著者
若森 参 マライヴィジットノン スチンダ 濱田 穣
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第31回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.52, 2015-06-20 (Released:2016-02-02)

マカク属のサルでは尾長に変異性が高いことが知られている。種群内に見られるバリエーションは、それぞれの種の分布域緯度に相関し寒冷適応と考えられるほか、位置的行動と支持基体、あるいは社会的行動(専制的-平等的社会)などの要因が推測される。相対尾長が35~45%の同程度の中長尾を持つカニクイザル種群のアカゲザル(Macaca mulatta)、シシオザル種群のブタオザル(M. nemestrina/leonina)、トクマカク種群のアッサムモンキー(M. assamensis)の間で尾の比較を行った。我々は、尾長は尾椎数と最長尾椎長に依存し、ブタオザルとアッサムモンキーは、アカゲザルよりも短い尾椎を数多く持つことを明かにした。この違いが行動面でどのように見られるか、自由遊動群で尾の運動観察を行った。今回は、アッサムモンキーの観察結果について発表を行う。アッサムモンキーは、大陸部アジアの中緯度域の常緑広葉樹林に分布し、キタブタオザルとの共存域では、急傾斜山林や岩崖地に生息する、比較的、平等主義的社会を持つ。フォーカルアニマルサンプリング法で、尾の保持姿勢(脊柱に対して水平、垂直、背方屈曲、下方)と運動の位置的行動(座る、立つ、歩く、走る、寝そべる、跳躍、登る、降る)と社会的行動の組み合わせで記録した。また、ビデオによる尾の運動観察も行った。アッサムモンキーは、尾の最大拳上時の角度が垂直と背方屈曲の中間で、これは近位尾椎の形状から予想された。アカゲザルとキタブタオザルで見られた社会的上位の個体が尾を上げて優位性を示すという行動は、見られなかった。逆にアッサムモンキーの劣位の個体が餌場への接近などで上位個体に近接する等の社会的場面において尾を垂直に上げる様子が見られた。またアカゲザルとキタブタオザルではほとんど観察されない尾を左右に振る行動が見られた。これは単独で枝に座り振り子のように尾を振る場面と、劣位の個体が上位の個体に接近する際に尾を脊柱に対して垂直に挙げ振る場面が見られた。
著者
友永 雅己
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第30回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.72-73, 2014 (Released:2014-08-28)

ヒトでは、同一の顔写真が上下に並べられた場合、下の方が太って知覚される(あるいは上の方がやせて知覚される)。この現象は北岡(2007)やSunら(2012)が独立に見いだされている。この現象を北岡(2007)は「顔ジャストロー効果」とも呼んでいる。これは、現象的にはジャストロー図形と同じ方向の錯視が生じているためである。最近、顔の内部の要素よりも輪郭線が重要であるという報告もなされているが(Sunら, 2013)、この顔ジャストロー効果がなぜ生じるのかについては、まだまだ不明な部分が多い。一つの可能性は、顔刺激の処理様式によるものであろう。また、比較認知科学的な観点からの研究も全く行われていない。そこで、本研究では、ヒトとチンパンジーを対象に、ジャストロー錯視と顔ジャストロー錯視について検討し、2種類の錯視の関係と種間差について検討した。タッチスクリーン上に2つの図形(長方形、ジャストロー図形、またはチンパンジーとヒトの顔写真)を上下に並べて提示し、より横幅の短い(やせた)方の図形を選択することが、チンパンジーおよびヒトの参加者には要求された。その結果、ヒトではジャストロー図形、ヒトの顔、チンパンジーの顔、いずれにおいても、従来報告されていた錯視(上の方がより短く/やせて知覚される)が見られたのに対し、チンパンジーでは、ジャストロー錯視のみが見られ、顔ジャストロー錯視は生じなかった。この結果は、ヒトとチンパンジーにおける顔処理のある側面における種差を反映しているのかもしれない。
著者
森下 健 中尾 恵 垂水 浩幸 上林 弥彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.2689-2697, 2000-10-15

SpaceTagは位置と時間の属性を持ち,特定の場所と特定の時間でのみアクセス可能な仮想オブジェクトである.位置センサと通信装置を備えたモバイル携帯端末を持って街を歩くユーザは,周囲にあるSpaceTagのみを見つけることができ,また自分のいる場所にのみSpaceTagを作成することができる.このようにSpaceTagシステムは情報が位置依存で提供されることからモバイル情報システムであり,また現実世界に情報を付け加えるので拡張現実感システムでもある.SpaceTagシステムは情報へのアクセスを現実世界の位置と時間によって制限するので,WWWなどと比較して不便なシステムといえるが,情報にはアクセスが困難だからこそ価値がある場合があると我々は考える.SpaceTagは公共の情報サービスとしての提供が想定され,観光案内,広告,地域掲示板,実世界ゲーム,局所通信などの応用が考えられる.SpaceTagはシンプルな概念であり,現在の技術でも比較的安価に実現が可能である.本論文ではこのSpaceTagプロトタイプシステムの設計と実装について説明する.
著者
池田 忍 イケダ シノブ IKEDA Shinobu
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.279, pp.191-204, 2014-02-28

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 第279集 『歴史=表象の現在』上村 清雄 編"The Presence of History as Representation", Chiba University Graduate School of Humanities and Social Sciences Research Project Reports No.279近年、アイヌの人々を主体とする文化の発信力は高まり、その需要や研究の状況は大きく変わりつつある。とりわけ、かねてより知られる木彫、刺繍、アットゥシ織といった工芸分野を中心に展覧会の機会が増えた。背景には、「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統に関する知識の普及及び啓発に関する法律」(本稿では通称の「アイヌ文化振興法」を用いる)の成立(一九九七)以後、衆参両議院における「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が採択され(二〇〇七)、内閣官房長官の要請により設置された「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」が報告書を提出(〇九)、白老ポロト湖畔に「民族共生の象徴となる空間」となる国立博物館の二〇二〇年度開設が決定する(一三・七)といった国の政策の進展がある。「アイヌ文化振興法」の成立以降は、公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構(通称の「アイヌ文化財団」を用いる)が予算措置の面でも重要な役割を果たし、各地の博物館や美術館と共に主催する展覧会において、国内外のアイヌ工芸や民具のコレクションが継続的に紹介されるようになった。また博物館や美術館に限らず、現代の作品に触れる場、機会も開かれている。しかしながら、アイヌの人々が手がける造形は必ずしも「工芸」分野に限らず、またたとえ「伝統」的とみなされる木彫や刺繍などの手法を用いても、それぞれの作家がめざす表現世界は広がりをみせている。版画、イラスト、アニメーション、映像作品などを手がける表現者が現れている。そのような状況下で、「アイヌ・アート」という呼び名がさまざまな文脈で用いられ始めた。それは、…
著者
渡辺 保
出版者
白水社
雑誌
新劇 (ISSN:05830486)
巻号頁・発行日
vol.14, no.8, pp.19-21, 1967-08
著者
新倉 俊一
出版者
岩波書店
雑誌
文学 (ISSN:03894029)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.p1-8, 1988-03