著者
松本 隆志
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.229-254, 2013-10-10

ウマイヤ朝後期のイラク総督ハーリドは,『歴史』と『征服』の二史料間で,質量ともに大きく描かれ方が異なっている。本稿はこのハーリドに関する叙述を二史料間で比較検討したものである。その結果として,ハーリドに関する言及の多い『歴史』では,その理由が南北アラブの部族間対立の文脈に求められ,ウマイヤ朝末期の第三次内乱においてハーリドおよび部族間対立が原因の一つとして機能していることがわかった。他方,ハーリドへの言及が少ない『征服』では,部族間対立の文脈は見られず,第三次内乱はウマイヤ家の内部抗争として描かれていることがわかった。本稿で明らかとなった叙述傾向の相違は,両史料の叙述全体についても反映している可能性があるものと考える。
著者
澤島 秀成 堀 良彰 砂原 秀樹 尾家 祐二
雑誌
マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, no.1, pp.87-94, 1996-10-23

広域ネットワークにおいて、音声や画像などの実時間通信は、その実時間性を満足させるためにUDPが用いられることが多い。しかしながら、広域ネットワークにおいて使用されているトラフィックの約80%は、TCPトラフィックである。TCPはUDPと異なり独自のフロー制御機構を持つために、これらが混在した広域ネットワークにおけるUDPのトラフィック特性は、TCPの影響を大きく受けることになる。本研究では、TCPとUDPが混在する広域ネットワークについてシミュレーションを行い、UDPのパケット廃棄特性をTCPのフロー制御の挙動との関係から調査した。複数のTCPコネクション間において、その輻輳ウィンドウのサイズ変化に同期が見られる場合、UDPの廃棄率が著しく大きくなり、そのバースト性を示す連続廃棄数も増加することが分かった。また、音声通信などの場合、UDPの送信レートを下げても、UDPのパケット廃棄率に目立った改善が見られないことが分かつた。
著者
余 項科
出版者
静岡県立大学国際関係学部
雑誌
国際関係・比較文化研究 (ISSN:13481231)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.49-71, 2004-09-01
著者
平間 さゆり 牛木 潤子 小畠 秀吾 秋葉 繭三
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.37-47, 2016-08-10

近年,男子の殺人事犯は減少傾向にあるが,女子の殺人事犯には変化がない.殺人事犯には男女差があり,女子殺人の被害者には親族や配偶者が多く,情動が主な動機となっている.女子の殺人事犯の数は少ないためあまり研究されていないが,家族や近親者を対象にしていることから,本研究において,女子の殺人事犯を家族機能の側面から検討することとした.家族機能以外にも,犯罪に影響を与えるとされる発達障害(ADHD)と人格傾向(境界性パーソナリティ障害:BPD)に着目し,女子受刑者(殺人以外の他罪種を含む)を対象に家族機能・BPD・ADHD 傾向について調査した.その結果,女子殺人事犯において,ADHD 傾向を持ち,家族の情緒的絆や適応が不良であると,自己否定し見捨てられ感を抱き,他者が信じられず対人関係が困難になることが示された.よって,これらが女子の殺人事犯の背景要因の1 つになると考えられた.また,女子殺人事犯のみに,年齢の高低により家族・ADHD・BPD 傾向全てに差異がみられた.
著者
中島 敏夫
出版者
愛知大学国際コミュニケーション学部
雑誌
文明21 (ISSN:13444220)
巻号頁・発行日
no.33, pp.23-43, 2014-12-20
著者
大庭 健
出版者
専修大学学会
雑誌
専修人文論集 (ISSN:03864367)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.601-617, 2016-11-30
著者
櫻井 光行
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-19, 2016-10-26

本稿は、ブランドの役割を製品の物理的特性を超えた付加価値の提供と捉えるならば、日本の優良ブランドの多くはブランドと言えるのだろうかという問題意識から出発している。日本企業が成長を図るためには、製品のコモディティ化からの脱却、持続的競争優位の構築・維持、関係性マーケティングの推進を通じて、消費者にとって象徴的な意味を提供するブランドが不可欠である。 そのようなブランドの形成要因は機能的な特徴よりも消費体験にあると考えられる。意味を持つブランドとは、消費者の記憶の中でブランド・スキーマと自己スキーマが結びついたブランドであり、どのような体験がその結びつきを強めるのかを考察した。認知心理学や消費文化論のレビューを通じて、ブランド形成要因解明のための3つの視角が導出された。ブランドと自己の結びつきは、①ライフ・ヒストリー(特に若年期)において自己スキーマに関わる精緻化や強い感情を伴う経験を通じて形成される、②準拠集団によってブランドの意味がつくられ、自己動機を媒介として形成される、③社会的に共有された意味(消費者は受動的)と個人の経験からつくられる意味(能動的)の2つから生まれる。
著者
牧野 泰才 村尾 将和 前野 隆司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.1644-1656, 2011-04-15

本研究で我々は,指下で生じる振動を取得する方法を提案する.爪に圧電素子を貼付し,接触や操作により生じた振動を検出する.このようにして得られた振動は,指の姿勢や外来ノイズに影響されることなく,接触対象や動作によって異なる波形を示すことを確認した.対象により接触音が異なることから,何を触ったのかを検出可能である.ヒトは行動を起こす際,多くの場合何かに触れる.したがって,この触対象が何かという情報は,新しいライフログのデータとして利用可能である.実験により提案手法の対象識別精度を確認した結果,12種類の日常動作を94.4%の精度で識別できることを確認した.また,ライフログの利用価値についても考察し,本手法が有効である用途の検討も行った.