著者
大島 千佳 中山 功一 安藤 広志
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.265-276, 2010-02-15

本研究は,市販の香料で遠隔地の景色の画像の臨場感を高めることを目的とする.本論文では,以下に示す4つの香りの特性を利用し,それぞれの特性から,ある特定のContentsを含む画像の臨場感を高める度合いが推定できるかどうか議論した.(1) 色特性:香りと色との関連,(2) 名詞特性:香りから想起される物の名前,(3) 形容詞特性:香りの印象を表現する形容詞,(4) 化学成分特性:香料に含まれる化学成分.実験では,Contentsが木である16種類の画像を用いて,被験者に20種類の各香料の臨場感を高める度合いを評価してもらった.次に各香料から想起される物の名前を記述してもらい,さらに香料の印象を形容詞対により表現してもらった.これらの結果から,臨場感を高める香料の推定は,(1) 色特性からは困難であり,(2) 名詞特性と(4) 化学成分特性からは限定された一部の香料にのみ可能であったが,(3) 形容詞特性からは臨場感を高めるすべての香料を推定できる可能性が示された.
著者
藤本 竜輔 安藤 元一 小川 博 Ryusuke FUJIMOTO ANDO Motokazu OGAWA Hiroshi
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.290-296,

野外調査の難しい種である半水生のカワネズミChimarrogale platycephalaにおける生息確認調査の効率を向上させることを目的として,捕獲個体の死亡率を低減するためのワナ改良をおこなった。同時に調査に適した季節および適切なワナ設置間隔を検討した。従来型カゴワナを24時間ごとに見回ると捕獲個体は全て死亡し,2時間毎に見回っても毛皮の水濡れが防げなかった。ホースで退避室を接続したカゴワナでは24時間毎の見回りでも64%の生存率が得られたが,ワナから脱出しようとして負傷する個体があった。さらに見回り時間を6時間毎にすると生存率は100%になり,捕獲個体の水濡れおよび負傷が防げた。本種は春~秋のどの季節にも調査が可能であり,その捕獲率は平均2.1%であった。ワナ列長1,000m以下の調査をおこなったところ,およそ470mあたり1頭の割合で捕獲された。ワナ設置間隔を100m以下に縮めても捕獲効率に差がなかったことから,ワナは100m程度の長い間隔で設置することが効率的であると考えられた。本種が捕獲された地点においては遅くとも調査4日目以内に捕獲があったことから,生息の有無を判断するためには連続4日間以上の調査が必要であることが示された。
著者
田中 規子
出版者
昭和女子大学女性文化研究所
雑誌
昭和女子大学女性文化研究所紀要 = Bulletin of the Institute of Women's Culture Showa Women's University (ISSN:09160957)
巻号頁・発行日
no.46, pp.81-95, 2019-03-31

Most recent job satisfaction studies are quantitative rather than qualitative in their methodology. Therefore, this research employs interviews to clearly elucidate the elements of job satisfaction. The sample for this investigation was formed by 16 people who have lived in the metropolitan area in Tokai and Kansai district, and who are currently employed. The results obtained from the analysis of the interviews clarified that job satisfaction can be explained through four elements: evaluation or recognition, personal growth, wages, and life satisfaction. The examination clearly demonstrates that overall job satisfaction is related both to intrinsic and extrinsic motivation under conditions of positive human relationships within an office. The findings also reveal that the sense of job satisfaction is further influenced by an individual’s feeling of fulfillment in personal life, indicating a synergy between job and life satisfaction.
著者
渡嘉敷 恭子 Kyoko Tokashiki
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 = Papers in Teaching Japanese as a Foreign Language (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.77-93, 2016

「口頭テスト」はプレースメントの際に行われるレベル分けのための熟達度テスト(proficiency test)とその学生がある期間にどのぐらいレベルアップしたかを測る到達度テスト(achievement test)に大きく分けられる。前者は、ACTFLが開発したOPIに代表される特定のプログラムや使用したテキストに準じていない能力を測る汎用性が高いものである。一方、後者はある特定のクラスまたはプログラムで使用され、主に限られた範囲内の会話力を評価するために使われる。筆者は2017年春学期に総合日本語3のクラスを担当し、中間試験の際に口頭テストを行った。本稿はその口頭テストの実践報告である。
著者
佐藤 裕紀 伊藤 毅志
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.59(2008-GI-020), pp.37-43, 2008-06-20

カードゲーム「大貧民」では、ローカルルールに応じて、プレースタイルのバリエーションが増える。本研究では、電気通信大学で開催されている UECda2007 の基本的なローカルルールをもとに、考えうるプレースタイルを想定したプログラムを作成し、それぞれのプレースタイル間の相性を詳細に調べた。その結果、階段処理を行い、単体とペアを最弱縛りで縛るのが最も強いアルゴリズムであることが明らかになった。
著者
山﨑 めぐみ 住友 雄資
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.55-69, 2018-02-28

本総説論文は、長期入院の精神障害者に対する退院支援に関する文献レビューを通して、精神科病院の精神保健福祉士が行う退院支援に関する研究課題を提示することである。文献レビューの結果、精神科病院の精神保健福祉士が行う退院支援研究は少なく、しかも精神障害者との関係づくりや退院の意欲喚起に限定されていることが明らかになった。このことから長期入院者の退院を阻む各要因を精神保健福祉士がどのように把握し、その総合的な把握から要因を取り除いていく研究、退院支援の内容やプロセス等を丹念に質的に探究しそれを記述していくという質的研究、長期入院患者と家族の関係を再構築するための具体的な方法を明らかにする家族に関する研究、具体的な社会資源の活用・開発を推進していく研究、精神保健福祉士が地域住民等にどのような実践を積み重ねていけばよいのかという研究、という5点の研究課題を提示した。
著者
田中 和幸 遠藤 麻美 長舩 哲齊 八木沢 誠 袴田 大蔵 志沢 邦夫
出版者
日本体育大学
雑誌
日本体育大学紀要 (ISSN:02850613)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.87-96, 1999-09-30

本研究の一部は日本体育学会東京支部第26回大会で発表した。
著者
岩切 朋彦
出版者
鹿児島女子短期大学
雑誌
鹿児島女子短期大学紀要 = BULLETIN OF KAGOSHIMA WOMEN’S COLLEGE (ISSN:02868970)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.15-24, 2017-10

現在,福岡県の日本語教育機関では,ネパール人留学生が増加している.その誘因はネパールの経済的不振にあり,働きながら勉強できることが,日本が選ばれている理由である.一方,2020年を目途に政府が目標としている「留学生30万人計画」や,中国人留学生の減少によって学生確保に苦労している日本語教育機関,新規労働力の枯渇に苦しむ日本の労働市場など,日本側にとってもネパールの留学生を呼び込む要因が強くなっている.南北の経済格差を背景とするグローバルな移民現象の一部として留学という現象を捉えつつ,本稿では「働く留学生」をめぐって,就労制限の問題と社会相互作用の観点から,続稿へ向けた問題提起を行う.