著者
林 幹雄
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

▼番組開発の経緯「ブラタモリ」は2008年12月に深夜のパイロット番組として始まりました。当時NHKには番組開発という部署があり、そこに所属していた私を含む4人で立ち上げました。内容は「原宿・表参道」。多くの人が当たり前に目にする都市の風景を紐解いていく内容は深夜番組にもかかわらず多くの反響を呼びました。▼レギュラー開始その後2009年10月から翌年3月まで、夜10時の43分番組として全15回のレギュラー放送が始まります。タモリさんのNHKレギュラー番組出演は「ウォッチング」以来、実に20年ぶりでした。以後毎年10月から3月までのレギュラー番組として3年続きます。かつての町の姿をこうだったに違いないと再現した「妄想CG」のほか、タモリさん自身が撮影した「ブラタモ写真館」も話題になりました。番組開発当時の資料をまじえてお話します。▼最初のブラタモリの作り方見え方はほとんど今と変わっていませんが専門家の多くは工学部系の都市設計・開発や街づくりの研究者でした。何より今と違うのはディレクターの街歩きの回数です。「言葉の謎解き」はありませんでしたが「不思議な風景」をタモリさんが発見し、その理由を探って行くという作りでした。視聴者が良く知っている東京を舞台に、あまり知られていない不思議な風景や話題を探すのは大変で、文字通り靴の底が磨り減るほど歩き回りました。▼現状2015年4月からのレギュラー放送は今に至る毎週土曜19:30からの番組で、多くの方にご覧頂いています。「ブラタモリ」は、あくまで街歩き番組ですが、随分「地質」に偏った番組になりました。今のレギュラーが始まって5年。回によって「地質」だけでなく「歴史」「地理」「風俗」「文化」を総動員して、これからも街や土地の成り立ちを解き明かす魅力的な番組であり続けたいと思っています。
著者
西原 志保
出版者
特定非営利活動法人 頸城野郷土資料室
雑誌
頸城野郷土資料室学術研究部研究紀要 (ISSN:24321087)
巻号頁・発行日
vol.2, no.5, pp.1-20, 2017 (Released:2019-04-20)
参考文献数
12

光源氏亡き後の世界を描く『源氏物語』宇治十帖では、臨終間際の大君(おおいきみ)の様子が「身もなきひひな」に喩えられる。「ひひな」(雛)は紙などでできた人形(にんぎょう)であり、紫の上の幼い頃など、子どもが遊ぶ場面で描かれる。また、大君に関しては、彼女の死後薫が大君の「人形(ひとがた)」を作りたいと言い、その「人形(ひとがた)」として最後の女主人公浮舟が登場する。「人形(ひとがた)」は穢れを払うために流されるなでもののことである。『源氏物語』研究において雛は物語構築の手法として、人形(ひとがた)も重要なモチーフとして注目されるが、雛と人形(ひとがた)を総合的に考察したものは多くない。そこで、雛と「人形(ひとがた)」を併せて考察することで『源氏物語』の人形(にんぎょう)論を試みるのが、本稿の目論見である。人形(にんぎょう)は現代のアートシーンにおいて、男性によるオブジェ嗜好とも関わりながら、女性の内面表現の媒体として特異な発展を遂げている。芸術論においては絵画や彫刻と対比され、その衣装性が指摘される。子どもが遊ぶ人形を指す雛が、なぜ大君の喩に用いられるのだろうか。この疑問を切り口に、女性の内面形成とフィクション構築とを重ね合わせる手法としての「人形(にんぎょう)」に着目する。子どものままごと遊びとして始発しながら、男性(薫)のオブジェ嗜好を経て、女君自身(浮舟)の人形(にんぎょう)化願望へと辿り着く様相を明らかにする。

48 0 0 0 OA 秩父・武甲山論

著者
笹久保 伸
出版者
特定非営利活動法人 頸城野郷土資料室
雑誌
頸城野郷土資料室学術研究部研究紀要 (ISSN:24321087)
巻号頁・発行日
vol.1, no.8, pp.1-25, 2016 (Released:2019-04-18)
参考文献数
9

秩父盆地を象徴する山、武甲山。武甲山は古くより秩父地域における信仰の山である。秩父盆地の神の山であり、現在もなお秩父の総鎮守である秩父神社の神体山とされている武甲山の存在によって日本の三大曳山祭りに数えられる秩父夜祭りや、御田植祭などの祭り事、札所巡礼などの民間信仰が成立してきた。しかし武甲山は石灰石を採掘するために現在もほぼ毎日12時30分にダイナマイトで爆破され続けている。秩父地域は自然豊かで霊場として知られる信仰深い地域であると同時に、毎日神を爆破しているという二面性および究極的な矛盾を抱える地域である。自身が秩父に在住し活動を続ける芸術家という立場から、芸術作品制作のためにおこなって来た秩父調査の中で発見した秩父の現実や、神の山を爆破し解体し続ける秩父地域における武甲山の存在について様々な視点から考察する。
著者
須田 義大 松岡 茂樹 小川 雅
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.63, no.611, pp.2329-2336, 1997-07-25 (Released:2008-02-26)
参考文献数
8

This paper presents a quantitative evaluation method for seat arrangements in commuter railway cars. The purpose of the study is to evaluate seat arrangements based on passenger comfort and accessibility, which are important during train operation. To determine the unknown parameters in the function, experimental examination was done. A full-scale mockup with variable seat arrangements was manufactured. It was modeled on a 20 m-long car with four or six doors per side, because a choice of the door arrangement is one of the main parameters. Using this mockup, comfort and accessibility were measured for ten types of seat arrangements. The results of the proposed evaluation functions using computer simulations agreed with measured experimental results. Applying the evaluation method to several seat arrangements, it is found that the most suitable seat arrangement depends on the average boarding time of passengers. From the evaluated results, suitable seat arrangements for commuter trains are discussed.
著者
佐野 真人
出版者
皇學館大学
巻号頁・発行日
2018-09-28

平成30年度
著者
吉田 加代子
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-15, 2014-07-30 (Released:2017-05-23)
参考文献数
32
被引用文献数
3

The capacity to be alone (CBA) is a concept proposed by Winnicott. A scale for assessing CBA that can measure anxiety in both solitude and individuation was developed, and the relationship between acquiring CBA and the internal object was investigated. University students (N = 220) responded to a questionnaire. Factor analysis of their responses using principle factor method and Varimax rotation indicated that “the Scale of Anxiety about Being Alone” consisted of two factors: “Avoidance of intimacy” “Anxiety about solitude”.Cronbach’s alpha coefficients of the two factors were indicative of sufficient reliability (.91 and .90, respectively). Moreover the difference in the inner object among the following groups: “High-CBA”, “Anxiety about solitude”, “Anxiety about intimacy” and “Low-CBA”, divided by each factor score was analyzed using a one-way analysis of variance. The results indicated that “High-CBA” was characterized by an inconsistent object rather than by a good, or a bad object. The group with anxiety about solitude, which mostly tended to imagine a good object, also tended to recollect an inconsistent object. This result suggested they were vulnerable to object constancy.
著者
堀田 哲也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

シェーグレン症候群(SS)は乾燥症状を主症状とする自己免疫疾患であり、関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)など他の自己免疫疾患を合併することも多い。本研究ではSS患者よりゲノムDNAを抽出し、SLEなどの自己免疫疾患との遺伝的背景をおもに一塩基多型(SNP)解析を行い比較検討した。STAT-4、IRF-5などSLEで関連が認められた遺伝子多型はSSでも関連があることがわかり、自己免疫疾患共通の遺伝的背景の存在が示唆された。
著者
奥田 知明 坂出 壮伸 藤岡 謙太郎 田端 凌也 黒澤 景一 野村 優貴 岩田 歩 藤原 基
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.28-33, 2019-01-10 (Released:2019-03-23)
参考文献数
17

可能な限り多数の測定装置を同時に利用することで、閉鎖的環境の代表例である地下鉄構内の空気中粒子状物質の詳細な特性調査を行った。総粒子個数濃度はCPC、ナノ粒子側粒径分布はSMPS、ミクロン粒子側粒径分布はAPS、ミクロン粒子側粒子個数濃度はOPC、粒子状物質の帯電状態は自作の帯電粒子測定装置K-MACS、PM2.5濃度はポータブルPM2.5濃度計、粒径別の個別粒子の元素組成はSEM/EDX、フィルター採取された粒子の元素組成はEDXRFにより測定された。地下鉄構内におけるPM2.5質量濃度は、列車の到着本数が過密になる7–8時台を過ぎた時間帯にピークを示した後徐々に減少し、午後になると約50–120 μg/m3の範囲でほぼ定常的な上昇と減少を繰り返した。地下鉄構内のPM2.5質量濃度は、屋外と比較して約2–5倍であった。地下鉄構内においては、屋外大気と比較して粒径0.5 μm以上の比較的粗大側の粒子が高濃度となった。地下鉄構内のFe、Ti、Cr、Mn、Ni、Cu、Znなどの金属類は、屋外観測地点の数十から数百倍の高濃度であった。一方で、Sの濃度は地下鉄構内と屋外観測地点で大きな違いは見られなかった。0.5–1.0 μmの粒径範囲においては、地下鉄構内の粒子の約70%以上は帯電していた。地下鉄構内における粒子状物質濃度は屋外と比較して高く、かつ地下鉄構内ではFeを含んだ粒子が多いことは、過去の研究例と同様の傾向であった。このことに加えて、本研究では複数の測定装置により、粒径による元素組成の違いや、粒子の帯電状態などといった、地下鉄構内空気中粒子の詳細な特性を把握することができた。
著者
伊藤 翔 唐沢 康暉 星野 太佑 藤井 雅史 衛藤 樹 鶴 純也 柏戸 千絵子 黒田 真也
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.223-227, 2019-06-01 (Released:2019-05-18)
参考文献数
20

We clarify the effect of combination of low-carbohydrate diet and resistance exercise training on physical characteristics and plasma concentrations of metabolites and hormones in humans. Intervention of low-carbohydrate diet and resistance exercise training were performed on 7 healthy men and 3 women (age 39.6 ± 7.0 year; BMI 25.1 ± 3.6 kg/m2) for 8 - 12 weeks. Physical characteristics and 106 test items including and blood concentrations of metabolites and hormones were measured before and after the intervention. The effects of intervention were analyzed by a paired t-test, in which multiple testing was corrected by the method of Storey (significant variation q <0.1). In both men and women, carbohydrate and energy intake per day were low, and protein intake per day was almost the same as the recommended dietary allowance. Because carbohydrate intake were limited (174 kcal), resulting in reduction of total energy (1186 kcal). After the intervention, body weight, BMI (Body Mass Index), fat mass, body fat, muscle mass and body water content significantly decreased, while muscle mass per body mass significantly increased. Glycine, 3-methyl histidine, inorganic phosphorous, urea nitrogen, urea nitrogen per creatinine, were significantly increased, while HbA1c, white blood cell count, β-aminoisobutyric acid, adrenalin, free T4, blood ammonia, γGTP, cholinesterase, and leptin were decreased.
著者
鈴木 仁
出版者
北海道大学文学研究科
雑誌
研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-21, 2016-12-15

本論は、樺太における地名選定と、その後の地名研究の活動から、日本領に再構築される樺太での日本人の領土意識を考 察したものである。 第一節では、幕府や開拓使における樺太の地名の取り扱いをまとめた。アイヌ語地名を漢字表記した行政地名化は北海道 で実施され、開拓使・北海道庁や各支庁による選定がなされており、樺太では明治六年(一八七三)に「樺太州各所地名」 が定められる。だが、各地の表記が整理される前に、明治八年のサンクトペテルブルク条約(樺太千島交換条約)により島 の全域はロシア帝国領となった。 第二節では、日露戦争中に樺太を占領した現地の部隊による地名改称と、これに対する地理・歴史学者たちの反応をまと めた。明治三十八年(一九〇五)七月に占領が進められたロシア領サハリン(樺太)には、勝利を記念して地名が付けられ たが、北海道にもあるアイヌ語地名が樺太で消されていることに反対する意見が出されている。 第三節では、明治四十年(一九〇七)四月に開設された樺太庁による地名選定事業についてまとめた。一部に意訳や日本 語地名の新たな設置もあるが、選定の基本方針はロシア語地名を排除し、原名となるアイヌ語地名を調べ、その語音の漢字 表記としている。大正四年(一九一五)八月に、樺太で郡町村が編制されると、広域地名にも採用されている。 第四節は地名研究史とした。樺太の地名には多様な民族と歴史変遷により、アイヌ語以外の言語も影響しているため、島 内では歴史研究の資料として調査されている。本論では、その調査活動のなかから、昭和期には広まった郷土研究により、 異文化であったアイヌ語が郷土の文化として研究される過程をまとめ、昭和五年(一九三〇)に樺太郷土会から発行された 『樺太の地名』を日本人住民による一つの成果として取り上げた。加えて戦後の出身者によるアイヌ語地名研究の見直しや、 郷土の記憶として資料化されたことも補足した。
著者
村田 剛志
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

日本は世界有数の火山国であり、世界の活火山の約7%が存在する。火山の噴火は時として甚大な人的・物的被害を及ぼすものであり、2014年の御嶽山や2018年の草津白根山での火山災害は記憶に新しい。火山活動を正確に把握して必要な対応を取ることは、専門家のみならず周辺地域の多くの人々にとっての重大な関心事である。噴火予測などの火山の研究は、これまでは火山物理学からのアプローチが主であったが、火山周辺に設置された伸縮計や地震計などから観測される時系列データを用いた情報学的なアプローチによって、新たな展開や可能性が見えてくると期待される。火山の観測装置から得られる時系列データは噴火と大きな関係があるが、一般にデータは複雑で、専門家にとっても分析は容易ではない。我々は火山噴火分類と火山噴火予測の二つの問題に注目した。前者の目標は、100分間の時系列データからその100分間に火山が噴火するか否かを分類することであり、また後者の目標は、100分間の時系列データから兆候を認識してその直後の60分間に火山が噴火するか否かを予測することである。前者については、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を時系列データに対して適用するVolNetを提案した。実際のデータを用いて火山噴火分類を行ったところ、F-scoreで90%程度の精度を達成した。また後者については、時系列データにおける時間変化を検出するためにStacked 2-Layer LSTMを用いて実験を行った結果、噴火・非噴火の2クラス平均のF値による精度で66.1%であった。また、与えられた時系列データを”Non-eruption”, “May-eruption”, “Warning”, “Critial”の4つに分類する警告システムを構築したところ、”Critial”に分類された時系列データで噴火が起こったものの割合は51.9%であった。我々は京都大学防災研究所附属火山活動研究センター長の井口正人教授の協力のもと、火山に関する最大級の規模と質の時系列データを用いた実験によって、提案手法の有効性を示した。また国内および海外での火山噴火のニュースが多い昨今において、AIを用いて噴火を予測するというテーマは社会的にも関心を集め、日本経済新聞での記事、NHK鹿児島でのローカルニュース、南日本新聞での記事、月刊誌(みずほ総合研究所「Fole」)での記事など、多くのメディアで取り上げていただいた。