著者
八木 勲 水田 孝信 和泉 潔
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2388-2398, 2012-11-15

企業不祥事や自然災害の影響でファンダメンタルズが急激に悪化し,その企業の株価が暴落することがある.その直後,株価が反発することも経験的に知られている(リバーサル現象).これまでの実証研究では,リバーサル現象の発生要因はオーバリアクション仮説が有力視されているものの,定量的な評価は行われておらず,はっきりとした結論は出ていない.本研究では,価格決定方式の1つである板寄せ方式を採用した人工市場を用いて,理論株価急落を原因とする株式市場の暴落に対して,オーバリアクション仮説を考慮せずにリバーサル現象が発生することを確認した.そして,リバーサル現象発生時の取引価格決定メカニズムを分析し,エージェントの予想株価のばらつきと注文の需給関係の偏りによってリバーサル現象が引き起こされることを突きとめた.一方,ザラ場方式を採用した人工市場を用いると,リバーサル現象が必ずしも起こるとは限らないことが判明した.その結果,板寄せ方式を採用した市場の方が,ザラ場方式を採用した市場よりもリバーサル現象が発生する可能性が高いと考えられる.
著者
秋月 康志 今泉 貴史
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT)
巻号頁・発行日
vol.2010-IOT-9, no.7, pp.1-6, 2010-05-06

現状のマルウェア対策では,アンチウイルスソフトウェアを各ホストにインストールする方法が標準的となっている.しかし,ルートキット技術を利用して自身の存在を隠すステルスマルウェアが蔓延し始め,既存のアンチウイルスソフトウェアによる検知や対策は困難になってきている.本論文では,仮想化技術を用いて OS の外部から OS を監視することで,マルウェアを隠蔽しているルートキットを検知・無効化する手法を提案する.この手法を用いることで,既存のアンチウイルスソフトウェアでもステルスマルウェアを検知できるようになる.
著者
尾上 浩一 大山 恵弘 米澤 明憲
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.163-176, 2010-06-21

カーネルレベルで稼働するマルウェア (カーネルレベルマルウェア) による攻撃は,システム全体に被害を与えたり,攻撃の検出が困難であったりすることから,その脅威は深刻である.これまでカーネルレベルマルウェアに対する様々なセキュリティシステムが提案されているが,保守的すぎるカーネル拡張の制限や適用時の実行時の性能低下に関して改善すべき点がある.本論文では,仮想マシンモニタ (VMM) を用いて,VM 内で稼働する OS カーネルの振舞いを制御するセキュリティシステム ShadowXeck を提案する.この制御は,読み込み専用のメモリ領域の保護と,OS カーネルにより発行された間接呼び出し命令や間接ジャンプ命令の制御によって実現される.ShadowXeck は,OS カーネルレベルよりも高い特権レベルの VMM による制御であるため,VM 内から ShadowXeck の振舞い制御機構を無効化することは困難である.我々は,AMD 64 アーキテクチャ上で Xen を用いて ShadowXeck を実装し,既存のカーネルレベルマルウェアを用いた ShadowXeck による OS カーネルの振舞い制御の確認や実行時オーバヘッドの計測を行った.
著者
永谷 直久 吉積将 杉本 麻樹 稲見 昌彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.1372-1379, 2012-04-15

人が環境とインタラクションを行ううえで重要な要素の1つである自己運動感覚の提示のためには,視覚誘導性自己運動知覚(ベクション)と前庭感覚提示を組み合わせた視覚前庭感覚提示システムの構築が必要である.人への前庭感覚の提示手法として,前庭感覚電気刺激(GVS: Galvanic Vestibular Stimulation)は小型軽量なシステムの構築が可能なため,体験環境に依存しにくい前庭感覚インタフェースとして利用可能である.本論文では,このGVSが主観的視野運動を生起することに着目し,交流波形(0.5-2.0Hz)を用いたGVSに起因する回旋性視野運動の計測手法を提案する.提案する計測手法は交流波形を用いたGVSにより生起される回旋性の主観的視野運動に対して,暗室内において顎台を用いて頭部を固定した被験者が,回旋運動を行う視標の位相と振幅を操作することで主観的静止状態になるように調整してもらい,このときの視標の回旋角度と位相のずれを主観的視野運動の回旋角度と刺激からの位相ずれとする手法である.被験者を用いた心理物理実験により,提案手法を用いて回旋角度および刺激からの位相ずれが定量的に測定できることを示した.
著者
服部 健太
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.99, 2012-03-30

Hindley/Milner多相型システムは様々なプログラミング言語の型システムの基盤として広く用いられてきた.現実的なプログラミング言語においては,Hindley/Milner多祖型システムの表現力を高める必要があり,多相レコードやオーバロード,型クラスといった数多くの拡張が提案されてきた.これらの拡張は,型変数に述語やカインドといったある種の制約を付け加えることで実現している.我々はHindley/Milner多相型システムを拡張するための新しいアプローチを提示する.我々のアプローチの鍵は,(1)暗黙的に型づけられたプログラムをそれと同等な明示的に型づけられたプログラムに変換し,(2)型レベルでそのプログラムを評価しながら型判定を行う,というものである.我々のアプローチは,制約付きの型のように型システムを複雑化することなく,簡単に拡張することができる.本発表では,例としてオーバロードと多相レコードを扱うシステムについて検討する.
著者
河野 のり子 野村 浩道
出版者
松本歯科大学学会
雑誌
松本歯学 (ISSN:03851613)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.21-26, 1979-06-30

Biochemical and histochemical studies on the phosphatase activities of the mucous membrane of the frog tongue were carried out. The biochemical study strongly suggested that the mucous membrane of the tongue contains both ATPase and alkaline phosphatase activities. But, since the ATPase activity was dependent on the pH of the incubating solution and the maximal activity was obtained around pH 9.0, the ATPase activity may be partly due to the alkaline phosphatase activity. The histochemical study revealed that ATPase activity was localized on the superficial layer of the tongue. Great activity was exhibited in the sensory discs of the fungiform papillae and in the ciliated cell layer of the back of the tongue. Alkaline phosphatase activity could not be demonstrated histochemically in the present study.
著者
土井 美和子
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1230-1230, 2012-10-15
著者
江藤 正通 堀場 匠一朗 浅井 宏樹 津邑 公暁 松尾 啓志
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.55-65, 2012-10-15

マルチコア環境における並列プログラミングでは,メモリアクセスの調停には一般にロックが用いられてきた.しかしロックを使用する場合,デッドロックの発生や並列性の低下などの問題がある.そこでロックを用いない並行性制御機構として LogTM が提案されている. LogTM では possible_cycle というフラグを用いて競合を解決する.しかし,この競合解決手法では starving writer が発生し,長期にわたるストールや競合の繰返しにより性能が大きく低下してしまう.そこで本稿では, starving writer の解決手法を提案する.提案手法の有効性を検証するためにシミュレーションによる評価を行った結果,既存の LogTM に比べて最大で 18.7%,平均で 6.6% の性能向上が得られることを確認した.
著者
堀場 匠一朗 江藤 正通 浅井 宏樹 津邑 公暁 松尾 啓志
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.43-54, 2012-10-15

マルチコア環境における並列プログラミングでは,共有メモリへのアクセス制御にロックが広く用いられてきた.しかし,ロックには並列性の低下やデッドロックの発生などの問題がある.そこで,ロックを用いない並行性制御機構として,トランザクショナル・メモリが提案されている.このハードウェアによる一実装である LogTM においては, possible_cycle と呼ばれるフラグを用いてデッドロックの発生を検出する.しかしこの手法では,デッドロックの判定に偽陽性が存在し,アボートが過剰に発生する可能性がある.そこで本稿では, 3 者以上のトランザクション間の依存関係を考慮することでデッドロックを検出可能とする手法を提案し,さらに適切なアボート対象を選択する手法も検討する.シミュレーションによる評価の結果,提案手法によりアボートの発生が抑制され,ログの書き戻しコストなどが削減されることで,最大 31.5% の高速化を確認した.
著者
江藤 香 松居 辰則 椋田 實 樺澤 康夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.2123-2140, 2010-11-15

ケアサービスの質の向上にはケアニーズを的確に把握するためのノウハウ情報が重要な要素である.我々はケアプラン策定過程のノウハウ情報共有システムを開発した.我々は熟達者が策定したケアプランを様々な形態で可視化し,初心者がこれらを観察,比較することにより熟達者との違いに気づくことを通して,ノウハウ情報を表出・共有させる方法を提案する.気づきを記録,蓄積し,参照させることで,ノウハウ情報を共有することができる.気づきを促進させるために熟達者がアセスメント結果を読み取った文書間の差異に基づいて,各文書を2次元に配置して可視化した.可視化することによりノウハウ情報表出・共有を支援する.ケアの現場において2年間試用した結果から,本システムがノウハウ情報の表出・共有に有効であることが確認された.さらに,ノウハウ情報の表出・共有により個人の能力の向上とともに組織の成長や活性化の可能性が確認された.
著者
松岡 是伸 小山 菜生子 Yoshinobu MATSUOKA Naoko KOYAMA
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.21-29, 2012-03-31

本稿の目的は児童養護施設におけるソーシャルワーク実践事例を用いて,ソーシャルワークの機能を明確にしていくことである。その意義は実践事例の分析と検討からソーシャルワーク実践理論の研究的積み上げに多少なりとも貢献できるからである。 その結果,ソーシャルワーク機能は子どもの生活援助・支援においては随所に活用されていた。直接的援助機能やケースマネージャー機能,保護機能などが実践では多く活用され,子どもの成長と発達によってソーシャルワーク機能は広範囲にわたり活用されることなどが明らかになった。
著者
吉原陽香 笹田耕一 佐藤未来子 並木美太郎
雑誌
第73回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.173-175, 2011-03-02

本研究はオブジェクト指向スクリプト言語であるRubyでOSの資源管理機能を実装することを目標とした.Ruby処理系をOSのないハードウェア上で直接実行し,その内部でRubyスクリプトをを実行するVMや,Rubyの言語仕様を利用して,安全性が高く見通しの良い構成のOSを目指す.現時点までに,Cで書かれた既存のRuby処理系をベアマシン上に移植した.さらにOSの記述に必要となる実メモリ・I/OポートへのアクセスといったRubyの言語仕様にない機能を拡張ライブラリにて実装した.またキーボードとテキストVRAMのドライバを作成し,それらを利用するスクリプトを記述して実行を確認した.
著者
石坂 敏弥 廣田 豊彦 矢鳴 虎夫
雑誌
情報処理学会研究報告プログラミング(PRO)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.75(1992-PRO-066), pp.25-32, 1992-09-22

詩を構成している単語の影響による人間の感情の変化を表現するシステムについて述べる.P.T.Young と R.Plutchik の感情モデルを基に,単語の持つ感情的イメージをファジィ集合として与え,そのイメージコードをファジィ推論で処理することによって,感情の変化を表現する.また,主観という視点を取り入れて,一つの詩から受ける感情が人の性格やその時の感情状態によってどのように変化するのかについて,シミュレーションを行なった.その結果,簡単な推論規則であっても感情変化をそれなりにうまく表現できることがわかった.
著者
石島 博 前田 章 谷山 智彦
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2010-MPS-80, no.1, pp.1-13, 2010-09-21

本論文では, 不動産が立地する,Google Earth(GE) などの地球儀・地図上の座標にピンを打ち,金融工学の理論に基づいて評価した不動産の価格とリスクを表示させるシステム 「不動産バリュエーション・マップ」 を提案する. 本システムは,金融工学を地理情報システム (GIS; Geographic Information System) 上に,融合・展開する新しいモデルである.不動産は,個人や企業等にとって最も大きな資産であるにも関わらず,株式などの金融資産とは異なり,その売買の意思決定において,手軽に利用・活用できるデータや分析ツールが圧倒的に少ない.このような状況に 1 つの解決策を提案すべく,クラウド時代の Web 上のデータや GE などの高度な地球儀・地図アプリケーションを効果的に用いることにより,不動産バリュエーション・マップを構築する.

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雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, 2012-09-15
著者
国領 二郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, 2012-09-15
著者
西尾 信彦
雑誌
情報処理学会研究報告情報学基礎(FI)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.47(1989-FI-013), pp.1-8, 1989-06-02

ハイパーテキストシステムをそれが基盤とするデータモデルに沿って研究することの意義について述べる.その例としてマルチユーザ/ネットワーク対応のハイパーテキストデータベースサーバのデータモデルであるHAM アイディアプロセッサ構築のために設計されたホルダネットワーク,TRONプロジェクトのBTRONで採用された統一的操作モデルである実身/仮身モデルの3つのハイパーテキストデータモデルを[1]で提出された次世代ハイパーテキストシステムが解決すべき7つの問題に即して比較/考察する.