著者
吉田 達平 松崎 拓也 佐藤 理史
雑誌
研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:21888779)
巻号頁・発行日
vol.2016-NL-225, no.2, pp.1-9, 2016-01-15

高校化学の計算問題の自動解答システムの開発を行った.システムではまず問題文に対する言語処理を行い,問題の意味を表す中間表現を生成したのち,計算処理を行い解答を導出する.本稿では特に前半の言語処理に関して,係り受け解析誤りの修正と,ゼロ代名詞のような省略された要素の検出について報告する.これらは非文法的なパターンを検出するヒューリスティクスと,高校化学分野に対する簡易的なオントロジーに基づき選択制限を記述した格フレーム辞書を用いて行う.
著者
宇野毅明 中原孝信 前川浩基 羽室行信
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL)
巻号頁・発行日
vol.2014-AL-146, no.2, pp.1-8, 2014-01-23

近年の IT 技術の発達により,ビッグデータを用いたデータ解析はますますその重要性を増している.しかし,ビッグデータ解析には,データの大きさ以外にも多様性という大きな困難がある.多様なデータは,それぞれ異なる特徴を持つグループから構成されているため,全体的に解析することが困難であり,まずグループ構造の解明が重要である.既存のクラスタリング手法やパターンマイニングによってグループ構造の解明にアプローチすると,解が大量,少数のグループしか見つけられない,類似する大量の解を生成,見つかるグループの大きさに大きなばらつきがある,計算コストが大きすぎる,といった難点にぶつかることになる.本稿では,グラフクラスタリング問題に対して,そもそもデータがどのようになっていればグループ構造が抽出しやすいかを考え,ノイズの少ない明確なデータを定義し,ノイズ混じりの生データを,そのグループ構造を壊さないように明確なデータへと変換する,データ研磨という手法を紹介する.また,データ研磨アルゴリズムとデータ研磨を行ったグラフが持つ数理的な構造を紹介し,将来的に 「明確なデータ」 を研究するための礎とする.
著者
MENG Channarith LEON-GONZALEZ Roberto
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.15-22, 2016-01

While earlier studies focus on credit booms in advanced and emerging market countries, this paper examines the characteristics and determinants of credit booms in developing countries. The results find that credit booms in developing countries are less likely to be associated with systemic banking crises. Rather, they are more likely to be the result of financial deepening than of dangerous buildups of financial risks; the prevention of credit booms in developing countries may thus be associated with higher opportunity costs in terms of foregone growth opportunities. Random effect probit and tobit regressions find some evidence that size of financial system and favorable macroeconomic conditions are among the determinants of credit booms. Although monetary and fiscal policies do not help in preventing credit booms in developing countries, we find that prudential regulations and supervision can play a much more effective role in preventing “bad” booms, while incurring substantially lower costs. Although “bad” booms are hard to identify ahead of time, the duration and size of booms, as well as the level of credit aggregates, appear to be useful indicators in determining them.
著者
山上 俊彦 Toshihiko Yamagami
雑誌
日本福祉大学経済論集
巻号頁・発行日
vol.45, pp.93-119, 2012-09-30

競争的労働市場においては, 賃金は限界生産力に等しくなり, 均等化する. しかし, 現実には産業間, 企業規模間において賃金格差は発生する. 賃金格差を人的資本理論に基づいた観察される個人属性の相違で説明を試みることには限界があり, 同一特性の労働者であっても格差は存在する. そのため, 観察されない個人属性, 効率賃金仮説等で残余部分を説明することが試みられてきたところである. 近年のデータ整備と統計解析手法の発展は, 観察されない個人属性や企業の賃金政策に起因する固定効果が賃金格差に重要な影響を与えていることを示した. 固定効果は労働市場における情報の不完全性といった摩擦に密接に関連していることから, 均衡サーチ・モデルを用いて賃金格差を説明することが試みられている. 代表的なモデルである BM モデルは労働者と企業のそれぞれの同質性と労働者の転職行動を前提として賃金掲示分布を決定するものであり, 応用範囲の極めて広いモデルである.
著者
糸山 克寿 坂東 宜昭 粟野 浩光 合原 一究 吉井 和佳
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2015-MUS-107, no.55, pp.1-6, 2015-05-16

本稿では,映像と音響信号に対して統合的に非負値行列因子分解 (NMF) を行うことでカエルなどの動物の合唱行動を分析する手法について報告する.カエルをはじめとした様々な動物は合唱 (音声によるコミュニケーション) を行うことが知られており,各個体がどのように合唱に参加しているかを調べることはその生態の解明に重要である.空間的な音場を光に変換するデバイスであるカエルホタルを用いて,ビデオカメラで録画した映像およびモノラル音響信号に対して統合的にNMFを行うことで,各個体の鳴き声を分離抽出する.カエルホタルの輝度とパワースペクトルの振幅をNMFのアクティベーションとして共有させることで,スペクトル形状が類似した同種別個体の鳴き声を相異なる基底へと分解する.
著者
高橋 光輝
雑誌
研究報告デジタルコンテンツクリエーション(DCC)
巻号頁・発行日
vol.2013-DCC-3, no.6, pp.1-8, 2013-01-14

シャノンの情報理論(Shannon 1949)1),伝統的な命題論理や述語論理を応用したラムダ計算(Frege 1997)2),そしてチュアリングマシン(Penrose 1995)3)などの発達により,デジタル技術は大規模情報処理を可能にさせた.今日の社会において,デジタル技術はコンピュータ工学から人間コミュニケーションの分野にまで多大な影響を与えている.その代表例がFacebook,YouTube,Blogなどをはじめとするソーシャルネットワーキングサービス(以下:SNS)の台頭である.情報社会において,SNSは人間コミュニケーションの必要不可欠な意思伝達手段として急速に広まりつつある(ソーシャルメディア白書2012)4).いわば21世紀の近代コミュニケーションに多大な影響を与えているものとしてSNSの存在感が増しているといえる.本論文ではこうした背景を捉えつつ,デジタルコミュニケーション論(高橋2011,2012)を通してどうSNSが今日のコミュニケーションに貢献しているのかを探る.第1章では,SNSの具体例としてFacebook,YouTube,Blogの特徴をそれぞれ取り上げ,どう今日の人間コミュニケーションにおいて活用されているのかを概説する.第2章では,筆者が2011年と2012年に独自に調査した,中国と日本のそれぞれの大学生のSNS使用状況に関するアンケートをもとに,実際にSNSがどういった動機により使用されているのかを分析する.その上で,SNSが人間コミュニケーションに与える影響を模索する.第3章では,中国と日本のSNS事情より考えられる情報拡散の可能性や問題性を捉え,広く社会に対する影響を論じる.第4章では,こうした社会問題を解決する際に考えられる事項を情報と意味の観点より考察し,メディアリテラシーの本質を探る.
著者
坂本 誠 岡崎 吾哉 岡本 直子 川口 晴之 永野 学 瀬戸 洋一
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.52-60, 2016-01-15

個人情報影響評価(PIA:Personal information Impact Assessment)は,個人情報の収集を伴う情報システムの導入,改修の際に,個人情報漏洩問題の回避あるいは低減を目的として個人情報に関するリスクを「事前」に評価するリスク管理手法である.海外ではPIAの実施例は多いが,その有効性を客観的に評価した事例はない.日本で普及させるには,有効性の検証が必要である.評価対象システムの個人情報に関するリスクを構築前に可視化することができるか,システムを適正に構築運用するためにPIA実施依頼組織の個人情報保護意識を向上させることができるかという観点からPIAの評価を行った.個人情報保護意識が約10% 改善するなど,有効性があるという結果を得た.
著者
高橋 信晴 八村 広三郎 吉村 ミツ
雑誌
じんもんこん2003論文集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.31-38, 2003-12-17

モーションキャブチャシステムによって得られる身体動作データは,無形文化財としての舞踊のデジタルアーカイブおよび舞踊の研究にも利用されるようになってきている.本報告では,舞踊の身体動作をモーションキャブチャによって計測したデータを対象として,類似している身体動作データを検索するための手法を提案し,主に日本舞踊の動作を対象とした実験の結果と評価について述べる.身体動作の類似性の定義,動作データの正規化の方法,全身での検索と身体の一部分のみに注目した検索などについて検討し,実験により良好な結果が得られることが確認された.
著者
佐々木 亨
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = National Institure of Japanese Literature (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.32, pp.209-241, 2006-02-28

外装から口絵までは木版による合巻と同一でありながら、本文は活版、挿絵は数丁毎に上(下)段に置かれるものを、昭和初頭に三田村鳶魚氏等は東京式合巻と命名し、興津要氏もこの名称を用いて今日に至る。その嚆矢は明治十二年刊の高畠藍泉作『巷説児手柏』とされていた。しかしその前年藍泉は大阪に滞在し、その大阪では既に活字版を用いた小説類が作られ始めていた。摺付表紙を持つ本文は銅板のもの、挿絵が本文の上(下)段に配されるもの、見返しにおいて筆跡を伝えるべく木版にしたもの、連載の挿絵を転用しているもの、連載の母胎から単行本化されるもの等々、『児手柏』出現前に実験的な試みがなされている。しかもこれらの出版には、藍泉刎頸の友宇田川文海が関わっている如くである。藍泉はこれら大阪版の存在を換骨奪胎して、東京で商品価値を持ちそうな造本を工夫した可能性が高いのである。これらの先行する大阪版の存在が確認される以上、東京式合巻なる名称は不適切といわなければならない。また挿絵が毎丁配されていないものを合巻と呼ぶのも賛成できない。この際、活版草双紙なる名称を提案したい。草双紙の名称を用いる所以は、合巻との造本上における共通要素の残存と、建前として想定された読者層の一致である。実際、藍泉自身当時自らの著作を草双紙と呼んでいるのである。At the beginning of Showa Period, there was Tokyo-shiki Goukan named by Mitamura Engyo, and Okithu Kaname also used this name. But there had been the original version in the form of this style in Osaka. Takabatake Ransen remade Osaka version into Tokyo-shiki Goukan in older to have a commercial value in Tokyo. That is to say, Tokyo-shiki Goukan is not correct naming, because Ransen only arranged components of Osaka version to it.
著者
小西 哲平 神山 剛 川崎 仁嗣 稲村 浩
雑誌
マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.4, pp.249-256, 2012-10-10

Android のバックグラウンドタスクには,その動作特性から実行時間においてアイドル時間が相当の割合を占めているためタスクの重畳実行による消費電力の効率化の余地がある.本研究は消費電力削減と同期干渉による BG タスクの意図しない大域起動同期への課題を指摘し,既存の Android OS のタスク管理機能の改善のためのバックググラウンドタスク実行タイミング制御方式を提案する.
著者
菊地 誠一
雑誌
陽明学
巻号頁・発行日
vol.17, pp.98-122, 2005-03-31