- 著者
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栗原 一貴
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.4, pp.919-931, 2017-04-15
本論文では,ゲーミフィケーションの周辺概念であるToolification of Gamesを提案する.「非ゲーム的文脈でゲーム要素やゲームデザイン技術を用いること」などと定義されるゲーミフィケーションでは,ゲームの知見を「後づけ」するために適切なゲームバランスと楽しさの実現が難しい点が問題であった.そこで,通常のゲーミフィケーションと比較したときにゲームと非ゲームの大小関係,主従関係が逆であるようなケースとして,「すでに完成されているゲームの余剰自由度の中で非ゲーム的目的を達成すること」をToolification of Gamesと定義する.Toolification of Gamesにはブランド性,既習性,逃避可能性,自己表現性,物語性などの特徴があり,従来のゲーミフィケーションの問題を改善しうる可能性がある.我々はToolification of Gamesと位置づけられる過去の事例を分析するとともに,三次元テトリスをプレイするだけで3Dプリンタ用の三次元モデルをデザインできるTetris 3D Modeler,およびスーパーマリオブラザーズをプレイすることが募金活動につながるCoins for Twoの開発事例および過去の事例分析を通じて,Toolification of Gamesの位置づけと性質,可能性を論ずる.