著者
前田 茂 中川 致之
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.45, pp.85-92, 1977-03-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
18
被引用文献数
6 12

各種市販茶の総合的な理化学的分析を行い,製茶の種類による相違を検討した。1)下級煎茶,番茶,ほうじ茶にくらべ,玉露,上級煎茶が高濃度を示した化学成分は,全窒素,カフェイン,アミノ酸,灰分,リン酸,カリウムであった。2)アスコルピン酸は,煎茶,かまいり茶の上級品が多く,玉露,ほうじ茶では少なかった。3)タンニンは,下級かまいり茶に多く,玉露,ほうじ茶では少なかった。4)ヘッドガスクロマトグラフィーの結果,玉露,上級煎茶は,ジメチルサルファイドのピークが大きく,下級煎茶,番茶,ほうじ茶は,加熱臭と推定される,2一メチルプロパナールのピークが大きかった。5)色差計による測色値は,玉露は,マイナス側にとくに大きく,煎茶,かまいり茶は,比較的小さかった。この実験を行なうに当たり,ご助言,ご協力を仰いだ,農林省茶業試験場,原技官,久保田技官,岩浅技官,斉藤技官,阿南技官,天野氏に深く感謝します。
著者
田中 伸三 原 利男
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告
巻号頁・発行日
vol.1971, no.35, pp.84-87, 1971

茶の褐変に伴うクロロフィルの変化を調べるために,DIETRICHらの提案したクロロフィルのフェオフィチンへの変化の測定法を,茶に応用する場合の操作と計算式の検討を行なった。<BR>操作および計算式は,煎茶粉末0.3gに10%含水アセトン40mlを加え3~5時間抽出し,その上澄液の534mμおよび556mμにおける吸光度を求め,次式によってフェオフィチンへの変化率を算出.する。<BR>フェオフィチンへの変化率=R<SUB>X</SUB>-R<SUB>0</SUB>/R<SUB>100</SUB>-R<SUB>0</SUB>×100<BR>ただし<BR>R<SUB>0</SUB>:0%フェオフィチン溶液における吸光度の比(OD 534mμ/OD 556mμ)<BR>R<SUB>100</SUB>:100%フェオフィチン溶液における吸光度の比(OD 534mμ/OD 556mμ)<BR>R<SUB>X</SUB>:未知試料抽出液における吸光度の比<BR>(OD 534mμ/OD 556mμ)<BR>著者らが茶に応用した場合の計算式は次のとおりであった。<BR>フェオフィチンへの変化率=R<SUB>X</SUB>-0.96/1.29×100<BR>ただし,この計算式は分光光度計によって異なるから,それぞれの装置で確認する必要がある。<BR>この方法によって求めたフェオフィチンへの変化率と,TANらの方法に準じてカラムクロマトグラフィーで分別し,比色法で求めた変化率とが比較的よく一致することも認めた。
著者
讃井 元 安間 舜
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1961, no.17, pp.11-15, 1961-06-20 (Released:2009-07-31)
被引用文献数
2 3

Izumi is a new variety for Kamairitya -(Pan fired tea).This is a progeny of Benihomare and was selected from the natural crossing seeds.Izumi has fine flavor and nice taste for export to North Africa and especially fertile in yield. The yield of fresh leaf in a year is about 1000 kg. per 10 are.This variety is vigrous growing and cold resistant but is susceptible to the Japanese Exohasidium Blight (Exobasidium reticulutum ITn et SAWADA).
著者
阿南 豊正 高柳 博次 池ケ谷 賢次郎 中川 致之
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1982, no.56, pp.65-68, 1982-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

緑茶貯蔵中の脂質含量:の変化を明らかにするため,貯蔵条件の異なる4種類の試料,すなわち荒茶を-70℃で18ヵ月貯蔵したもの(試料A,対照区),25℃で3ヵ月貯蔵後-70℃で15ヵ月貯蔵したもの(試料B),25℃で6ヵ月貯蔵後一70℃で12ヵ月貯蔵したもの(試料C),25℃で18ヵ月貯蔵したもの(試料D)の脂質を定量し,次のような結果を得た。1. 各試料について官能検査を行った結果,試料Aは新茶とあまり差がなかった。一方,試料Cおよび試料Dは変質程度が大きく飲用不適と判定された。2. 試料Bは試料A(対照区)に比べて全脂質含量で約10%減少し,試料Cは約20,0fib少した。一方,試料Dは試料Cよりほんのわずか減少する程度であった。3. 各脂質画分別にみた場合,25℃での貯蔵期間の増加につれて減少傾向が比較的はっきりしているものは糖脂質であり,中性脂質とリン脂質は減少傾向が小さかマた。又,個々の脂質別では,減少傾向が比較的大きかったものはMGDG,DGDG,SQDG,PCであった。終わりに,本実験を行うにあたり,御指導を頂いた当試験場古谷弘三前場長,坂本裕製茶部長ならびに官能検査をお願いした製茶第3研究室の方々に深く感謝致します。
著者
沢村 信一 伊藤(中野) 恵利 加藤 一郎
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.93, pp.19-25, 2002-06-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
5

1) 荒茶の一般生菌数は,他の茶類(鳥龍茶・紅茶)と比較して多いことがわかった。蒸熱工程を含む緑茶特有の製造工程に起因しているものと思われる。2) 荒茶の一般生菌数を製茶法別に比較すると,深蒸し茶が普通煎茶より多い傾向にあった。深蒸し茶製造工程中の送帯式蒸機での一般生菌の残存と葉打ちから中揉にかけての二次汚染が原因と考えられる。3) 荒茶工場内の製茶工程毎に茶葉をサンプリングした結果,蒸機の種類により違いが見られた。送帯式蒸機の方が網胴回転撹拌蒸機より一般生菌数が多い傾向にあった。
著者
松本 五十生 落合 勝義 船越 昭治 中村 公一 真野 光雄 森田 貞夫
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.74, pp.1-9, 1991-12-10 (Released:2009-07-31)
参考文献数
6

緑茶の消費向上と嗜好の多様化に対応するため,緑茶にない芳香をもち,苦渋味の少ない新香味茶の製造方法について検討し,図2に示す技術を確立した。(1)萎凋と発酵は煎茶用自動乾燥機を用い,温風温度35~40℃で30分が適当であった(重量減7~10%)。(2)攪拌は中揉機に金網胴をとりつけ,60分処理で好結果が得られた(重量減15%)。(3)静置は生葉コンテナーを用い,室温(27℃)に60分放置した。これにより強い芳香が発揚した。(4)マイクロ波加熱による殺青(ブランチング)は出力4KW,照射時間50秒,重量減45~50%が良好であった。(5)整形及び乾燥は揉捻機,再乾機,乾燥機を用い,揉捻15分,再乾と乾燥はともに60℃の排気温で,それぞれ40分が好適であった。(6)仕上げは火入れを行って青臭みを除き,9号で切断し,10号の篩目で仕分け,整形した(平均粒度1.27mm)。(7)一般消費者に対して,代表的試製茶の嗜好調査を実施したところ,46%の人が好き,やや好きと答えており,市販された場合購買嗜好も高く明るい見通しを得た。
著者
水野 卓
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1964, no.22, pp.121-123, 1964-10-15 (Released:2009-07-31)
参考文献数
12

茶葉から図1の分別法に従って咨種多糖類を調製し,それらの構成糖組成を表5のごとく明らかにした。
著者
向井 俊博 堀江 秀樹 後藤 哲久
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.76, pp.45-50, 1992-12-10 (Released:2009-07-31)
参考文献数
8
被引用文献数
27 25

荒茶価格1kg当り560円から12,000円の煎茶61点を集めアミノ酸含量と全窒素量を分析した。上級煎茶と下級煎茶では,グルタミン酸含量にあまり大差がなく,テアニン,グルタミン,アルギニン含量に著しい差が見られた。また,グルタミンの割合が上級煎茶ではグルタミン酸よりも多い傾向があったが,下級煎茶では少なかった。価格と全窒素量は下級煎茶と中級煎茶に相関が認められるが,上級煎茶では認められないため,全窒素量は上級煎茶の品質判定の指標として使用出来ないと考えた。それに対して,全アミノ酸量は,全ての価格帯において相関が認められ,より広い範囲の品質の煎茶の判定に利用できるものと考えられた。また,17種類のアミノ酸の中で最も価格との相関が高かったのはアルギニンとテアニンであった。本研究を進めるにあたって,試料の収集に御協力いただいた静岡県茶商工業協同組合関係各位及び,分析を手伝っていただいた天野いねさんに深く御礼申し上げます。

1 0 0 0 OA 包種茶史

著者
竹尾 忠一
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.91, pp.1-4, 2001-07-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
11
著者
原田 重雄 渡辺 明 加納 照崇
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1954, no.4, pp.1-5, 1954

1.昭和28~29年の暖冬に際し,切枝を低温処理して幼芽の耐寒性の品種間差異につき調査した。<BR>2,腋芽は頂芽に比し耐寒性がやや強かつた。また品種間の差異は大きく,暖冬時の1月25日の調査では,みよしが最も弱く,U21(3倍体)及びやまとみどりは強かつた。萠芽期の3月30日及び4月8日の調査では,幼芽の耐寒性は急激に弱くなり,品種間ではみよし,あさつゆが最も弱く,やまとみどりが最も強かつた。冬芽で強い方であつたあさつゆ,たまみどり等が春芽ではやや弱い方に入り,冬芽で弱かつたべにほまれが春芽では強い方に入つたのは,春期における芽の活動状況の違いによると思われるが,中にはやぶきたのように春芽の発育が盛んなのにもかかわらず,耐寒性の比較的強いものもあつた。<BR>3,冬芽における耐寒性の品種間差は,昨年度の冬期間に成葉につき調べた耐寒性の強弱とかなりよく一致し,暖冬年でも冬芽の耐寒性の品種相互間の関係は,平年とそれほど変るものではないように思われた。<BR>4.頂幼芽の搾汁屈折率は耐寒性とかなり密接な関係を持ち,春になり芽の発育が進むほど屈折率は低く耐寒性は弱くなり,また冬芽・春芽のいずれの場合にも,屈折率の低い品種ほど耐寒1性が弱い関係が見られた。<BR>5.暖冬下における幼芽は,発育がかなり促進されても,萠芽期の春芽に比すれはなお耐寒性が著しく強かつた。これはいくら暖冬とはいつても,芽の生理的活動は春の萠芽期の芽に比すればなお著しく微弱なためであろう。しかし圃場で冬芽に2割四外の被害を認めた場合もあり,みよしは特に被害芽が多かったから,幼芽の耐寒性については,今後品種選択等の場合に充分注意さるべきであろう。
著者
三輪 悦夫 高柳 博次 中川 致之
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1978, no.47, pp.48-52, 1978-03-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
17
被引用文献数
16 5

葉位による化学成分含量の相違について,一番茶,二番茶を対象に検討した。(1) 葉位が下がるほど含量が減少した成分は,全窒素,タンニン,カフエインであった。茶期別にみると,一番茶に全窒素が多く,二番茶ではタンニン,カフエイン含量が多かった。(2) 葉位が下がるほど含量が増加した成分は,遊離還元糖,フラボノール類,塩類可溶性ペクチン,全ペクチンであった。(3) カテキン類のうち,特にエピガロカテキンガレートは,上位の葉および二番茶に多かった。(4) アミノ酸類のうち,テアニン,グルタミン酸,アルギニン,アスパラギン酸,セリンは,一番茶の上位の葉に多く,二番茶では著しく減少が認められた。(5) 無機成分含量のうち,上位の葉に比較的多く含まれる成分は,カリウム,リン酸,マグネシウム,亜鉛であった。下位の葉に多く含まれる成分は,カルシウム,マンガン,アルミニウムであった。本研究は,著者の1人三輪が,農林省茶業試験場において,国内留学中に行ったものであり,実施にあたり御指導,御協力をいただいた阿南技官,天野氏に,また,無機成分分析で御指導をいただいた池ケ谷技官に深く感謝いたします。
著者
大西 市造
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1975, no.42, pp.37-46, 1975

1. 工程の進行とともに茶葉幅とわん曲度は減少し,みかけ比容積は逆に大きくなる。また5段階加すいより4段階加すいのほうが長短度は大きく,細よれとなった。これから工程初期における加すい時期の遅速が整形上大切な要素となることがわかった。<BR>2. 揉手1往復当たりの茶葉応力は,最大応力部分と無反応個所が存在し,加すいの移動とともに応力は増加するが,茶葉水分,機種の構造などの違いによって,かならずしも近似的な波形は示さず,加えて茶葉の反転,分散,緊締度などに関係があると思われる力積値の変動要因についても注目する必要がある。<BR>3. 各機種とも懸すい荷重については,それぞれ重すいの重さと竿の長さに比例的に働くが,実際運転中におけるロット(作用点)の荷重は,メーカーにより支点,力点,ロットの取り付け位置などが異なるため,重すいの移動に対する動荷重変位比率に違いが生じるので,精揉操作の加すい配分には十分な考慮を払うべきである。<BR>4. 精揉工程における均質な製品を得るための方法としては,投入時の茶葉の性状についてのチェックと機械自体のしくみを明らかにするとともに,投入茶量,所要時間,荷重方式の組み合わせは,取り出し水分(11.9%)外観評点(40点)の基準値より遠くにあるものは排除し順次集約したプログラムの作成を行い自動化への基礎資料を求め,さらに発展させる方向に進めなければならない。<BR>終りに本研究を実施するにあたり,ご協力を仰いだ当研究所製造課の諸氏をはじめ,種々適切な助言をいた〓いた農林省茶業試験場竹尾室長ならびに京都府中小企業総合指導所工業技術課 小柳技師に深く感謝の意を表します。
著者
渕之上 康元
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.66, pp.15-39, 1987-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
15
被引用文献数
2

1埼玉県茶業試験場で,品種園の中の100品種・系統(日本種,準中国種,準アッサム種など)を供試して,4年生時(1974)から14年生時(1984)までの11ヵ年間にわたって,圃場耐寒性を調査し,同時に冬季の気象条件などとの関係を調べたところ,耐寒性茶樹育種のための多くの知見を得ることができた。2調査方法の概要は下記のとおりである。(1)圃場耐寒性は,関東茶産地での主要な寒害(赤枯れと青枯れ)に対する抵抗性で,いずれも越冬圃場(毎年3月上旬に)での被害の程度を肉眼観察により1(軽微)~9(甚大)に判定区分した。(2)気象観測は,茶業試験場内の百葉箱によるもので,11月第3半旬~3月第1半旬の最低気温,降水量,降雪量,地温,凍結期間などである。3得られた成果の要約は下記のとおりである。(1)赤枯れ被害は,幼・成木期に関係なく何時でも発生がみられるが,青枯れ被害は,特異な異常気象年を除き幼木期程被害が大きい。(2)主要な32品種の11ヵ年のデータについて分散分析を行ったところ,両被害共年次間及び品種間に顕著な有意差を認めた。(3)赤枯れ被害でも年により被害程度に多少の差がみられるが,青枯れ被害は,茶樹の幼木期に生じやすいとはいえ,毎年発生するとは限らず,とくに成木園になってからは,異常気象年を除き,被害軽微の年が多かった。(4)被害度の反復力(遺伝力)を計算し,耐赤枯れ,青枯れ性の検定に適した年の有無について検索したところ,耐赤枯れ性では,一般に被害度が特異的でしかも品種の変動係数の小さい年を除いて,平均被害度が4.0~5.0程度で品種の変動係数の比較的高い年(平均0.3~0.4位)を選ぶこと,また,耐青枯れ性検定では,やはり異常気象を除き,幼木期を対象として適度の被害度(平均3.0~4.0位)と品種の変動係数の大きい年(0.6~0.8程度)をそれぞれ選んで,これを検定に適した年とするのが良いように思われた。(5)これを冬季気象条件との関係において検討したところ,耐赤枯れ性検定では,暖冬年や寒の戻り年などの特異な気象年を除き,冬期の日最低気温積算値が-320℃~-460℃位の当地方でも比較的寒冷な年で,しかも1976年のように前年の12月下旬から厳寒期にかけて半旬別平均最低気温がほぼ直線的に低下していた年が最も検定に適していた。また一方,耐青枯れ性検定では,やはり異常気象年を除き,茶樹の幼木期に相当した年次の中で,茶樹が吸水低下を来たすと言われている土壌凍結~地温3~4℃以下の継続日数の長い寒冷な年で,しかも無降水継続日数が50日以上にも達する年が適していた。(6)検定に適した年の被害度の分散分析の結果をもとに主要32品種の圃場耐寒性の階級分けを行い,耐赤枯れ性を強~弱の5群に,耐青枯れ性を強~甚弱の6群に群別した。(7)今後,気候遷移期の特徴といわれる異常気象年(冬季の)に対応できる品種育成の基礎資料を得る目的で,特異な気象条件下での品種の耐赤枯れ,青枯れ性の変動について,やや強以上の品種(検定に適した年のもとでの)について調べた。その結果,まず耐赤枯れ性では,寒の戻り年でも比較的その低下をみなかった品種にやまとみどり,たまみどり,こまかげ,さみどりなどが,また逆に著しく低下をみたものにおぐらみどりがみられた。また一方,耐青枯れ性についても同様に検討してみると,1984年の異常気象年でもこまかげ,さみどり,安化県種の3品種・系統のみは被害が極めて軽微(被害度1.0)で特異的であり,あさひ,さやまかおり,やまとみどりなども比較的耐青枯れ性の低下が少なかった。しかし,一方おぐらみどり.他数品種に著しく耐青枯れ性の低下するものを認めた。なお,検定に適した年に平均的被害度が4.0であったやぶきたが異常気象年に8.0まで低下していたことは注目された。(8)赤枯れ,青枯れ被害と一番茶収量との相関関係は,赤枯れでは被害の著しい年にのみ負の相関関係を認めたが,一方,青枯れでは被害のあったすべての年で負の相関関係が認められた。(9)最終的に,特異な気象条件下での各品種の変動も含めて,わが国主要46品種の耐寒性の階級分けを6~7段階に行った。そしてこれによれば,まず耐赤枯れ性では日本種が強~弱,準中国種がやや強~やや弱,準アッサム種がやや強~甚弱に,また一方,耐青枯れ性では日本種と準中国種が甚強~甚弱,準アッサム種がやや強~甚弱にそれぞれ変異していた。なお,これを個々の品種でみれば,とくにこまかげ,さみどり,さやまかおり,あさひ,やまとみどりの5品種が耐赤枯れ,青枯れ性共に他の品種よりも上位にランク付けされており,将来の超耐寒性品種育成のための素材として注目された。
著者
佐藤 邦彦
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.104, pp.33-42, 2007-12-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
7

(1)室内試験において,高湿度条件(相対湿度100%)および湛水条件下におけるクワシロ卵のふ化状況を調査した。高湿度および湛水条件下で7日間保持したクワシロ卵のふ化率は,それぞれ20%と7%に低下し,湛水条件を10日間維持すると卵はふ化しなかった。(2)茶園において,雌介殻内のクワシロ卵を高湿度に保つ方法について,スプリンクラーを用いて試験した。チャの枝が常に濡れた状態になるように,日中断続的に散水(1日1haあたり120~150t)することで,クワシロの卵は雌介殻内で褐変し死亡した。茶園においては,クワシロ卵のふ化開始以降,スプリンクラーを用いて16日間高湿度状態にすることで,クワシロ卵のふ化を効果的に抑制することが可能である。
著者
原 利男 深津 修一 伊奈 和夫
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.78, pp.61-65, 1993-12-15 (Released:2009-12-03)
参考文献数
5
被引用文献数
1 3

茎茶と煎茶の香気成分をGC及びGC-MSで調べ,また呈味成分は熱湯浸出液の13C-NMRスペクトルを測定し,その差異を比較・検討した。茎茶にはリナロールとゲラニオールが煎茶より多く含まれていたが,緑茶の主要香気成分であるネロリドール,インドール及びシスージャスモンなどは少なかった。茎茶は煎茶に比較してカテキン類,カフェイン,しょ糖などの含量が少なく,テアニンとキナ酸カリウム塩が多く含まれていた。
著者
袴田 勝弘 中田 典男 向井 俊博 福島 裕和 山口 良 仲田 智史
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.68, pp.8-13, 1988-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

嫌気処理緑茶(ギャバロン)の香味改善を図るため,嫌気処理条件(温度:10,20,30℃;時間:0~40時間)について検討した。(1)GABA含量はいずれの温度でも嫌気処理初期(1~5時間)に急増したが,その傾向は高温区ほど顕著で,30℃区で2時間,20℃区で5時間,10℃区で10時間で,それぞれの最高値の75%に達した。(2)嫌気処理時間が長くなるほど,高温区ほど品質が低下した。嫌気処理によるいやみ臭は,10℃区で30時間,20℃区では15時間,30℃区では5時間以上で特に強くなった。(3)品質をできるだけそこなわずGABA含量を高める嫌気処理条件は,10℃で15~20時間,20℃で5~10時間,30℃で2時間と推定された。(4)品質低下を防ぐため,嫌気処理後できるだけ早く殺青することが必要と考えられた。
著者
岡井 仁志 岩崎 長 吉田 輝久 平野 正史
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.62, pp.9-13, 1985-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
4

京都府下の多くの玉露,てん茶園では,施肥の際に元出し,元寄せと呼ばれる伝統的な作業が行われている。しかし,この作業の実施時期は秋の根の生長期にあたっており,根系を傷めるおそれがあると考えられるため,元出し,元寄せが枝条の生育に及ぼす影響について検討した。(1)慣行の深さ(約10cm)で元出しが実施された場合,元出し時期が早いほど,その年の枝条の生長,および翌年の枝条発生数が強く抑制される傾向があった。従って,伝統的な元出しの実施時期は,枝条の生育を抑制することの少ない時期であると考えられた。(2)深層(約30cm)まで元出しを行うと,その実施時期に関係なく,個々の枝条の生長,および枝条の発生数が強く抑制された。(3)総括的にみると,元出し,元寄せが連年実施されると,「少数大枝条型」の生育となる傾向があった。また,枝条数の方が一枝新芽重よりも,生葉収量を大きく左右する要因であったために,元出し,元寄せを連年実施した区の生葉収量は,対照区に比べて少なかったものと考えられた。一方,荒茶品質は,元出し,元寄せを行うとやや向上する傾向が認められた。以上のことから,伝統的な元出し,元寄せは,枝条数の確保よりも個々の枝条の生長を重視した施肥慣行であり,この作業によって,生葉収量は減少するが,荒茶品質は向上すると考えられた。なお,本論文のとりまとめにあたっては,農林水産省茶業試験場茶樹第3研究室長青野英也博士から懇切なる助言と指導を賜った。ここに深謝の意を表したい。
著者
土井 芳憲
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.57, pp.13-17, 1983-06-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
5
被引用文献数
3

12品種を用い,植物ホルモン条件を3水準設けて試験した結果,葯からのカルス誘導率および根の分化率は,10-5MNAA+10-5Mカイネチンの場合に最高であった。この植物ホルモン条件下で,カルス誘導率および根の分化率に顕著な品種間差異が認められた。中国種の猫耳はカルス誘導率および根の分化率ともに高かった。ゆたかみどりはカルス誘導率が最高であったが,根は分化しなかった。F1ACC1,C4,べにほまれは,カルス誘導率は高いが,根の分化率が低かった。べにかおりはカルスが形成されなかった。本報のとりまとめに当たり,種々の御指摘をいただいた農林水産省茶業試験場茶樹第1研究室長鳥屋尾忠之博士に感謝致します。
著者
鳥屋 尾忠之
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1964, no.21, pp.1-6, 1964-01-25 (Released:2009-12-03)
参考文献数
18
被引用文献数
1
著者
岡野 邦夫 松尾 喜義 近藤 貞昭
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.95, pp.16-23, 2003-06-30 (Released:2009-12-03)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

チャ新芽に蓄積するテアニンの生理的意義を明らかにする目的で,9種類のツバキ属植物から真空吸引法で木部樹液を採取し,遊離アミノ酸組成をHPLC法で分析・比較した。チャ節植物ではグルタミン,テアニン及びアルギニンの3種が主要なアミノ酸であった。一方,ツバキ節,カワリツバキ節及びサザンカ節植物の木部樹液中の主要なアミノ酸はグルタミンとアルギニンの2種であり,有意な量のテアニンは検出できなかった。木部樹液と新芽の遊離アミノ酸組成の比較から,木部樹液中に存在するグルタミンはアミノ酸代謝の前駆物質として働き,テアニンやアルギニンは窒素の移行や貯蔵あるいはアンモニアの解毒形態として機能しているものと考えられた。