- 著者
-
宮原 卓也
- 出版者
- The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
- 雑誌
- 音声言語医学 (ISSN:00302813)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.2, pp.137-146, 1986-04-25 (Released:2010-06-22)
- 参考文献数
- 8
職業的テノール歌手による9種の発声サンプルについて声帯振動の超高速度映画撮影を行い, また平均呼気流率と声の音圧レベルを測定した.発声サンプルはHuslerのアンザッツタイプをもとに選定した.推定体積速度波形, 推定最大体積速度, 最大声門幅, 平均呼気流率, OQ, SQ, SI, 声の音圧レベル, 仮声帯間距離は声の音色によって決定し, 関係づけられるが, その主な結論は次のとおりである.1) アンザッツNo.2では声門を強く閉じ, 声門上部を狭くし, 強い呼息圧を用いて発声している.声門下圧, 声の音圧レベル, 推定最大体積速度, 平均呼気流率は大である.2) アンザッツNo.3aでは中等度の声門閉鎖と呼息圧を有し, 声門上部をあまり狭くせずに発声している.推定最大体積速度は大であるが, 平均呼気流率は中等度である.3) アンザッツNo.3bでは声門を弱目に閉じ, 声門上部を広く開いて弱い呼息圧を用いて発声している.声門下圧は小さいが, 推定最大体積速度は大きく, 平均呼気流率は中等度である.4) アンザッツNo.4, No.5ではファルセットの喉頭調節で発声している.推定最大体積速度, 平均呼気流率は低目である.5) アンザッツNo.6では声門をかなり強く閉じ, 中等度の呼息圧で発声し, 声の音圧レベルは高い.推定最大体積速度は大きいが, 平均呼気流率は小さい.