著者
森,弥広
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文集
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, 2003-07-01

太平洋戦争末期に建造され,戦後は瀬戸内海の漁港において防波堤の役割を果たしている,2隻の鉄筋コンクリート貨物船についての調査結果を報告する。船体から採取したコアについて,中性化,圧縮強度,塩化物の浸透状況,鉄筋腐食などを調べた。その結果,高濃度の塩化物を含んでいる鉄筋コンクリート部材であっても,コンクリートの組織が密実であれば海洋環境下においても,優れた耐久性を示すことを確認した。
著者
神野 卓之 芳村 学 中村 孝也
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集 (ISSN:13404741)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.1201-1206, 2001-06-01
参考文献数
2

本論では,旧基準による鉄筋コンクリート柱を対象とした実験結果に基づく地震応答解析によって,兵庫県南部地震におけるコンクリート系建物の中間層崩壊について検討した。また,海外で屡々見られる複数層にわたる崩壊が兵庫県南部地震ではほとんど見られなかった要因についても検討した。その結果,兵庫県南部地震で中間層崩壊した建物に作用した入力地震動の大きさが分かり,また,入力がそれよりも大きければ,複数層で崩壊した可能性もあること,など,が分かった。
著者
西村,次男
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, 1998-06-30

一方向繊維強化プラスチックロッドを構成する各種繊維が,純水,酸性およびアルカリ性の溶液によってどのような劣化を生じるかをより厳しい環境下(温度80℃,湿度60±2%)で劣化促進浸潰試験を実施し,浸漬試験後に繊維の強度ならびに走査電子顕微鏡を用いて微視的に観察し,各種繊維の劣化を明らかにした。その結果,アラミド繊維からなるテクノーラは,耐化学薬品性において強度低下は余り認めらず耐化学薬品性に優れていることが明らかとなった。しかし,アラミド繊維からなるケブラーk49,ガラス繊維およびかボン繊維は溶液の種類によってなんらかの影響を受け強度低下することが明らかとなった。
著者
田野崎 隆雄 野崎 賢二 白坂 優 成島 良輔
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集 (ISSN:13404741)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.337-342, 1995-06-01
参考文献数
4
被引用文献数
3

今後発生が増加し、有効利用が望まれている石炭火力発電所の石炭灰を、コンクリート混和材利用の面から評価した。122Lotの石炭灰ーフライアッシュを評価した結果、混和材利用に当たって問題とされている単位水量比,空気連行量の管理を、BET比表面積法で管理可能なことを見出した。BET法は、メチレンブルー吸着量等より簡単迅速な評価方法である。
著者
姜,仁錫
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文集
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, 2002-06-08

RCせん断壁で構成されている壁式構造アパートでは、RCせん断壁の水平力に対するじん性確保が非常に重要である。横拘束の無い細長いせん断壁はコンクリートの早期圧縮破壊を起こし、耐震設計基準の変位じん性度要求量を確保出来ないとされている。本研究では、RCせん断壁構造に要求される変位じん性度を確保するために横拘束した試験体を対象に実験を行い、適切に横拘束されたせん断壁の場合、変位じん性度要求量を確保が出来る事を確認した。また理論的考察を通じてRCせん断壁構造に必要な横拘束領域を設定が出来る事、並びにFEM解析を通じてその構造挙動特性を把握した。
著者
鳥居 和之 佐藤 政勝 上田 信二 川村 満紀
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集 (ISSN:13404741)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.889-894, 1995-06-01
参考文献数
7

明治44年に建設された鉄筋コンクリートアーチ橋(石川橋)の解体調査にて得られた主鉄筋、配力鉄筋およびエキスパンドメタルの腐食性状、力学的性質、化学成分および金属組織の特徴を調べた。その結果、主鉄筋の強度規格は現在のSR235に相当するものであるが、鉄筋の伸びは現在のものよりもかなり大きいことが判明した。また、鉄筋の化学成分および金属組織に関しても興味深い知見が得られた。鉄筋の各種分析の結果に基づいて、当時の鉄筋の製造方法や製造地(国産または外国産)、鉄筋の腐食性状との関連性について考察している。
著者
石橋 忠良 大迫 勝彦 深尾 康三
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学 = Concrete journal (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.39-45, 2004-07-01
参考文献数
3
被引用文献数
1

JR東日本では, 列車通過時等の騒音ならびに振動が大きな課題となっている高架下において, 高品質の居住環境を実現できる「吊り免振工法」を (株) 竹中工務店と共同開発した。この吊り免振工法は, 高架橋の柱際に鉄骨造の支柱と梁でフレームを構成し, そのフレームから上下に防振ゴムを備えた吊り材で建物を懸架する構造である。この吊られた建物は, 地震や強風の時にはブランコのように横方向にゆっくりと動き, 建物や高架橋への水平力を大幅に低減することができる。実物大試験体による実験と詳細な解析により, その防振防音効果と地震時に荷重増による高架橋への影響がほとんどないことを確認した。列車による室内での振動は, 列車通過時に日本建築学会の居住性能評価指針による寝室 (住居) として望ましいレベル (V-0.75) を達成でき, 騒音は日本建築学会の遮音性能基準におけるホテル・住宅レベル (3級) として適切な環境を達成した。今回, この工法を採用したホテルを京葉線舞浜駅高架下に建設した。
著者
横関,康祐
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, 1998-06-30

東京都芝給水所は,明治27〜29年に建設された地下式給水所施設であり,底版や煉瓦作りの側壁・隔壁目地材としてコンクリートやモルタルが使用されている。本構造物の解体・新設工事に伴い,我が国でも数少ない100年以上もの長年月を経たセメント系材料の物理的・化学的変質挙動を調査した。その結果,表面から70mm程度はカルシウムに代表されるセメント分の溶出に伴い,水酸化カルシウムやC-S-Hの化学的変質が進行し,表面部には強度低下が確認されたものの,入念な施工がなされていたため40mm以深では,十分な性能を有していることが確認された。.
著者
三輪 幸治 別府 万寿博 大野 友則 片山 雅英
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文集 (ISSN:13477560)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.835-840, 2006

本研究は,剛飛翔体がコンクリート板に高速で衝突した際に生じる局部破壊について,実験および数値解析的に検討を行ったものである。まず実験を行うにあたり,高圧空気式飛翔体発射装置を開発した。この装置を用いて板に対する高速衝突実験を行い,衝突速度や板厚が破壊に及ぼす影響を調べた。次に,実験に対するシミュレーション解析を行い,高速衝突を受ける場合のコンクリート材料のモデル化やひずみ速度効果の影響を検討した。解析と実験結果を比較して,数値シミュレーションの妥当性について検討を行った。
著者
石川 裕次 岡本 晴彦 石井 修 廣重 隆明
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集 (ISSN:13404741)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.1389-1394, 1997-06-01
参考文献数
6

端部S造中央RC造梁について、RC部主筋をU字形定着とし(1)鉄骨フランジ面のスタッドの有無,(2)中央RC造部から端部S造部に移行するSC部におけるせん断補強を変数とした曲げせん断実験を行った結果、以下のことが分かった。Lスタッドの有無により最大耐力が異なる。H.鉄骨フランジ面にスタッドを設けることによってSC部でのてこ反力を低減し、端部S部の材料特性を反映した紡錘形の復元力特性が得られる。
著者
盛岡 実 萩原 宏俊 坂井 悦郎 大門 正機
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集 (ISSN:13404741)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.157-162, 1999-06-01
参考文献数
11
被引用文献数
7

膨張材を混和したセメントペーストの化学収縮は無混和のセメントペーストと比較して大きい。膨張材無混和のペーストは自己収縮を示したが,膨張材を混和したセメントペーストは自己膨張を示した。自己体積変化と化学収縮の差より,水和物によって埋められなかった空隙について検討した。膨張材を混和したセメントペーストは,無混和のペーストと比較して結合水量が大きく,化学収縮も大きい一方で,自己膨張を示したことより,水和物によって埋められなかった空隙の他に,水和物によって創り出された空隙が存在することが明らかとなった。
著者
鈴木 紀雄 井上 貴之 永井 覚 丸太 誠
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集 (ISSN:13404741)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.547-552, 1999-06-01
参考文献数
2
被引用文献数
3

鉄筋コンクリート造柱一フラットスラブ接合部の周囲に配筋されたフープ筋の効果を調べることを目的とした実験を行った。その結果,水平力方向のスラブ筋に巻いたフープ筋は変形能力を向上させること,水平力に直交する方向のスラブ筋に巻いたフープ筋は,ねじり強度と変形能力を増大させることが明らかとなった。
著者
審良 善和 戴 建国 加藤 絵万 横田 弘
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文集 (ISSN:13477560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.631-636, 2008
被引用文献数
1

表面含浸材の港湾RC構造物への適用を目的に,タイプの異なる吸水防止材を小型RC供試体に塗布し,実海水を利用した海水シャワー散布と乾燥の乾湿繰り返しによる屋外暴露試験を実施した。その結果,いずれの吸水防止材も塗布なしのものに比べ補修効果は認められた。ただし,ひび割れの発生時期(塗布の前後)によってひび割れ中への塩化物イオンの浸透性は異なり,吸水防止材の種類によっての防水効果が異なる傾向を示した。また,鉄筋の防食効果も異なることが明らかとなった。以上のことから,吸水防止材を塗布することで構造物の延命化効果は得られるが,その効果は吸水防止材の種類によって異なることが予想された。
著者
前田 安美 馬場 望 西村 泰志
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集 (ISSN:13404741)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.1147-1152, 2000-06-01
参考文献数
2

本研究は,はり貫通形式RCS接合部に関して,鉄骨フランジ上下面に形成される水平圧縮束によってなされる内部パネルから外部パネルへの応力伝達の効果を実験的に検討した。その結果,E-FBPは水平圧縮束を形成させる働きを有し,水平圧縮束に作用する力は鉄骨フランジ上下面に集中的に配置されたせん断補強筋の引張力によって外部パネルに伝達され,その引張力は外部パネルにアーチ機構を形成するのに大きく寄与することが示された。
著者
川上 勝弥 依田 彰彦 横室 隆 吉崎 芳郎
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文集 (ISSN:13477560)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.103-108, 2005
被引用文献数
2

一般廃棄物および下水汚泥に由来する溶融スラグを細骨材または粗骨材としたコンクリートに関する,材齢4年までの性状について考察した。溶融スラグを骨材としたコンクリートは,スランプ,空気量およびブリーディング量が増大する。圧縮強度は,天然骨材を用いたコンクリートと同程度のもの,あるいは低下するものがあるが,材齢の経過に伴う強度発現が溶融スラグ骨材により阻害されることはない。一方,溶融スラグ骨材のアルカリシリカ反応性は,JISに規定されるモルタルバー法および化学法では無害と判定されるが,ある溶融スラグ骨材は長期材齢における潜在的な反応性を示唆した。
著者
高澤 英樹 飯塚 信太郎 関 博
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文集 (ISSN:13477560)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.895-900, 2002

軸引張力と曲げモーメントを受けるRC部材のせん断耐力に関して検討を行った。帯鉄筋なしの供試体12体と帯鉄筋ありの供試体20体についてせん断スパン比,軸引張力,帯鉄筋比,主鉄筋強度をパラメータとして実験を行った。次に,有限要素法による解析を行い,得られた実験結果と照合しその妥当性を確認し,さらにせん断耐力に関するパラメータ解析を実施してせん断耐力式を提案した。
著者
小澤 満津雄 国森 亮平 車戸 克巳 森本 博昭
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集 (ISSN:13404741)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.631-636, 2000-06-01
参考文献数
1
被引用文献数
1

本研究では,近年実施工への使用が増大している高強度コンクリートについて,若材齢時のクリープ試験により(1)載荷時材齢の影響,(2)載荷応力についての線形性,(3)圧縮クリープと引張クリープの相違点について検討した。その結果,(1)圧縮クリープおよび引張クリープとも載荷時材齢が大きくなるとクリープの進行が小さくなる(2)圧縮クリープは,載荷応力比40%以下の範囲で載荷応力についての線形性が認められた。一方,引張クリープは計測値のばらつきが大きく単位クリープに対する載荷応力の影響は確認できなかった(3)本研究の範囲では圧縮および引張クリープの挙動に明確な差異は認められなかった,などの知見が得られた。
著者
佃 有射 加藤 碩 丸屋 剛 山路 徹
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文集 (ISSN:13477560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1119-1124, 2008
被引用文献数
1

ステンレス鋼SUS304,SUS316およびSUS410Lの塩素が関係する腐食発生に関する試験を行った。ステンレス銅はpHが高くなるほど,耐食性が向上することが確認された。また,ステンレス鋼種ではSUS410L<SUS304<SUS316の順に耐食性が向上した。コンクリート中の細孔溶液を模擬した溶液中での試験結果から,腐食発生限界塩化物イオン濃度はSUS316で18.2~21.5kg/m^3と推定された。また,耐食性の比較的小さいSUS410Lでも,コンクリート中での腐食発生限界塩化物イオン濃度は20kg/m^3以上であることが確認され,上記3種類のステンレス銅が高い耐食性を有することが確認できた。