著者
大戸 朋子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本発表は、「腐女子」と呼ばれる男性同性愛を主題とするフィクションや想像などを嗜好する少女/女性たちの二次創作活動とメディア利用を対象として、メディアを含むモノとの連関の中で形成される腐女子のつながりとはどのようなものであるのかを明らかにするものである。調査からは、二次創作を行う腐女子のつながりが、個々人の「愛」という不可視のモノを中心に形成され、メディアを通して評価されていることが明らかとなった。
著者
善教 将大 坂本 治也
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.96-107, 2017

<p>本稿の目的は,何が寄付行動を促進する要因なのかを,全国の有権者を対象とするサーベイ実験を通じて明らかにすることである。先行研究は寄付行動の規定要因に関する重要な知見を蓄積してきたが,他方でデモグラフィーなど個人的特性との関連性への傾斜や推定結果に存在する内生性や欠落変数バイアスへの対処が不十分といった問題を抱える。さらにこれらの問題を解決可能な実験的手法に基づく既往研究にも,代表性の低いデータを用いている点など課題が山積している。本稿では,これら先行研究の問題を解決可能な実験的手法を用いて,寄付行動の規定要因を分析する。具体的には,全国の有権者を対象とする無作為化要因実験(randomized factorial survey experiment; RFSE)によって,寄付の有無と寄付金額に何が影響を与えるのかを明らかにする。実験の結果明らかになった知見は次の2点である。第1に寄付を募る際,他者の1人あたりの寄付金額表示額が少なく,寄付金を管理運営費にあてる割合が小さく,物的・金銭的インセンティブを付加した返礼をしない方が,寄付確率が高くなる。第2に寄付を募る主体がNPO法人以外であり,寄付金を管理運営費にあてる割合が小さく,控除対象にできる方が,寄付金額が高くなる。これら本稿の知見は,先行研究に疑義を呈しうるものであると同時に,実際の政策展開にもいかすことが可能なものである。</p>
著者
瀧川 一学
雑誌
人工知能
巻号頁・発行日
vol.34, 2019-09-01
著者
黒澤 努
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.125, no.6, pp.330-334, 2005 (Released:2005-08-01)

バイオメディカルサイエンスの進展に動物実験は欠かせない.これは近代になって人体実験が倫理的に許されないとする一方,新薬の開発,新規治療法の開発,またそれらを支える学問の進展を待ち望む多くの病める人たちが存在するからである.われわれの不断の努力にもかかわらず,難病は存在し続けている.これらの社会的弱者とも言われる患者のために動物実験の必要性はますます増している.その一方,動物実験に反対する人々が存在する.彼らは動物実験を動物に対する生体実験だとして,動物虐待であるから反対するとして,多くの動物愛護家の支持をとりつけ広汎な活動を展開している.しかし,その根底にある活動は実験動物解放などという,とても動物愛護に基づいた行動とは思われない動物虐待行為が行われ,逆にこれは社会の弱者の救済の道を閉ざす活動と思われる.これとは別に健全な動物愛護運動を展開する人々も存在する.彼らは真に動物が可愛い存在だと認識し,その上で弱者も救済しなければならないので動物実験は必要であるができるだけ動物の苦痛を少なく動物実験を行うよう求めるのである.動物実験を行う我々はこの2者を明確に区別し,動物権利論に基づく動物実験反対運動は断固として否定し,健全な動物愛護運動団体とともに歩むべきである.そのためには3Rsと呼ばれる,Reduction, Replacement & Refinementに代表される動物実験代替法の推進をなお一層活性化すべきである.多くの先進国で制定されている動物愛護法の遵守,さらには法に基づく種々の規約を制定遵守するだけでなく,国際的な動向に適合した,節度ある動物実験を行うべきである.こうした活動により多くの国民の信を得て,バイオメディカルサイエンスのますますの発展に寄与しなければならない.そのためには,動物愛護に基づく実験動物福祉の考え方と,動物実験反対運動を混同してはならない.
著者
久野 靖
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.1-8, 2018-08-12

筆者らは文部科学省委託事業として「情報学的アプローチによる『情報科』大学入学者選抜における評価手法の研究開発」を実施している.その一環として,思考力・判断力・表現力を評価する手法,ならびにそのような評価を行う問題を作成する方法について検討中である.本発表では,2017 年度までの事業において定義した7 つの思考力等に対応した作問手順について紹介する.
著者
長谷川 直子 横山 俊一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.202-220, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
18

本稿では,学生が主体となった雑誌の出版やテレビ出演などのアウトリーチ活動から,社会がそれをどのようにとらえ,また学生自身が社会の反応をどのようにとらえたのかについて考察した.当初は授業の成果を出版することで地理学をアウトリーチする意図があった.しかし社会からは,男性的なイメージの強い地理に女子がいることの意外性から女子の側面が取り上げられ,発信した学生の中には当初の意図と違うとらえ方をされたことに対する戸惑いがあった.結果的には,その意外性から多くのマスコミに取り上げられ多くの人にアウトリーチできた.学生主体のアウトリーチは,学術的専門性とはまた別の次元でその親しみやすさ,面白さを伝えられるという点で,学問に直接的な興味をもたない人々へのアプローチを可能にする.研究者が先端的な研究内容をアウトリーチするのとは対象者・目的・内容が異なり,一つの効果的な社会へのアプローチ方法であると考えられる.
著者
谷村 嘉彦 富田 純平 吉富 寛 吉澤 道夫 箱崎 亮三 高橋 荘平
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.141-146, 2016 (Released:2016-11-18)
参考文献数
10
被引用文献数
3

Photon spectra were measured inside and outside a house in Minami-Soma city by using a NaI(Tl) scintillation spectrometer. The photons were categorized into three groups according to their energy. The groups were (1) scattered photons, which include low energy photons, (2) direct photons from 134Cs and 137Cs sources and (3) the other photons. Then the ratios of the ambient dose equivalents H*(10) of the scattered photons to those of the direct photons from the 134Cs and 137Cs sources have been evaluated from the measured photon spectra. The ratios are high inside the house compared with those out of the house. It was found that the scattered photons contribute to the H*(10) by more than 50% inside the house. The ambient dose equivalent average energies of the scattered photons are around 0.25 MeV both inside and outside the house. These data is worthwhile to design the optimum shielding for the protection against the public radiation exposure.

9 0 0 0 OA 出版年鑑

著者
東京書籍商組合 編
出版者
東京書籍商組合事務所
巻号頁・発行日
vol.昭和6年版, 1931
著者
石井 秀宗 ISHII Hidetoki
出版者
名古屋大学高等研究教育センター
雑誌
名古屋高等教育研究 (ISSN:13482459)
巻号頁・発行日
no.18, pp.23-38, 2018-03

大学入試における共通テストの複数回実施は、検討が始められてから30年経過してもまだ実現されていない。共通テストの複数回化は受検者にとって利益があるとされながら、日程上の問題や技術的な問題等を理由に見送られ続けている。日本のテスト文化も共通テストの複数回実施には適していない。しかし、近年実施されている、もしくは実施予定のいくつかのテストは、共通テストの複数回実施を可能にしうる要素を含んでいるように見受けられる。そこで本稿では、日本のテスト文化、これまで複数回実施が見送られてきた理由や課題、近年のテストの状況等の観点から、複数回実施の実現可能性について検討した。その結果、(1)選抜試験にするのか資格試験にするのかというテストの活用法の問題、(2)テスト得点の過度な重視とそれに起因する問題、(3)テストを合理的に設計・開発するための知識基盤が脆弱であるという問題、という3つの課題が依然残る要因として指摘された。Over 30 years have passed since multiple administration of the national university entrance examination was first considered. However, multiple administrations have still not been implemented. This paper examined what makes administering the examination multiple times difficult, especially considering testing culture in Japan, stated reasons and problems, and characteristics of several recent tests. Results revealed three remaining problems: (1) Whether the test should be used for selection or certification was unclear; (2) too much significance was placed on test scores; and (3) educational measurement and psychometrics have not become widespread in Japan.ファイル差し替え(2018/4/20)