著者
新田 孝行
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.241-265, 2021-09-30

フランスの映画監督・批評家のジャン=クロード・ビエット(1942〜2003)はクラシック音楽の愛好家でもあり,演出家を指揮者,俳優を声という楽器の演奏者と考えていた。長編デビュー作『物質の演劇』(1977)はこの理念の実践である。主人公の2 人の男女はオーケストラの元団員として設定されており,人物としての性格と演じる俳優の演技は,それぞれが演奏を共にした指揮者の音楽的個性を反映する。一方,本作を特徴づける,同じ単語やフレーズが異なって解釈される言葉遊びは,同じ楽譜から様々な演奏解釈が生まれる西洋古典音楽の実践に類比的であり,言葉の演奏と呼ぶことができる。過去に作曲された作品を解釈する演奏という実践は,物語世界に先行する時間をいかに表現するかというビエットの問題意識に解答を与えた。聞き間違いによって同一性から差異が生まれるプロセスを記録するビエットの方法は脱構築的であり,似てはいるが本来異なるものをモンタージュによって同じものに見せてしまうゴダールの方法と,目的は共通するかもしれないが,対比的である。
著者
細江 光
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 = Konan Women's University researches of literature and culture volume (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
no.40, pp.A37-A63, 2004-03-18

Sojin Kamiyama, one of the key figures in the creation of the modern Japanese theatre, was a friend of Junichiro Tanizaki throughout his lifetime. He is also known as one of the few Japanese actors who performed in Hollywood silent films in the 1920s. However, his life has not been sufficiently studied ; his fellowship with Junichiro Tanizaki has not been fully investigated either. This paper presents his personal history based on various data, information and interviews with members of his family.
著者
中野 育男
出版者
専修大学学会
雑誌
専修商学論集 (ISSN:03865819)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.109-118, 2020-01-20
著者
手嶋 大侑
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.38-58, 2015-03-30

「三宮」は通常、太皇太后・皇太后・皇后の総称とされているが、史料を見ると、太皇太后・皇太后・皇后を指していない事例に多く出会う。この問題を解くために、各時代の史料を検討した結果、「三宮」の語は時代によって概念が変化していたことがわかった。すなわち、藤原威子の立后以前においては「三宮」は「三つの宮」の意で使用されており、「宮」と称されるものは「三宮」に含まれることがあった。そして、威子の立后以降、「三宮」は徐々に「三后」と同意語であるとの認識が浸透していき、十五世紀には完全に定着した。また、「三宮」概念に関連して、「准后」と「准三宮」も考察し、封千戸を与えることは「准后」に付随し、年官年爵は「准三宮」に付随することも指摘した。
著者
八木 智生 Tomoki Yagi
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 = Doshisha Kokubungaku (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.93, pp.49-60, 2020-12-20

壬生寺所蔵の縁起絵巻である、「壬生地蔵縁起絵巻」の第一巻第一話・第一巻第二話について、翻刻と注釈を行った。解題では、現状や錯簡などについて報告し、絵巻付属の極証文について再検討を加えるとともに、成立年代を論じた。

8 0 0 0 OA 極地研NEWS 187

出版者
国立極地研究所
雑誌
極地研NEWS (ISSN:13476483)
巻号頁・発行日
no.187, pp.1-16, 2008-09
著者
鈴木 浩孝 スズキ ヒロタカ
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.19, pp.37-42, 2019-03-31

本稿の目的は,ミクロ経済学の消費者行動理論を用いてプレミアム付商品券政策の仕組みを明らかにすることである.1人当たりのプレミアム付商品券の購入可能金額を所与とする場合,あるパラメーター領域ではプレミアム分と同額の現金支給時よりも対象財の購入量を増やす効果は大きくなる.プレミアム率の設定はこの領域の操作に相当する.さらに使途の制約は対象財の区分を通じたパラメーター値の分布の間接的な操作に相当すると考えられる.他方,1人当たりのプレミアム付商品券の購入金額を内生的に扱う場合には,すべての個人が自身の効用関数に適した購入金額を選択することから,パラメーターの全域においてプレミアム分と同額の現金支給時よりも効果が大きくなる.
著者
森 真誠 深井 貴明 山本 啓二 広渕 崇宏 朝香 卓也
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2022-OS-157, no.7, pp.1-8, 2022-09-06

近年,爆発的に増加するデータを処理するために,多くのソフトウェアが利用されている.これらを共用 HPC システム上で利用する需要はあるものの,現在の共用 HPC システムはユーザが管理者権限を使用 (以後,root 化) できず,これらソフトウェアの導入に多くの労力を要する.また,システムレベルの最適化も root 化ができないため共用 HPC 環境では困難である.一方で共用 HPC 環境で単に root 化を許可すると,ハードウェアへの恒久的な変更などセキュリティや運用上で問題ある操作を防げない.また,ユーザのジョブがシステムの設定を変更できるため,ジョブの実行毎に設定変更の影響を取り除くためのマシン再起動が必要となるものの,再起動処理には多くの時間を要する.仮想計算機を用いるとこれらを解決できるものの,仮想化処理による性能劣化があり HPC システムには適さない.本研究では,上記課題を解決しユーザの root 化を可能とするシステムを提案する.提案システムは軽量なハイパバイザによって (1) ハードウェアの恒久的な変更を防ぐ機能と (2) ジョブ実行後マシンの再起動なしにシステムを既定の状態へ戻す機能を提供する.本手法を富岳と同系統システムで評価するため,Arm プロセッサで動作する軽量ハイパバイザ MilvusVisor と上記 2 つの機能を設計および実装した.本実装による実験の結果,メモリ性能における性能劣化について 2% 以下で上記機能を実現できることを確認した.
著者
谷 謙二
出版者
埼玉大学教育学部地理学研究室
雑誌
埼玉大学教育学部地理学研究報告 = Occasional paper of Department of Geography, Saitama University (ISSN:09132724)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-26, 2004

This paper analyzes the expansion of Tokyo's commuting zone for the duration encompassing the Second World War and ending during the post-war reconstruction period. This paper will also debate the institutional factors that influenced this expansion. Previous research into the growth of metropolitan Tokyo has focused either on the period following the rapid economic growth of the 1960s, or has focused on the changes that occurred between World War One and World War Two. However, the sheer number of commuting workers increased dramatically between 1930 and 1955. By 1955, the suburbs where over 10% of workers plied their trade in Tokyo, stretched out in a 50 km radius from the capital...