著者
安田 憲司 橋川 真之介 坂本 弘美 冨田 悠一 柴田 早苗 深田 恒夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.205-208, 2007-02-25
参考文献数
23

乳酸桿菌とデキストランを含んだ新シンバイオティクスの効果を調べるためにホルスタイン牛は泌乳条件に差がない58頭を選んだ.牛は無作為に2群に分け,A群にはコントロールとして基礎飼料を,B群にはシンバイオティクスを2004年8月から1年間投与した.シンバイオティクス投与後,乳量および成分について2004年8月から2005年8月までA群とB群を比較検討した.B群の乳量はA群より多く,調べたすべての値において両者間で有意な差(p<0.01あるいはp<0.05)があった.更に,脂肪量,蛋白量および非脂肪固形物においてB群は有意に増加していた.また,A群において2004年8月及び2005年4月では体細胞数が有意に増加していた.これらの結果,乳酸桿菌とデキストランを含んだ新シンバイオティクスは年間を通してホルスタイン牛の乳量・乳質を高めることを示した.
著者
津曲 茂久 市川 康明 鳥海 弘 石浜 賢 森田 光夫 印巻 美佐生 武石 昌敬
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.1003-1005, 2003-09-25
参考文献数
20
被引用文献数
1 8

LHサージ後5日と7日に異なる雄犬からの凍結精液人工授精により得られた16子腹において親子鑑別を実施した.その結果,重複妊娠母犬は25%のみであり,43.8%はLHサージ後5日,31.3%は7日のみの授精で分娩したことが判明した.全87頭中46%の子犬はLHサージ後5日,54%は7日の授精で生まれていた.この結果から凍結精液による犬人工授精はLHサージ後5日と7日でも十分に成功することが示唆された.
著者
森 陵一 小高 鐵男 内藤 善久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.101-106, 1999-02-25
参考文献数
12

真皮膠原線維の代謝回転が早いためと考えられる皮膚脆弱症をもつ11歳齢ホルスタイン雌ウシ(Cow1)の橈骨骨幹の横断切片を用いて, 形態学的および物理化学的な検索を行った. 巨大なCow1は成長の安定した5-6.5歳齢の正常雌ウシの約1.5倍の体重を示した. その骨試料を正常な12歳齢雌ウシ(Cow2)と比較した. 今まで, 若いウシやある草食恐竜の長骨骨幹は, 付加的に形成される同心円状の葉状骨(laminar bone)からなり, また, このような葉状骨は成長の早い家畜や大型犬の成長期の骨に特徴的に見られると報告されている. Cow1とCow2の骨量はほぼ同じであったが, Cow1はCow2と比べて外層1/2で少数の骨単位しかもたず, 全層ではCow2と1歳齢の去勢雄ウシの中間型を示した. Cow1とCow2の間に, CaとP量, Vickers硬さに有意差は認められなかった. しかし, Cow1の骨の膠原細線維は不均一な直径と乱れた配列を示した. このことから, 既に報告された皮膚脆弱症の真皮と骨の膠原細線維の形成に何らかの相関性のあることが推察された. 葉状骨の残存量からは, 11歳齢のCow1はおそらく最近まで成長しており, その結果として, ある草食恐竜の様に巨大化したと考えられた.
著者
高鳥 浩介 一条 茂 小西 辰雄 田中 一郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.307-313, 1981-06-25
被引用文献数
1

本邦における馬の皮膚真菌症の最近の発生状況については十分検討されていない. そこでわれわれは, 1978年に本邦でも馬の生産地として知られる北海道内での発生状況について, 臨床的ならびに真菌学的検索を行なった. 対象地域は北海道内上川, 日高, 十勝および北見の4支庁管内で, 軽種馬育成牧場と競走用輓馬を繋留している競馬場であった. 7軽種馬育成牧場での発病率は, 21.9〜100%であり, 対象牧場すべてに馬の皮膚真菌症発生を認めた. また, 3競馬場での発病率をみたところ, 8.6〜18.8%であり, いずれの競馬場でも本症の発生を認めた. 発病の時期をみると, 軽種馬では7〜9月の放牧期に多く, 輓馬では7〜10月の競馬開催時に多く, いずれも感染馬や原因菌で汚染された馬具との接触が発病に関係深いものと考えられた. 皮膚病巣の発生部位は, 育成馬では全身各所にわたることが多く, 輓馬ではゼッケンの装着部位である胸部から病巣が始まる例が多かった. すべての発病馬の病巣から共通してTrichophyton equinumが分離され, 本菌が発病の主な原因と考えられた. また一部の発病馬からは, Microsporum canisが分離された. M. canisの本症発生における原因菌としての役割については, 今後の検討すべき問題と思われた. 以上の成績から, 北海道おける馬の皮膚真菌症は定着した疾患となっており, また本病が全国的に認められるものと考えられた. したがって, 今後本病に対する適切な予防と治療対策が重要な衛生上の課題であると思われた.
著者
村上 昇 高橋 清久 黒田 治門 江藤 禎一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.29-34, 1986
被引用文献数
1

偽妊娠ラットにおいて, 制限給餌のプロラクチンサージおよびコルチコステロンリズムに及ぼす効果を検討した。成熟雌ラットを, 14L:10D (グループ1: 5時点灯19時消灯, グループ2: 19時点灯7時消灯)の条件下で飼育し, それぞれのグループに自由給餌群と, 毎日9-11時のみ2時間の制限給餌群を設け, 23日後の発情前期に子宮頸部刺激で偽妊娠を誘起した。自由給餌群では, ノクターナルサージおよびダイアーナルサージは, グループ1ではそれぞれ3時および18時に, グループ2では15時および6時に認められ, プロラクチンサージがそれぞれの光条件に同調していることがわかった。一方, 制限給餌群では, 両グループともにノクターナルサージは影響を受けなかったが, ダイアーナルサージは消失した。血中コルチコステロンリズムは両グループともに, 制限給餌直前にピークを示した。以上の結果から, 偽妊娠ラットのプロラクチンサージでノクターナルサージとダイアーナルサージの成立には別の機構が存在する可能性が示唆された。
著者
村上 洋介 加藤 あずさ 津田 知幸 両角 徹雄 三浦 康男 杉村 崇明
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.891-894, 1994-10-15
被引用文献数
37

わが国で発生した肥育豚の慢性肺炎と繁殖豚の異常産の各症例から, 豚の肺胞マクロファージ細胞を用いて合計3株の豚生殖器・呼吸器症候群(PRRS)ウイルスを分離した. これらの国内分離株は, 間接蛍光抗体法(IIF)とIndirect immunoperoxidase mono-layer assayのいずれにおいてもアメリカで分離されたPRRSウイルスの46448株(米国株)とは強い交差反応を示すが, オランダで分離されたLelystad virus (欧州株)とは弱い交差反応しか示さなかった. さらに, 自然感染豚の血清を用いて, 上記の米国株, 欧州株および国内分離株に対するIIF抗体の検出率と抗体価の変動を比較したところ, 国内分離株と米国株を抗原とした場合にはそれらの抗体検出率と抗体価の変動がほほ一致するのに対して, 欧州株を抗原とした場合には抗体検出率が低く, また抗体変動もほとんど認められなかった. 以上のことから, わが国でPRRSウイルスを分離し国内にPRRSの発生があることを明らかにするとともに, 国内流行株が米国株に近縁であることが示唆された.
著者
Syakalima Michelo CHOONGO Kennedy 中里 幸和 小沼 操 杉本 千尋 坪田 敏男 福士 秀人 吉田 光敏 板垣 匡 安田 準
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.315-318, 2001-03-25
被引用文献数
9

ザンビア国カフエ川湿原で, 銅鉱山排液が混入するロッキンバー及びブルーラグーン国立公園に生息する野生生物, 重金属被爆がもたらす環境危険因子について食物連鎖解析を行った.ここでみられる食物連鎖因子は, 水, 魚, 植物(草).カフエレチュエ(Kobus Leche Kafuensis)であり, 重金属は, 銅, 亜鉛, マンガン, 鉄である.銅は水:0.03-0.04, 魚3.0-6.0, 草11.0-44.0, レチュエ肝臓:痕跡-199.0であった.亜鉛は水:0.01, 魚32.0-82.0, 草:15.0-21.0.レチュエ肝臓:52.0-138.0であった.マンガンは水:0.15-0.16, 魚:7.0-18.0, 草:51.0-1450, レチュエ肝臓:40.0-53.0であった.鉄は水:0.13-0.14, 魚:26.0-134.0, 草:1766.0-1797.0, レチュエ肝臓:131.0-856.0であった.濃度単位は水がmg/l, その他の試料はmg/kgである.水以外の全ての因子で重金属濃度が高かったが, 毒性は裏づけられなかった.
著者
堀本 泰介 福田 奈保 岩附(堀本) 研子 GUAN Yi LIM Wilina PEIRIS Malik 杉井 俊二 小田切 孝人 田代 眞人 河岡 義裕
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.303-305, 2004-03-25
被引用文献数
1

1997年に人から分離されたH5N1インフルエンザウイルスの赤血球凝集素(HA)に対する単クローン性抗体を,DNA免疫法を利用して作製した.これらの抗体を用いて,H5型ウイルスのHA抗原性を解析したところ,1997年および2003年に人から分離されたH5N1ウイルスの間で抗原性がかなり異なることがわかった.
著者
高瀬 公三 馬場 守 ジルベルト 有吉 理佳子 藤川 英雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.1129-1131, 1996-11-25

SPF発育鶏胚の高度病原性伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(hv IBDV)F539株及びDV86株に対する感受性を, 3つの接種ルートで, 従来型IBDV G691株と比較しながら調べた. その結果, 鶏胚のhv IBDV 2株に対する感受性はG691株より高く, 感染胚のほぼ100%が死亡し, 算出された50%胚致死量は50%胚感染量とほぼ同値を示した. 鶏胚に対する高い致死性はhv IBDVに特徴的な性状と思われた.
著者
高瀬 公三 馬場 守ジルベルト 西 理佳子 藤川 英雄 山田 進二
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.327-330, 1995-04-15
被引用文献数
2

発育鶏卵漿尿膜(CAM)及び鶏腎培養細胞(CK)由来の鶏アデノウイルス(FAV)寒天ゲル内沈降(AGP)抗原の反応性を実験感染鶏血清及び野外鶏血清を用いて比較し, 次の成績を得た. 実験感染鶏血清の両由来抗原による陽性率はFAVの株(血清型)の違いによって異なり, ヘテロ抗原での陽性率はホモ抗原でのそれに比べて低く, またヘテロ抗原での抗体価もホモ抗原の抗体価に比べて低い傾向を示した. さらに, CAM由来抗原を用いた方がCK由来抗原の場合よりも高い陽性率, 又は高い抗体価の得られる場合が多かった. CAM由来抗原を用いて野外鶏血清を検査したところ, 用いる抗原(血清型)によって抗体陽性率は異なったが, 複数の抗原を混合することにより, 陽性率は高まった. このことから, FAVの血清疫学調査にはCAM由来の複数の血清型のAGP抗原を用いて行うことが望ましいと考えられた.
著者
アハメド モハメド 木村 和弘 ソリマン モハメド 山地 大介 岡松(小倉) 優子 マコンド ケネディ 稲波 修 斉藤 昌之
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.125-131, 2007-02-25

脂肪細胞から分泌されるレプチンは摂食調節やエネルギー消費を調節するだけでなく,直接あるいは腫瘍壊死因子(TNF-α)を介して間接的にヒト好中球機能を修飾する.ウシ好中球はfMLP受容体を持たないなどヒト好中球とは異なる特徴を持つ.そこで本研究ではホルスタイン牛好中球の脱顆粒応答および活性酸素産生能に村するレプチンとTNF-αの作用を調べた.なおウシ好中球には活性型レプチン受容体Ob-RbとTNF-α受容体(TNF-R1)の発現が確認された.ヒトレプチン,ヒトTNF-α,活性型ホルボールエステル(PMA)とオプソニン化したザイモザン(OZP)は脱顆粒を惹起しなかった.一方,アナフィラトキシンを含むザイモザン活性化血清は(ZAS)は脱顆粒を誘導した.しかし,レプチンやTNF-αはZASによる脱顆粒反応にも影響しなかった.レプチンを除く,TNF-α, PMA, OZPとZASは活性酸素の産生を異なる強度で誘導した.さらにTNF-αはOZPとZASによる活性酸素産生能を増強し,この活性増大作用の一部分はNADPHオキシダーゼの細胞質コンポーネントであるp47^<phox>の膜移行の増加で説明された.レプチンはいずれの刺激に対しても影響を示さなかった.これらの結果よりヒト好中球とは異なりレプチンはウシ好中球の脱顆粒応答および活性酸素産生能に村して直接的な作用を示さないことが明らかとなった.
著者
アハメド モハメド シャバン ゼイン 山地 大介 岡松(小倉) 優子 ソリマン モハメド アブエルダイム マブルク 石岡 克己 マコンド ケネディ 斉藤 昌之 木村 和弘
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.509-514, 2007-05-25
被引用文献数
11

脂肪細胞分泌因子,レプチンは摂食やエネルギー消費のみならず,免疫細胞機能を修飾することが知られる.ウシ単核球(PBMC)をレプチン単独あるいはT細胞マイトージェンCon Aと同時に刺激すると,レプチンはPBMCの増殖を10-40%増大させた.一方,PBMCからTリンパ球を分離し,同様に刺激すると,レプチンはTリンパ球の増殖を抑制したので,レプチンはPBMCに含まれる単球マクロファージなどに作用してTリンパ球増殖因子を産生させる可能性を示した.次に単球マクロファージを分離してサイトカイン遺伝子の発現を調べたところ,多寡はあるものの腫瘍壊死因子TNF-α,インターロイキン(IL)-1β,IL-12p35,IL-12p40,IL-18遺伝子の恒常的な発現が見られた.レプチンを作用させるとTNF-αとIL-12p40mRNAの発現が増大したが,他の遺伝子の発現は変化しなかった.TNF-αの分泌量を調べると,実際に培養液中の濃度が増加した.また培養液中のIL-1β濃度が増大した.そこで伏在性のpro-IL-1βやpro-IL-18を活性型に分解させるタンパク分解酵素caspase-1の発現について調べたところ,レプチンによってその遺伝子の発現が増大した.これらの結果より,レプチンは単球マクロファージに作用しIL-12p35/p40の複合体形成や活性型IL-1β/IL-18を分泌させTリンパ球の増殖を促進すると考えられた.
著者
宇根 有美 多々良 成紀 野村 靖夫 高橋 令治 斎藤 保二
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.933-935, 1996-09-25
被引用文献数
1

2頭のオグロプレーリードッグ(Cynomys ludovicianus)に, 肺転移を伴う肝細胞癌と非腫瘍部の慢性活動性肝炎の同時発生と, 肝細胞の過形成が認められた. 過形成性の肝細胞は細胞質内に多数の好酸性, Orcein染色陽性の封入体を持っていた. 電子顕微鏡で, 細胞質内封入体に一致して鎖かたびらのような編み目状の構造物を観察した. これらの封入体の電顕像は, 肝癌に関連するヘパドナウイルスの封入体の形態と異なっていた. また, ヘパドナウイルス様の粒子も認められなかった.
著者
平間 郷子 後藤 陽子 上間 匡 遠藤 泰之 三浦 竜一 甲斐 知恵子
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.1575-1578, 2004-12-25
被引用文献数
2 22

野生ハクビシンから分離されたCDV(Haku93株・Haku00株)のH遺伝子は,607アミノ酸をコードするORFを有していた.アミノ酸配列はともに,ワクチン株よりもイヌの近年分離株と高い相同性を示し,12のシステイン残基,疎水性領域およびN型糖鎖付加部位が保存されていた.系統樹解析ではHaku93株およびHaku00株は,日本の近年分離株と同じグループに属することが明らかとなった.
著者
三宅 正志 矢口 貴博 佐瀬 孝一 王 建輝 小川 俊之 遠藤 良夫 鈴田 靖幸 岡崎 正幸 芳賀 嘉久 脇 貴志 高橋 進 山本 芳実 岩淵 成紘
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.9-14, 2004-01-25

肝細胞増殖因子(HGF)は,多彩な生物活性を有するサイトカインであり,肝細胞,上皮細胞,色素細胞,内皮細胞および造血細胞など多岐にわたる細胞に作用する。我々は,猫白血球由来cDNAから第1クリングルドメイン内の5アミノ酸残基が欠失するスプライスバリアントHGFを単離した。次に,5アミノ酸残基欠失猫HGFおよび猫HGFの生物活性を比較するため,哺乳動物細胞発現ベクターを構築し,COS-7細胞に遺伝子導入した。得られた組換え5アミノ酸残基欠失猫HGFおよび猫HGFは,マウス肝由来細胞株であるBNL CL.2細胞の増殖を刺激し,さらにMDCK細胞の遊走性を充進した。5アミノ酸残基欠失猫HGFは,細胞増殖および遊走において,猫HGFと同等の活性を有することが示された。
著者
三枝 順三 上田 雄幹 後藤 義孝 藤原 公策
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.75-80, 1978-02-25
被引用文献数
2

A total of 945 adult dogs, 572 stray and 373 nonstray ones, collected fromTokyo area, were examined for Brucella canis infection and 27 (2.9%) cases were found tohave high titered agglutinin and/or the organism. With the exception of a colony of non-stray dogs showing a positive rate of 12.77., no significant difference in positivity rates wasseen between stray and nonstray dogs. Bacteremia was detected in 12 cases out of 459cases examined, and 9 positive cases had high titered antibodies. In 9 out of 11 autopsiedcases having high levels of agglutinin or positive blood culture, the organism was isolatedfrom the spleen, Nymph nodes, liver and male genital organs with high frequency. Amongthese cases carrying the organism, high titered specific agglutinins were usually resistantto 2-mercaptoethanol treatment, while low titered agglutinins, probably nonspecific, weresensxtuve.
著者
筒井 敏彦 江島 博康
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.581-583, 1988-04-15
被引用文献数
1

雌犬21頭に異なる雄大と2回交配させ,子犬の雄親を判定することによって同期複妊娠の成立状況を検討した. 開腹手術によって観察した卵胞の成熟状態から排卵時期を推定して,排卵36時間前から排卵84時間の間に24〜96時間の間隔で2回交配させ,娩出された子犬の血液型および体型で雄親を判定したところ,2回目の交配を排卵後60時間までに行った場合に同期複妊娠が成立することがわかった.
著者
真田 靖幸 真田 直子 久保 正法
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.1063-1065, 1999-09-25
被引用文献数
6 10

重篤な羽毛形成不全および脱羽を示すタイハクオウム(Cacatua alba)をオウム類嘴一羽毛病(PBFD)と診断した. 光顕で観察された核内および細胞質内封入体は, 電顕的に結晶状,渦巻き状,半円形状または同心円状配列を示すウイルス粒子で構成されていた. 超微形態学的解析により, 皮膚および羽包部から回収されたウイルスは,正二十面体で直径15〜20nmのウイルス粒子と確認された.
著者
久保 喜平 松山 聡 片山 久美子 堤 千津 米澤 久美子 嶋田 照雅 小谷 猛夫 佐久間 貞重 大橋 文人 高森 康彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.1335-1340, s・iii, 1998-12
被引用文献数
1

乳腺腫瘍は雌イヌにおいて高頻度に発生する腫瘍のひとつである.本研究では, 腫瘍マーカーとしての有用性を検討するためにイヌ乳腺腫瘍材料におけるc-kit遺伝子の発現を調べた.4種の哺乳動物のc-kit cDNAの塩基配列を参考にRT-PCR法のためのプライマーセットを合成し, イヌc-kit遺伝子を増幅した.正常イヌ脾臓の全RNAからのRT-PCR法により増幅したイヌc-kit遺伝子の大きさは756bpであり, 哺乳動物のcDNAの該当部分と高い相同性を示した.11例のイヌ乳腺腫瘍(腺癌, 良性混合腫および悪性混合腫)すべてにおいてc-kit mRNAの発現が検出された.イヌ乳腺腫瘍のうち, 腺癌におけるc-kit遺伝子の発現は, 悪性混合腫瘍に比べて有意に高かった.さらに, 15例の乳腺腫瘍以外の各種イヌ腫瘍組織標本におけるc-kitの発現も同様に検討した.肥満細胞腫の全例において, 高いmRNAの発現が認められたが, 残りの12例の腫瘍では, 5例で低レベルのRT-PCR産物が検出されたのをのぞいて, c-kit遺伝子の明らかな発現は見られなかった.以上の結果より, イヌ乳腺腫瘍では, c-kit遺伝子mRNAの発現が有意に高く, その診断上有用であると思われる.