著者
岩下 直行
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.441-456, 2019-07-15

本稿では,ビットコインを始めとする暗号資産(仮想通貨)が社会へ展開していく中で,その情報セキュリティへの脅威と対策を概観することで,情報セキュリティ技術の観点から,今後,ブロックチェーン技術が社会から受容されるための条件について考える.サトシ・ナカモトによるビットコインの提案と実装を契機として,暗号資産は一世を風靡したが,現在は相場も下落し,安全性に対する信頼も損なわれた状態にある.個人のプライバシを守るための匿名の決済手段として提案されながら,当初の構想を逸脱してしまったのは,一般の投資家が秘密鍵を管理できないという現実に対応するためであった.その結果,交換業者がサイバー攻撃の犠牲となり,安全性が損なわれる事態を来した.今後,ブロックチェーン技術が社会に受け入れられていくためには,暗号資産が辿った歴史を踏まえて,利用者サイドにおける秘密鍵管理を含めた情報セキュリティ対策の底辺をしっかり固めていく必要があると考えられる.
著者
欅 惇志
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.778-779, 2019-07-15

本稿では,著者の大好きな作品である山田胡瓜先生の「AIの遺電子」を紹介する.物語の舞台は,AIやヒューマノイド(外見や思考において人間を模倣したロボットであり,人間と同等の権利を持つ)関連技術が高度に発達して社会に溶け込んでいる近未来である.本記事の前半では,作品の魅力や,物語の中でAIがどのように運用され,どのように捉えられているのかについて紹介します.本記事の後半では,人間らしいロボット・心を持つロボットを実現する上での課題と現在の技術について議論する.
著者
小倉 毅 須貝 静 小倉 譲
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 = Journal of Chugokugakuen (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.21-30, 2008-06-16

いきがい対応型デイサービス利用者140名に調査をした結果,前期高齢者に旅行希望が多く,国内外に関係なく観光ツアーに希望が多かった。また,国内旅行においては,夫婦や家族と旅行するより,「気のおける友人」と楽しい旅行をしたいという要望が強い。逆に海外旅行では,夫婦や家族といった身内との旅行を望んでいる。また,オーダーメイドの手作り旅行や目的地のみを設定する旅行では,兄弟や親戚,ご先祖様の供養にお墓参り,思い出の地に行きたいといった希望がある。旅行日程は「2泊3日」が最も高く,次いで「1泊2日」,「日帰り旅行」である。旅行中の心配事については,「目的地までの移動時間・手段を考えると体力に不安,荷物を運ぶのが不安,トイレが近いので,休憩回数・時間がきになる。また,後期高齢者になるほど,付き添い者がいてほしい」という結果がでた。これらの結果をもとに,「長崎に単身赴任中の息子に会いに行きたい」と願う89歳(男性)のエスコートヘルパー旅行を実施した。長崎で息子に会えた喜び,観光,希望のかなった食事に満足して,「一生懸命遊び,人生を楽しむことこそ生きがいである」という本人の人生観に基づいた旅行が実施できた。今後の課題として,旅行先の移動手段,お手洗いの整備状況,入浴・食事の手配と介助方法,疾患状況を把握するためのアセスメント技術,さらには,旅行者の「生きがい感(人生観)」を理解する技術,車いすの操作方法,準備物の運搬方法を確立する必要がある。
著者
佐藤尚 内部 英治 銅谷 賢治
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.48, no.SIG19(TOM19), pp.55-67, 2007-12-15

コミュニケーションの原型は,個体が環境や他の個体との相互作用において,報酬の獲得や適応度の向上に寄与する形で発現したと考えられる.本研究では,報酬最大化を目的とする強化学習エージェントが,余剰な行動と感覚の自由度をコミュニケーショのために使うことを学習できるための条件を,2個体が互いに相手の縄張りに入ると報酬を得るが衝突すると罰を受けるというゲームにより検証した.このゲームでは,コミュニケーションと協調行動のそれぞれが必須ではないが,発光行動を使えるエージェント間では,互いにその光を信号として利用することで衝突を避け,報酬を獲得し合う協調行動の創発が観察された.信号の表現の仕方には多様性が見られ,また作業記憶を持つエージェント間では,信号を送る側とそれに従う側という役割分化も見られた.これは,コミュニケーションと協調行動が必須ではない状況において,意味と信号の任意の対応付けによるコミュニケーションが,コミュニケーションの達成そのものを目的としなくても一般的な行動学習の枠組みにより創発しうることを示す初めての知見である.
著者
西野 竜太郎
雑誌
研究報告デジタルドキュメント(DD)
巻号頁・発行日
vol.2014-DD-95, no.4, pp.1, 2014-09-26

インターネットの普及により,ソフトウェアを世界に向けて容易に提供できるようになりつつある.そのため,ソフトウェア UI およびドキュメントに特有の英語表現とグローバリゼーション・プロセスに関する調査が必要である.また,それらの知見を獲得できるプロジェクト型の教育方法の研究も求められている.
著者
中嶋 文雄 米地 文夫 NAKAJIMA Fumio YONECHI Fumio
出版者
岩手大学教育学部
雑誌
岩手大学教育学部研究年報 (ISSN:03677370)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.53-55, 2012-03-10

明治27年(1894年)に刊行された志賀重昂の著書「日本風景論」[1]における中心的命題の一つは、富士山が世界一の名山というべき美しさを有することの科学的裏付けとしてその形状が対数曲線であるということである。そして文脈からしてこの事が志賀自身の発見によるかのごとく書かれている。しかし1989年と1990年の日本地理学会において、本論文の著者の一人である米地文夫により、この命題は当時の日本の帝国大学工科大学の教授を務めていたイギリス人の地質学者であるJohn Milne の論文[2a]からの剽窃であることが指摘された[3a][, 3b]。問題となったのは[1]の89ページの次の文節である。
著者
牛嶋 俊一郎
出版者
埼玉大学経済学会
雑誌
社会科学論集 = SHAKAIKAGAKU-RONSHU (The Social Science Review) (ISSN:05597056)
巻号頁・発行日
vol.139, pp.1-18, 2013

While over the past several decades the Okun's law has been applied to the Japanese economy in various ways, a few attempts had been made to create time series of potential output and GDP gap by utilizing the Okun's law. One reason behind this may be a seeming instability of the Okun's law coefficient in Japan. Furthermore there are many economics professors and researchers who regard the Okun's law as too volatile to get reliable evidence for analyzing important topics like GDP gap, potential output, and unemployment. However, the seeming instability of the Okun's coefficient can be removed by appropriately taking into account a change in potential growth and important structural changes during the estimation period. This paper aims at showing the usefulness of the Okun's law in the Japanese economy for analyzing price development and considering ways to overcome deflation by demonstrating how accurately can Okun's-lawbased GDP gap follow inflation/deflation development in the past 30 years.
著者
井徳 正吾
出版者
文教大学
雑誌
情報研究 = Information and Communication Studies (ISSN:03893367)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.1-17, 2016-01-01

There are a lot of theses about brand strategies but hardly any about brand development for consumer products. This thesis describes the brand development steps with data driven approach. Iemon, a brand of Japanese green tea drink released by Suntory, is used to examine each of these procedures and associated advertisement volume and duration for them.
著者
森川 哲雄
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1・2, pp.99-129, 1983-01

In the spring of 1675, Prince Burni, head of the Inner Mongolian Chakhar tribe, rose in arms against the Manchu Ch’ing Dynasty of China, which was then afflicted by a large-scale rebellion in the south started by the so-called Three Feudatories. Taking advantage of this situation, the prince, along with some other Inner Mongolian chiefs who cooperated with him, aimed at liberating his people from the Manchu yoke and bringing back the old glory of the Chakhar Khanate. Not surprisingly, official Ch’ing sources supply only scant information as to what caused this rebellion and how it developed. At that time, the Koreans of the Yi Dynasty Joseon Kingdom, with their barely-concealed anti-Manchu feelings, were keenly interested in the behavior of Burni and his father, Abunai, and information they gathered on the two princes was included in the Veritable Records of that dynasty, Yinjo Sillog. As the Korean source tells us, the Manchu-Chakhar discord originated in the days of Prince Abunai, who had fallen out with Shun-Chih and would not visit Peking even when the emperor died. After the death of Princess Makata, his first wife, Abunai married another woman without asking for permission from the Ch’ing court and ceased to attend the New Year’s celebrations in Peking after 1663 altogether. In 1669 Emperor K’ang-hsi had him arrested and detained at Shenyang, and granted the Chakhar Principality to his son Burni. Deeply offended by the treatment of his father, the young prince prepared for a rebellion while pretending to be loyal to the Ch’ing. Although it was easily suppressed in a short time, the rebellion of Burnj was one of the most politically significant incidents in seventeenth-century Inner Mongolia
著者
廣田 有里
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.29, 2019-03-15

個人の庭を開放して公開するオープンガーデンは,コミュニティに活気を与える重要な観光資源として注目されている。庭のオーナーと訪問者がガーデニングという趣味を通じて関係性を築いているが,両者の関係性はまだ「見どころの共有」までには至っていない。一方,オープンガーデンの訪問者に限らず旅行者にとっての満足度に,専門的な知識とコミュニケーションの技術の両方が必要とされる解説活動(インタープリテーション)が重要性を増しているといわれている。また,スマートフォンの保有率が高くなっている現代において,観光地における情報端末の利用は欠かせないものとなってきている。 そこで本研究では,情報端末を用いて庭のオーナーと訪問者の情報量のギャップを埋め,「見どころの共有」をしたうえで,コミュニケーションの促進をはかるWeb サイトの構築を行った。その結果,①訪問者はWeb サイトまたはアプリでの情報提供を希望しており,情報端末がインタープリテーションの役割を果たす可能性は高い,②情報提供のWeb サイトまたはアプリでは360°カメラの映像をもとにし,直感的に使いやすいサイトにする,③提供する内容は,草木の名前や庭の説明とし,その中にオーナーの見どころを合わせて提供できるようにする,④次の庭への地図の機能追加の要望が高いことが明らかになった。