著者
武田 晴登 西本 卓也 嵯峨山 茂樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.237-247, 2007-01-15

本論文では人間の音楽演奏を記録したMIDI(Musical Instrument Digital Interface)信号から,演奏されたリズムとテンポを推定する手法を議論する.我々は,音楽演奏には次の2 つの傾向が見られることに注目して最も尤もらしいリズムとテンポを推定する.(1) 演奏されるテンポは時間について連続で滑らかに変動する.(2) 演奏される曲のリズムは典型的なリズムパターンの組合せで表現される.テンポ曲線を仮定したとき,HMM(Hidden Markov Model,隠れマルコフモデル)を用いて事後確率を増加させる音価列を推定することができる.また,リズムを仮定したとき,区分的に連続であるテンポ曲線を事後確率を増加させるように更新することもできる.本手法は,このようにリズムとテンポの推定を交互に行う反復アルゴリズムであり,適切な初期値から出発すれば,事後確率最大化の意味で最適解に収束し,さらにテンポが不連続な変化をともなう場合も扱うことができる.本手法を用いて,テンポが変動する人間の実演奏を記録したMIDI データ37 曲に対して,81.9~85.5%の音価正解率を得た. 付録:<a href="http://www.ipsj.or.jp/08editt/contents/JNL4801/index.html#23"target="_brank">http://www.ipsj.or.jp/08editt/contents/JNL4801/index.html#23</a>
著者
土屋政人 落合和樹 亀岡弘和 嵯峨山茂樹
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.281-282, 2013-03-06

自動採譜問題における発話時刻列から元の楽譜を推定するリズム解析の課題は,テンポと音価の間には無限の解釈が存在しうるという不良設定性の高い問題である.人間が音楽を聞く時にその楽譜を想像することができるのは、人間は音楽として常識的なリズムに関する知識を持っており,そういったトップダウンな情報と観測発話時刻列というボトムアップな情報の両側面から総合的に解釈を行っていると考えられる.そこで本研究ではこうした統合的なアプローチを計算機上で実現することを目指し,言語処理の手法をヒントに楽譜でよく使われる音符列を単語に模してモデル化を行い,楽譜を二次元木構造で表現することを試みた.
著者
Mikołaj Melanowicz
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国際日本文学研究集会会議録 = PROCEEDINGS OF INTERNATIONAL CONFERENCE ON JAPANESE LITERATURE (ISSN:03877280)
巻号頁・発行日
no.15, pp.98-107, 1992-03-01

Tanizaki is well known in the world mainly as the author of "The Makioka Sisters" (Sasameyuki, 1943-48, tr. 1957) in Edward G. Seidensticker's translation, and Howard Hibbet's "Diary of a Mad Old Man"( Fūten rōjin nikki, 1961-62, tr. 1969). In the last decade Anthony H. Chambers, "Naomi" (Chijin no ai, 1925, tr. 1985) and "The Secret History of the Lord of Musashi" (Bushōkō hiwa, 1932, tr. 1982) and Paul McCarthy's "A Cat, a Man, and Two Women" (Neko to Shozo to futari no onna, 1936, tr. 1990) and “Childhood Years, A Memoir” (Yōshō Jidai, 1955-56, tr. 1988) have enriched world literature.The bizarre novel "Bushūkō hiwa" is comparatively less acclaimed, but in which the writer's main features stand out in relief admirably well.The hero in "Bushūkō hiwa" is characterized in principle as a paragon of the samurai' ethos and his fate also was typical of that of the Japanese warrior aristocracy in the Sengoku age of civil war. "Bushūkō hiwa", though different from "Ashikari" and "Shunkinshō" in that its leading character is male, in a story, nevertheless, the main events are caused by women.Kaname (“Tade kuu mushi”) , Sasuke, Shunkin (“Shunkinshō"). O'yu ("Ashikari”), Yaichi and Oichi (“Mōmoku monogatari”), as they appear in Tanizaki's novels, hold no concepts such as race, nation, native country or faith. The concepts that extend beyond the individual have no decisive influence on their thought or behaviour. Only cultural and aesthetic inducements and inmost impulse move them. A combination of these two factors is depicted most vividly in "Bushūkō hiwa", especially in a scene where a beautiful young woman is purifying a severed head with the hero looking on. The decisive and absolute factor for the hero, that is aesthetics, will be discussed in the paper.
著者
渡邉拓貴 寺田努 塚本昌彦
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)
巻号頁・発行日
vol.2013-UBI-39, no.9, pp.1-8, 2013-07-24

ウェアラブルコンピューティング環境では,装着型センサを使った状況認識に注目が集まっている.一般的に用いられるセンサは加速度センサやマイクだが,前者は複数のセンサのデータを統合するために通信を行う必要があり,後者は音のみに頼っているため実際にそのユーザが関係している音なのかが分からない.そこで本研究では,超音波によってユーザの行動,周囲に居る人,現在居る場所などの情報を取得し,ボイスレコーダなどの音声記録に埋め込む手法を提案する.ユーザはマイクと超音波を発する小型スピーカを装着し,これらの距離を表す音量の変化と,ジェスチャの速度を示すドップラー効果を利用してジェスチャを認識する.また,環境や人に超音波 ID を発信する小型スピーカを装着することで,ユーザがどこにいたか,近くに誰がいたかという情報も同時に記録する.これにより,会話音等の環境音,ジェスチャ,ユーザのいた場所,会った人物のデータすべてがマイクのみで記録できる.提案手法では他者による環境音が無い場合,平均 86.6% の精度で認識でき,他者から発せられる環境音がある場合,平均 64.7% の精度で認識できた.
著者
東拓央 吉野孝
雑誌
第73回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.507-508, 2011-03-02

近年訪日外国人者数の増加に伴い医療現場での多言語コミュニケーションの機会が増えている.<br />医療現場での多言語コミュニケーションは,<br />医療ミス等を未然に防ぐため正確なコミュニケーションが求められる.<br />様々な言語に正確に翻訳された同じ意味の用例セットである用例対訳を用い,<br />高精度な多言語コミュニケーションを実現する研究が行われているが,<br />用例収集自体が簡単ではないという問題がある.<br />そこでビデオチャットで遠隔の通訳者を介し多言語コミュニケーションの支援を<br />行うシステムYouTranを用い,ビデオチャット内の会話を用例として収集するシステムを<br />提案する.<br />集められた会話内容には音声認識誤りや個人のプライバシ情報が含まれるため<br />フィルタリングによる対応が必要である.<br />本稿ではシステムに適用するためのフィルタリング手法の検討を行った.
著者
橋本 雄太
雑誌
じんもんこん2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.153-158, 2016-12-02

近年,機械処理の適用が困難な大量のデータに対して,不特定多数のボランティアの協力をインターネット上で募り,分類やタギング等のタスクを実施するクラウドソーシングの手法が人文学分野でも一般的になりつつある.一方で,日本語の歴史資料の翻刻に同手法を適用するためには,①現代人には解読困難なくずし字と,②多数のボランティアを長期的に従事させる適切な動機付けの設計の2点が課題となる.本研究では,人文学コンテンツの学習サービスと,クラウドソーシングシステムを統合することによって,ボランティアの学習意欲を動機づけに利用するとともに,タスク実施スキルの向上を図る手法を提案する.また実際に,くずし字の学習サービスと前近代災害資料の翻刻システムを統合したWebシステムを構築し,その有用性を評価する.
著者
松浦 智之 大野 浩之 當仲 寛哲
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.352-360, 2017-10-15

ソフトウェアは,より高度な要求,あるいは時代とともに変化する要求に応えるべく,絶え間なくバージョンアップを繰り返している.しかし,多くのソフトウェアは,今自分の置かれた環境において求められる性能や機能を満たすことばかり偏重し,ほかの環境や将来の環境における互換性をあまり考慮していない.そこで筆者らは,UNIX系OSが最低限満たすべきとした仕様をまとめた国際規格であるPOSIX(Portable Operating System Interface)に着目した.POSIXは現状で多くのUNIX系OSが準拠している上に,1988年の初出以来,その仕様はほとんど維持されている.このような性質を持つ規格に極力準拠しながらプログラミングすることで,ソフトウェアは高い互換性と長い持続性を得られる可能性がある.そして,筆者らはこのようにしてPOSIXの仕様に極力準拠しながらプログラミングをする指針を具体的にまとめ,POSIX中心主義と名付けた.本稿では,POSIX中心主義としてまとめたプログラミング指針を提案するとともに,現在行っている互換性と長期持続性の検証について報告する.
著者
生田 研一郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.1031-1031, 2017-10-15

高校の教科「情報」には科学的な理解という観点があり,教科「情報」にとって情報科学や情報技術といった親学問を踏まえた授業は必要不可欠です.次期学習指導要領でも扱うこととしています.しかし,情報科学や情報技術を中心とした教科「情報」の授業は,生徒たちに「情報社会は技術決定的である」という誤解を与える危険性があります.ところで,学問における科学とは「自然科学」「社会科学」「人文科学」のことです.科学的な理解を踏まえた授業が必要ならば,これらすべての領域を意識した授業が必要なはずです.教科「情報」の学習対象を情報社会そのものだとするならば,自然科学領域以外にも注目していただけたら幸いです.
著者
間辺 広樹
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.1032-1035, 2017-10-15

次期学習指導要領では新設される共通必履修科目「情報I」にプログラミングが位置付けられ,すべての高校生がプログラミングを学ぶこととなった.「自分が意図する一連の活動を実現する」と示された学習目標の達成に向けて,プログラミング言語・学習環境・授業内容などを検討していくことが必要である.本稿では言語としてJavaScriptを扱っている.ただし,従来のJavaScriptの学習は,操作やエラー表示の点などに課題があったため,それらを解決したオンラインプログラミング学習環境Bit Arrowの教育用JavaScriptを用いた.内容は,プログラムの基本的な制御構造とその利用法を理解させることを目標とした.実践した入門授業における生徒の観察とアンケート結果から,Bit Arrowと授業内容の有用性を評価した.
著者
工藤 拓 山本 薫 松本 裕治
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.47(2004-NL-161), pp.89-96, 2004-05-14

本稿では Conditonal Random Fields (CRF) に基づく日本語形態素解析を提案する. CRFを適用したこれまでの研究の多くは 単語の境界位置が既知の状況を想定していた. しかし 日本語には明示的な単語境界が無く 単語境界同定と品詞同定を同時に行うタスクである日本語形態素解析にCRFを直接適用することは困難である. 本稿ではまず 単語境界が存在する問題に対するCRFの適用方法について述べる. さらに CRFが既存手法(HMM MEMM) の問題点を自然にかつ有効に解決することを実データを用いた実験と共に示す. CRFは 階層構造を持つ品詞体系や文字種の情報に対して柔軟な素性設計を可能にし label biasやlength biasを低減する効果を持つ. 前者はHMM の欠点であり 後者はMEMMの欠点である. また 2つの正則化手法(L1-CRF/L2-CRF) を適用し それぞれの性質について論じる.
著者
柳井 啓司 田中 哲朗 武市 正人
雑誌
情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.13(1995-ARC-116), pp.55-60, 1996-01-26

関数型言語向きアーキテクチャを持つプロセッサを,1万ゲート相当のFPGAを用いて実現した.本プロセッサは通常命令を実行するノーマルモードと関数型言語実行のためのリダクションモードの2種類の実行モードを持つ.リダクションモードでの実行を使用頻度の高い5つコンビネータにとどめ,他のコンビネータをノーマルモードで実行するという方針で設計をした結果,少量のハードウェアの追加で製作でき,ノーマルモードのみの実行と比較して5倍程度の速度の向上が確認された.