著者
金井Pak 雅子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.431, 2020-05-25

ヘルスケアにかかわるすべての人にお勧めしたい 本書を開いて最初に目を引くのは、第1章として「医療は誰のものか」で始まることである。“まずヒポクラテスから始まる”というイメージがある一般的な医学・医療概論とは違うという印象をもった。そこでは、人道主義、患者の権利、倫理などに続いて、「人の気持ちを慮ることの大切さ」について著者らのユニークかつ重みのある体験が語られている。たとえば、産婦人科医である著者の1人(男性)が、若いときに患者の気持ちになってみようと、分娩台に上がってみた(下着をつけずに!)という記述がある。このように、医療職にとって最も大事なものはなにかを理解するための哲学的な問いが、頭でだけ考えたものではない描写で随所にあらわれている。同様に、第2章は「健康とは何だろうか」をテーマに、well-being について身体的・社会的・精神的な視点から、地に足の着いた解説がされている。 第3章は、医療の誕生から現在そして未来への展望が、最先端の医療技術の課題などについて「全人的医療」をキーワードに解説されている。環境汚染による健康被害(水俣病、四日市喘息など)の歴史は、医療者としてしっかりと認識しておくべき課題であるが、その記述も充実している。さらに近代社会における人類最大の健康課題とされてきた感染症対策として、ペストやコレラそして天然痘、結核についてその発生から終息に至る経緯がわかりやすくまとめられ、エイズ(薬害エイズ問題を含む)や重症急性呼吸器症候群(SARS)に関しては、グローバル感染症として国際協調体制の構築が強調されている。この書評を書いている今、新型コロナウイルスによる感染がパンデミックとなり、日本でも感染者が出てさまざまなイベントが中止となっている。「見えない敵」との闘いは、人々を不安に陥れるのみならず、生活の基盤である経済に大打撃を与える。感染症対策の国際的強化のみならず、社会や経済への影響を最小限にする努力が求められていることを、学んでおく必要がある。
著者
大島 弓子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.378-382, 2020-05-25

2020年5月12日にナイチンゲール生誕200年を迎える。この機に、看護職がもつパワーを最大限に発揮し人々の健康の向上に役立たせようという趣旨の「Nursing nowキャンペーン」がなされている。これは、イギリスの議員連盟、世界保健機関(WHO)、国際看護師協会(ICN)などが中心となり広まっている、世界的なキャンペーンである。 私は日本におけるキャンペーンの実行委員を務めており、この活動を通じ、あらためてナイチンゲールのことを考える機会を得た。そして同時に、今回を私自身の歩み続けてきた道を振り返る機会としたいと思っている。本稿ではそれらをふまえつつ、看護をめざす人、歩んでいる人の糧になることを期待して、あらためて看護の魅力とそれを動かすエネルギーについて、ここにあげてみたい。
著者
定永 恒明 定永 史予 八尾 博史
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.921, 2001-08-15

Torsades de pointesとはQRS波が螺旋状に極性を次々と変えていく多形性心室頻拍である。通常数拍〜十数拍続いて自然停止するが,時として心室細動へと移行し突然死を来すこともある危険な不整脈である。心電図ではQT延長を伴って出現することが多い。その原因として遺伝性QT延長症候群以外には薬剤の副作用が多い。薬剤では抗不整脈薬の副作用による場合が最も多いが,抗生物質,抗真菌薬,向精神薬でも出現することがある。向精神薬(特に抗精神病薬,抗うつ薬)には抗不整脈薬であるキニジン様の薬理作用を有することが多く,心電図上QT延長を来すことが少なくなく,精神科領域での突然死にはQT延長を背景とした不整脈によるものが多いといわれている。通常,心拍数で補正したQTc値で440msec以上をQT延長と診断している。 国立肥前療養所の向精神薬内服患者(平均クロルプロマジン換算量1,000mg/日)350人による検討では,約50%の患者のQTcが440msec以上であり,さらに5%の患者ではQTcは500msec以上であった。この検討では専門医がQT時間を測定したが,通常の心電図の自動解析によるQT時間測定にはかなりの誤差がみられることが多いので注意が必要である。
著者
中尾 武久 二宮 英彰 藤原 正博 池田 暉親
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.935-939, 1981-09-15

抄録 逆さ眼鏡を使用した場合,逆転してみえる外界への適応の過程,すなわち,知覚的,行動的適応の機序をより詳細に検索するために,4人の被検者を用いて各種実験を行なった。 まず適応の過程についてみると,実験第1日では視野の動揺が著明で,外界はゆれ,現実性(reality)を失ない,書字・文字の判読は不能である。また自分の目的とする行動をなしとげるまでの時間が長く,拙劣であった。しかし,これらは実験日を追うごとにほぼ回復し,実験最終日には普段に行なっている行動はほぼ支障なくでき,自転車にのる程度までに回復した。また,視野の動揺による不快感,外界の異和感などは経時的に減少するのに対し,逆さ眼鏡を除去して歩行した場合にみられる船酔に似た眩暈感は次第に増強する傾向を示した。以上の所見の外に,眼球運動の経時的変動の所見をあわせ,適応の過程の神経生理学的意義について考察を加えた。
著者
中川 良尚
出版者
日本言語聴覚士協会
巻号頁・発行日
pp.19-28, 2020-03-15

失語症状の長期経過を明らかにする研究の一環として,右手利き左大脳半球一側損傷後に失語症を呈した270例の病巣別回復経過と,その中で言語機能に低下を示した37症例のSLTA総合評価法得点各因子の機能変遷の既報告を俯瞰した.次に,2年以上適切な言語訓練を行った失語症121例について,SLTA総合評価法得点に影響を及ぼす要因を調査した.その結果,1)失語症状の回復は損傷部位や発症年齢によって経過は大きく異なるが,少なくとも6か月以上の長期にわたって回復を認める症例が多いこと,2)言語訓練後に回復を示した機能は脆弱である可能性が高いこと,3)発症年齢,Wernicke領野を含む上側頭回の病変の有無,発症3か月時SLTA総合評価法得点などが予後に重要な因子であること,が示唆された. 以上のことから,失語症の訓練においては,1)長期にわたって変化しうる失語症状そのものに着目する必要があること,2)病院外来における訓練実施が望ましいこと,が考えられた.
著者
松田 直之
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.71-75, 2020-04-10

麻酔,集中治療,救急医療のプロフェッショナルにおいて,患者の利益が高くなるように最善の医療を提供するための工夫は多様である。医の最善を工夫する際に,その立ち位置が変わると視野も変わる。正の方向,あるいは未来方向からとらえる視点と視野,一方で,負の方向,あるいは過去から現在をとらえる視点と視野がある。また,良いものを与えようとする工夫の一方で,悪いものを与えないように工夫しようとする姿勢もある。こうした姿勢が,私たちの潜在意識の中で癖となってしまっているとき,私たちは自由な拡大性や包容性をなくし,討議する機会を失い,恐れや憎しみが蔓延する。 自身が絶えず成長するためには,常に自身の癖を理性的に自省し,自身をその癖から開放しようとする心が大切である。プロフェッショナルとしては,未来方向から現在をみて,最高の利益を現在に与えられるようにプログラムする「成功予測のプロ」,過去方向から現在をみて,不利益を未然に防ぐようにプログラムする「失敗予測のプロ」,このどちらの考えも取り込めるとよいのかもしれない。そんな中,時にプロフェッショナルは,提供した最善の工夫により社会の中で弾圧されることがある。 今夜は,皆さんが仕事の過程で傷つけられたり,悩んだりしたときの自省について考える。私たちがプロフェッショナルとして必要と感じるものは,社会にも必要なことである。抵抗にあってもあきらめずに伝え続けることは,プロフェッショナルに必要なことである。発信する私たちは,一方で反応する私たちでもあり,生じた事象に対する洞察や思索を繰り返し,アサーティブ・コミュニケーションを通して自身や社会を成長させることが大切である。
著者
大坪 英則 鈴木 大輔 神谷 智昭 鈴木 智之 山下 敏彦 史野 根生
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1481-1488, 2018-11-01

要旨:近年,膝前十字靱帯(ACL)再建術では,形態的にも機能的にも正常靱帯に近い靱帯を再建するために,正常靱帯付着部に骨孔を作成し自家腱を移植固定する解剖学的再建術が行われている。われわれは,新鮮屍体膝を用いた解剖学的研究を行い,ヒト正常ACLは,前内側線維束(AM束)と後外側線維束(PL束)の2線維束に分けられ,さらにAM束は内側部分(AM-M束)と外側部分(AM-L束)に分けられ,3線維束を構成することを明らかにした。さらに,線維束の配列と断面積計測,付着部位置および面積計測,MRIによる生体内画像解析,透過型電子顕微鏡(TEM)によるコラーゲン線維の微細構造についての詳細な検討を行い,ACL 3線維束の解剖学的な特徴を明らかにした。これの結果は,各線維束が力学的に異なる役割を担っていることを示しており,靱帯再建術式の決定や移植腱の選択においては,これらの線維束構造の機能解剖学的特徴を十分に考慮すべきである。
著者
平尾 滋章 山本 良平 西野 豊和 加藤 兼房 佐々 寛巳 水口 一衛 川口 克廣 早川 哲夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.671-674, 1992-06-15

免疫測定法において血清干渉因子による非特異的干渉作用を除去するには,測定系にゼラチンを添加することが有効である.しかし,ゼラチンの添加によりかえってバックグラウンドの上昇等が認められる場合がある.そこでケラチンを添加した緩衝液を作製し,その効果について検討した.ケラチンは,非特異的干渉作用を抑制し,かつゼラチンに見られるようなバックグラウンドの上昇を示さなかった.
著者
中川 聡
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.105-111, 2015-01-01

2013年の初めに,OSCILLATE*1 trial1)とOSCAR*2 study2)という2つの大規模多施設共同研究の結果がNew England Journal of Medicine誌に発表された。いずれの研究も,成人の急性呼吸窮迫症候群 acute respiratory distress syndrome(ARDS)において,高頻度振動換気法high-frequency oscillation(HFO)と通常の人工呼吸法を比較したものである。その結果は,HFOは,通常の人工呼吸以上の効果はないどころか,OSCILLATE trialではかえって死亡率を増加させる,と報告された。はたして,これらの臨床研究は,HFOを正当に評価する研究だったのだろうか。Summary●成人のARDS患者に対して,OSCILLATE trialとOSCAR studyの2つの大規模研究では,HFOは通常の人工呼吸以上の効果はないと発表された。しかし,これらの研究では,プロトコルと患者選択に問題があった可能性が指摘されている。●ARDSの肺病変は均一ではなく,異なる病態に合ったHFO戦略を構築すれば,HFOが有効に作用する可能性がある。●現在,日本呼吸療法医学会のワーキンググループが,日本版成人用HFOプロトコルを作成中である。
著者
白井 正夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.86-87, 2019-01-10

JR横浜駅西口の繁華街。まだ明るい時刻なのに,会場のホテルがどうにも見当たらない。歩き回ったあげく,通りのコンビニエンスストアに飛び込んだ。手のすいた男の店員さんがいたので,「すみませんが…」と道を尋ねたら,アジア系の若者だった。 若者は困った老人に親切だった。自分のスマホでホテルを探し出し,画面を見せながら流ちょうな日本語で説明してくれたが,地図が英語版なのでよく分からない。
著者
橋爪 祐二 内村 直尚
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.732-738, 2015-08-15

はじめに 日本人の体型,特に中高年以上の男性は年々体重増加の傾向がある.肥満が増加するとともに,閉塞性睡眠時無呼吸症の罹患頻度も高くなってきている.現在わが国には睡眠時無呼吸症の患者は250万〜300万人はいるといわれている.さらにわが国の睡眠時無呼吸症の特徴的なことは中年以降の男性に多いことである.米国では,睡眠時無呼吸症の頻度は男性4%,女性2%といわれているが,睡眠中に呼吸が止まる頻度は男性で24%,女性で9%と高率に認められる1).ところで,現在の日本人の65歳以上の高齢者の人口は2015年(平成27年3月20日)現在,約3,300万人であり,日本の人口の約29.1%を占めている.高齢者になるほど慢性の不眠症が増加し,睡眠薬の処方箋数も増加する.米国では65歳以上の高齢者のうち無呼吸・低換気指数(AHI)15以上が約20%あったと報告されている2).また,不眠症をもつ高齢者で約29%から61%は睡眠時無呼吸症を訴えているといわれている3). 閉塞性無呼吸症候群(以下OSAS)は,睡眠中の上気道の閉塞によって無呼吸や低換気が起き,睡眠中の頻回の覚醒反応と酸化ヘモグロビンの不飽和による低酸素血症が引き起こされる.さらに頻回の覚醒反応に伴う睡眠の質や量の低下によって,OSASには昼間の眠気のみならず,認知機能障害や抑うつ症状などの精神症状を合併することが多く,熟眠感の欠如や中途覚醒の増加や夜間頻尿に伴う睡眠の分断などの不眠の症状も多くみられる.われわれの睡眠障害クリニックでは無呼吸・低換気指数が25以上のうち不眠を訴える者が6.0%いた.無呼吸症の患者は不眠の原因が無呼吸によるものである自覚が乏しいことが多く,不眠に対して飲酒をしたり,OCDの睡眠薬を飲んだり,かかりつけの医師から睡眠薬を処方してもらうケースも少なくない.飲酒や長期間のベンゾジアゼピン系の睡眠薬の服用は無呼吸症の症状をさらに悪化させるといわれている.
著者
山岸由佳 三鴨廣繁
出版者
医薬ジャーナル社
巻号頁・発行日
pp.103-108, 2017-09-25

GeneXpert法は項目ごとに設計された専用試薬のXpertカートリッジとともに使用され,核酸抽出,PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)増幅,検出を統合した自動遺伝子解析システムで,技術者の訓練レベルにかかわらず,数分の簡便な用手法操作後,全自動で正確な結果を迅速に供することが可能である。現在,Xpert MTB/RIF「セフィエド」が保険適応を有し,Xpert C. difficile「セフィエド」が承認を得ている。
著者
新井 豊美
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.446, 1988-06-25

山本沖子は、詩人三好達治に見出された人である。日本海に向けて開かれた港町、福井県の小浜に生まれ育った沖子と達治の交流は、独学で手さぐりしながら詩を書きはじめていた沖子が、昭和十九年に同県三国町に疎開して来た達治の存在を知り、書きためていた詩稿を送って教えを願ったことに始まっている。一読して詩人はこの見知らぬ娘の秀れた才能を認め、以後、沖子は三好達治の門下で詩を学ぶことになる。 詩集『花の木の椅子』は昭和三十二年に師の序文をもらい、推されて大阪創元社から出版されたが、初版三千部がたちまち売り切れ、戦後間もない荒廃した社会で多くの読者の心を魅了した。当時、それはおどろくべきことだったと云う。なかに次のような詩もある。
著者
馬杉 綾子 生坂 政臣 池原 泰彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
2001-07-15

症例:91歳,男性.床屋で髭を剃ってもらっていたところ,突然意識を失ったため救急車で来院.同伴者の話から意識消失時間は数分と推定され,また四肢のけいれんはみられていない.既往歴,家族歴に特記事項なし.来院時,意識は清明,血圧131/80mmHg,脈拍61回/分・整,体温35.1℃.身体診察では,頸動脈にbruitは聴取せず,胸腹部,四肢,神経学的所見に異常所見を認めない.来院時の心電図を示す(図1).
著者
岡田 尊司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.174-177, 2019-02-15

少し前までは,「性格で悩んでいる」という人が多かった。今でも,境界性,自己愛性,回避性など,自分やパートナーがパーソナリティ障害ではないかと来院するケースは少なくないが,それ以上に増えているのは,自分が発達障害ではないかとか,愛着障害ではないかと相談にやってくるケースだ。 そもそもパーソナリティなるものが存在するかや,人格の否定と誤解されかねない「パーソナリティ障害」という用語が適切かという議論は,ここでは措くとしても,パーソナリティという複雑な統合体を相手にするよりも,そのベースにある発達(遺伝要因など生得的要因の強い特性)や愛着(養育など心理社会的要因の強い特性)からアプローチしたほうが,問題が明確になる場合もあるだろう。ただ,部分の合計が全体とは限らず,たとえば自己愛性パーソナリティ障害のように,パーソナリティというレベルで問題を理解することが有効な場合もある。パーソナリティ障害とされるものの多くは,発達や愛着の課題も抱えているが,どちらか一つの観点では,剰余が多すぎるということになる。
著者
平山 惠造
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.824, 1985-08-01

◆患者に頬をふくらまさせて顔面筋の麻痺の有無をみることがある。顔面神経の比較的軽い場合の診察法の一つにあげられている。しかし頬をふくらまさせるのは顔面筋の麻痺をみているだけであろうか。 ◆頬をふくらませるには,口輪筋で強く口を閉じる必要がある。片側の顔面神経(口輪筋)の麻痺でも空気がもれて頬はうまくふくらまない。更に,も一つ閉ざさなくてはならないのは鼻咽頭で,これには軟口蓋が挙上してその上壁との間を閉じる必要がある。軟口蓋麻痺のある患者は頬をふくらますことができない。この場合には指で鼻をつまみ,界孔を閉じてやると頬をふくらますことができる。つまり,頬をふくらますには空気の出口を全て閉ざすために,口唇を強く閉じ,軟口蓋が鼻咽頭を塞ぐ必要がある。
著者
神蔵 嘉子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.56, 1967-05-10

あれは昭和25年2月ごろだったろうか。川崎市中央保健所からの依頼で,神奈川県看護指導所に勤務していた私が,保健婦研究会に参加したことがあった。当時の保健所は,現在の市役所地下食堂の位置にあり,非常にせまく,来訪者によって混雑をきわめていた。「神蔵さん,あなたは保健婦に何が1番必要だと思いますか。」 かんたんな挨拶のあと,小宮山所長さんからの突然の質問に,私はちょっととまどってしまった。が,その当時は,戦後の混乱の時期を通りすぎていて,看護新制度切りかえのための諸問題のなかで,保健婦が新しい時代を迎えようとしているときであり,教育が必要であると私自身考えていたので,
著者
八木 貴博 松田 圭二 橋口 陽二郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.746-748, 2019-06-20

【ポイント】◆肛門異物の多くは性的嗜好によるものである.羞恥心があるため自身での申告や経緯は曖昧なことが多く,挿入異物の種類,サイズは多岐にわたる.◆X線やCTなどの画像検査で穿孔の有無,異物のサイズ,局在を確認する.穿孔があれば緊急での開腹手術となる.◆穿孔が確認されなければ用指的,内視鏡的除去を試みる.除去困難であれば麻酔下に除去を試みる.開腹手術による除去が必要となる可能性もある.
著者
官澤 洋平 石丸 直人
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.1064-1071, 2018-12-01

1.Endovascular ultrasound renal denervation to treat hypertension(RADIANCE-HTN SOLO):a multicentre, international, single-blind, randomised, sham-controlled trial. Lancet 2018;391:2335-45. PMID:29803590[研究デザイン]多施設多国籍一重盲検無作為化sham対照試験[背景・目的]ラジオ波腎神経焼灼術は,中等症の高血圧患者への血圧降下作用が知られている。代替療法の血管内超音波腎神経焼灼術が,高血圧患者で降圧薬なしの場合に,外来血圧の降下作用があるかどうか検証する。[対象]米国の21施設,欧州の18施設を受診した,次の2つの定義を満たす18〜75歳の高血圧患者:①2剤までの降圧薬を中止してから4週間後の外来血圧が135/85mmHg以上,170/105mmHg未満,②腎血管に解剖学的異常なし[介入・方法]治療群〔Paradiseシステム(ReCor Medical)を用いた腎神経焼灼術を施行〕と腎血管造影のみのsham群へ1:1に無作為に割り付けた(隠蔽化あり,患者-研究者-アウトカム評価者盲検)。[プライマリアウトカム]ベースラインから2か月後における日中の外来収縮期血圧の平均変化(ITT解析)
著者
岩田 敏
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.7-8, 2009-01-15

Virusはラテン語で「毒」を意味する言葉である.医療倫理の根幹を成す患者の生命・健康保護の思想,患者のプライバシー保護,専門家としての尊厳の保持などを謳った「ヒポクラテスの誓い」で有名なヒポクラテスは,病気を引き起こす「毒」という意味でこの言葉を使ったとされている.日本では最初,日本細菌学会によって「病毒」と呼ばれていたが,1953年に日本ウイルス学会が設立され,本来のラテン語発音に近い「ウイルス」という表記が採用された.感染症の発症に細菌以外の病原体が関与していることを最初に示したのはロシアのディミトリ・イワノフスキーで,彼は1892年にタバコモザイク病の病原が細菌濾過器を通過しても感染性を失わないことを発見し,それが細菌よりも微小な,顕微鏡では観察できない存在であることを示した.その後1935年にアメリカのウェンデル・スタンレーがこのタバコモザイク病の病原であるタバコモザイクウイルスの結晶化に成功し,この結晶が感染能を持っていることを示した.こうした発見や研究に端を発し,ウイルスに関する様々な研究が進められてきた訳である. ウイルスは,他の生物の細胞を利用して,自己を複製させることのできる微小な構造体で,蛋白質の殻とその内部に詰め込まれた核酸から成っており,細胞をもたないことから,生物学上は非細胞性生物または非生物として位置づけられている.ウイルスは持っている核酸の違いから,大きくDNAウイルスとRNAウイルスに分けられる.ウイルスはそれ自身単独では増殖できず,他の生物の細胞内に感染して初めて増殖可能となる.また,他の生物の細胞が2分裂によって対数的に数を増やすのに対し(対数増殖),ウイルスは1つの粒子が感染した宿主細胞内で一気に数を増やして放出される(一段階増殖).ウイルスの増殖は通常,ウイルスの細胞表面への吸着→細胞内への侵入→脱殻(だっかく)→部品の合成→部品の集合→感染細胞からの放出,というようなステップで行われる.ウイルスの細胞表面への吸着は細胞表面のレセプターを介して行われ,インフルエンザウイルスが気道上皮に高い親和性を持つのは,気道上皮細胞のシアル酸糖鎖がインフルエンザウイルスのレセプターとなっているからである.