著者
大澤 隆幸
出版者
静岡県立大学国際関係学部
雑誌
国際関係・比較文化研究 (ISSN:13481231)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.69-86, 2005-09-01

ハーンは『怪談』序で、「雪女」に取りかかるきっかけを「武蔵国西多摩郡調布のある農民が、生まれ故郷の村の伝説として私に語ってくれたもの」と記した。序は作品の一部であるので、フィクションの可能性がないとは言えない。しかし、ハーンに三男の清が生まれて、1900年9月頃「府下調布在の農家の娘」お花(一雄189)が子守として来て、また「大久保に普請をするに当り」(同190)お花の父宗八が雇われた(大久保への転居は1902年3月)。このような経緯や『八雲』第14号の小泉時氏の論考「青梅と雪女」から見て、宗八がハーンに原語を語った可能性はあるだろう。チェンバレン宛の手紙や「幽霊と化げ物 Of Ghosts and Goblins」から、彼には雪女について松江時代から相当の知識があったことが知られる。そこに大久保転居後に刺激が加わり、「雪女」が成立したのではないかと筆者は推測する。本稿は、この作品がハーンが日本文化と対話して生まれたものであることを論じる。
著者
渡邉 俊彦
出版者
拓殖大学海外事情研究所附属台湾研究センター
雑誌
拓殖大学台湾研究 = Journal of Taiwan studies, Takushoku University (ISSN:24328219)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.55-81, 2019-03-08

本稿は,中華民国教育部 の「国字標準字体教師手冊」で解説される標準字体の通則と,フォント「Arial Unicode MS」の繁体字グリフ(字形),この二者の対応性についてまとめることを目的とする。Arial Unicode MS が持つ繁体字専用グリフは,繁体字専用にデザインされてはいるが,その字形は教育部の標準字体に準じたものではない。これは,現行のMicrosoft Windows に標準搭載された繁体字フォントの全てが原則標準字体に準じたものとなった台湾の現状からすると,Arial Unicode MS はコンピュータに標準搭載の繁体字フォントにおいて少数派となる「非標準字体」を表示可能とする存在となった。1998 年に登場したArial Unicode MS は,かつて文書処理ソフトMicrosoft Word の機能的制約から,繁体字グリフを使うことができず,台湾の文章処理で利用されることは限定的であった。そのため該当フォントが繁体字フォントの一種として考察の対象となることもやはり稀であった。そこで本稿はArial Unicode MS に着目することがフォントの標準字体化が進む台湾において,標準化前の繁体字の様相を知る手がかりとなり得ると考え,これを動機とした。分析の結果,標準字体の通則とArial Unicode MS の対応性は,同じ通則の中でも,対応している文字と,対応していない文字が混在している点,および通則を基準にArial Unicode MS の繁体字グリフを見た場合,通則で挙げられた例字が仮に標準字体だとしても,規則を同じとする他の文字・偏・旁のすべてが一概に同じく標準字体であるとは限らないことを指摘した。
著者
坂村 美奈 米澤 拓郎 伊藤 友隆 中澤 仁 徳田 英幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.2162-2174, 2016-10-15

市民参加型まちづくり(Participatory planning)とは,まちづくりの過程に市民を巻き込むことであり,実際の都市の中で起こっている問題を素早く発見,解決できる可能性が高い.市民参加型まちづくりを促進するためには市の職員と市民の間での日常的なコミュニケーションを活性化することが重要である.本研究の目的は,人々が日常的に持つモバイル端末やPC端末を通して情報をやりとりする参加型センシングを市民参加型まちづくりにも適用することである.既存の参加型センシングの例では,質問の内容カテゴリが限定的なものや,市民の意見収集,意見交換を行うための特定のアプリケーションのインストールが必要であるものが存在する.また,市民から提供された情報はプライバシ情報を除いたオープンな情報であることやシステムの操作が容易であることが望ましい.本研究ではこれらの課題を解決し,市民参加型まちづくりのための参加型センシングシステム,MinaQnを提案する.本研究ではMinaQnを2週間にわたって3都市(藤沢市・茅ヶ崎市・寒川町)の公式ホームページに組み込み,市の職員および市民に利用してもらう実証実験を行った.全体として1,000個以上の回答データと市の職員および市民からのフィードバックを得ることで,定性的および定量的な評価を行い,将来異なる地域や多くの市民に持続的に参加してもらうためにはどうすればよいか,これからの参加型センシングシステムのデザイン指針を示した.特に災害時において今後より多くの市民に位置情報を提供してもらうためには,質問の意図説明やプッシュ通知など市からの積極性が必要なことや,市の職員が実際に自由な質問設定をするために自治体の中あるいは市全体で議論し質問内容の枠組みを増やしていけるような取り組みや制度の策定が必要なことが分かった.
著者
遠藤 匡俊
出版者
岩手大学教育学部
雑誌
岩手大学教育学部研究年報 (ISSN:03677370)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.175-184, 2003-02-01
著者
坂本 崇 梶川 嘉延 野村 康雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.1901-1909, 1999-04-15

本論文では 非線形判別分析を用いて 計算機に与えた楽譜情報からその曲の特徴や印象を自動的に抽出し 任意のグループに分割する手法を提案する. 特定の演奏者による演奏の個性や芸術性を抽出する際 情報処理的な観点からのアプローチを行うとして 演奏者がどのように楽譜を解釈し 演奏に至るかという命題の解決策は (1)楽譜に記述されている情報や音楽理論を考慮したプロダクションシステムによるルール生成法 (2)ニューラルネットワークを用いた解法 (3)重回帰分析を用いた解法などが報告されている. これらの一問題点として 演奏者は楽曲の特徴や印象に応じて奏法を変える事実が存在するにもかかわらず 処理を行ううえで明示的に考慮されたものが存在しないことがあげられる. 本論文ではその問題点を解決すべく まず 因子分析やSD法を用い 実際のリスナーの立場に立った心理聴取実験を行う. そして ニューラルネットワークによる非線形判別分析を用い その楽曲はどのような印象を持つかをコンピュータが自動的に判別し その印象にふさわしいグループに振り分ける手法を提案する. なお このシステムでは未知の楽曲においても88%の精度でその曲印象を判別させることに成功した.
著者
大村 哲弥
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.45-90, 2006-03-31

ギリシャ以来の大問題である音楽現象は、名曲・名演奏の仕組みを解明するという究極の大問題へ向かって、今日の音楽心理学、音響心理学等に引き継がれて取り組まれてきた。特に音楽心理学では1956年のL.B.Meyerの歴史的論文Emotion and Meaning in Musicに端を発してアメリカを中心に著しい研究成果を挙げてきた。が、それでも究極の大問題にはたどり着いていない。名曲の仕組みと音楽現象の解明とを結びつけることが論文の目的である。全体は考察と楽曲分析から成り立つが、理論編前半を「その1」、分析編を「その2」として、既に発表している。この「その3」は、未完成だった理論編の後半部分に位置し、認知と情動から音楽を考察する。それは生成音楽論への挑戦でもある。
著者
滝澤 修 松本 勉 中川 裕志 村瀬 一郎 牧野 京子
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.1977-1979, 2004-08-15

プライバシ保護などに利用できるステガノグラフィ(秘匿通信)は,情報の埋め込み媒体が持つ情報の冗長性を利用するため,画像や音響信号など冗長度の高い媒体について多く提案されてきた.本論文では,ディジタルドキュメントを埋め込み媒体とし,文書内に挿入された改行コードの位置を秘匿情報とするテキストステガノグラフィを提案する.提案手法はドキュメントのレイアウト情報を利用しないため,電子メールのようなプレーンテキストに対しても秘匿情報の埋め込みが可能で,文字通信においてプライバシを保つ手段として利用できる.
著者
深見 純生
出版者
桃山学院大学
雑誌
桃山学院大学人間科学 = Human sciences review, St. Andrew's University (ISSN:09170227)
巻号頁・発行日
no.44, pp.273-295, 2013-03-29

This is a biographical sketchi of Li Ye-si (a scholar with pseudonym Li Gao-tang in Zhe-jiang Yinxian1622-1680) : A chronological description of Li Ye-si's life-time history, his works and several movements of the related persons with him.
著者
宇野 伸浩 ウノ ノブヒロ Nobuhiro UNO
雑誌
人間環境学研究
巻号頁・発行日
vol.11, pp.153-165, 2013-02-28
著者
石田 晴久
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, 1978-06-15
著者
石川淑 田中飛鳥 宮崎敏明
雑誌
第74回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.159-160, 2012-03-06

Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)は最も有名なシーケンスアライメントツールの一つである。シーケンスアライメントとはタンパク質(またはDNA)データベースから検索対象となるタンパク質(またはDNA)配列を列挙することであり、配列同士の類似部分検索のために使用される。シーケンスアライメントは、生物学上の進化や遺伝子系図を調べる上で重要であることから、バイオインフォマティクス分野では欠かせない情報である。BLASTは、seeding(ステップ1)、ungapped extension(ステップ2)、gapped extension(ステップ3)という3つの処理ステップからなる。ステップ3のgapped extensionではSmith-Waterman アルゴリズムというDP(Dynamic Programming)が使用されており、従来ハードウェアによる多くの高速化手法が提案されている。しかし、BLAST全体をハードウェア化することは行われていない。本稿では、BLASTの高速処理を目指してアルゴリズム全体のハードウェア化を検討したので報告する。