著者
岡 綾乃 度會 英教 田殿 武雄 高橋 陪夫 匂坂 雅一
出版者
一般社団法人 日本写真測量学会
雑誌
写真測量とリモートセンシング (ISSN:02855844)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.49-52, 2017 (Released:2018-05-01)

The Advanced Optical Satellite is a successor of the optical mission achieved by the Advanced Land Observing Satellite “DAICHI” (ALOS). This paper introduces its mission, the overviews of the satellite and the sensor system, and the expected data utilization.
著者
有田 伸
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.663-681, 2009-03-31 (Released:2010-04-01)
参考文献数
31
被引用文献数
5 3

本稿は日本・韓国・台湾の各社会において,個人の職業がどのような報酬格差をもたらし,人々の階層的地位をどのように形作っているのかを検討することで,これらの社会の階層構造の輪郭を描き出そうとするものである.本稿では,各社会の労働市場構造の特質やその変動をも視野に入れ,職種や従業上の地位のみならず,企業規模や雇用形態の違いにも着目し,個人の職業に関するこれらの条件が所得と階層帰属意識をどのように規定しているのかを実証的に分析し,それぞれの効果の相対的な重要性を検討する.2005年SSM調査データの分析の結果,個人の職業的条件が所得と階層帰属意識に対して及ぼす影響は,大枠では社会間である程度類似している一方,それらの相対的な重要性はかなり異なっていることが示された.台湾では職種の影響が圧倒的に大きいのに対し,日本においては,また部分的には韓国でも,職種のほかに企業規模と雇用形態(非正規雇用か否か)が無視しえない影響を及ぼしている.日本の男性の場合,階層帰属意識に対する企業規模や雇用形態効果は,本人所得を統制した場合にも認められ,この効果には長期安定雇用や年功的人事慣行による便益の享受機会なども含まれるものと解釈される.このような結果からは,東アジア,特に日本の階層構造や社会的不平等を考察する際には,労働市場や生活保障に関わる制度的条件への着目が特に重要であることが示唆されている.
著者
後藤 健志
出版者
アンデス・アマゾン学会
雑誌
アンデス・アマゾン研究 (ISSN:24340634)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-32, 2021-12-20 (Released:2022-04-06)
参考文献数
71

ブラジルでは、空間を構成する土地や財をめぐって、実際上の利用者に正規の権利主体性を認定する措置、すなわち「正則化」を通じて、国家は統治が十分に行き届かない辺境域の領域化を進めてきた。一方、現地の権利主体は、国家が所管する土地や財が、占有され、事後的に正則化され、私有財として領有できる対象と見なしてきた。本稿では、正則化のメカニズムを国家による統治の視点からではなく、現地の視点から捉えるため、アマゾニアにおける領域化の進展を、植民者の在来知に着目して読み解いた。 事例研究では、マト・グロッソ州北西部に1990 年代を通じて設立された農地改革の入植地における土地利用に注目した。ブラジルの農地改革は、著しい社会格差の是正に向けた施策である一方、既存の土地所有構造の改変を目的としていない点に大きな特徴がある。それは同政策が半世紀に渡り、土地の私有化を通じて、辺境域の領域化を推進するための「植民」として実施されてきたことと密接に関係する。 入植地における土地利用の分析では、国家による正則化と植民者による自発的植民の相互作用に着目した。自発的植民とは、公式な植民事業に付随して発生してきた民衆による非公式な植民事業である。その過程は、非公式に取得された土地が、行政が体系化したスキームに即して再整形され、占有に基づき適切に管理され、やがて正則化されていく流れを辿ってきた。農地改革の過程もまた、事業実施後のわずかな期間のうちに、この民衆による運動の渦中へと不可避に呑み込まれていく。 フロンティアの拡大は、立法・行政・司法に関わる諸機関を通じて有効化される正則化と多種多様な植民者によって実行される自発的植民との間の有機的共同によって推進されている。本稿では、今日なおもアマゾニア全域で展開するこの壮大な事業が、湿潤熱帯環境という極めて不安定な生態学的基盤のうえに成り立っている実態を、植民者たちのありふれた生活経験に即して描き出した。
著者
鳥塚 あゆち
出版者
アンデス・アマゾン学会
雑誌
アンデス・アマゾン研究 (ISSN:24340634)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-21, 2020-12-20 (Released:2022-04-06)
参考文献数
27

ペルー共和国の行政・領域単位のひとつであるコムニダ・カンペシーナ(Comunidad Campesina)は、1960 年代後半に実施された農地改革により制定された。これにより、共同体には自治が認められ、不可侵の領域を所有し、成員は用益権をもつことが規定された。この制度を変えたのは、フジモリ大統領の政権下で1995 年に公布された「土地法」である。その目的は、新自由主義経済政策の一環として、コムニダ・カンペシーナの土地を自由市場に開放することにあった。しかしながら、実際には私有地化は進まず、政府が目指した理想と実態とのあいだには溝があるのが現実である。 私有地化が進まない要因のひとつは、コムニダ・カンペシーナにおける土地運営のあり方が一様ではないことにあると考えられる。しかし、土地の保有権や用益権、使用方法については詳細な報告が少ない。とくに牧草地利用については部分的な記述が多く、制度との関わりについても不明な点が多い。そこで本稿では、牧畜を専業とする牧民共同体において実施された牧草地の区分・再区分の問題を取り上げ、牧草地利用の実態を例示し、コムニダ・カンペシーナにおける土地制度と慣習とのあいだのダイナミズムについて議論した。 土地区分後に表面化していた問題は、区画面積や区分方法の不平等性、区画間の境界をめぐるものであった。本稿では、これらの問題が解決しない要因について考察し、背景にある成員間の根本的な人間関係や意見の異なる相手への見方、生業や生活形態に対する世代間の考えの相違、区分記録の正当性における二重規範が関係していると指摘した。また、問題の表面化によって、人びとが場所性や慣習・経験を重視していることも明らかとなった。当該共同体では、問題が付議された総会は成員が参与する交渉の場となっており、そこでの決定や合意を共有することが共同体を維持するための共同性としてはたらいていると考えられる。