著者
石野 美也子
出版者
京都文教短期大学
雑誌
京都文教短期大学研究紀要 (ISSN:03895467)
巻号頁・発行日
no.58, pp.69-78, 2020-03-01

現代を取り巻く多くの福祉の課題は、児童虐待、高齢者虐待、いじめ、児童の貧困など解決すべき問題は多岐にわたる。今後、福祉はどうあるべきかを社会事業から社会福祉に転換をはかり、近江学園を創設した糸賀一雄、池田太郎、田村一二の人間観、福祉観およびその思想形成の過程を振り返ることで考察する。
著者
村上 武敏
雑誌
聖隷クリストファー大学社会福祉学部紀要 = Bulletin of the School of Social Work Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-21, 2020-03-31

特に1990 年代以降の医療制度改革により、MSW は必然的に退院援助業務に傾斜してきた。それは医療機関の組織的活動として位置づけられるようになり、MSW は政策的にも医療機関からも期待される活動を担いうる存在となったが、援助過程において効率性を求められるその業務にあって、しかも一貫した長期の援助を展開しにくい環境にあって、MSW の社会科学的な対象認識は希薄になりつつあるように感じられるのである。 本研究では、この1990 年代以降におけるMSW の対象認識の特徴を捉えるために、MSW による実践報告および調査報告、論文等について、1980 年から2014 年までの35 年間を分析した。 意思決定支援に対する関心が高く、さらに退院援助システムなど連携体制構築においても医療福祉固有の対象認識をうかがわせるような記述はなく、「患者一般」という対象像が垣間見える。MSWに求められてきた社会階層的な対象認識は希薄になり、生活問題を社会問題として捉えて解決に向かう実践の志向性は弱くなっている様子がうかがえた。医療福祉が社会科学的な対象認識を失うならば、医療福祉の社会的意義もまた失われることになる。時代に合わせて変化するMSW の存在形態とともに、変化を否定する医療福祉の本質部分を確認する作業となった。
著者
海老田 大五朗
出版者
新潟青陵学会
雑誌
新潟青陵学会誌 (ISSN:1883759X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.11-21, 2021-09

本研究の目的は、「認知症鉄道事故裁判」についての論文や資料を分析することで、この裁判における社会福祉的含意を引き出すこと、および本裁判で問題になったいくつかの記述を検討することである。本研究では、被告支援ネットワークの形成、「リスクの社会化」をめぐる議論、司法と行政の関係、認知症患者が起こした事故を「加害」と記述することへの違和感を考察した。被告支援ネットワークの形成には高齢者福祉や精神保健福祉行政の理念が深く関係していた。また、最高裁判決後、「リスクの社会化」についての議論が盛んになされた。最後に、本裁判と強く関係する「加害」や「徘徊」という記述の不適切性を指摘した。
著者
濱野 千尋
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野
雑誌
コンタクト・ゾーン (ISSN:21885974)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2019, pp.62-94, 2019-08-31

本論文の目的は、ドイツにおける動物性愛者への調査に基づいて、動物性愛というセクシュアリティがもたらす、人間と動物のセックスを含めた種間関係のあり方を考察するものである。その際に本論文で焦点を当てるのは、動物性愛を意図的に選択し、自ら動物性愛者になっていく人々である。このような人々の存在について、これまで他領域を含む先行研究では言及されてこなかった。動物性愛というセクシュアリティを選び取る人々について学術的な言説のなかで言及するのは本論文が初めてである。本論文では彼らの実態を紹介し、事例を踏まえてダナ・ハラウェイによる伴侶種概念と比較検討しつつ、伴侶種を論じる際のセクシュアリティに対する視点の必要性を指摘する。動物性愛を選択する人々がいる事実は、動物性愛というセクシュアリティを生来的なものではなく、身近な動物との共生のためのオルタナティブな方法として受け入れうるものと説明できる可能性がある。本論文では、このような人々の事例をもとに、セクシュアリティの選択と、その結果としてもたらされる、異種間関係および人間関係の変容について論じる。
著者
大島 悟
出版者
島根大学大学院教育学研究科 教育実践開発専攻
雑誌
学校教育実践研究 (ISSN:24345245)
巻号頁・発行日
no.2, pp.11-27, 2019-03-29

竹島問題の平和的解決に向けては, 日韓の若者同士の対話や議論の積み重ねが大切であり, 民間レベルでは実際にそのような議論も行われている。本研究は, 日本の中学生が韓国の中学生と対話をする際にどのような対話を試みるのか, その対話の質を高めるための指導はどうあるべきかという問題意識に基づき, ①韓国の中学生との対話場面を想定した調査を行い, どのような対話をしようとするのかを分析し, その特色について明らかにすること, ②対話の質を高めるための社会科の授業実践を行い, 事前の調査結果との比較分析を行い, 対話の質がどのように変容したかを明らかにすること, ③これらの取組を通じて今後の授業開発への知見を得ること, を主たる目的としている。そのために本研究では, ①にある事前調査を行った後, 先行研究を踏まえて対話の相手である韓国の主張への理解を深めるための教材開発による実践「日韓国交正常化交渉と竹島問題」を行い, ②の分析を行った。その結果, 事前調査で多かった韓国への反論や日本の主張のみの記述が大幅に減少し, それぞれの主張を理解した上で, 国際司法裁判所への提訴や話し合いによる解決を提案しようとする記述が増えるなどの変容が認められた。また記述内容から,日本が正当に主張する立場からの指導をしたとしても, 解決に向けて考える際には, 生徒は多様な考えを示すことがわかった。これらの研究から, 今後の授業開発に向けて, 韓国の主張の理解のための近現代史学習の重要性, 平和的な解決に向けた対話を考える学習の有効性, 領土問題の学習を社会科において扱う可能性についての示唆が得られた。
著者
三島 亜紀子
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.31-48, 2018

<p>19 世紀末から20 世紀初頭にかけてのシカゴは,社会学とソーシャルワーク</p><p>が袂を分かった象徴的な場といえる.市内には,セツルメント「ハルハウス」</p><p>とシカゴ大学社会学部があった.ハルハウスのアダムスらは近代的な都市が抱</p><p>える社会問題の解決に取り組み,ソーシャルワークの源流の一つに位置付けら</p><p>れている。これに対し,シカゴ大学のパークは都市を実験室と位置付け,アダ</p><p>ムスらの調査方法を女性がするものとしジェンダー化することによって,社会</p><p>学を差異化していった.</p><p> しかしながら日本では,このジェンダー化は成立しなかった.20 世紀前半</p><p>の日本の「ソーシャルワーカー」の多くは男性で,ジェンダーロールの反転現</p><p>象がみられたのである.当時の日本の研究者や実践家は欧米のソーシャルワー</p><p>クを精力的に学んでいたにもかかわらず.</p><p> 本稿では,日本のソーシャルワークと社会学領域の間にある「社会的なもの」</p><p>の解釈の違いを踏まえたうえで,日本で初めてソーシャルワークを実践した方</p><p>面委員の多くが男性であったという事実を検証した.戦前は地域の有力者や素</p><p>封家の家長が名誉職として方面委員となることが多かったが,現在では,女性</p><p>の民生委員が6 割を超えるようになるなど,変化を遂げてきた.この変化は参</p><p>加の動機づけや地域社会,価値観等に変化があったことを示していると考えら</p><p>れるが,「社会的なもの」を自助と公助と共助(互助)と捉える観点は今も強</p><p>固である.</p>
著者
神野 卓之 芳村 学 中村 孝也
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集 (ISSN:13404741)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.1201-1206, 2001-06-01
参考文献数
2

本論では,旧基準による鉄筋コンクリート柱を対象とした実験結果に基づく地震応答解析によって,兵庫県南部地震におけるコンクリート系建物の中間層崩壊について検討した。また,海外で屡々見られる複数層にわたる崩壊が兵庫県南部地震ではほとんど見られなかった要因についても検討した。その結果,兵庫県南部地震で中間層崩壊した建物に作用した入力地震動の大きさが分かり,また,入力がそれよりも大きければ,複数層で崩壊した可能性もあること,など,が分かった。
著者
上条 直裕 伊藤 公久 渡邉 妙子
出版者
The Imaging Society of Japan
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.641-649, 2012

近年,歴史的文化財の保護,継承を目的とするデジタルアーカイブ活動が盛んになっている.特に日本刀は個人所有が主であり,歴史的人物,時代背景とのつながりが強いため文化財としての価値は高く,アーカイブによる記録,閲覧の要請は強い.日本刀はその道具としての機能「折れず,曲らず,よく切れる」を達成するための工夫がそのまま美しさを作り出している.これら美しさを示す特徴は観察,理解が難しく,専門家の視点での日本刀の見えを表現できる画像の取得が期待されてきた.日本刀の観察は照明と視線との相対姿勢を調整しながら,微妙な色合い,文様を読み取ることが重要である.我々は,照明角度,視線角度を調整可能とするマルチアングル撮像光学系,正確な色情報を取得するマルチバンド分光撮像系を搭載した日本刀デジタルアーカイブシステムを開発した.また,本システムは色補正,合成,明るさ補正機能を搭載し,専門家のイメージを共有できる画像表示を実現している.本稿では,日本刀の高精細な画像を取得可能とする日本刀デジタルアーカイブシステムの機能,構成とアーカイブ画像における効果を紹介する.
著者
空閑 厚樹
雑誌
まなびあい
巻号頁・発行日
vol.11, pp.150-159, 2018-10-19