いことが明らかとなった.Qモード相関係数を用いたクラスター分析の結果,次の3つのクラスターが確認された.1)ランカウィ島産とテナセリム諸島産,2)ラオス産とタイ産,3)スマトラ島産とボルネオ島産.ジャワ島産は,雄ではランカウィ島とテナセリム諸島産集団のクラスターに属し,雌ではスマトラ島産とボルネオ島産のクラスターに形態学的に類似した.また,正準判別分析の結果から,ラオス産とテナセリム諸島産は他の集団から分離し,一方でスマトラ島産,ジャワ島産,ボルネオ島産は,判別得点が互いに混在することが明らかとなった.
著者
Salman Mo D.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.761-768, 2003-07-25
被引用文献数
1 25

慢性消耗疾患(CWD)は北米の鹿やオオジカ等の鹿類の動物に見られるプリオン病である。スクレイピーなどの他の伝達性海綿状脳症と異なり,CWDは野生の鹿類の動物やそれらの動物を飼育繁殖した動物にも自然感染を起こすが,羊や牛などの半易獣の家畜に発生した例は報告されていない。本総説では,CWDの歴史,発病機序(病理発生),感受性動物,感染経路,本病の起源に関する考察,野外診断法と室内検査方法,米国およびカナダにおける監視システムと防疫対策,本病の経済に及ぼす影響,食品及び飼料の安全性の問題,人や動物に対するリスクなどを総括的に考察した。いまだ,CWDが人に感染したという証拠は認められていない。
著者
佐藤 良彦 久米田 章仁 小山 武彦 高田 俊也 青柳 高弘 市川 憲一 和田 浩彦 古谷 隆徳 田中 けい子
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.1073-1076, 1993-12-15
被引用文献数
5

ジュウシマツが水様下痢を呈し死亡した. 肝臓の軽度腫大と巣状壊死を認め, 主要臓器, 糞便からS. Typhimuriumが分離された. ニューカッスル病およびクラミジア症は陰性であった. 以上の成績からサルモネラ感染症と診断した. 有効薬剤の投与, 病鳥の淘汰を実施したが198羽が死亡し致死率は74%に達した. 疫学調査により, 県外から購入したジュウシマツが感染源と推定された. 本症例はジュウシマツにおけるサルモネラ感染症の最初の報告である.