- 著者
-
俣野 美咲
- 出版者
- 東北社会学研究会
- 雑誌
- 社会学研究 (ISSN:05597099)
- 巻号頁・発行日
- vol.102, pp.171-191, 2018-12-28 (Released:2021-11-24)
- 参考文献数
- 30
本稿の目的は、若年期における親への経済的援助に対する出身階層の影響について明らかにすることである。近年、親に対する経済的援助を行う者が増加しており、二〇代や三〇代の比較的若い層においても、四〇代以上の中年層と同程度に親への経済的援助を行っている。近年の若年非正規雇用の拡大などをふまえると、自身の人生の基盤を確立する時期である若年期に、親を経済的に支援しなければならないことの負担はより一層大きくなっていると考えられる。そこで本稿では、先行研究では十分に検証されてこなかった出身階層の影響に着目し、「全国家族調査(NFRJ)」のデータを用いて、若年期の親への経済的援助について分析を行った。その結果、父親が高学歴である者は、若年期に、親に対して一方的に経済的な援助を行う状態になりにくいことが示された。つまり、生まれ落ちた家庭が高い階層的地位にある場合、本人も高い社会経済的地位を獲得しやすく、親も経済的に安定しているため親の生活費の援助などを負担しなければならない状況にはなりにくい。その一方で、出身階層が低いと、自身が高い社会経済的地位を達成することのハードルは高くなり、労働市場において不利な立場に陥りやすいうえ、親に対して一方的に経済的な援助をしなければならない確率も高くなる。このように、ライフコースのさまざまな側面で出身階層による不利が集積し、挽回が困難となっていることがうかがえる。