著者
中村 三春
出版者
中村三春
巻号頁・発行日
2008-03-01

平成17-19年度科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書 研究課題番号: 17520105; 研究代表者: 中村三春
著者
猪飼 維斗 Masato Ikai
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2017-03-24

今日,コンピュータの進歩によって様々な場面でシミュレーションを用いた検証や予測が生かされている.シミュレーションは対象の解明,理解,予測などの目的で用いられる. シミュレーションにおけるモデルは,対象に対する理解を目に見える形で実現したものである. 従来,このモデルの実現はプログラムなどを用いて構築されてきた.シミュレーションの目的を達するためにはモデルの理解・共有性が必要とされ,それらを実現するためにグラフィカルなモデル構築を可能とするシミュレーションシステムが提案されてきた. モデルの構築は,モデル化対象への理解を自然言語などをもちいて表現した概念モデルを,プログラムや専用のスクリプトなどで記述し,実際に動作することのできる実装レベルのモデルで実現していく作業となる. 既存のシミュレーションシステムではモデルを作成するユーザが,システムが与えた枠組みに合わせて概念モデルを細分化,詳細化していく必要があった.そのため,モデル作成者は対象に対する理解とは別にシミュレーション手法への十分な知識や技術が要求されていた. そこで本研究ではシミュレーション手法に対して熟達していないユーザがモデルを作成する際に,自分の持つ知見や経験則を,容易にモデルへと落としこめるようなシステムとして「User-Friendly Simulator for Open Modeling」を開発することにした.モデルをホワイトボックスに作成することでモデルの理解や共有をしやすくし,また部分モデルをメタ的に管理する構造によって各モデルの把握を容易にする. さらに,ユーザにとってモデルの作成が容易であるかどうかを比較するための基準として,モデル作成時の思考時間に着目し,他の従来のシミュレーションシステムと比較検討を行った. 従来,シミュレーションシステム間での比較は, ・各システムがどのようなモデルを実現できる機能を持っているか ・どのようなモデルがどれくらいの速度で動作するかといった機能面での比較が行われていた. これに対しユーザビリティの側面からも評価を行うことで,モデルを作成するユーザがより適切なシミュレーションシステムを選択する助けとなるであろう. 第1 章では,本研究の背景や目的などについて説明すると共に,本論文の構成について概説する. 第2 章では,マルチエージェント型シミュレーションシステムの概略と本研究で提案するシステムについて述べる. マルチエージェント型シミュレーションには様々なシステムがあり,汎用に用いることができるものであっても,モデル作成のための方法論や,実装に用いられる言語などによってその特性が異なる.代表的な汎用シミュレーションシステムについて触れ,それぞれの特徴を述べるとともに,本研究で提案するシステムの意義について述べる. 第3 章では,本研究で提案したシミュレーションシステムがどのようにしてユーザのモデル作成を支援するのかを解説し,システムを構成する各機能とユーザのモデル作成への影響について述べる. ・モデル作成者の経験則をモデルに取り込むFuzzy 推論の採用 ・ホワイトボックスな実装レベルのモデル構造 ・シームレスな上下分離構造 の3 つの機能によって,ユーザのモデル作成を支援する. モデルを構成する最小単位のプロセッサにFuzzy 推論を可能とするFIU を採用することで,言語真理値を用いた自然言語やヒューリスティックのスムーズなモデル化を実現した. CBRFはFIU によって記述されるグラフィカルなモデルで,従来概念モデルだけであったグラフィカルなモデル構築を実際に動作するレベルでも行うことを可能としている.ここで用いられているプロセッサは2 つの入力から1 つの出力を得るものであり,これを多段階に連ねる構造は,一般的な人間の判断構造を表現することに適していると思われる.また,CBRFを部分モデルとして管理するPWCとCBRFという二重のインスタンス構造によって,モデル作成者が任意の段階で実装レベルのモデルを構築・管理することを可能としている. 第4 章では,本研究で提案したシミュレーションシステムでの具体的なモデル作成について議論する.さらに第3 章で述べたモデル作成の容易さについて,実現例をもとに述べる. 湯量調整モデルでは,Fuzzy 推論によって各エージェントの要求湯量を演算し,情報制限下での競合をモデル化している.エージェントの判断をFuzzy 推論によってモデル化することで制御モデルを容易に実現している. 入札行動モデルでは,人間の意思決定モデルを記述し,CBRFによるホワイトボックスなモデル構造の利点について述べている. 周囲の情報を取得し2 次元平面上を移動するモデルでは,シームレスなモデルの分割管理について述べている. 第5 章では,シミュレーションシステムでのモデル構築の容易性に対する新たな評価手法を提案し,その効果について述べる.従来の評価法と異なり,ユーザビリティの計測手法を援用することで,モデル構築容易性を定量的に評価することを試みる. GOMS-KLM 法によって動作の作業量を推定するとともに,総作業時間をもとに課題作業中の思考時間を推定した.推定した思考時間に着目して評価を行うことでユーザの実感としての作業への満足度に近しい評価を可能とした. 第6 章では,第5 章で提案した評価手法を複数のシステムを対象にした比較実験を行い,その結果について述べる.有効性と合わせた比較の結果,今回の課題に対してはUFSfOMが有効であるという結果を得た. 最後の第7 章では,この研究で得られた成果と知見を総括し,将来への展望を考察する. 本研究では,モデル作成を行うユーザが自身の考えたモデルを実現し,理解,共有できるモデル構築プラットホームをもち,その構造をそのまま実行することのできるシミュレーションシステムを実現した. ホワイトボックスなモデル構築によって,実装レベルからグラフィカルなモデル構築を可能とする一方,モデルが大型化してしまうことで視認性が妨げられる問題に対して,PWCによるシームレスな管理システムによってモデルの視認性を維持したまま,より複雑なモデル構築を行えるようになった. さらに従来は比較が難しかったシミュレーションシステムのモデル構築機能のユーザビリティ側面について,定量的に比較する手法を提案した.またGUI の採用によって総作業時間が多いシステムであっても,思考時間で比較した場合は大きな差がなく,より主観的な評価に近いという知見を得た.提案手法による比較の結果,提案システムは効率性において他のシステムに劣らず有効性においては他のシステムよりも有効であるという結果を得た. また本シミュレータションシステムによってシミュレーションによく用いられる典型的なモデルの機能を実現し,これらの作成例を通して,本シミュレーションシステムの機能がどのような場面で有効かを明らかにした.
著者
岩淵 義郎 Yoshio Iwabuchi 日本水路協会 Japan Hydrographic Association
雑誌
海の研究 = Umi no Kenkyu (Oceanography in Japan) (ISSN:21863105)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.509-523, 1995-12-30

Topographies of the Japan Sea can be divided roughly into three parts; the continental borderland lying from Hokkaido to San'in Region, the Yamato Ridge and the Korea Plateau of the continental relic, and the deep-sea basin in the northern Japan Sea. The deepest part of the Japan Sea is about 3700m deep located near the eastern margin of the Japan Basin. The age of the Japan Sea is estimated to be younger than 30Ma. The recent topographic features of the Japan Sea have been built mainly by the large-scale deformation and reorganization of topography since late Pliocene. The continental borderland, east of the Toyama Trough, in the northeastern area has very complicated topographies with folding and faulting. In contrast to it, the continental borderland of southwestern area has been comparatively calm in structural activity since late Pliocene. Erosional terraces in late Pliocene to early Pleistocene are reserved around the summit of the Yamato and Oki Ridges and on the basement covered by Quaternary strata forming a marginal terrace. The eastern margin of the Japan Sea is structurally the most active zone, where the lithospheric convergence occurs by the strong compression. The main belt of convergence in the eastern margin of the Japan Sea can be traced by the distribution of epicenters and aftershock areas of great earthquakes of M7 class along the Okusiri Ridge, the Mogami Trough, and the valley of the Sinano River.
著者
湯浅 弘
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 = The journal of Kawamura Gakuen Woman's University (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.133-145, 2003-03-15

『風土』において利辻哲郎は人間存在の時間性と空間性, 歴史性と風土性を機軸とする人間存在論を提示した。その人間存在論は, ハイデガーの『存在と時間』の批判的摂取を前提としたもので, 現象学的解釈学の系譜に属す人間存在論と見ることができる。そうした思想史的な系譜からも窺えるように, 『風土』での和辻の基本的なスタンスは, デカルトに端を発する主客二元論に抗して人間の生の具体的現実に定位しその構造を明らかにしようとした点に求められる。和辻は, 自らのヨーロッパ留学体験をもとに風土の三類型を提示しつつ, 人間の生の必須の構造契機として人間存在の歴史性・風土性を明らかにしようとしたのである。その試みは, 言わば, 空間(時間を含んで)を生きる人間の生と人間によって生きられる空間(時間を含んで)との密接不離の関係を探査する試みであったと見ることができる。本論文は, 風土論としての先駆的な業績である『風土』を和辻の倫理学体系の成立と絡めながら, 『風土』の諸問題について若干考察しようとするものである。
著者
越智 祐子
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.245-253, 2017-03-31

2015年度,ぎふ多胎ネットは多胎妊娠・出産・育児の体験について,当事者やその家族から自由記述テキストを集めた。本稿では,当事者が実施した親和図法による分析から導出されたキーワードである「不安」と「大変」に着目したうえで,テキストデータを計量的に扱い,多胎育児者の妊娠・出産・育児体験についての考察を試みた結果,「不安」「大変」に加えて「上の子」への気遣いやケア資源の割り振りがキーワードとなっていたことを報告する。
著者
林 晋子 山本 由紀子 菱田 博之 相澤 里美 宮下 幸子
出版者
飯田女子短期大学
雑誌
飯田女子短期大学紀要 = Bulletin of Iida Women's Junior College (ISSN:09128573)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.253-264, 2016-05-27

保育者養成校が設定するカリキュラムマップ(教育目標)をどの程度達成しているかは,学生による自己評価や養成校教員による評価だけでなく,実際に保育者として従事した現場の評価からも検討する必要がある.本研究では卒業生の就職した幼稚園や保育所,施設の代表者を対象に質問紙調査を行い,養成校の教育目標がどの程度達成されているか,また達成されていないかを検討することを目的とした.その結果,20項目中15項目に有意差がみられ,「専門機関との連携」以外の項目は平均値以上の値を示していることから,教育目標は概ね達成されていることが明らかとなった.自由記述においては,養成校で指導している知識や技術よりも勤務への態度や健康管理に関することが高く評価された一方で,保護者や保育者とのコミュニケーション能力や積極的・主体的な姿勢が課題であることが明らかとなった.また,養成校に期待する点は社会人としての人間性やマナー,文章表現,基礎学力であることが明らかとなった.したがって,教育目標は概ね達成されてはいるものの,今後は知識や技術が定着するように授業構成を工夫することや社会人としての人間性やマナーを身につける機会を増やすこと,コミュニケーション能力が高まるように保護者や保育者と関わる機会を増やしていくことが必要であると考えられる.
著者
藤浪 将 眞下 達 吉瀬 謙二
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.117-118, 2016-03-10

教育,研究用プロセッサは中身がわかりやすいことが重要である.自由に使えるオープンな命令セットとして,RISC-Vがある.しかし,RISC-Vのインオーダ実行プロセッサであるRocket Coreは教育用でありながら,Chiselといわれる独自の言語で記述されており,可読性が低く,改良しにくいという欠点がある.一方,オープンソースのアウトオブオーダ実行プロセッサはまだ数が少なく,教育,研究ともに需要があると考えられる.そこで我々は,FPGA上で動作する,RISC-Vを用いたアウトオブオーダ実行のプロセッサを一般的なVerilog HDLで開発する.
著者
山下 義行 佐々 政孝 中田 育男 Yoshiyuki Yamashita Masataka Sassa Ikuo Nakata 筑波大学電子情報工学系 筑波大学電子情報工学系 筑波大学電子情報工学系
雑誌
コンピュータソフトウェア = Computer software (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.212-224, 1987-07-15

「なかよしグループ問題」は,ある条件下での集合の彩色問題を一般化し,より親しみやすい表現に直したものである.この問題ではなかよしグループの子供達に最適な色のキャンディを配ることを考えるが,配色に関する制約条件,局所的な最適条件および大局的な最適条件が絡みあい,必ずしも簡単には解けない.そこで,なかよしグループの中からキーとなる子供達を見つけ出し,その子らについて彩色問題を解くだけで総ての子供達への配色が決まる,という一般的な解法を提案する.応用として,ECLR属性文法に基づくコンパイラ生成系Rieの属性スタック自動割り当てプログラムを作成し,PL/0,Pascalサブセットコンパイラについて最適な割り当てを行った.
著者
中嶋 英介
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = The Bulletin of The National Institure of Japanese Literature (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.43, pp.183-209, 2017-03-16

本論文は廣瀬豊編纂『山鹿素行全集思想篇』(岩波書店、一九四〇~四二)の翻刻方針や書誌情報を見直したものである。『全集』は廣瀬豊が各地で行った資料調査をもとに収集・編集され、今日までも数々の先行研究で基礎的文献として利用されている。しかし『全集』は数多くの問題点を残した。『治平要録』や『山鹿語類』では朝廷批判や被差別部落に関する用語を削除しており、全て原典に沿って翻刻されたわけではない。また、『治教要録』は広瀬の調査当時に欠本していた巻が別の体裁で現存しており、書誌情報が大きく異なっている。では今後、我々はいかにして素行の文献に触れたらよいのだろうか。平戸山鹿家の文献は、長年平戸積徳堂に所蔵されていたが、明治期に一時松浦伯爵家(豊島区)に移る等、一部点在していた。近年は国文学研究資料館に特別コレクション「山鹿文庫」として移管され、一部史料をのぞいて閲覧可能である。そこには素行の著作のみならず、平戸積徳堂に伝わる文献目録等が所蔵されており、史料点数は一三〇〇以上にものぼる。『全集』の活用自体はあるべきとは思うが、翻刻姿勢に難を抱えるばかりでなく、編纂者廣瀬豊の意向が色濃く残っている。かかる前提のもとで、今後は山鹿文庫等を軸に原典との照合を踏まえた素行研究が必須といえよう。This paper is a reconsideration of the editing decisions and bibliographical history behind the Complete Works of Yamaga Sokō: Philosophical Essays (Tokyo: Iwanami shoten, 1940-1942), edited by Hirose Yutaka. This corpus, the result of Hirose’s efforts at gathering together and editing a large body of otherwise scattered material, has been, and still is, adopted as the base text for studies related to the philosopher Yamaga Sokō (1622-1685). Despite its privileged status, the Complete Works is not free of problems. For example, the essays entitled “Notes on the Art of Governing ” (Chihei yōroku) and “ Classified Sayings of Yamaga ” (Yamaga gorui) contain criticisms of the court along with observations on what are now referred to as outcaste hamlets (hisabetsu buraku, in existence during the Edo period and only nominally abolished in 1871). All of these sensitive passages have been expurgated. The Complete Works, therefore, is by no means a completely faithful reproduction of Yamaga’s writings. Moreover, in reference to bibliographical history, one of the fascicles of “Notes on the Art of Governing” was missing at the time when Hirose conducted his research. Though this missing portion has since been rediscovered, it belongs to a completely different manuscript. The relationship between this fascicle and the manuscript from which Hirose made his reproductions is not yet clear. How exactly we ought to approach Yamaga’s extant writings is still a matter of some uncertainty.The Yamaga family manuscripts were for many years housed in the Sekitokudō at Hirado (Nagasaki). During the beginning of the Meiji period, a portion of these manuscripts was moved to the Matsura mansion (in modern-day Toshima, Tokyo), leaving the collection scattered between two locations. In more recent years, these manuscripts have been transferred to the National Institute of Japanese Literature, where they now form what is known as the Yamaga Collection. Aside from a small number of historical documents, the majority of the collection is available for viewing. This collection consists not only Sokō’s writings, but an assortment of other documents, including bibliographic glossaries, for a total of more than 1,300 items. While the Complete Works is certainly a most useful resource, problems consequent upon Hirose’s editing choices still remain. Careful consultation of the original manuscripts is most certainly required.
著者
竹島 博之
出版者
東洋大学法学会
雑誌
東洋法学 = Toyohogaku (ISSN:05640245)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.97-125, 2013-03
著者
平見 知久 山下 義行 中田 育男
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第52回, no.ソフトウェア, pp.7-8, 1996-03-06

コンパイラ生成系では文脈自由文法や属性文法に基づき構文解析器、意味解析器の自動生成を行う。その中でも特に、1パス型の属性文法が使用されることが多い。しかし1パス型の属性文法においては右依存的な属性評価は許されない。したがってこれに基づく生成系では右依存的な属性評価は使用できず、記述において右依存的な属性評価としたほうが素直な場合についても、コンパイラ作成者が右依存のない記述に修正しなければならなかった。このような処理系の制約による記述の変更を行なった場合、得られた記述は本来作成者が意図していたものとは別のものであるため、記述の読解性が低下してしまうという問題があった。本発表では、右依存的な属性評価に対してバックパッチと呼ばれる処理を自動生成することにより、記述を変更することなく右依存的な属性評価を行えるような方法を提案する。また、現在我々が開発中である属性評価器生成系EAGLEに実現を行い、その有効性について検討を行なった。