著者
入江 俊夫
出版者
千葉大学
巻号頁・発行日
2014

学位:千大院社博甲第文70号
著者
岩波書店 編
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
vol.第11, 1932
著者
渡辺 匠 唐沢 かおり
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.2012, (Released:2022-05-03)
参考文献数
36

自由記述方式の質問をもちいた過去の研究では,人々にとって自由意志は「何ものにも制約を受けず,自分の心理状態にそって行動を選択する」ということを基本的に意味すると示唆されている。しかしながら,人々の自由意志信念に関する既存の尺度は,人々の素朴な自由意志概念ではなく,研究者の理論的な自由意志概念にもとづいて作成されてきた。そこで著者らは他行為可能性,行為者性,制約からの自由の3つの因子から構成された,人々の素朴な自由意志信念を測定するための新たな尺度を作成した。本論文では,3つの研究で約4,000人の回答者(大学生および一般成人)が分析にふくまれている。その結果,予測されていた因子構造や尺度の信頼性が確認された。それにくわえて,他行為可能性と行為者性の得点は,道徳的な責任帰属の得点と正の相関関係をもつことが明らかになった。これらの知見は,心理学および哲学の文献と照らし合わせて議論されている。
著者
寺本 妙子
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
開智国際大学紀要 (ISSN:24334618)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.25-37, 2022 (Released:2022-04-28)

本研究では,キャリア教育における主体と自己に関する概念整理をおこない,教育実践上の課題について検討した。OECD 2030プロジェクトにおけるエージェンシーの概念にはラーニング・コンパスが目指すウェルビーイングに向かう方向性が見出され,学習指導要領における主体には一元的な自己観が反映されていた。教育哲学,心理学,社会学における主体や自己の概念には,関係性や公共性との関連付けや,多元的かつ構成的な性質が確認された。これらの概念を整理した枠組みを提案し,キャリア教育の実践上の課題について検討した。
著者
石原 悠子
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究ではニーチェや後期ハイデガー、ガダマー、またフィンクらが展開した西洋近現代における遊びの哲学との比較研究を通して、京都学派における「遊びの哲学」の内実を明確化することを目的とする。具体的には、西田幾多郎・西谷啓治・上田閑照における「遊び」に関する論述を、「自己」「他者」「世界」という三つの問題圏において検討する。このことを通して京都学派の哲学が遊びの哲学に寄与しうる可能性について問う。
著者
木村 俊彦
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要
巻号頁・発行日
no.63, pp.411-417, 2017-03-25

2007年と2008年の資料紹介では、金倉圓照・東北大学文学部教授の最終年度の印度哲学史特殊講義を聴講された直弟子の一人・神舘義朗先生のノートを頂戴して掲載した。先生は筆者のパーリ語講師であられたが、最後は滋賀医科大学の哲学教授として定年まで勤められた。今般は同じく金倉圓照博士の直弟子である村上真完・東北大学名誉教授から、金倉博士の未公刊の著書『印度中世精神史』下に相当する原稿のコピーと演習の為に用意された『ニヤーヤバーシュヤ』(『論理学疏』)と『サルヴァダルシャナサングラハ』(『一切哲学綱要』)の全訳ノートのコピーなどを寄託された。 ここでは後者の第二章(仏教章)の初めの部分を紹介したい。合わせて前後に金倉圓照博士の履歴と業績を紹介する。博士は鹿児島県のお寺の出で、1896年に生まれ、東京帝国大学印度哲学科を卒業してドイツなどに三年間留学し、新設の東北帝国大学印度学仏教史講座の助教授、次いで主任教授を勤められた。その後、『印度中世精神史』上巻によって日本学士院賞を受賞され、続いて同会員、昭和天皇の侍講も勤められた。新設の宮城教育大学長を三年間勤められたのは70歳からである。1987年に満90歳で東京で亡くなられ、出身のお寺に葬られた。本書の仏教章は仏教哲学四派の梗概であるが、最初にダルマキールティの仏教論理学の延引があり、14世紀後半という、仏教がインド本国で滅亡してからの南インドのマーダヴァの著書にしては、筆者の専門分野が最初に登場して実に興味深いものがある。
著者
森田 紘平
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

本年度の研究実績は大きく三つに分けることができる.物理学における創発の一般論,存在論的構造実在論の洗練,および量子力学の思想史の展開である.まず,物理学の不連続性の典型例である創発について,主に量子力学と古典力学の関係に注目して,モデル概念の重要性を指摘した.より具体的には,準古典的領域が不可欠である量子論と古典論の間の関係づけについてパターン実在論による特徴づけが不十分であり,創発的なパターンとして実在性を確保するためにはモデルの役割を強調する必要があることを示した.次に,ミクロな量子力学的領域に関する存在論である存在論的構造実在論についてその内容を洗練させた.特に,多くの議論が異なる意味で用いてた「構造」や「先行性」といった概念を精緻化して,量子力学に応用することで,ミクロ領域の存在論的特徴付けを行った.この営みは,我々の日常的なスケールである古典的な領域についての存在論的地位を特徴づけることに役立ち,物理学における不連続性を明確化する助けとなる.さらに,このような量子と古典の対立の思想史的展開についても研究を行った.量子力学の哲学においては特に重要視されるニールス・ボーアの歴史的資料を分析することで,ボーアが1920年ごろに量子論や古典論についてどのような立場を取っていたのかを明らかにした.以上,これらの研究は量子力学と古典力学の関係に限定されているが,前者二つの研究は,さらなる応用が可能である.一方で,後者については,現代の不連続性の理解のされ方を特徴づけるために重要な視点を与えるものであると言えるだろう.
著者
村部 義哉
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.39-48, 2022-04-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
17

要旨 本稿は,患者の身体機能や日常生活動作能力の向上,そして行為の再獲得を目的とする理学療法介入に関して,生命の有機構成の論理化を目的としたシステム論であるオートポイエーシスを導入し,身体哲学的な観点から理学療法介入の定式化を試みるものである.システム論は,構成要素の関係性の組織化によって,構成要素の総和以上の特性が創発されるとする概念であり,要素還元的な機械論とは異なる.理学療法においては,関節可動域,筋力,感覚などの部分的要素への個別的介入が要素還元的な治療介入であるのに対して,患者を身体システムとして設定し,それらの構成要素の関係性の組織化によって,行為の創発を促進するといった治療方針がシステム論的な治療介入となる.本稿では,こうしたオートポイエティックな理学療法介入における身体システムの構成要素を「感覚」に設定し,その関係性の形成に関する患者の認知機能や情動,意識などの機能的役割および実践的活用方法の論理化を行う.理学療法学が医学分野に属する学問領域である以上,理学療法の臨床実践は科学的根拠に準拠するものでなければならない.しかし,自然科学分野の研究成果に過剰に依存した臨床実践は,患者の個別性(動機,環境,来歴など)を無視する結果となる.オートポイエティックな理学療法の実践とは,患者の個別性を最大限活用するものとなる.