著者
勝谷 紀子 岡 隆 坂本 真士 朝川 明男 山本 真菜
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.107-115, 2011

本研究は,日本の大学生が「うつ」に対してどのような素朴な概念(しろうと理論)をもっているかについて,自由記述データに対するテキストマイニングおよびKJ法で検討した.首都圏の313名の大学生が調査に回答した.「うつ」という主語を用いて,文章完成法による自由記述を求めた.305名分の自由記述の内容について3名の評定者によるKJ法を用いた内容整理,および形態素レベルに分割してテキストマイニングを用いた内容分析をおこなった.その結果,うつの一般的な特徴,うつの人々へのイメージ,うつの特徴,うつの原因,うつの治療法についての記述がみられた.うつのしろうと理論を検討することの理論的示唆について考察した.
著者
後藤 崇志 石橋 優也 梶村 昇吾 岡 隆之介 楠見 孝
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
2015
被引用文献数
7

We developed a free will and determinism scale in Japanese (FAD-J) to assess lay beliefs in free will, scientific determinism, fatalistic determinism, and unpredictability. In Study 1, we translated a free will and determinism scale (FAD-Plus) into Japanese and verified its reliability and validity. In Study 2, we examined the relationship between the FAD-J and eight other scales. Results suggested that lay beliefs in free will and determinism were related to self-regulation, critical thinking, other-oriented empathy, self-esteem, and regret and maximization in decision makings. We discuss the usefulness of the FAD-J for studying the psychological functions of lay beliefs in free will and determinism.
著者
森岡 隆 手島 和典 吉嶺 絵利 中谷 正 高橋 佑太 倉持 宗起 橋本 貴朗 林 信賢 中村 裕美子 中溝 朋美 高橋 智紀 若松 志保 楠山 美智子 成田 真理子 油田 望花 川口 仁美 安生 成美
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

源兼行ら11世紀半ばの3人の能書が分担揮毫した『古今和歌集』現存最古の写本である「高野切本古今集」について、巻五・巻八・巻二十の完本3巻を除く17巻を復元した。このうち巻一・巻二・巻三・巻九・巻十八・巻十九の6巻は零本・断簡が伝存するものの、他の11巻は伝存皆無だが、各々の書風で長巻に仕上げて展示公開するとともに、それらを図版収載した研究成果報告書を刊行した。なお巻五についても、後に切除された重複歌2首の各々の当初の位置を特定し、復元し得た。
著者
是永 論 浅岡 隆裕 柄本 三代子 金 相美 岡田 章子 清水 真 酒井 信一郎 重吉 知美 池上 賢 加藤 倫子
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、日本社会および日本人に関して、「劣化」という表現が言説上について頻繁に使用されているという状況を踏まえ、メディア言説上における劣化表現のありようを解明するために、活字メディアを中心に内容分析を行ったほか、一般のメディアの受け手に対する質問紙およびインタビュー調査から得られたデータの分析結果から、言説どうしが形成する関係と、言説が人々に消費される具体的な過程を明らかにした。
著者
佐藤 正寛 高吉 慎太郎 岡 隆史
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.783-792, 2017-11-05 (Released:2018-08-06)
参考文献数
48
被引用文献数
2

「磁性体の磁化の向きを限界まで素早く変えたい.」これは次世代情報素子のコアとなりうるスピントロニクス技術であるのみならず,多数スピンの非平衡統計力学として基礎物理学的にも重要な概念である.近年この問題に対して,光を用いた戦略が盛んに議論されている.レーザーパルスの整形・変調,メタマテリアルやプラズモニクスなど光科学分野の実験の進展は目覚ましい.そのような最先端の光技術を上手に使えば,スピンの集団運動にとっての量子力学的な限界速度であるピコ(10-12)秒という時間スケールで磁化を制御できるのだ.この「超高速スピントロニクス」の実現には,磁性体と光との結合様式(光・物質結合)や時間変化する外場中における量子系の時間発展(量子ダイナミクス)を理解する必要がある.しかし,多自由度を取り扱う固体物理分野では量子ダイナミクス研究の進歩が遅れていた.その一因として,多自由度の協調現象を扱う基本的な枠組みが整備途上であり,平衡系で慣れ親しんだエネルギーや固有状態などの議論の足がかりを失うことが挙げられる.レーザー中の多体系の解析では「非平衡系の相転移とは何か? それをどう特徴付けるべきか?」などの疑問の解消が望まれる訳である.実はこの問題は,磁気共鳴,量子化学,量子光学などのダイナミクスとの関わりが避けて通れない分野においては限定的ながら解決されている.レーザー電磁場を時間について周期的な外場とみなすと,系は離散的な時間並進対称性を持つ.このときエネルギーや固有状態といった概念が復活するのだ.この「フロケ理論」,そして回転枠などへの「ユニタリ変換の方法」を使うと,時間依存ハミルトニアンが駆動する多体系ダイナミクスを静的な有効ハミルトニアンで理解できるのである.望みの物性が実現するような動的状況を与える外場をフロケ理論の有効模型からさかのぼって設計することを,物性を操るという意味を込めて「フロケエンジニアリング」と呼ぶ.多体系のフロケエンジニアリングは,冷却原子系や電子系で発展してきたが,近年磁性体の制御にも適用されはじめている.例えば,標準的な磁性絶縁体に円偏光レーザーを照射し磁化を生成・成長させる方法が提案されている.これはレーザー周波数のエネルギースケールに対応する大きな静磁場が有効模型に現れることに由来する.レーザーによるスピン流生成は超高速スピントロニクスの主要テーマの一つであり,特異な光・物質結合を持つマルチフェロイクス(強誘電磁性体)が注目されている.この系ではスピンはレーザーの磁場成分だけでなく電場にも応答する.あるクラスのマルチフェロイクスに円偏光レーザーを照射するとベクトルスピンカイラリティ(またはジャロシンスキー・守谷相互作用)が生じることが有効模型・数値計算から示唆される.これを利用したスピン流の生成,およびその検出方法について,現実的な実験セットアップの理論提案もなされている.レーザーを用いた物性制御は従来型秩序にとどまらず,系のトポロジカル秩序をも変化させられる.その具体例としてキタエフ模型への円偏光レーザー印加の研究がある.有効模型に生じるホッピング項がスピン液体基底状態にギャップをもたらし,系をエッジ状態を持つトポロジカルな状態へと変化させることが予言される.
著者
岡 隆史 青木 秀夫
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.234-242, 2012-04-05 (Released:2019-10-19)
参考文献数
48
被引用文献数
1

非平衡強相関系について解説する.これは強相関電子系の光誘起相転移や非線形伝導などの研究に発し,冷却原子気体における光格子中の非平衡ダイナミックスなどとも関連して,実験・理論が急速に進展している分野である.QEDにおけるシュウィンガー機構など強電場中の場の理論における概念が,物性物理において多体効果を舞台として発展している様子を,物性版"strong field physics"として解説する.
著者
須田 孝徳 石井 裕明 外川 拓 山岡 隆志
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.60-71, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
26

消費者が使用するデバイスの多様化とともに,デバイスが消費者行動に及ぼす影響に注目が集まっている。本研究では,デバイスの違い(スマートフォン/PC)が消費者の解釈レベルに及ぼす影響を検討するとともに,デバイス特性と解釈レベルの一致が,消費者の評価や行動に及ぼす影響について検討する。本研究では3つのオンライン実験と,1つのフィールド調査を通した検証を試みる。研究1では,スマートフォン(vs. PC)で対象を見たとき,消費者はその対象をより近いと知覚することを明らかにする。研究2では,スマートフォン(vs. PC)を使用した場合,消費者の解釈レベルが低次になることを確認し,研究3では,スマートフォン(vs. PC)の使用が,低次の解釈レベルに対応した広告の評価に正の影響を及ぼすことを確認する。最後に研究4では,実際の購買データを分析することで,研究1~3で得られた知見の実務への応用可能性を検討する。
著者
島岡 隆行 中山 裕文
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1-10, 2014 (Released:2015-04-27)
参考文献数
13

廃棄物埋立地の遮水工に遮水シートが用いられてから約40年が経過し,今では最も一般的で,多くの実績を有する遮水材料となっている.その間,遮水シートの材料特性に関する知見に比べて,廃棄物埋立地への遮水材料としての適用に関する知見は不足していた.本報では,実埋立地の遮水シートを対象とした劣化の実態と耐久性の予測手法の提案を始め,リモートセンシング技術を活用した精度高い遮水シート敷設時の接合検査法の開発や広範囲にわたる迅速な遮水工の管理手法を紹介している.また,廃棄物処分場が抱える問題と解決のための遮水シートに係る研究課題について述べている.
著者
宮崎 彰吾 皆川 陽一 沢崎 健太 飯村 佳織 脇 英彰 田原 伊織 吉田 成仁 赤岩 忠孝 佐保田 満美 田村 憲彦 藤岡 隆司 森野 一巳
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.254-265, 2019 (Released:2020-07-13)
参考文献数
20
被引用文献数
1

【背景】欠勤には至っていないが、 様々な徴候や症状で労働遂行能力が低下している労働者の状態 (プレゼンティーイズム) が、 企業に多額の損失を与えている。 しかし、 包括的かつ実効性のある労働衛生対策は未だ提示されていない。 そこで、 鍼治療を含む施術費用への助成が労働者のプレゼンティーイズムに有用であるか中間解析した結果を報告する。 【方法】プレゼンティーイズムと自覚しているオフィスワーカーを対象として、 4週間のランダム化群間比較試験を行い、 各職場において励行されている通常のプレゼンティーイズム対策を任意で行う対照群、 通常の対策を任意で行うことに加えて鍼治療を含む施術に要した費用に対して最大8,000円まで助成を受けることができる介入群、 のいずれかに割り付けた。 主要評価項目はWHO-HPQの相対的プレゼンティーイズム値 (1から低下するほど労働遂行能力が低下していることを意味する) で、 最大の解析対象集団を対象に解析した。 【結果】52例を介入群30例と対照群22例とに割り付けた。 介入群では、 首や肩のこり (67%)、 腰痛 (26%)、 うつ (5%)、 アレルギー (2%) に対して鍼治療を平均1.4回受療して合計7,219円支払い、 6,556円の助成を受けた。 その結果、 相対的プレゼンティーイズム値は対照群0.91に対して介入群0.95で、 群間差は0.04 (ES(r)=0.22、 P=0.12) であった。 【結論】プレゼンティーイズムと自覚しているオフィスワーカーに鍼治療の費用に対して4週間に合計最大8,000円助成する、 と提示すると平均1.4回受療し、 提示しない場合と比べて労働遂行能力が約4% (一人当たり19,691円に相当) 向上することが示唆された。
著者
後藤 崇志 石橋 優也 梶村 昇吾 岡 隆之介 楠見 孝
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.32-41, 2015 (Released:2015-04-25)
参考文献数
44
被引用文献数
1 7

We developed a free will and determinism scale in Japanese (FAD-J) to assess lay beliefs in free will, scientific determinism, fatalistic determinism, and unpredictability. In Study 1, we translated a free will and determinism scale (FAD-Plus) into Japanese and verified its reliability and validity. In Study 2, we examined the relationship between the FAD-J and eight other scales. Results suggested that lay beliefs in free will and determinism were related to self-regulation, critical thinking, other-oriented empathy, self-esteem, and regret and maximization in decision makings. We discuss the usefulness of the FAD-J for studying the psychological functions of lay beliefs in free will and determinism.
著者
勝谷 紀子 岡 隆 坂本 真士
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.316-322, 2018 (Released:2018-08-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

This study examined the lay theory characteristics of “modern-type” depression using a text mining method. A total of 225 undergraduate students filled in a questionnaire. They answered questions about the characteristics and causes of as well as reasons for “modern-type” depression using free-form text entry. Then, they answered questions about their sources of information on “modern-type” depression. The results showed that participants mainly described that “modern-type” depression is common among young people and that people with “moderntype” depression lack awareness of the illness. Also, participants indicated that they obtained knowledge about “modern-type” depression from different information sources such as television and the internet.
著者
森田 学 稲垣 幸司 王 宝禮 埴岡 隆 藤井 健男 両角 俊哉 伊藤 弘 山本 龍生 吉江 弘正
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.352-374, 2013-01-16 (Released:2013-04-24)
参考文献数
106

2011年8月「歯科口腔保健の推進に関する法律」が公布・施行された。高齢化が進む中,生涯を通じて歯科疾患の予防や口腔機能の維持に取り組み,国民が健全な生活を営める社会の実現に向けた法的な整備が開始したことになる。この動きを受けて,本論文では,日本歯周病学会として,ライフステージごとの歯周病予防戦略について提案する。How to 式ではないので,「読んですぐ実践できる」という種類のものではない。むしろ,どのような考えをベースにこれからの歯周病対策をすべきか,診療室・地域において,歯周病学会会員ならではの活躍の参考資料になればと願う。日本歯周病学会会誌(日歯周誌)54(4):352-374, 2012
著者
森岡 隆
出版者
筑波大学大学院人間総合科学研究科芸術専攻
巻号頁・発行日
pp.1-40, 2011

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:基盤研究(C)2007-2010
著者
山本 真菜 岡 隆
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.89.16020, (Released:2018-02-20)
参考文献数
30
被引用文献数
1

Suppressing stereotypic thoughts leads to paradoxical effects (i.e. suppressing a stereotype facilitates the use of the stereotype itself). Recent research on paradoxical effects in stereotype suppression has demonstrated that replacement thoughts decrease its paradoxical effects. This study examined the effectiveness of female counterstereotypes, major non-dominant female stereotypes, and minor non-dominant female stereotypes as replacement thoughts in suppressing dominant female stereotypes. In a lexical decision task, the participants were primed with either female counter-stereotypes, major non-dominant female stereotypes, minor non-dominant female stereotypes, or non-human objects, and thus they were likely to use those that were activated as replacement thoughts. Next, they were given a sentence-stem completion task that served as a manipulation of female stereotype suppression. Finally, they were given another lexical decision task and the response latencies of the stereotypic vs. non-stereotypic words were recorded. The results indicated that regardless of major or minor nondominant female stereotypes as replacement thoughts decreased the paradoxical effects of suppressing dominant female stereotypes. We discussed the way of activation of replacement thoughts and the role of non-dominant stereotypes as replacement thoughts in suppressing dominant stereotypes.
著者
山本 真菜 岡 隆
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.149-159, 2016-03-18 (Released:2016-03-28)
参考文献数
34
被引用文献数
2

Stereotype suppression leads to paradoxical effects (i.e., stereotype suppression facilitates the use of that stereotype). However, studies on paradoxical effects in stereotype suppression have not sufficiently addressed the relationship between paradoxical effects and individual differences in cognitive tendencies. The present study examined the relationship between cognitive complexity in person perception and the paradoxical effects of stereotype suppression. First, the participants answered a Rep test (role construct repertory test) that served as a measure of cognitive complexity. Second, they were given a sentence-stem completion task that served as a manipulation of stereotype suppression. Third, they were given a lexical decision task and the response latencies of the stereotypic vs. non-stereotypic words were recorded. The results indicated that the participants who were low in cognitive complexity showed paradoxical effects, while those who were high in cognitive complexity did not show paradoxical effects. A relationship between cognitive complexity and paradoxical effects was indicated.
著者
益岡 隆志
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.1982, no.82, pp.48-64, 1982-09-30 (Released:2010-11-26)
参考文献数
13

Basic assumptions made in the present paper are that a passive sentence be considered to be a marked form as against the corresponding active sentence and that the meaning of a marked sentence can be described on the basis of its unmarked counterpart. In order to elucidate the meaning of passives, it is necessary to clarify what is added to the meaning of an active sentence by passivization. Thus, we must concern ourselves with the question of what motivates passivization, i. e., what the functions of passivization are.Toward that goal, this paper first sets forth the proposal that two types of passives be differentiated: they are here referred to as the ‘promotional passive’ and the ‘demotional passive’, where passivization is motivated by the promotion of a non-subject NP to subject position and the demotion of a subject NP to non-subject position, respectively. It is further argued that the principal motivations for the promotions involved in passivization are the foregrounding of affectivity and the characterization of a certain NP. Hence, two subtypes of the promotional passives are distinguished, the ‘affective passive’ and the ‘predicational passive’. On the other hand, the motivation for demotions lies in the backgrounding of an agent NP.