著者
角田 宏子 Hiroko SUMIDA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2014
巻号頁・発行日
2014-11-25

村上天皇は、文学活動を盛んに行なった平安時代前期の天皇であり、現存する「村上天皇御集」には、後宮の女御や更衣たちと詠み交わした歌が収録される。村上天皇の妻室は、十人以上知られるが、この歌集の半数以上を占めるのは、斎宮女御徽子女王との贈答歌である。徽子女王には別に、複数の本で伝わる「斎宮女御集」があり、「村上天皇御集」の歌とも重複している。特別に寵愛されたとは言えない徽子女王の歌が大量に収録された要因は、外在的事情のみならず、編纂者の意図に拠る。天皇と徽子女王との、調和的とは言えない贈答歌は、逆にうちとけた関係を示すものであると考える。編纂者は、村上天皇の私的な記録を残すにあたり、徽子との贈答歌がふさわしいと考え収録を容認した。同集第6番目の歌について、先行する論考は何れも、天皇が徽子の入内を心待ちにする歌だと見なしてきたが、これは女御述子の歌群に分類すべき歌である。編纂者は、人間村上天皇の生涯を記録するにあたり、天皇にとって重要な女性を、同集の冒頭部分に順に配置した。述子の歌群は、天皇の真情を反映させようとする編纂者の意図の表われであったと推測する。Murakami Emperor is the emperor of Heian era. He did a lot of literary activities. Murakami Emperor Gyosyu(村上天皇御集)is an anthology of his poemstanka. The worksof literature written by him and his wives are included in this book. Emperor and his wives exchanged tankas using letters. He has 10or more people wives. Saigu Nyogo Yoshiko Joou(斎宮女御徽子女王)is one of the wives. Half of the book are works of Emperor and 徽子. Their gift-giving tanka shave a dissonance, and are inharmonious. But their many tankas were recorded in this book. This is because their relationship was close and they were able to show openly their sentiment. An anonymous author was intended to record the Emperor's private life. The No.6tankain this book expresses his private sentiment. An earlier literature construed it as his hope. ItconstruedNo.6tankaas the expression of the feeling he was looking forward to marry 徽子. I think it is different. It expresses the affection for another wife Nyogo Nobuko(女御述子). At the beginning of this book, the tankas of 述子are placed. And also by this arrangement, an author could be recorded Emperor's personal sentiment.
著者
相良 二朗 見明 暢 田頭 章徳 種村 留美 長尾 徹 野田 和恵 Jiro SAGARA Nobu MIAKE Akinori TAGASHIRA Rumi TANEMURA Toru NAGAO Kazue NODA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2013
巻号頁・発行日
2013-11-25

少子高齢化が進行している我が国において、認知症者の増加は予想をはるかに上回り、2012年時点で高齢者人口の15%にあたる約462万人が認知症を発症していると発表された(朝田隆、厚生労働省研究班、2013)。一方、2010年現在、高齢者のいる世帯は全体の4割を占め、独居高齢者は男性140万人、女性346万人と推計されている(平成24年版高齢者白書、内閣府)。加齢に伴う生活不安の一つは自身あるいは家族が認知症になることであり、認知症が進行すれば在宅生活をあきらめざるを得ない。アルツハイマーに代表される認知症は進行性の疾患であり、数年間に及ぶ初期症状の段階を経て要介護状態となる。この初期段階における日常生活上の困難や混乱によって生じる「問題行動」は生活行為を縮小させ、認知機能の廃用を引き起こし、認知症の進行を早める危険性がある。著者らは、生活環境とりわけ日常生活で使用する家庭電化製品等(以下家電等と略記)が認知機能の低下に配慮していないことに起因していると仮定し、独居もしくは日中独居の高齢者がどのような家電等を継続使用しているのか、使用を中断したものはないか、といった調査を行い、その結果から認知力が低下しても継続使用が可能な家電等のデザイン方法について7つの知見を得た。In 2013, a research unit of Ministry of Health, Labor and Welfare announced that more than 4.62 million are dementia and around 4 million are MCI (Mild Cognitive Impairment), extremely exceeding expectation. On the other hand, households which have elderly counted 42% in 2010 in Japan. The cabinet estimated 1.3 million men and 3.5 million women of over 65 live alone.One of the fears of aging people is to be a dementia. People must move to institute when the stage of dementia goes deep. The dementia like an Alzheimer's disease become worth in several years, after intermediate stage so called MCI. In this intermediate stage, if some kind of problems happens, family member tend to take his/her independent activities. This makes dementia worth.The authors interviewed 91 elderly who live alone to find what kind of everyday technology are still used or quite using. Finally we found seven items of knowledge to design those elderly friendly.
著者
川北 健雄 花田 佳明 金子 晋也 Takeo KAWAKITA Yoshiaki HANADA Shinya KANEKO
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2012
巻号頁・発行日
2012-11-30

まちの将来像を考え、それを実現するための整備方針を考えようとする際、まず必要となるのは、その地域の特性を把握することである。一般には、地形や歴史、社会統計、空間形態、現地観察といった様々な観点にもとづく調査分析を組み合わせて、地域の特性を読み解く作業が行われるが、実際に有効な解読手法は、目的や対象とする地域によって異なってくると考えられる。そこで本研究では、地域特性の把握手法についてより具体的に考察するため、ひとつのケーススタディとして、神戸市内のある住宅地を対象とした地域特性の解読作業を行う。対象地は、1960年代を中心として開発が行われ、現在多くの建物が更新時期を迎え、改修や建替えが必要となっているところである。ひと通りの解読作業の後、得られた成果と調査分析の過程を振り返ることで、のぞましい把握手法のあり方について考察する。結果としては、一般的な方法だけでなく、調査中に見いだされる地域特有の事象に関する調査や分析を柔軟に組み入れることが、有意義な成果を得る上で重要であることが明らかになった。
著者
多田 由美 杉本 真理子 泉 政文 綱島 夢美 萩原 こまき Yumi TADA Mariko SUGIMOTO Masafumi IZUMI Yumi TSUNASHIMA Komaki HAGIWARA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2013
巻号頁・発行日
2013-11-25

まんが表現における作画技術教育の前提として必要なのは、まんが表現史的な視点である。手塚治虫系のキャラクター表現に関しては、田河水泡とディズニーの作画方法を構成主義的に解釈した「ミッキーの書式」に基づくことが指摘されているが、本報告では少女まんが領域における「ミュシャの書式」(すなわちヨーロッパの19世紀末から、アール・ヌーヴォー、アール・デコなどの挿絵や広告画の援用・解釈に基づく「書式」)の所在について仮説的に述べる。1901年、与謝野晶子『みだれ髪』の表紙に藤島武二がミュシャふうの意匠を採用し、近代女性文学における「私」と「ミュシャ」的表象が結びつく。そして1970年代に少女まんが領域で「内面の発見」がなされた時、それを主導したいわゆる「24年組」によって再度「ミュシャの書式」が再受容された。「ミュシャの書式」は一見、キャラクター的、非歴史的に見えながら、日本近代の少女まんがを含む女性表現では近代的自我や身体性、政治性を包摂しうる表象として出発し、「24年組」の背後にある近代史的文脈を理解することはまんが教育として重要である。
著者
末延 岑生 Mineo SUENOBU
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2012
巻号頁・発行日
2012-11-30

本稿では「ニホン英語(Open Japanese― OJ)」の形態論上の類型化を試みた。ニホン英語はこの一世紀の間に、日本人の手で従来の英米英語を日本文化・母語と照合させ、自由に取捨選択し変形しながら、現在ほぼすべての日本人が、好むと好まざるに拘らず使っている英語である。今回の類型化分析の過程から得られたニホン英語の特徴、アジア英語の特徴とは次の5つである。(1)母語(踏襲)化によって英語の中に母語の伝統を復活させ、個性化することでニホン英語に誇りを持たせた。(2)英米英語を拡大解釈化することでことばの規制を緩和し、使いやすくした。(3)簡素化で無駄な飾りを取り払い、すっきりしたデザインにした。(4)置き換え化でより理解を明快にした。(5)入念化で英語がより丁寧・親切化され、英語をよりユニバーサル・デザインに近づける言語へと磨き上げてきた。ところが日本の英語教育界は「ニホン英語」を「誤文」とみなし、完璧なアメリカ英語以外を認めない。しかし、本稿で分析した誤文1,413文のうち、1,279の文(94.7%)が冠詞やsといった些細な規範文法のズレであり、推理すれば意味が取れることが判明した。これは筆者がすでに「ニホン英語は78%以上の高率で理解される」ことを実証した(Suenobu 1988)が、それを超える確率となった。
著者
末延 岑生 Mineo SUENOBU
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2011
巻号頁・発行日
2011-11-30

人間は本来、親から自然にことばを教わる。母語の学習に失敗した人がほとんどいないのは、ことばは猿人から人類に至る歴史の中で醸造され培われてきたもので、遺伝子の一部として生まれつきその能力がそなわっており、親がそれをうまく引き出しているからだ。だから環境に合わせてデザインすれば、外国語であっても必ずできる。たとえば、奈良時代に中国大陸から入ってきた複雑な漢字文字は、平安時代の人々がうまく日本語に溶け込ませながら、思い切ったシンプルなデザインとして「ひらかな」「カタカナ」を生みだした。この便利さは今も本場の中国人たちをも羨ませる。では日本の英語教育はどうか。歴史ある日本文化と日本語を土台としながら工夫しデザインすれば、誰でもある程度はできるというのに、逆に多くの学習者たちの英語離れを生んできた。その原因は何か。本論文はこのような英語教育の状況を「世界諸英語」という視点から、さらに学生とともに授業現場の中でつぶさに分析した上で、日本人の母語である日本語と英語の接点を探りつつ、日本人にやさしい、世界に開かれた第二の母語としての日本語、すなわちOpen Japanese をデザインしようと試みるものである。
著者
赤崎 正一 戸田 ツトム 寺門 孝之 橋本 英治 Shoichi AKAZAKI Tztom TODA Takayuki TERAKADO Eiji HASHIMOTO
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2010
巻号頁・発行日
2010-11-24

現代アートの表現手法は多様であり、その記録のための「アートブック」も様々な形式がある。また近年、アートの世界では言語表現・文字記号表現を含むものの重要性が増している。したがって従来の画像類の掲載・再現ではすまない記録法が求められている。本研究では考察されることの稀だった文字・組版表現とアートの記録について検証を行う。事例として2008年10月29日、ビジュアルデザイン学科による独自開催特別講義「Art /内藤礼」を取り上げる。その繊細を極めた表現で国際的に活躍している美術科・内藤礼氏は、また寡黙な作家としても知られている。この特別講義は、自らの作品を語ることにきわめて稀な作家自身の言葉の貴重な記録となった。そうした内藤氏の表現の内実に対応した「本」をつくりあげることが本研究の課題であった。2009年12月、それは単行本「内藤礼〈母型〉」として刊行された。戸田ツトム教授の全面デザインによるこの単行本化の作業は、そうした高度なデザイン課題への挑戦でもあり、また現代デザインの隘路たる「デザインの消滅を企図するデザイン」への回答とも位置づけられるものとなった。作家の言葉の背後に広がる深い世界をいかに組版と図版により読者に伝えうるかという、デザインの試行である。As means of expression in contemporary art are diversied, art books as a medium for recording art also take many different styles. On the other hand, linguistic and character expressions have recently become increasingly important in the art scene.In this context, there should be a new means of recording art that goes beyond the simple presentation of graphic images in the conventional art books. This course studied typographic and compositional expression in art books as a medium for recording art.The course focused on exploring "Art / Rei Naito," a special lecture presented by Department of Visual Design on October 29, 2008.Rei Naito is an artist whose refined sensitivity is highly reputed in the world. She is also renowned for being taciturn about her work. The lecture was a very rare opportunity in which the artist talked about her art. The purpose of this course was to make a "book" that reflects the essence of her artistic expression.The book, Naito Rei <Bokei>, was published in December 2009. Designed entirely by Professor Tsutomu Toda, the whole process of making this book was a challenge to an advanced design issue as well as an answer to the "design intended to vanish design," an aporia in contemporary design.
著者
相良 二朗 見寺 貞子 田頭 章徳 久慈 達也 Jiro SAGARA Sadako MITERA Akinori TAGASHIRA Tatsuya KUJI
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2010
巻号頁・発行日
2010-11-24

人間は情報の75~80%を視覚から得ていると言われている。現在の都市生活においては闇は存在せず、視覚情報が途絶することも経験できない。視覚障害の疑似体験としてアイマスクを装着して視覚を遮断する体験が行われることがある。しかし、アイマスク装着は、アイマスクを装着しているから見えないということが明らかであり、周囲の見えている人との間にギャップを感じさせてしまう。ドイツのハイネッケ氏が考案したDialog in the Dark は、光を遮断した空間内を全盲の人にガイドされて見ず知らずの8 名程のグループが無視覚状態で行動するという体験型イベントで、参加者は①視覚以外の感覚の覚醒、②言語によるコミュニケーションの促通、③環境が障害をつくっており、環境によって立場が逆転することへの気づき、などを報告している。本プロジェクトでは、大学院総合工房の内部を完全に遮光し、暗闇空間滞在中の様子を記録した。本論では暗闇化の方法と、暗闇空間での行動について報告する。
著者
金澤 麻由子 Mayuko KANAZAWA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2016
巻号頁・発行日
2016-11-25

本作「きみのいる家」は、2016年7月に出版した絵本『てんからのおくりもの』のメッセージ「花を贈る無償の愛」をコンセプトに、主人公の「てん」があたかも空中で巣から飛び出し、眼前にせまって花を贈るかのようなアートディスプレイであり、絵本の世界観を映像インスタレーション作品として制作したものである。空中結像技術を用いたディスプレイを使用することで、空中に浮遊し、観客に近づいては、はかなく消えゆく「てん」の映像アニメーションは、『てんからのおくりもの』のストーリーでありコンセプトである「無常観:もののあはれ」を表現している。2016年8月に銀座ステップスギャラリーにて開催した個展「絵本の時間」展での本作の展示風景とともに制作意図、制作方法などについて考察する。本作品はプロモーションウィンドウとして書店などでも展開した。
著者
大内 克哉 橋本 英治 榮元 正博 尹 智博 小山 明 Katsuya OUCHI Eiji HASHIMOTO Masahiro EIGEN Jibak YOON Akira KOYAMA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2020
巻号頁・発行日
2020-11-25

ビデオゲームには「遊び」の要素と並行して、人間にとって有用な「学習」の要素が含まれていると考えられる。本研究は、このリテラシーを他分野の「学習」に置き換えることが可能かどうかを実験を通して検証した上で、ゲーム制作技術を教育領域の学習支援システムの再構築に応用することを目的とする。ビデオゲームの領域においてはプレイヤーの習熟曲線に合わせた学習方法が確立している。本研究では、学習が必要な他分野の例の一つとして音楽領域に注目し、ビデオゲームの学習方法を応用することで、楽器演奏の「難しさ」の前に「楽しさ」を体験出来る補助装置の作成を目指す。研究はゲームクリエイター、ヨコオタロウ氏と協力して進めた。
著者
長野 真紀 今村 文彦 Maki NAGANO Fumihiko IMAMURA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2018
巻号頁・発行日
2018-11-27

1950年代に南米ドミニカ共和国に移住した日本人移民を対象に、生活学と文化人類学の視点から、居住環境の持続性と民族固有の文化的アイデンティティの保持・継承について明らかにすることを目的とする。 ドミニカ共和国へ入植後、現在まで全移民の約1/5にあたる家族が残留して生活を営んでいる。彼らの定住化を支えた要因の一つには、ドミニカ社会との相互交渉の中で日本人としての生活、行動、文化を強く規定してきた民族的な生活思考がある。それは、日系人社会においてどのような機能を果たし、表現され、受け継がれてきたのか、移民集落の中で育まれてきた生活文化継承の実態把握と約60年にわたる生活の記憶、移民母村となる日本での暮らしの記憶を辿りながら、日本人の生活文化と、その背後にある暮らし方の原理を探る。 移住の経緯、入植地の環境、生活習慣、住まいの形態、移民母村について調査・分析し、一時的な居住目的とは異なる、現地に定住することを決意した海外移民の暮らし方を読み解き、民族的文化と移住先の文化を互いに補完し合う地域や暮らしの特性を捉え直した。 なお、本研究では在ドミニカ共和国日本国大使館を通じて、各コロニア(集落)に居住する日本人と連絡調整を行い、研究を展開することができた。
著者
藤山 哲朗 Tetsuro FUJIYAMA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2011
巻号頁・発行日
2011-11-30

近年、建築とファッションの相関性について取り上げられることが多くなった。建築もファッションも、どちらもまず身体を覆うシェルターであり、同じ時代精神や文化的価値観によって立つ社会的規範である。さらに実際に建築家とファッションデザイナーのコラボレーションが増えたという背景がある。しかし最も重要なのは、作品の本質であるコンセプトとデザインプロセス自体が接近してきているということである。 本論文では、こうした形態システムのレベルでの両者の関係を考察するために2007年に開催された「スキン+ボーン」展を取上げる。これは実際の作品を提示した研究としては、近年最も本格的な試みであった。 展覧会の構成において、キュレーターのブルック・ホッジは脱構築という概念を中心においている。しかし会場でのプレゼンテーションだけでは具体的なプロセスを理解するには不足していたように感じる。そこで改めてホッジの意図を読解し、展覧会に含まれない作品を分析したうえで、「変形」という生成方法を提示するものである。
著者
東 義真 yoshimasa HIGASHI
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2016
巻号頁・発行日
2016-11-25

フランス・ベルギーを母体として、ヨーロッパには、バンドデシネと呼ばれる漫画文化がある。日本の漫画は本質的に、商業路線メインストリームによって、産業としての規模は世界で目を見張るものであるだろう。それに比較するとバンドデシネは作家性が非常に強く、アートとしての漫画という受け取られ方をすることが多いという。端的に代表的な作家を言えば、メビウス(1938-2012、フランス)ということになろう。メビウスの漫画は80 年代に日本の作家、宮崎駿氏や大友克洋氏に影響を与えたとされる。また、漫画家に限らずアメリカのジョージ・ルーカス監督のようなSF 映画作家もメビウスに魅かれたと公言する。バンドデシネはパラレルワールド的異世界を描くことで読者にファンタジーを与えてきたためにSF との親和性が大きい。私はそこで、バンドデシネ世界にアピールすることができるようなキャラクターと、そのファンタジー世界の構築を目指したのである。アジアの大スター、Jackie Chan に因んでBergus Chanという名の宇宙から来た喋る兎の冒険家を主人公に欧米風漫画を制作、また同キャラクターで映像作品を制作した。Europe has own comic book style, which was originally from Franco-Belgian culture, and called bande dessinée.Japanese comics as manga are almost on the main stream for commercial purposes, its prestige is going around the world's comic industries. Compared to it, bande dessinée has more auteur theory like European cinema. Also,many people take it as art.Moebius (1938 - 2012, France) is one of the representative authors of this style. His work influenced Japanese 80s manga authors like Miyazaki and Otomo. Also, US filmmaker, Lucas loved his work. Many of bande dessinée work are having sci-fi fantasy parallel worlds.So, this time I created European-comic-like character,named Bergus Chan, which is named after Jackie Chan.Bergus is a talking rabbit from outer space. With the character, I made the manga, plus a film.
著者
長野 真紀 今村 文彦 黄 國賓 Maki NAGANO Fumihiko IMAMURA Kuo-pin HUANG
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2016
巻号頁・発行日
2016-11-25

本研究では、福佬(Ho-lo)人の移住文化を対象に、その歴史と暮らしの変遷、居住環境について分析・考察した。研究対象地は周囲を海に囲まれた環境下にあり、独自の伝統文化や習俗、空間構造を継承している。このような地理的・文化的環境の中で、東アジアの結節点となる台湾領域中国福建省金門島及び八重山諸島石垣島を主対象に捉え、研究を展開した。 金門島では、血縁による結びつきが重視され、同一氏族により形成された宗族的つながりを強く持つ単姓村と、多数の氏により形成される複姓村に分類される。対象集落は、海岸線に沿った緩やかな台地に立地し、1315 年頃に福建省厦門からの移住者が開墾した農漁村集落である。住居は四合院で構成され、一定の領域内で中規模な空間を形成しているが、宗族ごとに住居の向きが異なり、それぞれに方向軸を持っているため各時代の空間形成の発展性を読み取ることができる。 また、集落は明確な境界域を定めず、人口増加に対応しながら空間を拡張している。これは、島に福佬人しか居住していないこと、地形条件に対する制限が少ないことが要因として考えられる。台湾本島や石垣島では、住居の周囲は自然地形や植栽などにより空間を補っている場合が多い。
著者
赤崎 正一 戸田 ツトム 寺門 孝之 小山 明 黄 國賓 Shoichi AKAZAKI Tztom TODA Takayuki TERAKADO Akira KOYAMA Kuo-pin HUANG
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2013
巻号頁・発行日
2013-11-25

本研究は杉浦康平名誉教授の1950年代からはじまるデザイン活動の包括的な研究を目指すものである。就中、1970年代~ 80年代の杉浦名誉教授の活動を中心に成立したと思われる「エディトリアルデザイン」概念の成立過程の検証を重点的な目的とする。本研究の基盤をなすものとして2011 年度後半に相次いで開催された「脈動する本」展(武蔵野美術大学美術館)、「メタボリズムの未来都市」展(森美術館)などで明示的になった、1960 年世界デザイン会議を契機に展開した戦後デザインの爆発的な拡張の様相への再認識がある。当時の日本デザイン界全体の沸騰の中にあっても、とりわけて実験的であり続けた、杉浦デザインの現代までにいたる50 ~ 60 年の実践活動の内実を、「エディトリアルデザイン」をキー概念として調査・研究する。以下が研究(平成24年度)の具体的な活動の細目となる。1)杉浦デザインによるポスターの収集(500 ~ 600 種程度)と整理・分析→ 1次リスト完成→さらなる整理継続中。2)杉浦名誉教授による2002年度視覚情報デザイン学科講義映像記録の整理編集→ 1次編集完成→記録映像アーカイブ化のための準備中。3)杉浦名誉教授によるレクチャーをふくむ研究会の開催→ 2度にわたって実施→レクチャー記録整理中。
著者
山本 友紀 Yuuki YAMAMOTO
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2014
巻号頁・発行日
2014-11-25

両大戦間期の西洋のモダン・アートにおいては、新しい映像機器の発達によって示された自然の世界に、新たな造形的モデルを見出す傾向がみられた。本論文では、フランスにおける1930年代の芸術界における前衛芸術を主な対象として、こうした傾向がどのような作品を生み出したかについて考察した。1920年代以前に機械の美学を提唱していたフェルナン・レジェ、ル・コルビュジェとアメデ・オザンファンは、1930年代に、「自然」をテーマとする有機的で不定形な形態をそれぞれ絵画に導入している。それは社会・文化的危機を迎えた1930年代という時代状況で、未来の社会に向けての統一的ヴィジョンを示すための一つの解決法をもたらす方法として選び取られたのであり、とくに彼らの「オブジェ」のとらえ方は、シュルレアリスムの「ビオモルフィスム」とは根本的に異なるものである。さらに1930年代のフランスで非具象表現を目指して組織された「アブストラクシオン・クレアシオン」の活動にも、有機的な形態を造形へと取り込んだ画家たちがいる。彼らは、カメラのような機械を自然や生へと到達するための装置とみなし、非具象的なイメージを、物理的な世界へと結びつけようとした。これらの試みには科学と芸術を同一の地平で扱おうとした、先駆的な試みをみることができる。
著者
尹 智博 Jibak YOON
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2010
巻号頁・発行日
2010-11-24

本論は、近代ウィーンの作曲家ヨーゼフ・マティアス・ハウアーとアーノルド・シェーンベルクらによって生み出された「十二音技法」の音楽と造形芸術との関係性についての研究を試みる。色彩と音楽の関係については、古代から様々な関心が持たれていたが、ここでは特に近代の、ハウアー、シェーンベルクによって各々の「十二音技法」に関するモデルやダイアグラムの役割を明らかにし、また、ハウアーの「十二音技法」でもあるトロープスのパターン・ダイアグラムとヨハネス・イッテンの色彩関係を示した「12色環」ダイアグラムとの間に図像的観点からの類似点についての研究を行う。
著者
山本 忠宏 大塚 英志 石井 岳龍 橋本 英治 泉 政文 Tadahiro YAMAMOTO Eiji OHTSUKA Gakuryu ISHII Eiji HASHIMOTO Masafumi IZUMI
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2012
巻号頁・発行日
2012-11-30

本研究の目的は、まんがと映画の関係について、実際にまんがを映像化して研究資料自体を制作することと、作成した資料をもとに異なるメディウムである両者について検証を試みることである。すでにまんがと映画の関係については、多くの先行研究により様々な角度から検証が行われているが、それらを踏まえつつ新たな論点を探求することも視野に入れる。本論では、大塚英志原作、藤原カムイ作画『アンラッキーヤングメン』(角川書店、2004~6)の一部を逐語訳的に映像化した上で、すでに一部逐語訳的映像化を行った石ノ森章太郎『龍神沼』(講談社、1961)の映像と適宜比較検証することで特徴を明らかにするとともに、1960 年代と2000 年代の映画的手法における表現の変化についても考察していく。The objective of this case study is to compare and verify the relationship between the manga and the film created with manga as a base. The research about this process is carried out by many researchers previously. So, including the viewpoint of other researchers, I will add my own views to find a new approach to the issue of these studies.In this paper, I am converting the part of manga written by Eiji OHTSUKA and Kamui FUJIWARA titled "UNLUCKY YOUNGMEN" and compare it to the manga based film" RYUJINNUMA" previously converted by myself which was written by Shotaro ISHINOMORI in 1961. Comparing and verifying these two films conversion process will find out the difference between the changes of the method of film in manga from 1960s' to 2000s'.
著者
西村 太一 Taichi NISHIMURA
出版者
神戸芸術工科大学
巻号頁・発行日
2012-11-30

『シェルブールの雨傘』(1963 年製作・64 年公開)は、戦争で切りはなされる若者の悲恋物語を枠組として、台詞のすべてを歌で表現する異色のミュージカル作品である。ミュージカルの(ミシェル・ルグランの音楽への)高い評価及び現在にいたる人気に比し、その筋の展開には――すなわち、かつての恋人たちの新しいパートナーの選択には批判の声が多い。本稿では「喪失」と「再生」の観点から、筋の展開に付された意味をさぐりたい。『シェルブール』は感傷的ラブ・ストーリーに一見見えはするものの、兵士と家族がさまざまな不幸を克服し、再生を果たす物語なのである。<<Les Parapluies de Cherbourg>>, which was produced in 1963 and released in 1964, is a unique music film in which the plot is developed over the tragic love of the young couple who are to be separated by the Algerian War and the dialogue is all sung as recitative. Compared to the high evaluation of the music composed by Michel Legrand and the lasting popularity of the music so far, the development of the history, that is, the problem of who each of the couple chose as a new partner, has been often criticized. In this text, I would like to find some hidden meanings behind the development of the story in terms of 'the loss of something precious' and 'the living of a new life'. The film, <<Les Parapluies de Cherbourg>>, may appear to be a sentimental love story, but it is the very story where a soldier and his family get over various kinds of trouble and difficulty and begin to live a hopeful life.