著者
林 安紀子
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.145-147, 2005-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
10

乳児期の音声知覚発達について, 最近の動向を概観した.特に, 音声の分節化知覚の発達について焦点をあてた.人の声が意味を担う言語記号として理解されるためには, 連続的で話者や発話状況によって変動の大きい音響信号を, 有限個の音韻の連鎖として範畴的に知覚できること, さらにそれらの系列である形態素や語のまとまりとして分節化して知覚できることが前提となる.これらの知覚の手掛かりは, グローバルな音声特徴から, より微細な音声特徴へと増えていき, より精緻化されていく.
著者
遠藤 教子 福迫 陽子 物井 寿子 辰巳 格 熊井 和子 河村 満 廣瀬 肇
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.129-136, 1986-04-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
10

一側性大脳半球病変における麻痺性 (運動障害性) 構音障害患者26例 (左大脳半球病変群14例, 右大脳半球病変群12例) および, 正常者13例の発話サンプルについて, 5名の評定者が, 聴覚印象に基づき評価した結果, 以下の知見が得られた.1) 今回対象とした麻痺性構音障害群における評価成績は, 正常群とは明らかに異なっており, 話しことばの障害があると判定されたが, 障害の程度は全般に軽度であった.2) 障害の特徴は, 仮性球麻痺と類似していたが, 重症度など異なる面もみられた.3) 障害側を比較すると, 概して左大脳半球病変群の方が重度の障害を示した.4) 病変の大きさと話しことばの重症度との関係は, 明らかではなかった.5) 従来, 大脳半球病変による麻痺性構音障害は, 病変が両側性の場合に出現するとされていたが, 今回の結果は一側性病変でも出現し得るということを示唆するものであった.
著者
吉田 義一
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.95-110, 2000-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
112
被引用文献数
1

発声, 嚥下を司る疑核について, その運動ニューロンの局在, 細胞構築, 疑核への投射, 樹状突起展開を著者らの研究成績と関連文献を紹介した.研究は一貫してネコで形態学的に行われた.疑核は大きく3つの群に分けられ, その細胞柱は上オリーブ核尾側端から下オリーブ核尾側端の高さの間に存在した.吻側1/6は細胞密度は粗で茎突咽頭筋支配ニューロンがあり, 吻側半で中部2/6は密なる部で咽頭収縮筋, 食道筋, 前筋, 中程に口蓋帆挙筋, 尾側半3/6は粗で反回神経支配の4筋のものが認められ体部位局在, 分節的支配があった.疑核へは反対側の疑核, 両側の孤束核, 同側の腕傍核, 両側の中脳中心灰白質から直接投射がみられた.各咽頭収縮筋, 頸部食道筋, 各内喉頭筋支配運動ニューロンの樹状突起展開は各々上位中枢からの情報を受けるべく関連介在ニューロンに向っていて機能を反映しているのが伺えた.
著者
小林 範子 廣瀬 肇 小池 三奈子 原 由紀 山口 宏也
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.348-354, 2001-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
13
被引用文献数
4 2

痙攣性発声障害 (SD) に対する音声訓練の有効性を検討するために, SDと診断された患者17名に対して訓練を実施した.喉頭の過緊張の軽減に有効とされる6種類の訓練手法と発話速度低下の訓練を組み合わせて使用した.音声症状の評価は, 3名の言語聴覚士による「喉詰めの度合い」の聴覚印象評価によって行った.17名のうち9名が音声の改善と結果に対する患者自身の満足に基づいて訓練を終了し, 2名が通院困難のために訓練中止, 6名が音声改善中のために訓練継続という結果であった.訓練終了例の年齢, 病悩期間, 訓練回数, 初診時の重症度には共通点が認められなかった.重度の音声症状が軽度にまで改善して訓練を終了したものが4例あった.「ため息発声」, 「気息声」, および発話速度低下訓練が多くの症例に有効な訓練手法であった.本研究の結果は, SDに対する治療法の一つとしての音声訓練の有効性と訓練の実施方法を示唆するものと思われる.
著者
三島 佳奈子 堀口 利之 野島 啓子 三宅 直之 磯崎 英治
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.204-210, 1997-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

薬効ピーク時に移動能力, ADLが向上する一方で, 一時的な起声困難が出現する若年性パーキンソン病患者を経験した.本症例の起声困難はドラッグコントロールにより改善しており, 薬物 (L-DOPA) に起因するすくみ現象による声帯の内転障害と考えられた.同一個体内で歩行と発声という異なる運動間ですくみ現象が時間的解離をもって出現した原因について考察した.結果, 同一個体内においても四肢・体幹と喉頭ですくみ現象の発現機序に相違がある可能性, あるいは薬物の治療閾値がおのおのの筋において異なる可能性を考えた.また, 本症例の起声困難には“kinesie paradoxale”を伴っており, 声帯のすくみ現象には発声を他の目標行動に変換して誘発する方法が有用であった.A 62-year-old man with juvenile Parkinson's disease was reported. When L-Dopa was working the patient felt difficulty in voicing although he could walk smoothly. Meanwhile, when L-Dopa was not working his difficulty in voicing disappeared but he was unable to walk. This discrepancy between voicing and walking is disussed.Laryngofiberscopic examination showed the following intriguing findings. When L-Dopa was working the patient's vocal cords assumed the hyperabduction position. Also, during an attempts at phonation, the vocal cords developed a tendency to adduct but were unable to. This movement seemed to correspond to a“freezing”phenomenon in walking. The adduction tendency of the vocal cords ameliorated temporazily by voluntarily making a cough instead of voicing. Such a phenomenon appeared as a freezing of vocal cord movement with kinesie paradoxale.Two hypotheses were raised to explain this “see-saw” phenomenon between voicing and walking. First, the mechanism of the freezing phenomenon might differ for voicing and walking. Second, the threshold for the effectiveness of L-Dopa might differ for the intrinsic laryngeal muscles controlling voicing and for the limb and truncal muscles controlling walking. The task of hawking which we attempted was very useful in speech therapy on PD patients who exhibited the freezing phenomenon of the vocal cords with kinesie paradoxale.
著者
石毛 美代子 村野 恵美 熊田 政信 新美 成二
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.154-159, 2002-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
21
被引用文献数
4 3

内転型痙攣性発声障害 (Adductor spasmodic dysphonia: 以下SDと略す) 様症状を呈する9症例に音声訓練を行った.7段階尺度 (0: 正常~6: 最重度) を用いた訓練前後の重症度評価, および治療効果に対する患者の主観的評価の二つにより音声を評価した.9例中4例では満足すべき結果が得られた.4例中2例は, 初期評価において機能性要因が関与していることが疑われた例であったが, 音声訓練後には正常範囲の音声に回復し, 治療結果から最終的に機能性発声障害と診断された.残る2例は初期評価の一環として行った試験的音声訓練において音声症状の軽減が認められた例であったが, 最終的にSDと診断された.以上より, SD様症状を呈する症例に対する音声訓練は鑑別診断上有効であることが示唆された.また, 音声訓練により症状の軽減が得られる症例が存在することから, 試験的音声訓練を試みるべきであると考えられた.
著者
上田 功
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.331-337, 1995-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
25
被引用文献数
1

幼児の構音異常を記述し評価する方法に, 自然音韻過程分析 (Natural Process Analysis) もしくは単に音韻過程分析 (Phonological Process Analysis) があるが, これは言語学的にみて, 理論的基盤を自然音韻論に置くものである.この評価法は欧米においては非常にさかんに用いられており, わが国においても, 最近援用される機会が多くなってきている.本論ではこの自然音韻過程分析を, 主として言語学的立場から検討し, はじめに基盤となる自然音韻論の中核となる概念を紹介し, その理論的問題点を指摘し, 次に自然音韻過程分析では説明しえない症例を紹介することによってこの分析法の限界を示し, 最後にこれらを踏まえたうえで, 自然音韻過程分析を臨床に応用する際の簡単なガイドラインを提示する.
著者
都筑 澄夫
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.344-349, 2002-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
6
被引用文献数
4 2

われわれは, 成人の吃音には発話にかかわるパラリンギスティックな要因である幼児期からのエピソード記憶に対する情動系の負の働きが関与していると考えている.進展段階第4層の吃音者39人 (12~68歳) を系統的脱感作を組み込んだメンタルリハーサルで治療した結果から, 記憶に対する情動反応の可塑性について検討した.場面への恐れと発話の状態について7段階の評価尺度を設け, 吃音者が自分で評価した.結果は全症例の36%が日常生活で吃音に煩わされないレベルまで改善したとともに, 吃音者意識がなくなった.38%の症例は改善したが恐れと発話症状の消失にはいたらなかった.そして26%の症例は改善しなかった.治療結果からエピソード記憶に対する負の情動反応の減少が吃音の改善に関係していること, および従来成人の吃音は治らないとされてきたが, 成人の発達性吃音であっても日常生活場面にて吃音に煩わされないレベルまで, 一定の割合で改善できることが示された.
著者
西尾 正輝 新美 成二
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.9-20, 2002-01-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
20
被引用文献数
5 6

Dysarthriaにおける音節の交互反復運動 (oral diadochokinesis) について, 健常者群と比較してタイプごとに検討し, 以下の結果を得た.1) いずれのタイプにおいても/pa//ta//ka/の3種の音節で反復速度は有意に低値を示し, また発話明瞭度検査で検出困難な側面の発話の異常徴候を鋭敏に検出することが示された.2) いずれのタイプにおいても, /pa//ta//ka/のほぼすべての音節で音節の持続時間の変動係数は有意に高値を示し, 発話機能の異常徴候を鋭敏に検出するパラメーターであることが示された.3) 失調性dysarthriaでは, /pa//ta//ka/の3種の音節で最大強度の変動係数は有意に高値を示し, 発話機能の異常徴候を鋭敏に検出するパラメーターであることが示された.4) 音節の持続時間と最大強度の変動係数は, 明瞭度とは大きく異なる側面の発話機能の異常徴候を特異的に反映することが示された.
著者
佐竹 恒夫 外山 浩美 知念 洋美 久野 雅樹
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.349-358, 1994-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
10

言語発達遅滞児および聴覚障害児の言語発達における会話能力を語用論の観点からとらえるために質問―応答関係検査を作成した.これを健常児に実施して得た発話内容について, 誤答分析を含めて, 言語発達の加齢に伴う質的な変化を分析した.2歳前半では無反応および現前事象が特徴的であった.2歳後半から3歳では発話量が増えるが冗長であり, 自己経験的・連想的な応答や, 会話が逸れる例が観察された.4歳台では2~3歳に特徴的な誤りは減少し, 系列的説明が可能となり話題が継続した.5~6歳では会話の相手を考慮し要約的に説明することができた.質問―応答関係を含む会話能力の発達段階を, 1) 2歳前半の無反応 (NR) ・現前事象の段階, 2) 2歳後半~3歳前半の自己経験・連想の段階, 3) 3歳後半~4歳台の意味ネットワークの段階, 4) 5~6歳のメタコミュニケーションの段階, 以上のように設定した.
著者
香田 千絵子 濱川 幸世 森 一功 中島 格
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-7, 1999-01-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
18

過去10年間に当科を受診した機能性発声障害患者129例 (心因性発声障害15例, 痙攣性発声障害13例, 変声障害10例, 音声振戦6例, 男性化音声5例, その他80例) を対象とし, その臨床像を検討した.これらの症例について, 年齢, 病悩期間, 性差, 主訴, 声の使用度, 心因的要因について調査し, またその他例のうち61例について器質的疾患の有無を喉頭ストロボビデオで詳細に調査した.さらに, 音声治療を行った症例99例中45例の治療成績について, 主観的評価と客観的評価を用いて検討した.その結果, 痙攣性発声障害, 男性化音声, その他には女性が多く, 音声振戦と変声障害は病悩期間が長く, ほとんどの発声障害が声の使用度が高いことがわかった.さらに喉頭には何らかの器質的疾患を合併していることがわかった.また, 心因性発声障害, 変声障害は訓練効果が高いことが判明した.
著者
廣瀬 肇
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.121-128, 2001-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
53
被引用文献数
1 1

中枢神経疾患の臨床症状として構音・プロソディの障害とともに音声障害の存在が注目されている.わが国において, これらの障害は一括して運動障害性構音障害と呼ばれることが多い.ここでは各種の疾患における音声症状について最近の報告を中心に概説した.
著者
見上 昌睦
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-8, 2007-01-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
38
被引用文献数
3 4

発話困難の意識があり重症度の高い発吃3歳3ヵ月, 初診時年齢5歳1ヵ月の男児1例に対して環境調整, 遊戯療法とともに流暢性を促すために以下の直接的言語指導による治療を実施した.1) ゆっくり, ひき伸ばし気味の発話 (カメの玩具を動かして) , 2) タッピング (蛙の玩具を弾ませて) , 3) 柔らかな起声・発話: 吸気後に呼気にのせて軟起声で, ゆっくりと母音部をひき伸ばし気味に発声・発話 (発話困難な語音に焦点を当てて実施) , 4) 自由会話.言語指導終了後, 遊戯療法に並行して母親面接を実施し環境調整を図った.家庭でも本言語指導を実施してもらった.本治療を通して, 指導および家庭場面の吃音症状は顕著に改善した.また工夫・回避反応は消失した.吃音の進展した幼児に対する遊戯的要素を取り入れた直接的言語指導に焦点を当てた治療の効果が示唆された.さらに, 言語指導と遊戯療法を組み合わせて実施することの効果も示唆された.
著者
見上 昌睦
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.21-28, 2005-01-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
30
被引用文献数
8 9

吃音の意識があり重症度の高い発吃3歳6ヵ月, 初診時年齢8歳10ヵ月の男児1例に対して環境調整, 遊戯療法とともに流暢性を促すために以下の直接的言語指導による治療を実施した.1) “ゆっくり, ひき伸ばし気味に”, “力を抜いて, 柔らかな声で”などをカメの玩具, 柔軟性に富むぬいぐるみの動き等にたとえて発話, 2) メトロノームを用いたリズム効果法, 3) 主症状である吸気発声への対応として, 吸気後に呼気にのせて軟起声で, 柔らかな声を用いながらゆっくりとひき伸ばし気味に発声・発語, 4) 劇遊びを斉読, 復唱など吃音症状が抑制されやすい条件をとり入れて実施した.言語指導終了後, 遊戯療法に並行して親面接を実施し環境調整を図った.家庭でも本言語指導を実施してもらった.本指導開始後, 指導および家庭場面の吃音症状は顕著に改善した.また回避反応は消失, 行動・心理面についても好転した.重度吃音学童に対して, 環境調整, 遊戯療法とともに, 遊戯的要素をとり入れ, 核となる吃音症状を踏まえて直接的言語指導を試みることの効果が示唆された.
著者
大橋 佳子
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.209-223, 1984-07-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
65
被引用文献数
3 3

本研究は吃音に対する明確な自覚, 問題意識, 恐れ, 回避行動をいまだ発達させていないと目された29名の吃音児の自由会語における吃音の頻度と一貫性を測定し, 一貫性が有意に高かった語頭音の音声学的特徴を分析し, 吃音の発生機序について検討したものである.結果は次のとおりである. (1) 吃音頻度の個人差は大きかったが, 吃音の97~98%は語頭に生起した. (2) 吃音頻度が20%を超えると, 吃音の一貫性をもつ音素の数は増加し, その指数も高くなった. (3) 全般的に一貫性が有意に高かった音素は/n/, /k/, /t/, /h/, /m/, /b/, /a/, /o/, /i/, であった. (4) このうち子音音素に共通な特徴は〔-軋音性〕と/h/を除く〔-継続性〕である.以上から, 吃音反応は声道の形状, 呼気の使用法, 口腔内圧等の諸条件と関連して特定の音に生じやすいことが判明した.ゆえに, 吃音の一貫性は必ずしも従来考えられてきたような学習要因による現象とはいえないという結論に到達した.
著者
Hiroyuki Arai Mutsuo Yamaya Takashi Ohrui Satoru Ebihara Takae Ebihara Kazushi Nakajo Hidetada Sasaki
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
The Japan Journal of Logopedics and Phoniatrics (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.467-472, 2002-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

誤嚥性肺炎を発症する高齢者では, 高率に脳血管障害, 特に大脳基底核領域に脳梗塞が見出される.この場合の脳梗塞は, 新しいものであっても陳旧性のものであっても, また症候性であっても無症候性であっても構わない.このような患者では, 嚥下反射と咳反射の両者の低下により, 誤嚥特に夜間の不顕性誤嚥により肺炎の成立にいたると考えられる.嚥下反射と咳反射は, 少なくとも2つの神経伝達物質, すなわちドーパミンとサブスタンス-Pによって支えられている.進行したアルツハイマー病患者も大脳基底核障害などにより誤嚥性肺炎を発症する.進行したアルツハイマー病患者において, major tranquilizerの使用と無症候性脳梗塞の合併は誤嚥性肺炎を誘発する危険因子であるため問題行動に対するmajor tranquilizerの使用には細心の注意が要求される.塩酸アマンタジン, ACE阻害薬, 抗血小板剤の使用また歯ブラシなどによる簡便な口腔ケアは肺炎の予防に役立つばかりでなく高齢者医療費削減にも貢献すると思われる.
著者
Shigeko Harigai Yoshisato Tanaka Yoshimi Mitani Yumi Shishido
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
The Japan Journal of Logopedics and Phoniatrics (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.14-21, 1996-01-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
18

本症例は母体を保護するため在胎25週, 帝王切開にて体重800gの超未熟児で出生した.両親は死産もしくは脳損傷の合併を予告されたため「脳損傷」にこだわり子供の発達に希望が持てず, 親子関係 (母子関係) が育たなかった.その結果本児の心身の発達は遅れ, 難聴による言語発達の遅れも加わりコミュニケーション障害と情緒障害をおこした.母親は本児の育児に自信をなくし, 施設での養育を希望した.児童相談所の措置で施設に入所させ親子を分離した結果, 母親は落ち着き本児は補聴器を装用し言語訓練により言語を獲得した.就学は聾学校に寄宿生として入学したが, 聾学校寄宿生の規則である週末の帰宅をめぐり親子関係が悪化し不登校となった.現在は児童施設に入所し聾学校に通学している.本児は両親, 医療関係者や教育関係から, 適切な処遇を受けなかったため心身の発達の遅れに加え, 重い情緒障害とコミュニケーション障害を残した.この発達経過は, 周産期医療のあり方と未熟児を育てる家族の支援の必要性, さらに親子関係の発達に及ぼす影響の重大さを指摘している.
著者
福迫 陽子 遠藤 教子 紺野 加奈江 長谷川 和子 辰巳 格 正木 信夫 河村 満 塩田 純一 廣瀬 肇
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.209-217, 1990
被引用文献数
2 2

脳血管障害後の痙性麻痺性構音障害患者のうち, 2ヵ月以上言語訓練をうけた24例 (平均年齢61.6歳) の言語訓練後の話しことばの変化を聴覚印象法 (日本音声言語医学会検査法検討委員会による基準) を用いて評価し, 以下の結果を得た.<BR>(1) 0.5以上の評価点の低下 (改善) が認められた上位7項目は, 順に「明瞭度」「母音の誤り」「子音の誤り」「異常度」「発話の程度―遅い」「段々小さくなる」「抑揚に乏しい」であった.<BR>(2) 重症度 (異常度+明瞭度の和) は24例中16例, 約7割に何らかの改善が認められた.<BR>(3) 一方, 「音・音節がバラバラに聞こえる」「努力性」「速さの程度―遅い」などでは評価点の上昇 (悪化) も認められた.<BR>(4) 症状の変化は症例によって多様であった.
著者
岩田 重信 竹内 健司 岩田 義弘 戸田 均 大山 俊廣
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.14-21, 1995-01-20
被引用文献数
10 1

われわれは声の強さの調節に関し, 声門下圧を経声門的に抽出し, PS-77発声機能検査装置とPI-100自動解析プログラムにより, 声の強さ, 高さ, 呼気流率, 声門下圧, 声門抵抗, 声門下パワー, 喉頭効率を求めた.対象は正常者9例 (男性4例, 女性5例) で, 楽な発声と胸声とファルセットにて, crescendo発声を行わせた.楽な発声条件では, 声門下圧, 声門抵抗, 喉頭効率の値は性差を認めず, 声門下パワーは女性に比し, 男性に高い値を示した.crescendo発声では, 胸声区は声の強さの増加に比し, 呼気流率はほとんど変化を認めないが, 声門下圧, 声門抵抗, 喉頭効率は直線的な比例関係を示し, ファルセットでは, 胸声の同じ強さで比較すると, 呼気流率, 声門下圧, 声門下パワーは増大しているが, 喉頭効率は著しく低下していた.